扉を乱暴に開けられた。「良い加減にしろ。」声迄いつもより荒げるおまけ付き。しかしそれは全てパフォーマンスであり、小男がわざと大騒ぎして見せているのだ。しかしそれをわざとするということは決して無意味ではない。そのせいで、それを正しく感じ取った体のほうが反射的に驚いて飛び跳ねた。ろんどんにある自身のアトリエへと侵入を果たした筈の不届者のほうを、逆に窺うように家主は仮面を向けた。それと目を合わせた緑がようやっと横柄に話し出した。「イーゼル五つも自分を周りで囲って、そんなにいっぺんに依頼を受けて。何をやってんだ、おまえは。」そりゃ、傭兵はそんなことしないだろう。「…効率良いでしょう?」恐る恐る言えば、大きく溜め息を返された。だが緑の剣幕からは鋭さ迄は抜けていない。「…おれには分からん。」が。「おまえが無茶やってることは分かる。」ぎっと睨み付けられる。バレている疲労を咎められている。「理由は。」金か、地位か。自由か。「…全部です。」目を見張る代わりに小男は片眉を上げる。しかしそのあとぎゅっと顰めて。「嘘だな。」今度はこちらが溜め息をつく番。どころか肩を落とす。「何を焦ってんだ?」精査するような視線に、諦めて落とさずに持った儘だった画材を一端置いてしまう。「そうですね。正しくは、おまえです。」先程迄の剣幕が、それこそ嘘のように鳴り止んだ。「財産や信用が沢山有れば、自由は自ずと手に入ります。」「…おれは?」「いつどこで、わたしが誰で遊んでいようと、なんの邪魔も受けたくない。」緑の目が丸くなった。少し言葉を彷徨わせたあと。「おまえ、焦る程周りのことを気にすることが、有るのか。」自分でも言っていることが酷いと自覚があるのだろう小男の目は未だ丸い儘だ。「有りますよぉ。長い目で見たら、身の回りを出来るだけ広範囲で、出来るだけ速やかに、融通が利くようにしたほうが良い。」そういう自由が欲しい。おまえと言う名の自由がね。「だから焦りますよねぇ。」諦観からか、すっかり開き直って堂々と小男に向き直って腕迄組んで見せてる仮面に、今度は緑がそれを伏せた。「…おれも焦ったほうが良いか」「おまえは向いてないヨ。」一刀両断。それから。「あのね。」組んだ腕をほどいて。「困らせましたねぇ。」ぱっと緑が仮面迄上がった。
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