akinoshiroihana
2024-11-30 19:57:03
1545文字
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さねかずら

https://x.com/takao_camera/status/1862235030493569296
これと
https://x.com/akinoshiroihana/status/1862308244552917201
これ

竜隼前提でただの東映無印3人平和な日




ロッカーを開けたところで
「ん、」とだけ隼人が漏らして首をかしげた。
何だなんだと覗き込み取り出す武蔵に「食うなよ多分食い物じゃねえぞ」と言う隼人の目の前、ピカピカした真っ赤な玉を連ねたような、葡萄の小房のようなものがある。まるで毒林檎を持って訪ねたはいいが白雪姫は留守で、やむなくそのまま置いて行かれたような、不自然なくらいぴかぴかとした光沢のある赤、など思ったのは隼人がそれを白い彼の顔の前に持って行ってしげしげと眺めたからだろうかと竜馬は思う。
「あ、あれか竜馬がむかし中等部でやらかしたって伝説の」
「え、あ?なんだいそれ」
「いやリョウおめえの話だよ!お前が『学の無い運動部』になっちまったってやつ」
言い合う二人に隼人が「へえ」と面白そうに人の悪そうな笑い方をした

その赤い実はスポーツ推薦で単身中学から歴史だけはかなりある私学に進んだ竜馬の、下足箱に教室の机にと連日届けられたという。
最初はいぶかしみ、そしておっかなびっくり、それがなんだかは担任もわからず理科部を訪ねて見てもらったところが
「うーん、ビナンカズラじゃないですかね、美男鬘、サ〇ジョウヒデキくん、」
理科部員はそう言って、童顔だが凛々しさがやや騒々しいまでの面構えであると話題で静かな人気の下級生にぷっと笑った、甘いマスクの芸能人にも似ているので勝手につけられたその綽名を呼んで。
だから数日目にとうとうその花枝(?)を持って何か告げにきた女子生徒の手を竜馬はひどく憤慨してはらった、嫌いだ、と、そんな赤で例えられるのも絶対にいやだと
『やめてくれ、大嫌いだそんなやり方!』
赤い実が枝から外れて散った、少女は泣きながら駆け去った

「それがよう、それはビナンなんとかじゃなくてサネカズラって実で、おくゆかし~くも恋の詩だかウタだったんだってよ。オンナノコの親が抗議とお詫びと両方しに来たあとは転校しちまったんだと」

『名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな』

「あ、そうだった。後で聞いた話、お母さんが歌会始にも出席するような家の子だったらしい」
「それは……気の毒したと思うぜ、お前さんもその子も」
エスカレーター式学校の大学のお兄さん連中相手になら今でも通用したかもしれねえなあ、と東京育ちの隼人がいうのはどこの名門校だろう。

そうだよおかげで赤は大の苦手になってたんだったなあ、などと頭を掻くあたり、どうやら竜馬はその記憶に蓋がされていたらしい、今色鮮やかが過ぎるシャツに身を包み深紅のマフラーをひるがえす隼人を友とし紅い戦闘機に乗る彼は。いつからだろう、嫌いではなくなって、とても好きな色になっていたのは、かといってまだその色を自ら纏うには間に合ってないほどにどんどん心惹かれていったのは。
「で、今回のは隼人、これどちらだと思うよ?」
そして大事な友に懸想する者が現れたのかもしれないことに気付くのも甚だ遅く、彼は今まさに何故かやたらとあたふたとしだしているのだが

「わかるもんかい、でもそうだな」
万葉集の防人とかでも仕込んで返しとこうか。
隼人は、赤い彼は、聡い双眸を長すぎる睫毛の奥に伏せて少し笑う。

『等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟』

「えっ?えっ?」
なんかよぉ、隼人って学校の成績には関係ないとこでばっかカシコイよなあ、とは武蔵の弁。




(季節ごとに花は咲くのに、どうして「母」という花は咲かないのだろうか。咲くのだったら手折っていっしょに行くのに)



晩秋の光が磨かれた木造の床に照り映えて輝く。ものみなあかあかと染め上げながら
そんな秋の夕暮れ、平和な日。


(了)