koto
2251文字
Public れめしし😈🦁
 

be killing me

叶さんに「反則」って言わせたかったれめしし(付き合ってる)ストリーマーのファンミとか知識皆無のまま雰囲気で書いてます
※突貫のため粗など薄目でご覧下さいませ

 玄関先で幅を利かせていたデカい靴に、これまたデカい図体の男が足を突っ込んでいる。白いツノ付きフードに赤いスマイルマークのコンタクトがトレードマークの配信者レイメイの姿がそこにはあった。靴を履き終え、くるりと踵を返すと見送りに来た獅子神の顔を見る。
「それじゃあ、いってきます」
 いってきますとは言うものの、ここは獅子神の家であり叶のものではない。ただ、そう言ってしまうほどの頻度で叶はこの家で寝泊まりをしている。もっと言うとこの家の獅子神の寝室で。
「ファンミだっけか? オマエのことが大好きな観測者が集まんだろ?」
「そ。大好き、もしくは目障りで仕方ないって思ってる奴な」
 なんとも物騒な話だが、それも含めて叶が楽しんでいることは獅子神にも分かっていた。
「ファンミってなにすんだ? 握手会とか?」
 そうは言ったものの、叶が何人もの人と笑顔で握手をする姿は到底想像がつかない。
「握手はしないけど、マンツーで対面はする。で、一五秒以内でオレがソイツの顔見て喜びそうな言葉を言ってやる」
 この場合の喜びそう、は、単に日々の視聴に対する感謝を告げるわけではないのだろう。いつぞやのパン屋の前であった女子高生とのやり取りが獅子神の脳裏をよぎる。あの時は分からなかったが、今だとあれがあの子に対する最高のファンサだったことは理解できた。叶のファンは全てああいった種類の人間なのかもしれないが、中には悪辣な態度よりも褒められたり甘い言葉を言ってほしい層もいるかもしれない。
「ぇ、なになに~? 敬一君もしかしてちょっとヤキモチ妬いてんのぉ?」
 獅子神の思考などお見通しと言わんばかりに叶はニヤニヤと笑みを浮かべながら煽る。おちょくって楽しんでいるようにも見えるが、そうすることで来場者とアレコレあるとかは杞憂だと安心させる意味合いもあるようだった。
「そんなことくれぇでいちいち不安になったりするかよ」
 フンッと鼻を鳴らして呆れて見せる獅子神の言葉が意外だったのか、叶は感心してマジマジと獅子神を眺める。
「お? 敬一君が一番で王様だから、そんじょそこらの観測者が迫ってきてもなびくはずがないって自信満々か?」
「別にそういうんじゃねーよっ。ただ」
「ただ?」
「オマエがオレのこと好きっていうのは、まあ、分かってるつもりだからよ。オレ自体がどうこうは置いておくとして、なんつーかオマエの気持ち疑うようなマネすんのはなんかちげぇだろ」
 まあ、あくまでオマエの趣味は置いておくとしてだな……とかなんとか言い訳じみた言葉をもごもごと言い募っているが、そんなものは耳に入らないまま叶はその場にしゃがみこんだ。
「うおっ!?」
 デカい男が唐突に小さくなるものだから、獅子神は驚き思わず声を上げる。
「んだよ、どうした?」
 訝しむ獅子神に叶はしゃがんだまま顔だけ上げると拗ねたような顔をした。
「それ反則だよ敬一君
「は?」
「もう、今凄い行きたくなくなってきた。このまま敬一君が分かってる以上にオレが敬一君のこと大好きだって教えこみたくてたまんなくなっちゃったんだけど……もう、今日行かなくてもいい?」
 前半の不穏な発言は聞き流しつつ、最後にかわいこぶって尋ねられた言葉に獅子神は反応する。
「っ、バカかっ!! ドタキャンなんて良いわけあるかよっ!」
「今のは敬一君が悪い……ダメ?」
 小首を傾げてくるものの、そんなもので獅子神が絆されるわけもなかった。足元に位置する叶の顔をじっと見つめたあとで、獅子神は思わず苦笑いを浮かべた。
……とかなんとか言って行くんだろ? で、大方オメーがちゃんと行くのと引き換えに駄々こねてオレになにか交渉でもするつもりだろ」
 獅子神の言葉に叶はパチパチと目を瞬かせると勢いよくその場で立ち上がる。獅子神を見る叶の目は興奮で瞳孔が開いたせいかキラキラとして見えた。
「え、敬一君凄いじゃん。今日めちゃくちゃ冴えてる!」
 ストレートな賞賛に少し照れくさくなりながらも胸を張る。
「このくらいのことならお見通しなんだよ! どんだけオマエのこと見てると思ってんだ」
 自信満々な獅子神の言葉に叶は一瞬言葉に詰まると深々ため息を吐き出した。
「あ??」
「敬一君がオレを誑し込んでくる……。え、ほんとに今日もうずっと敬一君と一緒に居たくなっちゃったんだけど」
 なにが刺さったのか、またもや駄々を捏ね始めた叶に今度は獅子神が大きくため息をつく。そうして、上がり框から足を一歩踏み出すと履きなれた靴に足を入れる。玄関先までの見送りだけのつもりだったが、どうやら予定変更が必要そうだった。
「ぐちゃぐちゃ言ってねーで行くぞ! 送ってってやるし、終わるまで待っててやっから」
 言いながらもう片方の靴も履き、玄関先のキーボックスから車の鍵を手に取ると、握り込んだ手で軽くトンっと叶の胸を小突いた。
「オマエがストリーマーって仕事割かしちゃんとやってんの、結構好きなんだからよ」
 あまり言うつもりもなかったことを告げると獅子神は少しだけ照れ臭そうに笑ってみせる。
「も
~っ! 出がけに煽るだけ煽ってくれちゃってさ……。敬一君終わったら覚悟しとけよ」
 恨めしそうに見つめてくる恋人の視線を受けつつ、獅子神は玄関の鍵を開ける。
「へいへい、終わったらな」
 宣戦布告をわざと軽くあしらいながら、叶の言う終わったあとに密かに期待を膨らませ獅子神は車へと向かった。




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マシュマロ
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