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chiri_onigiri
2024-11-24 17:08:27
1879文字
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玑灵
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小彤儿に梨を食べさせたい
「
……
霊淵!霊淵!起きて!りーんーゆーえーんー!」
盛霊淵はどこか懐かしい甲高い声に耳元で叫ばれて眉を顰める。どうせまた宣璣がなにか騒いでいるのだろうと考え、腕を伸ばし布団の中に引き込む。こうして腕に抱いてしまえば大人しくなると思ったのだが
……
「霊淵!起きてってば!」
声の主は大人しくなるどころか腕の中で暴れ出した。盛霊淵は渋々目を開き、視界に映る光景にゆっくり瞬く。
「霊淵!」
ようやく起きてくれたと目の前でぱっと破顔したのは彤だった。
クリクリとした丸い瞳は、盛霊淵でいっぱいになっていて、ふわふわの髪の毛はシーツに擦れ僅かに乱れている。赤い翼は宣璣に比べると小ぶりで、羽ばたく度盛霊淵の鼻先を陽だまりと幼子特有の乳の匂いが擽った。
彤は昨晩宣璣が来ていたはずのパジャマを着ているらしく、まだ発展途上の薄い肩と胸が覗いていて、盛霊淵は思わず息を飲んだ。
「ね、ね、霊淵!見て!俺、身体がある!霊淵に触れちゃう!」
彤は頬を真っ赤に染めて、興奮のまま盛霊淵の顔をぺたぺたと触る。その触れ方は、宣璣が愛情を持って触れるときとは違い、ただただ喜びだけが溢れていた。
「
……
小彤儿?」
「うん!」
盛霊淵のぎこちない問いに、子供は元気よく返事を返す。
「小、小彤儿
……
彤!」
震える腕で彤に触れ、確かな体温に感極まった盛霊淵はその小さな身体を折る勢いで押し倒した。骨が軋むほど抱き締めても、彤は楽しそうに笑うだけだった。
「わはは、霊淵苦しい!霊淵ってばこんなに力強かったんだ。それにすごくあったかい」
「彤
……
彤
……
!」
「というか霊淵、なんかでかくない?いつの間に身長伸びたんだ?
……
はっ!もしかして俺に内緒で丹離に身長伸ばす術でも習ったのか?ずるい!」
あまりに頓珍漢な反応に盛霊淵は溢れかけた涙が引っ込むのを感じた。僅かに身を起こして顔を覗き込もうとしたとき、二人の間で「ぐうぅぅ」と間の抜けた音が鳴った。
「
…………
」
「お腹空いた」
彤が小さく呟き、腹を撫でる。そして盛霊淵を見上げると「哥哥、なんか食べ物持ってない?」と尋ねた。
盛霊淵はゆっくり身を起こすと、彤の頭をわしわしと撫で回し、ふわふわの旋毛に鼻先を押し当てて肺いっぱいに息を吸った。そうして肺が満たされると息を止め、赤い紋章が浮かび上がる彤の額に唇を押し当ててから、こう言った。
「美味しい梨を用意してあげる。いい子で大人しく
……
じっとしていて。いい子で、待っていられる?」
既に周囲の見慣れないあれこれに関心を引かれている彤に繰り返し言い聞かせる。カーテンを閉めていてよかった。外の景色が見えていたら、きっと彤はその翼で飛び立っていただろう。
「わかった」
彤は盛霊淵の圧を感じて真面目な顔で頷く。それを見た盛霊淵は、近くの果物店に瞬間移動した。既に梨の旬は過ぎていて、盛霊淵の顔色がさっと青褪める。肉体を得た小彤儿に至高の梨を食べさせてやりたいのに!
せめてもと大きくて香しいものを選んで購入すると、再び盛霊淵は瞬間移動で家へと戻った。彤は盛霊淵の言いつけ通りじっとベッドの上で大人しくしていた。消えた盛霊淵が残した黒い霧を不思議そうに見つめていたが、霧が消える前に再び盛霊淵が現れたものだから、ぽかんと口を開けて目を瞬かせる。
「ただいま」
盛霊淵は彤の前に座ると、買ってきたばかりの梨を見せる。彤は初めて自分の鼻で梨の甘い香りを嗅いで、胸をときめかせた。
「これ、今から干すの?」
現代よりもずっと貧しい時代に生きていた彤は、果物はすべて干して保存食にしないといけないと思っていた。そのため、盛霊淵が持ってきた瑞々しい果物もこれから干すのだろうと考えた。
「いや。そのまま食べる」
しかし盛霊淵がそう言うものだから、びっくりしてしまう。そんな贅沢な食べ方、本当に許されるのだろうか?
「これは彤のものだ。誰にも盗られたりしない。一番甘いものを買ってきたから。全部食べていい」
「い、いいの?本当に?」
「うん」
盛霊淵は食べやすいように黒い霧で梨を半分に切ると、溢れる果汁を手首まで滴らせて彤に差し出した。
「食べなさい」
口元に差し出された梨は涎が出るほど美味しそうで、彤はごくりと唾を飲む。すぐに大きな口を開けるが、はっと固まり、もう半分を盛霊淵に押し返した。
「哥哥も食べよう。一緒に食べた方が美味しいよ」
彤は盛霊淵の肘まで伝う果汁を舌で舐め取り、大きな掌にのった梨に齧りついた。新鮮な果汁が彤のまろい頬に飛び散った。
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