ちよど
2024-11-30 00:00:00
7405文字
Public アシュヨダ
 

あんたのひと晩を俺にくれと言われたら

アシュヨダ。アシュくんの一言に空回りするわし様の話。pixivからの再掲

カーマちゃん「お馬鹿さんですねぇ。シヴァ系の男がそんな可愛いはずがないでしょう?」

 ところで。自分を明らかに慕っている年下の男に「あんたのひと晩を俺にくれ」と言われたら何を想像するだろうか。
 その答えをこねくりまわしながら、三臨姿のドゥリーヨダナは腕いっぱいの花束を抱えてストームボーダーの廊下を歩いていた。
 ドゥリーヨダナのひと晩が欲しいと、突然アシュヴァッターマンが血迷った事を言いだした原因は何か。
(もしかして、わし様が最高にかっこよくて魅力的すぎるのがよくなかったのか?)
 ドゥリーヨダナの心の中の呟きは当然誰にも聞こえることなく消えていく。
 時刻はすでに深夜。ストームボーダーは静まり返り遠く微かにエンジンの音が響いていた。
 申し訳程度の間接照明の下、ドゥリーヨダナは道を確認しながら歩く。
 その腕に抱えられたシャンパカの花束。咲き誇る黄色や白の花は彼の故郷で礼拝や香水に使われている。その心地よい香りに包まれながらドゥリーヨダナはため息をついた。
(いい年した男が「ひと晩」といえば、まあ、うん。他にないな)
 要するにセックスしましょう、という意味だろう。
 そして、言い出した方が抱かれる側というのは……ないだろうなぁ。あいつも健康な成人男子であるわけだし。
 ドゥリーヨダナの深い溜息が踊るように広がったシャンパカの長い花弁を揺らす。
 ストームボーダーのサーヴァントの居住区画はクラスごとに分かれている。この辺りはアサシンの区画であり、ドゥリーヨダナはほとんど来たことがなかった。
 この深夜に訪れる部屋を間違えるわけにはいかない。夜目が効くわけでもないドゥリーヨダナは案内表示に目を凝らしながら慎重に進んでいく。
 それでも思考はぐるぐるとまわる。
 言い出したアシュヴァッターマンが抱く側だとしたら、望まれたドゥリーヨダナが抱かれる側だろう。
 問題は。

(問題は、それが嫌ではないことだ)

 自覚にドゥリーヨダナは手近な壁に頭をぶつけたくなる。
 誓って、生前も今も恩師の息子をそんな目で見たことはなかった。誰が幼子から知っている存在を欲の対象にするだろうか。なのに、あの金色の瞳に望まれた時、拒否することなど思いつかなかったのだ。



 一昨日?いやもう昨日のこと。いつものようにカウラヴァだけの酒宴は盛り上がっていた。
 今回の場はアシュヴァッターマンの部屋だったが、彼がドゥリーヨダナ好みの酒やつまみを際限なく並べたのでドゥリーヨダナはご機嫌だった。
 そのつまみの中にドゥリーヨダナは以前希望したのに食べることが出来なかった料理を見つけ、言ってしまったのだ。
「でかした!アシュヴァッターマン!!なんでも褒美を取らせよう!」

(今思えば、こんな事を言わなければよかった。……そうすればずっと自覚しなくてすんだというのに)

 回想するドゥリーヨダナがいくら後悔しても過去は変わらない。
 強い酒精を片手に笑うドゥリーヨダナの戯言を、アシュヴァッターマンはいつもように受け流さなかった。
「なんでもか?」
 確認にドゥリーヨダナは笑った。隣に座っていたカルナの肩に腕をまわす。
「カルナに誓っていいぞ」
 勝手に誓われたカルナはなぜかアシュヴァッターマンを促した。
「アシュヴァッターマン。お前の望みを口にするなら今しかないだろう」

(カルナはアシュヴァッターマンの想いを知っていたのか。そうだな。知っていてもおかしくない)

 その時気づかなかったカルナの不審な態度に彼のスキルを思い出して、ドゥリーヨダナは頭を抱えたくなった。

(知らなかったのはわし様だけか!)

