宮城雪夜
2015-05-15 23:25:48
4873文字
Public 刀剣乱舞/@saniwaTL
 

異世界さにわの本丸営業日誌。(4)~「審神者」として?~【※創作審神者夢有注意。】


※ご注意※

・本作品は作者の作品を未だにプレイできない憤りと妄想を「審神者が日誌を書いている」
 という体で書きなぐった自己満足以外の何者でもない代物となっております。
 全体的に短いです。

・基本的に恋愛要素よりも家族感をこってり気味に盛っておりますがそのように見えて
 しまった場合はあっさり目にスルーしていただければ幸いでございます。
 今回はハマったきっかけということでちやほや気味でお送りします。

・一枚目は審神者の日誌、二枚目は追記のような背景のようなあやふやなもので
 構成されております。注意。

・以上の注意書きを読んでいただいた上でそれでも読んでやるよという方はどうぞ
 お進みください。

・この話以降、刀剣達をアダ名で呼ぶ事が頻発しますので、そういったことが苦手な方も
 戻る事をおすすめします。すいません。






異世界さにわの本丸営業日誌。(4)~「審神者」として?~


○月×日 雨

今日は、ちょっと気持ちが落ち込む出来事が起きた。

長谷部さんが重傷で運び込まれて。
気が、変になりそうだった。

今までどんなに酷くても中傷までで撤退してたから。
重傷がこんなことになるなんて知らなかったんだ。
血が。あんなに滴って。

出陣前は体調も良かったし、怪我もなかった。
なんで?どうして。

キリと光忠さんが、急いで手入れ部屋に運んでくれて的確に処置をしたから
事なきを得たけど。

この日、最近噂になっている強力な敵と出くわすかもってコン助から聞かされてはいた。

何度目かの出陣後、噂の検非違使が現れた。
それで皆は懸命に戦って何とか倒したけど。
長谷部さんが、後ろから。

不意討ちだったって。
もう倒したはずだったのにまだ動けたなんて。
あまりのことに混乱したし、今でも少し体が震えてる。

でも、それよりも。

私は、その後の長谷部さんに酷く憤りを感じた。

面会が許されてすぐ様子を見に行った私に長谷部さんは。
自分をもの、みたいに。

俺は下げ渡された刀です。
役に立たなければ必要とされなければ無価値だから。

死ななきゃ、安いんですよ。」なんて。

長谷部さんの自身を蔑ろにする発言を聞いて思わず左頬を全力でビンタしてしまった。

利き手で殴ったせいか力が掛かりすぎて、私よりもがっしりして大きな長谷部さんが
よろけてしまってた。
涙が、とまらなかった。

私にとってここに住まう刀剣たちは物なんかじゃない。
大切なパートナーで、家族だ。
神様だけど心のある一人の人間としてみているしそれを凄く大事だって思ってる。

なのに。

家族だと思っていた人に、そんな風に思われていたことが凄く悔しかった。
凄く悲しかった。

最初の頃から何となく感じてはいたんだ。
私の「ため」にと話す長谷部さんの視線は、どこか別の誰かに向けられてたから。

それでも彼は未熟な主である私と共に歩んでくれると誓ってくれた。
そんな彼を自分は主としても、人間としても支えてあげれなかったのだ。

長谷部さんの心の闇に、自分の無力さに。
色々な感情がごちゃ混ぜになって自分が抑えきれなかった。

泣きじゃくる私に、長谷部さんは困惑した表情を向けてた。
私はずっと思っていた事を全部ぶちまけた。

ただの物なんかじゃない。無価値なんかじゃない。私の大切なひとりなのにって。

ほぼ叫び半分だったから、上手く伝わらないかもって思ってたけど。
真っ直ぐ見据えた長谷部さんの顔には涙が伝ったように見えた。

騒ぎを聞き付けてキリと乱ちゃんが止めに入ったけど、二人を見て安心したのか私は
そこで気を失ってしまったらしい。

それから目を覚まして、今これを綴っている。

明日、長谷部さんに改めて謝ろう。
もちろん、がっつり殴ってしまったことについてだけど。

言ったことに後悔はしてない。

外に目をやれば降り続いていた雨は上がり、空には雲ひとつない星空が広がっている。

止まない雨はない。
届かない想いも、ないと信じたい。

もっと、自分を大切にしてほしい。
これは私の本当の気持ちだから。

それじゃ、おやすみなさい。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



[あらしのあとには。]




