頻子
2024-11-28 12:46:22
2399文字
Public Elin
 
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年上の妹に肩たたきを邪魔されるロイテル(Elin)

ロイテル夢
※年上の妹は妹としての妹です。

デフォルトデフォルトデフォルトお兄ちゃんデフォルトお兄ちゃんお兄ちゃんデフォルトデフォルトデフォルトお兄ちゃんデフォルトお兄ちゃんお兄ちゃんデフォルト あと、1999万オレン。
 2000万オレンの借金は、いつしか1999万オレンの借金になった。途方もなく、絶望的な――一生かけても返せないという、空想的な比喩でしかなかった借金が、切り崩されて実体を持った。これは単なる数字であり、いつかは返しきれるものだ、と。
 まだ99.9%残ってはいるが、それでも、0と0.1のあいだには大きな違いがあった。
 この数字は、きちんと、減っていくのだ。
「おっ、デフォルトが戻ったか……
 ロイテルはちょっともったいをつけ、デフォルトのところに顔を出すことにした。犬みたいに駆けていくのは馬鹿らしい……わけではないが……馬鹿だと思われたくない……。たとえ、もうこれ以上ないほどに情けないところを見せているとしても、まだプライドがあった。
 まだ、まだか。
 手持ち無沙汰にほうきで地面を掃いたりしていたが、なかなか来ない。またネフィアで拾ってきたわけのわからんモノでバックパックをいっぱいにして、荷下ろしに難儀しているのだろうか。
 仕方なく、わざわざ顔を出してやると、緑の髪の女性を連れていた。
「うん?」
 誰だ?
 ロイテルが尋ねる前に、その女性が先にデフォルトに尋ねた。
お兄ちゃん、この人、誰?」

***

……年上の妹?」
 年上の妹です。
 年上の妹を紹介すると、ロイテルは怪訝そうな顔をした。目が、「聞いてないぞ」と訴えている。言っていないので、当然だ。なんたって、デフォルトが自分に年上の妹がいることを知ったのは、つい最近のことだったのだ。
 まさか、自分に妹が……それも、年上の妹がいたなんて!
「たしかにまあ、妹がいることが発覚する話は、聞かないわけでもないが……
 日記によって、自分の出生を知るような話はないわけでもない。とくに上流階級においては、そのあたりのドロドロした話には事欠かないものだ。
「だが、年上の妹……年上の妹ってなんだ? 街中で偶然、出会ったって? なんで妹だと思ったんだ?」
「なんでって……お兄ちゃんお兄ちゃんだもん」
 年上の妹は、ツインテールをくるっと内側に丸めて頬を膨らませる。
 デフォルトはうなずいた。間違いなく自分の妹だ。
「妹は、プチの中では、一番、雪プチが好きに違いない? おい。10人に聞いたら7人はそういうぞ、そんなの。私が一番好きなプチか? そうだな……違う、話を逸らすんじゃない!」
 ロイテルは頭を抱える。
 この場所は、たしかに逃亡者やら、訳アリの少女やら、追放者やら、さまざまな人間が身を寄せ合って暮らす拠点である。だが、ここにきて年上の妹とは。
「いいか、ここでやっていくからには面接が必要だぞ。趣味は? 希望の仕事は?……あ、こら、依頼を出すな。何がデフォルトと暮らすことになったから葉っぱを8個持って来い』だ、何に使うんだ、何に」
 希望の仕事といっても……ねえ。
 デフォルトは年上の妹と顔を見合わせる。
 妹の仕事は、妹であることだ。あと、お願いしたら髪形を変えてくれたりする。
「そんなの仕事じゃない! いいか、仕事っていうのはな、知恵を絞り、汗水を垂らして……
「ねぇ、この人、ちょっとコワイね」と、年上の妹はコソコソ耳元で言った。
「そこ、聞こえてるぞ」
 年上の妹は肩をすくめた。

***

 とまあ、いろいろひと悶着はあったが、年上の妹はほかのメンバーとはうまくやっているようだ。とくにクルイツゥアとは保護者の愚痴で盛り上がっているようだ。
「ね、お兄ちゃんたら鈍いよね!」
 代わりにロイテルとはよく衝突している。
「あ、こんなところにたまって。治安が悪くなるだろ」
「ええー? いいじゃん」
「出荷箱に座るな、邪魔だ!」
 あーあー、とデフォルトがケトルを見ると、それを聞いていたケトルもまたふっと微笑んだ。

お兄ちゃん♪ お小遣いちょうだい」
 石うすでハチの巣を砕いてハチミツを生産していると、ちゃっかりと年上の妹がやってきた。
 可愛い年上の妹に抱き着かれては、ついつい財布のひももゆるくなろうというものである。だいじにするんだよ、とオレンを渡すと、年上の妹は喜んだ。
「ねえ、お兄ちゃん、これ、なーに?」
 あ、肩たたき券だ。ロイテルの借金を返してあげたときに、彼が心ばかりにくれたのだ。
「お財布に入れてたの? へんなの。ね、肩たたき券、使っちゃう? 私に」
 デフォルトは天才的な年上の妹の発想に驚いた。さすが、自分よりも年齢が上なだけがある。
 ロイテルからもらったものではあるけれど、べつに彼にしてもらわなくてもいいのか……
「ね、どう?」
 小首をかしげると、ツインテールがふわっと肩に触れた。
「こらっ、こらこらこら!」
 クワを持ったロイテルが割り込んできた。
 年上の妹と話していると、ロイテルはやたら割り込んでくるのだ。
 こっちにこい、と手招きされる。今忙しいというと、隣に腰掛け、かわりに年上の妹を追い払った。
「もー……
「年上の妹なんて、いるわけないだろう。私は断言する。絶対に、あれは詐欺だ」
 有識者ぶったロイテルは語った。
「目を覚ませ! いつの間にか莫大な借金を背負うことになる……ならまだいいほうで、遺産目当てに殺されかねないぞ。そうなったらどうするんだ。なあ。おい、聞いてるか?」
 ロイテルを無視して石うすをぐるぐるしていると、年上の妹が戻ってきた。
「ねぇ、お話終わった?」
 終わった終わった。
「貸せっ」
 ロイテルはふんっと券をとると、かたたき券の券面に「他者への使用禁止!!」と書き加える。ルールを後出しするのは卑怯だ。