 まだ何も分かっていない昨日のドゥリーヨダナは気楽にけらけらと笑っている。だいぶ酔いがまわっているがそれくらいではまだまだ正気だと、その場にいた皆が分かっていた。
 だからアシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの手を取った。
 ドゥリーヨダナとアシュヴァッターマンの視線が合う。
 酒の席には似つかわしくない程の真剣な表情でアシュヴァッターマンが口を開いた。

「あんたの一晩を俺にくれ」

「あ、ああ」
 気迫に呑まれたドゥリーヨダナが頷くとアシュヴァッターマンは立ち上がった。
「よっしゃあああ!!!」
 拳を振り上げて喜ぶアシュヴァッターマンのテンションについていけないドゥリーヨダナにカルナが笑いかけた。
「よかったな」

(どういう意味だったの?それ)

 今更カルナの言葉に疑問を持っても過去は止まらない。
 アシュヴァッターマンは満面の笑みでドゥリーヨダナに頭を下げた。
「三日くれ。その間に用意してくる!」
 言うや否や返事も待たずに駆け去った敏捷A++をドゥリーヨダナは見送ることしか出来なかった。



(用意ってナニ?)
 思い返したアシュヴァッターマンの言葉にドゥリーヨダナは困惑していた。ドゥリーヨダナもいい年だし、生前は妻もいた。聖杯からの知識もある。そのせいかろくでもない予想しか出てこない。
 誰に聞いても好青年だと答えるアシュヴァッターマンに限って、あんなモノや、こんなモノや、あまつさえ口にも出せないようなモノを持ってくるとは思えないが。
(閨では人が変わるタイプもいると聞くし)
 ちなみにわし様はいつでもわし様だ。まあ、男に抱かれた事はないからそっちの方は分からんが。
(それどころか男と寝たこと自体ない)
 その事実にドゥリーヨダナは考え込んだ。
 ドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンより年上である。出会ってから今までずっとドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンを導いてきた。
 きっとアシュヴァッターマンの中でもドゥリーヨダナは頼れる年上の主君だろう。
 そのイメージが、崩れる?
(いや、それはいかん。わし様はいつだって完璧でスマートなわし様なのだ)
 そのイメージを守るために、ドゥリーヨダナはこんな時間にアサシンのサーヴァントを訪ねているのだ。
 気を取り直したドゥリーヨダナはちょうど彼女の部屋を見つけた。
 ドゥリーヨダナは自分の身なりと花束を確認して、覚悟を決めてインターフォンを鳴らす。
 約束通りの訪問に幼い少女の声が答えた。



 三日目。なにからとは言えないが三日目である。
 ドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンの部屋で内心の緊張を押し殺してソファーに座っていた。アシュヴァッターマンは上機嫌でドゥリーヨダナの前のテーブルに夕食を並べている。
 ふたりきりである。
 思えばドゥリーヨダナが召喚されてから、カウラヴァ三人で行動してばかりでアシュヴァッターマンとふたりきりになったことはなかった。
 三臨姿のドゥリーヨダナは上着の上から腹部を押さえる。
「旦那?腹でも痛いのか?」
「いっ、いや。なんでもない!」
 目ざといアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは慌てて答える。そんなドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは首をかしげた。
「旦那。いつも飲む時は楽な格好をしてんのに。今日は珍しいな」
「そ、そうだな」
 腹部が隠れる霊衣が三臨しかなかったのだと言えないドゥリーヨダナは、目の前のグラスを煽った。
 ちょうどよい温度に冷やされた酒精が喉を降りていく。
「うまい」
「だろう?」
 ドゥリーヨダナの嘆息にアシュヴァッターマンが嬉しそうに表情を綻ばせる。彼がそんな風に笑うと案外幼く見えるのだとドゥリーヨダナは知っていた。
 ドゥリーヨダナは知っている。アシュヴァッターマンの喜ぶ顔も、悲しむ顔も、怒る顔も全て。そのくらいずっと一緒にいたのだ。
 何故か胸が苦しくなってドゥリーヨダナは首をかしげた。サーヴァントが病気になるなど聞いたことがない。
(医務室には……行きたくないなぁ)
 カルデア医療班の面々を思い出してドゥリーヨダナは少し憂鬱になった。
 一方、申し訳程度のキッチンとドゥリーヨダナのいるリビングを往復するアシュヴァッターマンは、今にも鼻歌を歌い出しそうな程上機嫌だ。
 そうして次々と並べられる好物にドゥリーヨダナは最後の晩餐の気分を味わっていた。
(なるほど太らされて食べられる家畜ってこんな気持ちなのか)
 王宮育ちのドゥリーヨダナが初めて味わう気持ちに内心震えていると、食事を運び終わったアシュヴァッターマンがその隣に立ち止まった。
「旦那、その……
「なんだ?」
 快活なアシュヴァッターマンが言いよどむなど珍しい。
 ドゥリーヨダナが問いかけると、アシュヴァッターマンは拳を握りしめ、意を決したように口を開いた。
「隣、座っていいか?」
「いいが?」
 空いているんだから座ればいいし。そもそもここはアシュヴァッターマンの部屋だ。
 何故許可が必要なのか分からないドゥリーヨダナの隣にそっと座って、アシュヴァッターマンは幸せそうに顔を綻ばせた。
「旦那の隣はいつもカルナが座っていただろう?俺はずっと、……羨ましいと思っていた」
 薄っすらと頬を紅潮させるアシュヴァッターマンに、ドゥリーヨダナは狼狽えた。
 こんな顔をするアシュヴァッターマンをドゥリーヨダナは知らなかったのだ。
(顔が、熱い)
 心臓が叫ぶように太鼓を鳴らしている。
 ドゥリーヨダナはこの症状を知っていた。

