アヤ↑30
2024-11-30 23:38:43
2573文字
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死が二人を分つまで

長い前置きの馴れ初めから、誓いの言葉を言う話。
※少しだけ夜な表現あります。

砂漠の地、サンドロックの街にはドクター・ファンという名前のスラリとした185cmの長身に長い髪、形のいい青い瞳を持つそれはそれは美しい容姿の美青年の医者が診療所にいる。
しかし幼い頃に家庭内暴力を受けていた挙句、唯一の味方であった母サーナイが病死。いじめも激化し心身ともに深い傷を負った彼はずっと一緒だったカラスのX以外には心を閉ざしていた。
サンドロックに来てから誰とも関わろうとしなかったファンに雑貨屋の青年が「一人は良くない!!」と余計な世話を焼かれてしまったし、挙げ句の果てには家族であるXや最近やってきた新人のビルダーと結託してファンの心を開こう作戦を決行された時には腑が煮えくりかえりそうになった。

ーーーー関わってほしくない、放っておいてほしい。

過去の苦しい過去はファン自身に重く纏わりついており、怒りを以て彼らを拒絶した。

やがてその怒りが少しずつ落ち着いてきた頃。

「ごめんなさい!!!!」

雑貨屋の青年に協力していた新人のビルダー、確かナギサがファンの診療所を訪れるなり深く頭を下げた。
この頃には怒りも大分冷めていたので「もう忘れた・・・」と返したが、それでは彼女の気が治らないらしくお詫びのプレゼントも渡された。
何故あの雑貨屋の青年とこんな事をしたのか問うと彼女は恥ずかしそうにこう答えた。

「・・・友達に、なりたかったんだ」

照れくさそうに、しかし罰が悪そうにそう答えたナギサに何故か胸が高鳴ったのを覚えている。
それがナギサとファンの出会いだった。

以降は母がよく作ってくれた好物である麻婆豆腐を差し入れとして持ってきてくれたり、病気が再発した自分をナギサが診療所まで運んでくれた上に薬を作ってくれたり、一緒に散歩したり、花火を見せてくれたり・・・。
彼女はあくまで「ほっとけない」を理由に色々してくれたのであろうが、ナギサと関わるうちにファンの心に変化が起きたのは言うまでもなかった。
しかし自分と関わった人間は悉く不幸になってしまう。
初めて心を開いて、初めて好きになった相手を不幸にしたくない。
そんな思いで一度は彼女を遠ざけたがそれでも彼女はファンと共に生きたいと、彼を抱きしめたのである。
彼女の曇りなき思いに胸を打たれたファンは迷いを捨て、ナギサと共に生きる事を決めた。
その時に渡した白鳥のネックレスだ。
白鳥は生涯を共に生きる。それこそどちらかが死ぬまで、番であり続ける。
ナギサが自分と一緒にいたいと願う様に、ファンも彼女と共に生きる事を決めた。
過去を乗り越え、初めてX以外に心を開き、恋をして生涯を共にしたいと願う相手をドクターファンはようやく見つけたのである。

大分長くなってしまったが以上がサンドロックの医者、ファンとサンドロックのビルダーナギサの馴れ初めである。
二人は最早サンドロックでは知らない人はいない程有名なカップルだ。
お互いが共に寄り添い、「死が二人を分つまで」の如く強い絆を誓い合った。またファンからは告白と同時にプロポーズもされているので実質結婚前提のお付き合いでもある。
ナギサもビルダーとして仕事も収入も安定してきたし、自宅も増築して近々本格的な結婚準備にも取り掛かる予定ではいた。しかし指名手配犯であったローガンやその一行の事、デュボスの軍や光の教会が絡んだ巨大な陰謀の後処理に追われて結婚式云々の作業に取りかかれないので何とも歯痒かった。
壊れた建築物の修繕や住人の困りごと解決などビルダーは忙しいのである。
そこはファンも承知の上ではあるので、急がず慌てず落ち着くまでナギサはビルダーの仕事に没頭する事ができた。
だがナギサがビルダーとして、忙しい時には朝から夜まで駆け回っている間は彼女に触れる事ができない不安もあるのかナギサが帰ってくると安否と無事を確認する為か必ず抱きしめるといったスキンシップをとりたがる。時折過去のトラウマがフラッシュバックするのか、そういうやや情緒が不安定な時は体の繋がりを求められることもあった。
愛する人を失う恐怖は彼の心に深い傷を残した。今ファンにとってナギサは何よりも大切な存在だ。特に彼女が営んでいるビルダーという仕事は時に命の危険も伴う。彼女の職業についてはファンも理解しているとは言え、彼女を失えば今度こそファンは全て壊れてしまうだろう。
ベッドの上で彼女が生きている事を確かめる様に、また自分の存在を植え付けるかの様にファンはナギサを抱いた。
だがナギサはそんなファンに嫌悪感を表す事なく彼を受け入れた。
彼女もまた、彼の苦しみやトラウマの事も踏まえて、全てを受け入れた上で彼を愛しているからだ。

事後のベッドの上で、ナギサは静かに眠る裸のファンの首にかかっている白鳥のネックレスを見た。
己がつけているのと少しデザインが違う、ファンのは白鳥が二羽寄り添っている。

ーーーまるで夫婦みたいだ

「・・・ナギサ??」

「あ・・・ごめん、起こしちゃった??」

ネックレスに触れていると目を覚ましたらしいファンがナギサを見る。
寝起きと先ほどまで触れ合っていた名残か、幾分か掠れた声で名前を呼ばれて思わず赤面してしまう。

「・・・何か気になるのか??」

その言葉と共に、少し心配そうな表情でナギサの頬を撫でる。相変わらず、心配性な恋人だ。だがそれもまた愛おしい。

「先生のネックレス見てたんだよ。あたしが着けてるやつとデザインが違うんだなーって」

「ああ、これか」

ファンは少し身を起こして、ネックレスをナギサに見せる。

「白鳥は・・・一度番になると死ぬまで共に一緒だ」

「・・・余談だが、白鳥は雌雄ペアで一番(ひとつがい)とも数えるらしい。二羽で・・・一羽だ」

ーーーまるで私達のようだな

ファンはそう言って愛おしげに微笑みながら、ナギサの頬を撫でた。
その言葉を聞いてナギサも微笑み、彼の手に自分の手を重ねる。

「なら、早く結婚式あげないとね」

「ああ。そうだな・・・」

お互い見つめ合う。

ーーー良い時も悪い時も

ーーー富める時も貧しき時も

ーーー病める時も健やかなる時も

「死が二人を分つまで」

「愛し慈しみ貞節を守る事をここに誓います」

〜終〜