重傷で運び込まれた日から幾日か過ぎた。

俺の前には緊張した面持ちで刀を握る主の姿。
事の始まりは主が先日の件で頭を下げに来たところからだ。

「剣術の稽古ですか。」

主に頭を下げさせるなどもっての他だが、その主が「主命だから謝らせろ」
とくれば聞かないわけにはいかない。

主はしばらく伏せたままだったが頭をあげたとたん俺の手を掴んで

「後生だ貴方にしか頼めないんよお願いします!!」

と一息にまくし立てるものだから、こちらも酷く狼狽えてしまった。
彼女はどうも距離感が近すぎる気がする。

何故こうなったのか分からずじまいだが、主命とあればただ尽くすのみだ。


「よ、よーし。それじゃ長谷部せんせい!今日はよろしくお願いシマス!」

よほど緊張しているのか声が少し上擦ってしまっている。
これでは途中でバテてしまうだろう。
何とか緊張をといていただかないと

「主。その前に少々お聞きしたいことがあるのですが。よろしいでしょうか?」

出鼻をくじかれたのかすっとんきょうな悲鳴をあげる主。
時折、年齢よりも幼い表情をする彼女は見ていて新鮮だ。
本人に言えば顔を真っ赤にして否定するだろうか。

聞きたいのは、もちろんあの日の事だ。

あの時主は俺の発言に自分の事のように怒り、悲しんでいた。
涙に濡れた彼女の顔を今でも鮮明に覚えている。

主から流れてきた神気と感情の奔流に俺は自分がいかに彼女から信頼されて
いたのかを痛感した。
前の主の時に失なった感情に、さしもの俺も戸惑いを隠せなかった。

月光を思わせる清らかな神気が、温もりを感じさせる彼女の想いが
俺の心の傷に少しずつ染み渡って自然と涙が零れた。

今は自身を蔑ろにする気など毛頭ないし、そんな主に誠心誠意尽くしたいとも思う。
主命だからというわけではない。俺の意志だ。

しかし、一つ疑問に思えることがあった。

所詮俺達は刀剣から生まれた付喪神。
刀に宿る魂が形をもった存在にすぎない。

監査役の男から聞いた話だと使い捨ての道具や駒として乱雑に扱う主も多いと聞く。
それなのに主は何故そんな俺達に想いを寄せるのか不思議でならなかった。

俺の質問に少しばかり表情を固くした主は遠くで畑当番に勤しむ山姥切国広とそれを
囃し立てる乱藤四郎に視線を向けたまま話始めた。

私が別の世界からここに連れてこられたのは、聞いてるよね?」

彼女が少しばかり特異な身の上なのだと言うことは、彼女の式神であるこんのすけと
少し前に来た彼女の担当監査役である男に聞いていた。

頷き話を促すと、どこか寂しげに彼女は続けた。

「私が当たり前に来ると思ってた日常はほんと唐突に、あっさりと無くなってさ。
目を覚ましたら夢みたいな場所にいて、最初は本当に寝ぼけてるのかなーとか、
どっきりかなーとかそんなことばかり考えてた。」