(恋、だ)

 もう認めるしかなかった。
 暗に抱きたいと言われても嫌悪感を抱かなかったのは、ドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンに恋情を抱いているからだと。
 想いを自覚して動けないドゥリーヨダナに、アシュヴァッターマンは笑いかけた。
「今夜はずっと旦那は俺だけのものだよな?」
……そうだな」
 アシュヴァッターマンの笑顔が今は眩しくてドゥリーヨダナ視線を彷徨わせた。
「カルナには申し訳ねぇが、旦那を独り占め
「何故ここでカルナが出てくる?」
(もしかしてカルナもわし様の事がそういう意味で好きだったのか!?)
 焦ったドゥリーヨダナの質問に、アシュヴァッターマンは不思議そうに目を丸くした。
「何故って、いつも俺たちは三人で飲んでいるだろ?旦那とふたりきりで飲みたいなら、カルナには
 アシュヴァッターマンの言葉をドゥリーヨダナは途中で遮った。
「わし様と、ふたりきりで飲みたい?……もしかしてそれがおまえの望みか?」
「他に何があるんだ?」
 首を傾げるアシュヴァッターマンはさながら天使のようで、汚れた大人であるドゥリーヨダナは舌を噛み切りたくなった。
 思わず腹部をさすってしまう。
「旦那?」
 再度の不審な動きにアシュヴァッターマンが手を伸ばした。
「待て!触るな!」
 ドゥリーヨダナの制止は間に合わず、アシュヴァッターマンの指先がドゥリーヨダナの額に触れた。

「ひゃん!!」

 自分の口から飛び出した悲鳴にドゥリーヨダナは両手で口を覆った。
「旦那?」
 アシュヴァッターマンがその金色の目を細める。
 よく勘違いされるがアシュヴァッターマンは決して単細胞でも愚かでもない。それどころか。
「旦那、ちょっと動かないでくれ」
 素早い手がドゥリーヨダナの体をソファーの端に押し倒す。間髪入れずにドゥリーヨダナの上着が捲りあげられた。
……
「見るな!検索するな!!」
 ドゥリーヨダナの叫びを無視して、アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの腹部に刻まれた紋様を注視した。
 聖杯からの知識はそれを淫紋だと告げる。

 【淫紋】
 性的な意味や意図でもって主に下腹部に施される紋様。その効果は快感を助長するなど多岐に渡る(聖杯ペディア)

 聖杯からの淫紋の検索結果の詳細を受け取ったアシュヴァッターマンは黙り込む。
 つい数日前までアシュヴァッターマンの大切な主君にはそんなモノは付いていなかった。
 このカルデアでそんな性的な術を他者に刻みつける事が出来るのはひとりだけだ。
……待ってろ旦那。あの女、殺してくる」
 限界まで開いた瞳孔で体を起こしたアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナはしがみついた。
 あの愛の神がそう容易く殺されるとは思わないが、そんな騒ぎになったら大事になってしまう。
「待て!アシュヴァッターマン!!その!合意!!合意だ!!!」
 本当は夜を潤滑に進めたかったドゥリーヨダナがカーマ神に頼んだのだが、それを正直に言えるドゥリーヨダナではなかった。
 ドゥリーヨダナの必死の制止にアシュヴァッターマンの体から力が抜ける。
 そして、その代わりのようにアシュヴァッターマンに絡みついていたドゥリーヨダナの両腕が小刻みに震え始めた。
「旦那?」
 少し頭の冷えたアシュヴァッターマンがしがみついたままのドゥリーヨダナに目をやると、その顔は紅潮し目は潤んで焦点があっていない。ドゥリーヨダナの熱く乱れた息が体にかかって、アシュヴァッターマンの背中を何かが駆け上がった。
「だ、んな?」
……あ、しゅ……
 息も絶え絶えで呂律がまわらない様子のドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは息を呑む。
 繰り返すがアシュヴァッターマンは決して愚かではない。
 だから、同意で淫紋を刻んだというドゥリーヨダナの言葉から、その理由を推測するのにそう時間はかからなかった。
 アシュヴァッターマンがそっとドゥリーヨダナの体をソファーに戻すと、ドゥリーヨダナの両腕がずるずると落ちていく。アシュヴァッターマンがその手を捕まえると、ドゥリーヨダナの体がびくりと跳ねた。
「わりぃ、旦那。……俺の言い方がマズかったせいで、あんたに恥をかかせちまった」
 アシュヴァッターマンがそっと掴んだままのドゥリーヨダナの手に指を滑らせると、ドゥリーヨダナの体がビクビクと跳ねた。
「旦那」
 アシュヴァッターマンが呼びかけると、ドゥリーヨダナの熱に潤んだ目にアシュヴァッターマンが映る。
 自分の声が聞こえているのだろうと判断して、アシュヴァッターマンは手の中のドゥリーヨダナの掌に唇を落とした。

