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果汁100%
2024-11-23 03:20:50
1982文字
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いたずら
2024/10/23あいあまワンライ『ハロウィン』『愛され』『甘味』
天ふみ
「僕が満足するイタズラを仕掛けるまでお菓子はお預けです♡」
やられた。ふみやは、恋人の言葉を思い返して顔を顰める。この難題を突きつけられて、かれこれ二時間は経つだろうか。昼食とデザートを挟んで、糖の行き渡った頭を働かせてみても、これといった答えが見つからない。
それは、毎年のことだった。全員参加の仮装大会とは別に行っている、ハロウィンのお楽しみ。トリック・オア・トリート、なんて定型文を住人全員にぶつけて、甘いものをせしめるイベントだ。住人の反応は様々で、待ってましたとばかりに手作りのアイシングクッキーを山ほど差し出されたり、どんなイタズラをされるか分かったものじゃないと文句を言いながら市販の焼き菓子を渡されたり。はたまた、ハロウィンに反発して塩辛い煎餅を用意してやった、などと言われることもあった。なんだかんだと言いながら、六人の同居人が揃いも揃ってふみやのためにお菓子を用意している日だ。
今年も当然、甘いものをもらいにいこうと楽しみにしていた。そして今日は、天彦と恋人同士になってから初めてのハロウィンでもあったのだ。付き合いはじめてから殊更に甘い天彦のこと、さぞ豪華なスイーツを用意してくれているのだろう、と。顔には出さずとも、ふみやは先月のお月見が終わった頃からずっとわくわく、そわそわと楽しみにしつづけていたのである。
それがまさか、よりによってこんな日に意地悪をされるだなんて。早く甘いものにありつきたい、と他五人にもらった甘味を口に運びながら思考を巡らせる。手元にお菓子が揃っていてもまだまだ足りない。あればあるだけ欲しい。
夜、積極的に何かを仕掛けてみせれば変態な恋人の悦ぶセクシーなイタズラにはなるだろう。しかし長い時間スイーツのことを考えているふみやは焦れており、もう今すぐにだって欲しい気持ちになっていた。
そのうちに、イタズラをするよう仕向けたのは天彦なのだから何をしても怒られる筋合いはないのでは、と思いつく。一発で成功させようとするのはやめて、浮かんだ順になんでもしてみせればいい。下手なイタズラも数を撃てば当たるものだ。
ひとつめ。
「うーん、ノーセクシーですね」
ふたつめ。
「犯罪的っていうか犯罪です」
みっつめ。
「それどうやってるんですか
……
!?」
エトセトラ、エトセトラ。
「アッ、ちょっとふみやさん!? あ゙〜〜っ待って! 待って、待っアァ゙ーーーーッ!!」
「あ、やば。
……
ごめん」
どうにもうまくいかない。ジャック・オ・ランタンに見立てた冷蔵庫のかぼちゃを股間で受け止めた天彦は今、二階の廊下に蹲っている。ふみやは位置を間違えたな、と少しばかり反省するものの、同時に苛立ってもいた。こんなにイタズラをしてもスイーツをくれないなんて。実はこいつ準備するのを忘れたんじゃないか、と半開きの目でじっとりと天彦を見下ろす。
既に痛すぎる仕返しを食らっているように見えるが、しかしこれは不可抗力。わざとではないので、もうひとつくらい困らせてもバチは当たらないだろう、とふみやは油性ペンを手に天彦のもとへ屈む。少しは回復したようで身体の強張りはいくらか落ち着いているが、まだ立つことはできないらしい。
天彦、と名を呼んで、涙目の恋人に顔を上げさせる。なんとも情けない表情で、不機嫌になりつつあったふみやの溜飲が僅かに下がる。とはいえ、既にペンの蓋も開け、顔も見えて準備は万端。せっかくだから実行してしまえと、勢いに任せて自分よりも歳を感じる肌の上に黒い線を走らせた。そうして、不思議そうにしている顔をスマートフォンのカメラに収めて見せてやる。
伊藤ふみや。
まろい頬に書いたために歪んでいるが、直筆サイン入りほっぺが完成していた。
「
……
っ、ぇ゙
…………
ッエクスタシーーーー
……
」
あまりのセクシーに感じ入っているのか、もしくはまだ股間が痛いのか。溜めに溜めた賛美が、ふたりの間で静かに響いた。勝利を確信したふみやは小さくガッツポーズをしたのち、よろよろと立ち上がった天彦にとっておきのスイーツをねだる。
ふらつきながら部屋へ菓子を取りに向かう恋人の姿に、やっぱり少しやり過ぎたな、とふみやはぼんやり自覚した。こってり絞られるのを承知でテラに頬の化粧を頼んでおいた方がいいか、と当面の解決策を捏ね回していた頭は、しかし差し出された小箱によって真っ白に染まる。
「そっ、それ。それは、おまえ、まさか」
「ええ。手に入りましたよ、ふみやさん」
完全限定生産、セレブ御用達、一般人では買えない。そんな噂がまことしやかに囁かれている、幻のチョコレート。動揺して震えるふみやを見つめる天彦は、満足そうに頷いた。
「
…………
結婚しよう天彦」
「別のタイミングで聴きたいですねそれ」
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