haru_haru0704
2024-11-22 18:47:08
1327文字
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おかえりのキス

カカロ×忌炎 全年齢

リナシータで仮面舞踏会に潜入する依頼をこなしてきたカカロの話

頭が軽い。
カカロは率直にそう思った。
ちなみにそれは、比喩を用いた罵倒の言葉ではない。
純粋に、頭が軽いのだ。カカロ自身の頭が。
その理由は単純明快。
伸ばしっぱなしになっていた髪を、ばさりと切ったからだ。
膝のあたりまであった後ろの髪は、ほんの一握りの部分を残してショートに。残された部分は肩甲骨の高さまでカットし、髪紐で軽く結わう。
カカロの知る人物で例えるならば、まさにモルトフィーと同じような髪型だと言えるだろう。
なぜそんな髪形にしたかと問われれば・・・それは、仮面舞踏会に潜入するためだ。
仮面舞踏会は貴族のみが参加を許される会であり、それに出席するからには貴族のフリをするのが必然である。
カカロには、貴族といえば大体この髪型というイメージがあった。
そして実際のところ、そのイメージは間違ってはいない。
ともあれ、自らの髪型にさしたるこだわりを持っていなかったカカロは、潜入任務のために惜しげもなく髪を切ったのである。

***
今回も無事に任務を果たし、カカロは長い旅程の果てに今州へと到着した。
理由は当然、忌炎に会うためである。
破陣基地に入ると、そこらを歩いていた夜帰兵が「お帰りなさい!将軍なら執務室にいると思いますよ!」と出迎えてくれた。
お帰りなさいと言われたことに感慨を覚えつつ、忌炎の部屋へと向かう。
リナシータにのみ生えている幾つかの植物の種を採ってきたのだが、彼の役に立つようなものはあるだろうか。
執務室の扉をノックし、「どうぞ」という声を待ってから入室する。
「忌炎、久しぶりだな」
「ああ、・・・髪を切ったのか」
指摘され、そういえばと思い出す。
さすが、よく気が付く男だ。
正面から見る分にはあまり変わっていないと思うのだが。
「任務で、切る必要があった」
「そうか。仕方のないことだが、少し残念だな」
忌炎は執務机に頬杖をついた。彼にしては珍しい姿勢である。
カカロはそんな彼に歩み寄り、机の上に荷物を置く。
「残念・・・とは」
「残念というか、惜しいというか・・・好いた男の体積が減ったら、惜しいと思うのが普通じゃないか?」
「体積・・・?体積はまあ、たしかに減ったが」
忌炎が何を言いたいのか、よく分からない。残念がっていることだけは分かるが。
首を傾げながら、荷物を紐解く。そこにはリナシータの植物の種、工芸品、菓子などがそれぞれ詰められた袋が入っていた。
「今回はせっかく遠くまで行ったからな。土産だ」
「ありがとう。こんなに色々と」
それぞれの袋を取り出し、机に並べる。
そして全ての土産を出し終わった後、最後にぽつんと取り残された『それ』に忌炎は目敏く気付いた。
「その仮面は?」
「任務で使ったものだ。これは土産ではないが・・・欲しいならやるぞ」
「付けたところを見せてくれ」
「?・・・構わないが」
忌炎の要望に応え、仮面をつける。
「ああ、いいな。これが一番の土産だ」
・・・よく分からないが、忌炎が喜んでいるから良しとしよう。何かに使えるかと思って、捨てずに持って帰って正解だった。
忌炎にぐいと引っ張られ、そのまま口づける。
久しぶりに味わう彼の唇は、少し甘いような気がした。