「あんたのひと晩を俺がもらう」

 本当は欲しかったものが、準備万端で手の中に転がってきたのだ。それを逃すほどアシュヴァッターマンは愚かではなかった。



 さて、時間は遡り1日ほど前。アサシンのカーマの部屋でドゥリーヨダナは俯いていた。
「へぇ。年下の恋人との初夜を成功させたい?それを私に頼みますぅ?私いま仕事を休んでいるんですよ?」
 ドゥリーヨダナから受け取ったシャンパカの花束を揺らしてカーマは暗い笑みを浮かべた。
「しかも、相手はシヴァの半化身!お断りです」
「アシュヴァッターマンは御身の半化身でもあるだろう?身内も同然ではないか?」
 言い募るドゥリーヨダナにカーマはシャンパカの花弁を摘んだ。
「割合の問題です。……私のお気に入りの花を持ってきたので話は聞いてあげましたが。くだらない内容でしたね」
「うぐぐ」
 取り付く暇もないカーマにドゥリーヨダナは唸るが、頼み事をしているのはドゥリーヨダナの方である。圧倒的に不利だった。
 が、
(わし様が無策で交渉に来るわけがなかろう?)
 邪悪な笑みを隠してドゥリーヨダナはカーマから視線を逸らせた。
 独り言のように呟く。
……わし様。明日というか、今日の周回に呼ばれておるが。マスターが編成に悩んでおったのでちょっと助言をしちゃおうかなー?」
 ぴくりとカーマの眉が動いた。
「ライダー単騎が最後に出てくるクエストだからなー、つよーいアサシン単体宝具がおらんかなー?」
 あからさまな釣り餌に今度はカーマが唸った。
……分かりました!要求を言ってください!!」
 降参したカーマに、ドゥリーヨダナは口を開き、すぐに閉じた。年甲斐もなく顔を赤らめる。
「その……どうしたらいいか分からんのだ」
 ぼそぼそと恥ずかしそうに言われた言葉にカーマは声を荒げた。
「処女なんですか?処女なんですね!!知識なんて聖杯からいくらでも……
 言いかけてカーマはにやりと笑った。
「なるほど。あなた知識じゃなくて手練手管を知りたかったんですね。私を頼ったのも納得です」
……失敗させたら可哀想だろう」
 ドゥリーヨダナの言い訳をカーマは鼻で笑った。
「お馬鹿さんですねぇ。シヴァ系の男がそんな可愛いはずがないでしょう?」
「他の男ならともかくアシュヴァッターマンだぞ」
「はいはい」
 目が曇っているドゥリーヨダナの主張を聞き流して、カーマはドゥリーヨダナに近づいた。シャンパカの花束から白い花を1輪抜き出す。
 カーマはその花をドゥリーヨダナの腹部に触れさせた。
 一瞬光が散り、カーマの笑みが深くなる。
「これで必ず初夜は成功しますよ。……がんばってくださいね」



……がんばるどころの話ではないではないか)
 アシュヴァッターマンの寝室で目覚めたドゥリーヨダナはカラカラに乾いた喉で呻いた。
 淫紋による狂乱は過ぎ、思考ははっきりしている。
 いろんな事をしたし、いろんな事をされたし、あらぬことを口走った気がする。
「ひどい目にあった」
 神なんか頼るものじゃない。父親だのクリシュナだのの助力を受けていたパーンダヴァの連中はよく無事だったな。
 強いて宿敵の事を思い浮かべ、ドゥリーヨダナは鈍く動かない体に力を入れる。腹部を見れば淫紋は消えていた。
 その事実に心が軽くなったドゥリーヨダナは勢いよく裸の上半身を起こそうとして動きを止めた。
(なんか、体が重い)
 視線を巡らせればドゥリーヨダナの体に褐色の腕が絡みついていた。
 ドゥリーヨダナに抱きついていた赤い髪が顔を上げる。
……ひどかったのか?」
 申し訳なさそうに眉を下げるアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは怯んだ。
 ドゥリーヨダナは狂乱しても何をしたかしっかり覚えている。だから、こう答えるしかない。
……ひどくなかった」
 ドゥリーヨダナの返答にアシュヴァッターマンは顔を輝かせた。
(まあ、いいか。上手いこといったのだし)
 胸を撫で下ろしたドゥリーヨダナは知らない。アシュヴァッターマンとの「ひと晩」がこれから何度も繰り返されることを。
 どこかで愛の神の笑い声が響いた。



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