紫陽花の植え替え


「すみません。勝手なお願いですが、紫陽花の植え替えをしていただけませんか」
隣りに住む男はそう言った。紫陽花とは、隣家との境に植えているもののことである。それを植え替えろと?
「妻がね、前の色の方が好きだったと言うんですよ」
薄らとした紅色が、梅雨の鬱陶しさを和らげてくれたのだという。
「でも、変わってしまったでしょう?」
あなたが、紫陽花の下に埋めたから。
「ですので、どうか別のところに埋め直していただきたい」
そう頭を上げる男を、私の妻が紫陽花の下からじっと見つめている。