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2024-11-22 13:47:28
842文字
Public 💰短い金カ夢
 

初恋の日

kit/kkt/krus/nhi

いつも優しい声で話しかけてくれるその人が訪れる日を指折り待った。使用人に向こうへ行きましょうと言われても嫌じゃと駄々をこねて腰まわりに取り付く不躾を、その人は諌めることもなく「音之進どのも一緒に話しもんそ」と手を取り、私の好きなその目を細めて微笑んだ。小さくて頑なな私の想いはとうに伝わっていて、それでも叶うことはないと知っていたけれど、姉と呼ぶ日を楽しみにしていたのも決して嘘ではなかった。
(鯉登音之進)


あなたって、お偉い軍人さんにしてはよく喋るひと。それから、悪いひと。あなたの引き締まった身体を私が知らないはずもないのに、長い療養で鈍っちまったかもなんて言葉を熱い息と一緒に溢したりして。
いつまでここにと訊いたのは、半分仕事で半分は情。
「お呼びがかかれば今すぐにでも」
明日のない身に本能が疼くのなら、何度目かの初恋をあなたと始めましょう。
(菊田杢太郎)


ユクの角を両手で持って元気に駆け回る男の子。マタンプシに挿してあげたら気に入って、毎日つけてと言いに来る。
危ないから小さいのにしたら、と言ったら大きい方がカッコいいんだって。
「でも隣にいたらぶつかっちゃう」
「じゃあ片方だけにする。サポおねえちゃんはいつもこっちにいて」
仕方ないなって顔で右の角を取れと差し出す頭を撫でれば、くすぐったそうに肩をすくめる。かわいいかわいい、わたしの家族。夫によく似た男の子。
(キラウシ)


あの兵隊さんに食べてほしくて、今日は煮炊きを買って出た。こんなこと初めてじゃないかと笑う女将さんにだけはこっそり打ち明けた恋心。
兵隊さんは物静かに、だけどあっという間に盆の上を空っぽにして、ごちそうさまと手を合わせる。「ここの飯はうまい。飯粒一つにも真心がある。きっと料理人の魂が勃、っぐ」隣の兵隊さんが慌てて口を塞ぐ。「お前は至って常識人なのにどうしてたまに馬鹿なんだ」
兵隊さんは小さくぬははと変わった笑い方をして、一息にお茶を飲み干した。
(二瓶鉄造の息子)