それでも。

「初めての鍛刀の儀でキリを顕現して、今度は乱ちゃんを鍛刀してさ。
神様って聞いてたからこんなに人間らしい神様だと思わなかったんだよね。」

よくよく思い返すととんだ出会いだったわなーと笑う主が浮かべた笑顔は
今まで何度も見てきた穏やかな笑顔で。

「私の今までを知ってる人はここにはいないけどそんなことよりもうんと大事に
したいなって思える皆ができてさ。」

なのに、あの日。

血塗れの長谷部さんに、凄く怖くなったんだよね。
今まで当たり前に出掛けていく皆が、ある日突然あっけなく消失して戻ってこない
ことだってあるんじゃないかって。」

それは自分から世界が消えて無くなる感覚と似てるなって。
そこまで呟いた主は、少し震えていた。

「だからかな、私にとって皆は他とは違う親しみがあるというか皆が消えるのは、
きっと自分が死んでいくのと一緒なんだと思う。」

死なせたくない。消したくない。お願い。どうか独りにしないで。

「刀剣達の心にも悔いがあったり、果たせなかった願いがあるっていうから
余計共感しちゃったのかもね。」

最後は困ったように微笑む主に俺はなんとも言えない気持ちになった。
刀だった時は前の主に認められ尽くすことだけが存在意義だった。
だが今は人としての形と心を得、こうして存在している。
俺には、愚かで浅ましくとも人として生きる彼女が、眩しく思えた。


「さてと話終わり!」

刀を構え直し振り返る主の表情に先程のような緊張は見られなかった。
まっすぐに俺を見据える瞳に視線が重なり、彼女の瞳に写る俺もどこか
すっきりとした表情をしていた。

「長谷部せんせい!改めてご教授よろしく!」

「それは、主命ですか?」

いたずらに問い返す。
きょとんとした彼女は質問の意味を理解したのかにんまりと口元を曲げると
さらに問い返した。

「当然。教わるんならとことんまでってね!手抜いたら承知しないからね?!」

「では、まず始めに持ち方から。
それでは打ち込まれたときに手が痺れてしまいますよ。こんな風に、ね!!」

先手必勝と言わんばかりに打ち込む。
何とか初撃は耐えたがやはり手に衝撃が走ったのか主の刀を持つ手が緩む。

「流石主、初撃に耐えましたか。」

「その割に結構ガチンコで打ち込んだよね今!!?ちなみに正直な感想は?」

「では遠慮なく。脇が甘い、足の踏ん張りが弱い、後腕の位置が高すぎですね。それから」

「デスヨネー。」

がっくりと項垂れる主をなだめつつ二打、三打と打ち込んでいく。

次第に打ち込みに慣れてきたのかただ受け止めるだけでなく受け流し返し刀で
反撃にでるまでになっていた。
刃が重なりあう度彼女の感情が流れ込む。


"もう、あんな思いはしたくない。"

"誰一人失いたくない。"

"皆を護れるように。強く、なりたい!"

ああ、そうか。
これが、彼女が望んだ理由。

もう、手の届かない所にあるとばかり思っていたのに。
俺が望んでやまなかった想いは、ここに。





「今日は、ここまでにしましょう。休息も必要ですよ主。」

お互いに熱が入っていたのか周りが大分夕焼けのオレンジ色に染まり始めている
ことに気がつかなかった。

「え?!まだ大丈「駄目ですよ。過信は災いのもとですから。」」

ぴしゃりと言い放つと主は若干むくれて視線を俺からそらした。

「そんなに、強くなりたいのですか?」

一瞬首をかしげかけた主だったが、ハッとしたあと「そんな顔に出てた?」と
ばつが悪そうに顔をしかめた。

「ええ。はっきりと。」

実際は彼女の感情が伝心したのだがこれは本人には自覚のないものと
聞いていたので黙っておくことにした。

俺の言葉に対し複雑そうな面持ちで睨む主の姿に思わず吹き出す。
たとえ能力が無かったとしてもきっと彼女の分かりやすさは変わらないだろう。

「あなたは、ありのままが一番ですよ。」

俺は今日一日で感じたことを素直に伝えた。
自分がどんな表情をしていたのかはわからないが主の反応を見る限り
悪いものではないように思う。

夕焼けの緋色の中でも分かるくらい鮮やかに染まった主の頬に手を当て、
逆の手で打ち込みでできた豆だらけの左手を掴んだ。

「どうかこれから先も、主と共に。」

貴女がここに在り続ける限り。
そう呟いて、俺は左手の甲と薬指に口づけを落としたのだった。