きなこ
2021-01-13 23:51:37
1535文字
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カミュホメで壁ドン

カミュとホメロスで壁ドン
壁ドンしたかっただけなので、特にヤマもオチもない感じです

 壁ドンをした。
 宿の近くでホメロスを見かけて、人目の付かない裏路地に誘って実行をした。とはいえ、オレはホメロスより十センチほど背が低いので、いまいち様になっていないような気がする。
 というか、めちゃくちゃ顔が近い。気まずい……

 事の始まりは昨晩のこと。
 宿での夕食の後、酒場へと繰り出したおっさん連中を除く五人で雑談をしていた。メンツはイレブン、マルティナ、ベロニカにセーニャ、そしてオレ。その時に壁ドンからの告白が最近流行っているらしいという話になり、実際に見てみたいとお嬢様方がはしゃぎ出した。その場にいる男はオレとイレブン。互いに牽制し合っていた矢先、イレブンが爆弾を投下しやがった。
「カミュはホメロスのことが好きだよね」
 図星を指されて思わず口籠った。
 誤魔化しても良かったが、最終的には屍肉を喰らう魔物のような目をした女性陣の追及に、白旗を上げる羽目になったと言うわけだ。

 さて。
 壁ドンをされたホメロスは眉間に皺を寄せて、こちらを見下ろしていた。その視線が一瞬だけ表通りを捉えたので、好奇心旺盛な誰かさん達が覗いていることには気付いたのだろう。
『何をしている?』
『壁ドンが見たいらしい』
 見学人どもには見えないように、声を出さずに唇だけを動かして会話をする。
『愛の言葉でも囁いてくれるのか?』
 さすがはホメロス。壁ドンがどんな物なのか把握しているようだ。
 「お前が私のことを好きだとでも言うつもりか」なんて皮肉は飛んでこない。何故ならオレ達はすでに、いわゆる体の関係を持っているからだ。まあ、愛の言葉を囁き合ったことはないのだけども。
 始まりがいつだったかは忘れた。宿でオレとホメロスが同室になった時に、日中の激しい戦闘の余韻で昂っていたオレのモノを鎮めてもらったことがきっかけだった。その後は互いの欲求を解消する関係が続いている。
 頻繁に肌を重ねていれば愛着も愛情も湧くが、それを口に出すのはホメロスが嫌がると思っていた。だけどオレの気持ちが周りにバレてしまったのであれば、これは転機なのかもしれないと思った。
「軍師様は愛の言葉をお望みかよ?」
 耳元に唇を寄せて挑発をするように囁くと、ホメロスが息を飲む音が聞こえた。
「馬鹿な……っ!」
 怒声を上げようとするホメロスの唇を、己のそれで塞ぐ。
 きゃー、と誰かの悲鳴が耳に届いてきた。
 少しだけ距離を開けて上目遣いに見やれば、ホメロスは渋い顔をして、しかし頬をほんのりと上気させて、揺れる瞳をついっと横へと滑らせた。
「コソコソするのも面倒になってきたし、オープンにしてもいいかと思ったんだけど」
 ニヤリと笑って告げる。
 ホメロスは「先に相談のひとつでもせんか」なんてモゴモゴと口の中で呟いていたが、やがて大袈裟にため息をついてオレの後頭部に手を当てた。
「説明はお前がしろ」
 体を引き寄せられて、重ねられる唇。合わせられた隙間から舌が入り込んでくる。首に手を回してそれに応えると、表通りの方から悲鳴とドタンバタンと何かの音が喧しく響いてくる。
 やがて人の気配が消えて静寂が戻った頃、ホメロスは体を離し、陽の当たる方を見遣って満足げな笑みを浮かべた。目を細めて口角を上げた、悪役のような邪悪な表情だが、とてもホメロスらしいと思う。
「さて。静かになったことだし、行くとするか」
 口元を腕で拭って返事も聞かずに歩き出すホメロス。通りに出たホメロスの髪が陽光を受けて眩しく輝く。こちらを見もしないくせに、足を止めてちゃんとオレのことを待っていてくれる。
 にやけていると嫌そうな顔をされるだろうから、オレは笑いを堪えながらホメロスのあとを追った。