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溶けかけ。
2024-11-25 23:47:48
1421文字
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ほぼ日刊
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永い夜の過ごし方
悪夢を見て目が覚めたヌヴィレットと悪夢を追い払うフリーナのお話。
夜の過ごし方
夢を見た。
彼女が神座で涙を流す夢だ。
龍である私と遥か遠くにある神座で難を逃れた彼女以外の全てが胎海の水に呑み込まれてしまった。胸を占めるのは、絶望、そして──。
目を覚ました。
胸の上に何かが乗っているかのような重さに喘ぐ。体はぴくりとも動かず、まるで石にでもなったかのようだった。やがて指先から少しずつ緩解していき、私は大きく息を吸い込んだ。急に入り込んできた空気に肺が驚き、咳込む。
体を自由に動かせるようになったのを確認し、ゆっくりと起き上がり、愛用のグラスに水を注いで一息に飲み干した。
聞き覚えのある音に窓の外へと視線を向ければ、夜雨が降っていた。
────ああ、彼女に会いたい。
ヌヴィレットは自身の浅慮に頭を殴りたい衝動に駆られた。今は真夜中。こんな時間に訪問するなんて、常識外れも甚だしい。ノックをしようと上げていた手を下ろし、踵を返した彼の背から、寝起き特有の柔らかな声がかけられた。
「こんな夜更けにどうしたんだい?」
フリーナは寝ぼけ眼を擦りながら深夜の来客を見つめる。着の身着のまま、と言って良い出で立ちの彼はずぶ濡れで、扉の前に立ち尽くしていた。
「
…………
」
沈黙を貫く彼に溜息をつく。何があったのか知らないが、アパルトマンの廊下に立ち尽くす、ずぶ濡れの最高審判官なんて、噂話の良い的だ。
「はぁ
……
仕方ないね。ほら、入りなよ」
フリーナはヌヴィレットの手を引いて、部屋へと導く。一脚しかない椅子に彼を座らせると頭からタオルを被せた。
「まったく
……
こんなに濡らして
……
風邪をひいても知らないからな」
言葉とは裏腹にポンポンと丁寧に水気を取っていくフリーナ。彼女は無言のまま、彼の髪を乾かし終わると、ふわぁ、と欠伸をした。
「もうちょっと寝かせてもらうよ
……
キミはどうするんだい
……
?」
瞼を半分下ろした瞳がヌヴィレットの方を向いた。
「私は
……
」
「ふわぁ
……
」
ヌヴィレットの答えも待たずにフリーナはベッドの上で横になる。そして、毛布を少しだけ持ち上げると彼においでおいで、と手招きをした。
「君は、もう少し警戒心を持ちたまえ。もし、私が君に悪意を抱くような
……
」
「もう
……
うるさいなぁ
……
そもそもこんな時間に来たのはそっちだろう
……
? だったら、共寝をしたって変わらないよ」
「それは
……
そうだが
……
」
「ほら、キミだってそう思ってるんだろ。ほら、おいでよ」
いつになく強引なフリーナの態度にヌヴィレットは渋々、ベッドに横になる。
「そうそう。素直でよろしい!」
ヌヴィレットの体に柔らかな毛布が落ちてきて、フリーナが彼の背に腕を回す。ぽん、ぽん、と一定のリズムでヌヴィレットの背を優しく叩きながら、口ずさむのは、フォンテーヌであれば子どもでも知る子守唄だ。
「私の扱いは子どもかね?」
フリーナが背を叩いていた手を止める。その手が今度はヌヴィレットの後ろ頭を撫でた。
「似たようなものだよ。怖い夢を見たんだろう?」
何故それを、瞠目するヌヴィレットにフリーナは聖母の微笑みで返した。
「キミを見てれば分かるよ
……
大丈夫。怖い夢は僕が追い払ってあげるから
……
だから、ゆっくりお休み」
フリーナがヌヴィレットの頭を抱きしめる。彼女の香りに包まれて、徐々に瞼が重くなる。薄れゆく意識のなかで「おやすみ」という優しい声だけがはっきりと聞こえた。
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