頻子
2024-11-22 19:06:59
2566文字
Public Elin
 
945506

正しい借金の返し方(Elin)

俺ロイ夢だよ
仲良し範囲だよ

デフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルトデフォルト 今日も今日とて忙しい。しかし充実した日々だった。トマトをもぎながら、ロイテルはふうと汗を拭いた。
 耕せば耕すほど、実りが返ってくる仕事だ。仕事というか趣味なのだが。本分は、開拓監査官のほうにある。
 拠点は、ヴェルニースへと移された。ずいぶんと発展し、活気づいていた。藁ぶきのベッドがまともになったのが一番うれしい。体がコチコチにならずに済む。
「しかし、デフォルトはどこをほっつき歩いてるのやら、だ」
デフォルト様なら、この前、パーティー会場でお見掛けしましたよ」
「パーティー。……ああ、パーティか」
 ロイテルはすっかり遠くなった日々を思い、遠い目をした。輝かしい栄光の日々は遠い。すべてはあの空色のチューリップのせいだ。不思議と、今日の空はあのチューリップに似ている。ふぅ……とため息をついて黄昏ようと思ったが、コルゴンがぺろっとトマトを食べた。
「あ、こらっ! 畑泥棒め!」
 デフォルトはすっかり冒険者らしくなった。
 拠点の経営は軌道に乗り、生産ラインらしきものもできた。そしてついには、納税や給料の振り込みは自動で行われるようになったのだ。
 つまり、なかなか帰ってこない。ここ数か月は風の便りに聞いているだけだった。
……ねぇ」
「クルイツゥア、どうかしたのか?」
 ロイテルはわざとに目線を合わせようとして、いやな顔をされていた。
「やっぱりなんでもない」
「ああ。クルイツゥアが、次はいつデフォルトが帰ってくるのかと気にしていてね」
「別に、してない」
 これはまあ素直になれないお子様である。ここは一つ自分が言ってやらないとなるまいとロイテルは立ち上がった。
「ファリスさん、次あいつを見かけたら、たまには顔を見せるように言っておいてくれ」
「あ、その必要はないと思いますよ」
「なんで?」
「そろそろ、帰るって言ってましたから」
 ロイテルは慌てて身を起こし、水鏡に己の額を映し、身支度でも整えようかと思ったが、「まあ、今更か」と努力をやめた。客人というよりは身内に近い。それでも前髪がちょっと気になった。土で汚れていないか、くらいは……

 ただいまー、と、あっさりと帰ってきたデフォルトはすっかりネフィア探索も板についたらしかった。鞄から出した、宝箱やら、家具やら、わけのわからないコーナーカウンターなどを野ざらしにどかどか置いた。
「おい、土が……『これ、よかったら使ってね』って? 簡単に言うが、たしかにテーブルがあるといいな、と思ってはいたが、いや、パルルがいい、パルル製にしようと思ってたんだ」
「言ってましたっけ」
「思ってたんだ。いいか、いくら土地の所有者といえども、数か月も帰ってこないやつに内装に口を出す権利はないぞ。もっとちゃんと顔を……
 むっとしたデフォルトは鞄から素材槌を出した。
「白銀製にするなーーーーっ! こら、コルゴン、あーっ!! 乗るな!!」
「話さなくていいのかい?」
「別に。元気ならいい」
 クルイツゥアがぷいとその場を去っていった。

 ぜいぜい言いながらも家具をようやく移動させ、戻ってくると、「置いといたので、適当にとっておいてね」と書いてある箱があった。
(おっこれは詫びの品か、あわよくばワイン……とまではいわないが、酒。酒くらいは期待できるか?)
 箱を開けると、雑多な品々とともに、ぎっしりとオレンが詰まっていた。
「馬鹿、おい、馬鹿!」
「太っ腹ですね」と言ってまったく気にしていない様子のファリスやケトルはアテにはならない。荷物の整理を終え、すぐに旅立とうとしている様子のデフォルトを、ロイテルは慌てて呼び止めた。
デフォルトは気が付いちゃったか、とさも誇らしげな顔をしていた。
 要求されるのも面倒だろうし、とっとと払えたほうがいいと思った。そこから、適当に何万オレンか抜いて、借金も返したらいいよ、とのたまった。
「よくない!」
 ロイテルが大きな声を上げると、コルゴンが外套のすそを噛み、うまいことデフォルトを引き留めた。
「よくない、まったくよくはないぞ、デフォルト。こんなどんぶり勘定、開拓監査官として見過ごすわけにはいかない! っていうか数万オレンだかを、こんな……箱にぽいっといれるんじゃない! 持ち逃げしたらどうするんだ?」
 どうするんだろう? とデフォルトはきょとんとしていて、全然わかっていない顔をしている。
 そうだった。もとからだった。助けられたとはいえ、アッシュとフィアのいうがままに開拓を始めようとして。人に言われて面倒ごとを引き受けてしまうやつだった。
「そういうやり方はするもんじゃない。私がすみません、とちょっと申し訳なさそうに請求書を渡し、お前が受け取り、支払う、これが借金の返済の流れであって、こんなやりかたは認められない!」
 ロイテルはぜーぜーと肩で息をしている。どうして借金をしている側が偉そうなのか。どうして返している側が怒られているのか。しかしよくはわからないままに、気迫に押されたデフォルトは、ロイテルの借金の請求書を受け取った。
「それでいい。それでいいよなコルゴン」
 コルゴンはもきゅっとした顔でロイテルを見上げたが、言葉が通じるわけもなし。そのまま請求書をぱくっとし、食べてしまいそうになったため、二人掛かりで止める羽目になった。

「借金の返済、おつかれ!」
 ぽんと肩をたたいたロイテルはそれでよいといわんばかりにうんうんと頷き、謝辞を述べ、いつものようにデフォルトに肩たたき権を渡した。これでいいんだよな、ファリスさん、と、ちらっとファリスのほうを見る。ファリスが頷き、茶目っ気たっぷりにオッケーを示すと、ほっとした顔になった。デフォルトも、ロイテルも、この券が、よくわかってない。
「なんだかんだと理屈を並べていましたけれど、ロイテル様も、『頑張ったじゃないか、お疲れ』と言いたいのかもしれませんね」
 しみじみと言ったファリスを、デフォルトは見つめた。
「今のすごく似てた。もっかいやって」
「もうっ!!」