倉木
2024-11-27 22:11:16
3842文字
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【執筆中】花を折る

RotLD テーマ:女装攻め
今のところ導入部分のみ
R指定入る予定ですが入るまでは鍵つけません、年内完成がんばってます


昨日、突発的なスコールで港の貨物が一部水没したらしい。
危険物ではなかったものの廃棄必至となり企業側の打撃は大きかったそうだ。
そんなネットニュースが置きっぱなしのタブレットから流れていた。
天候は変わりやすいもので、どんなに備えていても突発的なものには勝てない。
そう、嵐はいつだって突然だ。

「ドニー!!!!」

そしてドナテロにとっての災害元は、いつだってすぐ傍にいる。
招いた覚えもないのに煩い声と共にレオナルドはずかずかと部屋に入ってきた。
呼びかけにも一切応えずにいたのだが一切引くこともなく、レオナルドは遂に無理矢理視界に割り込んできた。
ようやく目が合ったのが嬉しかったのか、満面の笑み。

「聞こえてんだろ?ちょっと頼みたいことがあってさ」

「嫌だ、断る」

「フエソさんに店の手伝い頼まれだんだよ、やっぱオレの能力が認められたってやつ?」

押しのけたレオナルドの顔の代わりに差し込まれたのは、1冊の本だった。
開かれたページには男物のスーツらしきものが並んでいて、フォーマルなものから胸元が開ききったものまで幅広い。
表紙に戻ると表紙を飾る獣人の女性はタイトなスカートに尾を巻き付け妖艶に微笑んでいた。

「好きなの選べって言われるんだけどいっぱいありすぎてさ、どれがいいと思う?ドニーが選んでくれていいよ。オレなんだって似合うから!」

本の後ろには注文方法が詳細に書かれている、どうやら店員向けのカタログのようなものなのかもしれない。
今日のレオナルドは随分と上機嫌、そのせいで意味もなく頬を撫でたりしてくるから鬱陶しい。

「嫌だってば、なんで僕がそんなことしないといけないんだよ」

見慣れないものだからと一瞬興味を持って受け取ってしまったのが悪手だった。
改めてカタログを押し返そうとするがレオナルドはひらりと躱す、こういう身軽なところ本当に腹が立つ。

「そんなん、ドニーが選んでくれた服が着たいからに決まってるじゃん。じゃ、オレこのまま打合せ行くから!そのまま注文までよろしく!」

「あ、レオ!待てって!」

言うだけ言ってまた走り去ってしまった、この間ドナテロはチェアに座ったままだ。
嵐が去った後になって、最後に言われた言葉を反芻しドナテロは熱くなっているであろう頬を叩く。
ああいうことさらっと言うところ、ほんとずるい。
不本意ながらそんなこと言われたら無碍には出来ないと自分に言い聞かせ、ドナテロは再び持っていたカタログを開く。
最近レオナルドはひとりで出かけることが多い。
たまにミケランジェロも連れ立って行くことから最初は心配していたラファエロも、その場所が見知った大人の元であることを知ってから何も言わなくなった。
ドナテロ自身その人物とそこまで関わりがあるわけでもないし、レオナルドがどうなろうとドナテロには関係のないことだ。
ミケランジェロのことは心配じゃないとは言わないけど、いくらレオナルドとて弟を危険なところに連れていくことはないだろう。
黒スーツの並んだページをピンと弾く。
別にレオナルドがどう交友関係を築こうと知ったこっちゃない。
でも、胸にわだかまるもやもやとした気持ちはドナテロをただ不機嫌にさせていた。
なんだか、気に食わない。
ふとドナテロはカタログをばらばらと捲る。
そこに移った光景に口元を歪め、代わりに近くのタブレットを手に取った。
ドナテロが選んだ服ならなんでもいいって言ったのはレオナルドだ。
だからちょっとくらい悪戯したって文句を言われる筋合いは、ない筈だ。


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「ドニー―――!!」

数日前と違い再度の嵐の到来に、ドナテロはさして驚かなかった。
柔らかいクッションを枕にスマホの弄っている。
しかし飛び込んできた光景にドナテロはつい吹き出してしまい、結局身を起こすことになった。

「ぶ、はははっ!さっすがレオナルド、何着ても似合うんだな!」

高級そうなサテン生地は鮮やかなブルーベリー色に染まり、幾重にも重なることで精美なグラデーションを描いている。
何層にもなった布はたおやかな花びらが風に揺れているよう。
孤城に咲く一凛の花、そんなコンセプトの文言があったように思う。
僅かな風にも踊る裾には銀糸で繊細な刺繍が施されていた。
そんな繊細な見た目のドレスから飛び出した1本の足がダン、と床を叩く。

