ぽふむん
2024-11-23 21:50:00
2904文字
Public ワンドロ
 

同行二人

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「井戸」「タイムマシン?」
タイムマシンというか、ご都合血鬼術です。
かつて童磨の幼少期に飛ばされていたしのぶちゃんです。

聞いていた曲の歌詞の一部がイメージもとです

(ああ、よく喋る首だこと……)

しのぶはうんざりしながらも、大切そうに、両手で男の生首を抱える。
後方には背の高い首無し騎士……では無く、生首の元の持ち主が付き従う。
先ほど生首を渡したら、首に乗っけた。
これなら、もう一人で自由にどこへなりと行けるだろう。
地獄へ落ちろと思ったのも束の間。
一度胴体と泣き別れになった頭は、首を支点にくるくる一回転、二回転。
ついにはコロンと転がり落ちた。

だから拾い上げ

こうなった

「しのぶちゃんは優しいなぁ♡」

生首はウキウキと頬を桃色に染めたまま言う。
「うるさい!気色悪いので黙りなさい」
頭を撫でながら答えれば
「えー、本当に気色悪いのなら捨てていけばいいのに」
男の生首はキャラキャラ無邪気に笑い、目を細めた。
幼い頃から、人に頭を撫でられたことがないらしい。
気持ちいいと喜んでいる。

うっ

しのぶは思わず押し黙った。
その生首、地面に叩きつけてやろうかと思った。
でもそれはしない。

「どうせ、その首をくっつけて追いかけてくるでしょう」

憎まれ口で返してやれば

「あ、バレたぁ……あはは。さっき見た通り、この首外れやすくなっちゃったから、支えながらにはなるけど、どこまででも追いかけるぜ♡」
しのぶはゲンナリした。
なんと言う不気味な光景か。想像するだけでも気持ち悪い。
「恋とか……勘違いでしょう。私はあなたを殺し……
「いーや、勘違いじゃない。やっと見つけた。本当にいたんだ。あの時見た天使は……

生首はうっとりと陶酔した。


認めたくない。
しのぶは気づいていた。
この、かつて上弦の弐と呼ばれた生首は、あの時の子だと。
あの時の子が一人で迷い闇に堕ちた姿だと

🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷

あれは二年前の事だった。
鬼殺任務中、しのぶは鬼の異能の術にかかり、魂だけ不思議な場所に飛ばされた。

(ここはどこでしょう
山中の大きな……御屋敷?いや、寺でしょうか)

魂魄だと言うのに。隊服だと言うのに やたら寒いところだ。
雪が降っている。

空気が乾燥しているのだろう。
喉が渇いた。水をいただこうと、周囲を見回すと、井戸らしきものがあった。
だが、それは封印され使用できないようにされている。

(なぜ?明らかに人の気配がするのに)
不審に思ったその時

「飛び込んで自害しようとしても無駄だよ。ここは使えない」

稚い声が背後からかけられ、恐る恐る振り返ると、五歳くらいだろうか?
少年が身に纏うものとしては、かなり大きい漆黒の道士服に、これまたかなり大きな閻魔帽のような帽子をかぶった異国人のような少年が立っていた。

「可哀想に、自害を考えるほど追い詰めるなんて、父上……母上かな。酷なことをなさる……
少年は、しのぶがこの井戸に身を投げ自害をしようとしていると思ったようだから、そうでは無いと弁解した。

この少年によると、この井戸は、あまりにも身を投げる者が多いので、つい最近飛び込めないよう封印したそうだ。
「なんだ、水が飲みたかったんだね。じゃぁこっちだよ。清水が湧き出る場所があるんだ」
案内すると言って、少年はしのぶの手を引いた。
小さくて冷たい手だった。
子供の手なんてあたたかいものだと思っていたのに。

「お姉さん、見かけない顔だね。通いの子? 最近入った子かな」

よく喋る子だ。

色んなことを話し、しのぶのことも聞いてくれる。
身の上を聞かれたから、鬼……という主語を強盗や辻切りに置き換え、両親や姉を殺され天涯孤独となった者だと適当にうちあけたら、酷く同情してくれた。

その同情は、何だか妙に嘘くさいものな気がしたが、幼い子どものこと。
実際には、まだよくわかっていないのだろうと結論づけた。
この少年、そんな目にあったことはないだろうから。

何だかしのぶはこの少年に異様に懐かれてしまったようだ。
しのぶの何かに共感、共鳴したのだろうか。

どうも、この少年は親から、妙な役目を押し付けられているようだ。
「あのね、僕ね、本当は神様の声なんか聞こえないんだ。お空にね、光の玉のようなものがきらきらしているのを見て、綺麗だなって思っていただけなのに」
すごく重大なことを、しのぶだけに打ち明けるように、少年は声を潜めた。

両親が何を言っているかよく分からないけど、適当にうなづいた。
それが運の尽き。あれよあれよと変な服を着せられていたそうだ。
三歳の頃らしい。

似ている

一緒に鬼殺隊に入り鬼を斬ろうと姉に言われた時と。
あの時しのぶは十になるかならないか。
実はよくわかって居なかった。

親が目の前で理不尽に死んだ恐怖だけがあった。
何が起きたのか分からない。理解したくない。悪夢のよう。
毎週行われる法要も夢現。
それでも、姉の言うことに
ぐちゃぐちゃの心のまま、意味もよく考えずにうなづいて
あとに引けなくなってしまった自分自身に。

この少年はどこか似ている。


ミコ様〜!ミコ様

遠くから女たちが誰かを呼ぶ声がした。

「ああ、厠に立っただけなのに、もう僕を探しにきたよ……ゆっくり厠くらい行かせてよ……ふぅ……ここにいますよぉ」
少年が応えた


その応えと同時に、数人の女たちがどやどやとやってきた。
やれ信者が待っている
やれ母上様がお怒りだ
口々に捲したてる。

こんな子供相手に何を言っているのか、この女達は?

しのぶは腹立たしく思ったが、急に視界が揺らめいた。

「僕は厠に行って、このお姉さんに道案内してあげていただけですよ」

少年は苦笑して答えたが……
「え?誰もいませんが?ああ、神の声をお聞きになって居られたのですね」
女達はありがたそうに少年を拝みだし、少年は困惑した。

「え?お姉さんすぐそこに……あれ?」

振り返った少年の目の前に……しのぶはいなかった。


🦋🦋🦋🦋🦋🦋🦋🦋🦋🦋

「やっと出会えたんだあの時の娘に。本当にいたんだ……幼い頃見た夢か幻覚だと思っていたよ」

元上弦の弐はうっとりとしている。
「本当に存在したんだ……俺の……運命の天使やっと見つけた」
上弦の弐は夢心地だ。

しのぶも夢だったと思いたい。
血鬼術で鬼の人間時代に時間旅行しただなんて。
あの可愛い子狸のような少年が、鬼に堕ちただなんて。
こんな生首に育ったなんてことは、夢であって欲しかった。

「私はしりません」
とぼけてそっぽを向けば

「ひどーい、俺の無垢な幼い心を弄んでおいて!大人になったらポイとか………しのぶちゃんの[稚児殺しショタコン

「絶妙に嫌な言い方すんな!」

しのぶは生首を地面に叩きつけたが……
黄泉路はトランポリンのように柔らかかった。

バウンドして

口付けしてしまう羽目となった
「きゃー♡俺もうお婿に行けない体にされちゃった。しのぶちゃんのえっちぃ♡」

「ば……これは事故です。言い方ぁ!」

稚児殺しショタコン
「黙れ」

この痴話喧嘩を地獄の獄卒が呆れてみていた。