2024-11-28 23:51:40
2271文字
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た〜んと召し上がれ♡ 2

幼ハーあのがべろちゅーまで済ませてるんですよ その意味も知らずにね……ニコッ


 ひっそりと、植え込みの陰で。二人きりの部屋で。人気のない路地裏で。ちゅう、と頬を吸って、首筋をぺろりと舐める。柔く傷付かない程度に肩に歯を立てて、小さなもみじの指先を口にぱくりと含む。
「あまいね」
 ふわふわする、と甘く笑う顔が赤く色付いて、それがまた美味しそうで、ハーデスは手を伸ばしてもちもちの頬を捕まえると、むちゅ、と唇をくっつける。彼女の頬はふわふわですべすべで、甘い匂いがする。おかえし、とばかりに彼女の唇がハーデスの頬に触れて、舌がちろりと舐めた。ぺっとりとした唾液は消して不快感はなくて、きっとその唾液も甘いのだろうなあ、とぼんやり考える。
 誰にも、甘い甘い彼女を知られたくなかった。広場の隅の植木の陰にしゃがみこんで、ひっそりと唇を寄せて味わって。はふり、と吐息を逃しながら彼女がハーデスにそっと寄りかかる。甘い匂いと汗の匂いが混ざって、それも厭じゃない。赤く熟れた唇がツヤツヤと濡れて、ふるりと震えた。
 名前を呼べば、なあに、ととろけた瞳がハーデスを見る。ハーデス、と少しふやけた音を出す唇が、赤く、赤く、甘そうで。ちらりと覗く舌を、味わってみたくて。
 指先で、彼女の唇を撫でる。ゆっくり瞬きをした瞳がとろん、とハーデスを不思議そうに見ていた。彼女のその瞳を、ずっと見ていたくて。まっすぐに目を合わせたまま、唇を近付ける。ぱくり、と初めて食らいついた彼女の唇はふわふわて柔らかくて、驚いたように動いて、くすぐったい。ハーデスは彼女の唇に自分の唇をくっつけたままぺろりとそれを舐めてみる。口の中で驚いたようなあっ、という声がこぼれて、その隙間に舌を差し込んでみて。じゅわり、と滲むような彼女の唾液が甘くて、さらに奥へと舌を差し込んでみる。そうするとしかえし、とばかりにハーデスの舌に彼女の舌が絡まって、なるほど、互いに都合がいい、なんてぼんやりと考えながら貪る。じゅうっと滲むエーテルを舐めて、吸って。いつの間にかハーデスの手は彼女の顔の輪郭を捕まえていて、彼女の手はハーデスのローブを握っている。
 呼吸が苦しくなってきて、ぷは、と離れて。とろりと赤い顔をした彼女が、どうにか呼吸を整えようとして。
「なんか、ふわふわ、する……
 こてん、とハーデスの肩に彼女の頭が落ちてきた。おい、と支えて、その体の熱さに驚く。確かにいつも彼女はぽかぽかでおひさまのように温かいけれども、その比じゃない! 熱が出ている時とか、そう言った熱さである。
 名前を呼んで、ゆすって。ん〜、とぽやぽやした返事しか返ってこないことに泣きそうになる。覚えたてのグラビテで頑張って抱き上げると、ハーデスは走り出した。

「エーテル酔いですね」
 彼女の庇護者である当代アゼムは彼女の額に手を当ててたおやかに笑う。
「本来エーテルを分け与えるときはゆっくりと、なおかつなるべく個性を埋めて純粋なエーテルに近付けて渡す、もしくは抽出するのですが。ふふ、今度そう言った訓練もしなくちゃですね」
 一晩寝れば治りますよ、と言われ、ハーデスはほっと息を吐く。はふ、と湿った吐息をこぼす彼女のいつもよりずっと熱い手を握って、ハーデスは眉をしかめた。
 自分の、所為だ。ハーデスは他の人よりも、より多くの体内エーテルを保持していて、より多くを扱えるのだと習った。それを彼女はそのまま味わって、そうして溢れて、酔ってしまったのだ。
 ハーデスの目には鮮やかに輝く彼女のエーテルに侵食するように混じるハーデスのエーテルがよく見える。胸がいっぱいになるような感覚もあれど、それ以上にそれが彼女を今苦しめているのかと思うと、どうしようもない気持ちになる。
 名前を呼べば、薄らと目が開いて、へにゃりと唇が笑った。相変わらず甘い匂いがして、美味しそうで、齧り付きたくてたまらない。込み上げてきたものを飲み込んで、ハーデスはぎゅう、と彼女の手を握りしめる。
 だいじょうぶ!? と慌てた声と共に飛び込んできたヒュトロダエウスにこくりと頷いて見せながら、ハーデスはひっそりと決意をした。


 一晩寝ればすっかりエーテルが落ち着いて、にこにことハーデスとヒュトロダエウスのところにやってきた彼女はいつもと何ら変わりない。学舎で魔法とは何かについて学び、そうしてそれを終え、いつも通り彼女はハーデスのところにやってくると、笑いながらハーデスのローブの裾をキュ、と掴む。今日はどこに行く?と無邪気に尋ねる彼女を見て、ハーデスは静かに息を吸い込んだ。
……もう、しない」
「え?」
「私もお前も、みじゅくだから。また倒れたらどうするんだ」
……で、も。ちょっとだけなら、平気だったよ」
「でも、だ。ちゃんと調整できるようになるまで、もう食べ合いっこはなしだ」
 しっかり目を見て言葉を重ねれば、ハーデスの意思の強さが伝わったのだろう。少し目尻を歪ませながら、くいくいっとハーデスのローブを引っ張った。
……最後に、もう一回だけ、だめ?」
…………だめだ」
 少し潤んだ瞳に決心が揺らぎかけたが、首を振れば彼女はぺしょ、と肩を落とした。うん、わかった、と頷いて、ローブから手を離して代わりにハーデスの手に指を絡める。ぎゅっと繋いで、息を吐いて。じゃあ、アカデミアの図書館に行こう、ヒュトロダエウスも誘って、と笑いながら走り出す。やっぱり、彼女は元気で笑っている姿が一番で、それを見ていたい、と思う。
 こうして意味を知らない幼い蜜月は、数日で幕を下ろしたのだ。