「お前のせいだろ!!」

目を吊り上げて怒っていてもその見た目じゃ意味がない。
女性向けのドレスであった筈だが、何の魔法なのか伸縮性の素材を使っているのからレオナルドの身体に見合ったサイズにあしらわれていた。
背後の甲羅の膨らみと、胸元の頼りなさで多少アンバランスに見えるのだけが残念なくらいだ。
というかなんで律儀に着てるんだ、別に着なければ良かっただけの話なのに。
大方ちょっと興味が沸いたのだろうけど、好奇心は猫も殺すって日本の諺、レオナルドが知ってるわけない。
怒っていようが迫力なんて何もなく、ドナテロはスマホを掲げてそのまま数枚写真を撮った。

「なんのこと?」

だってレオナルドが言ったのだ、ドナテロが選んだ服にするって。
カタログから入れた注文サイトはアクセスした時点で男物専用になっていたが、ちょっと注文システム弄るくらい訳ないこと。
ちなみにミケランジェロの分は彼に似合いそうなリボンタイのスーツにしてある、あの子を巻き込む訳にはいかないからね。

「いいんじゃない?せっかく良いオペラショーなんだから、綺麗なドレスの方が場も映えて!」

そう言って笑い転げる、ああ愉快極まりない。
スマホに映る肩を怒らせているレオナルドも、目の前で目を吊り上げているレオナルドもダブルでドナテロをご機嫌にさせていた。
正直ちょっと、と言ったけど大分気に食わなかったのだ。
兄弟以外と仲良くしてるのが気に食わない、そんな小さな嫉妬の意趣返しにはこれくらいしたっていいと思う。
そう気分が高揚していたから、レオナルドの様子の変化に気付けなかった。

「へぇ、ドニーはこういうのが好きだったんだ」

レオナルドは静かな口調でそう言い、目元の青を解いた。
ドナテロのものとは違う長い青い布地はレオナルドの指から腕に絡みつく。
そうして初めて雰囲気の変わったレオナルドに気付いたドナテロだが、その間があればレオナルドには十分過ぎた。
いつの間にかレオナルドが目の前に居て、地面に座り込んだままのドナテロは目の前を掠めた紫の波打ちに思わず身を引く。
少しだけ後ろに傾いだ身体はそのまま肩を押され地面に転がった。

「いた、何するんだ!」

て、怒ろうとした声は止まった。
ドナテロを跨ぐようにして見下ろすレオナルドの、左足に入ったスリットは思ったよりも鋭利で彼の細長い太腿を覗かせる。
繊細な布の広がりは止まるところを知らず、揺蕩う波にしては妖艶に映った。

「ちなみにこの色って何か意味がある?」

薄紫の布をひとつまみ。

「っない!目についたもの適当に選んだだけ」

「へぇ、まあいいや」

レオナルドは垂れ流されていた青の布を手繰り寄せる。
長いそれは指先を滑り、衣擦れの音を立てて首を覆った。
1周、2周。
細い首を彩ったそれは横で器用に結われる。
若干不格好だが愛らしいリボンの切れ端は、レオナルドが首をくっと曲げるとぱさりと浮いた。
紫の上に浮かび上がる鮮やかな空の色。
その光景を凝視してしまうと、突如の目の前に何かが突き出された。
思わず目を瞑るとその後衝撃はない。
おそるおそる目を開いたドナテロの顔面にあったのは2枚のレターだった。

「今日のディナータイム、マイキーも手伝うことになってるから招待状。オレがまさか兄弟の分も用意してないと思った?」

レターの隙間から除く目は弧を描いていた。
ドナテロの上にひらひらと落とし、踵を返したレオナルドには優雅にブルーベリー色が舞う。
ひらひらと落ちた布の先が花嫁のベールのごとく地面に引きずられていることに気付き、恐らくあのドレスは女性がヒールを履いて完成するのだと知る。

「ドレスコードあるからちゃんとオシャレして来いってラフにも言っておいて。あ、あとさ」

入口の柱に手をついて、レオナルドは一度立ち止まる。
うっそりと笑う眼に怒りはない、ただ愉悦だけが浮かんでいた。

「今夜覚悟しとけよ」

姿が見えなくなる最後まで尾を引いていたのは刺繍の結われたドレスの裾と、青い布の先。
ドナテロは中途半端に手をついたままの体勢でしばらく動けずにいた。
しかしようやく我に返り胸元に落ちていたレターを拾う。
裏側には律儀にドナテロと、ラファエロの名前が書かれている。
断るという選択肢は恐らくないだろう。
深く溜息を吐き、ドナテロは身を起こした。

………は、ぇ」

立ち上がろうとしたところ膝を立てたが、そのまま蹲る羽目になった。
僅かに熱を持つ股間の膨らみに涙が出てきたのは羞恥からか、情けなさからか。
流石にレオナルドにはバレてないと思う、バレてたらあんなにあっさり帰る筈がない。
あんな恰好したレオナルドにちょっとでも劣情を感じてしまった自分が情けなさ過ぎて涙が溢れた。
ちょっとからかおうとしただけなのに、散々な目にあってるのはドナテロの方だ。