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ortensia
2024-09-21 07:55:54
8211文字
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その他
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初期刀はかく語りき、山姥に比べ乳飲み子のなんと明媚なことか。
刀剣乱舞ミリしら(ギリギリにわか)。←
夏目友人帳みたいな話(???)だけど夏目友人帳もミリしら。←は??????
たぶん、少年審神者×へし切長谷部。まあでも、なんでも良い。←
審神者の名前は出て来ないです。
なんでも許してください。
シングルマザー審神者(死)→息子少年審神者
なので審神者が授乳とかしてるし、なんならへし切長谷部も育児みたいなことしてる。
本丸が全体的にギスってる、刀剣男士の口が全体的に悪い。嫌われ?でもこのお話のへし切長谷部が思っているより結局ほのぼのギャグなんだと思う、メタい話もある。かっこいいへし切長谷部はいません。
登場男士
へし切長谷部、山姥切国広、乱藤四郎、薬研藤四郎、膝丸
燃えた本丸を背に転送門へと駆ける。抱えた荷物の扱いに構ってなどいられなかった、というか構いかたを知らぬ。
「あのクソアマぁッ!」
ただ必死であった、死に近くまた遠いにも関わらず、それを笑えない程に。必ず守る、しかし己でへし折ってしまっては元も子もなく、またその可能性が大いにあることが難儀なことであった。怖かった。己でも何故そうだったのかは過ぎた頃合いでも分からない、抱えたそれが柔らかく脈打ち温かったからかもしれない。
へし切長谷部が煙の匂いを掻い潜って転送門飛び込んだ時嗅いだ匂いの、なんと乳臭かったことか。それに、どれ程安堵したことか。
本丸は燃えない。普通、燃えない。
当然だ。発達した文明の栄誉による時空を操作する程の科学力と連綿と受け継がれた伝統の魑魅魍魎である神秘によって、審神者周りのシステムは成り立っている。何故そんなわけの分からない微妙なバランスで成り立っているのか、まるで何故その設計で建立出来ているのか不明な鳥居のようだ。そんなんだから不具合だかバグだか審神者という名の人間の問題行動だの引き継ぎの失敗だの起こるのだ。やはり人間は愚か、燃やされるも道理。
「しかし、自分のそばに今こうして貴方がたがいてくれるというのは、引き継ぎは上手く行ったということでは?」
「
……
主、この場合の人間達の言う引き継ぎとは、同一人物で行われることです。」
そうなんだ、と頷く少年は、もう乳飲み子ではない。素直に神妙に納得を示す姿は、本来黒髪の筈の一部が白く、片側の睫毛も白く、肌も火傷の痕が残っている。付喪神より余程妖怪染みている。あの時あんなに小さな荷物でも、守りきれないものなのだと痛感したへし切長谷部は、自分が動揺を覚えたことにこそ動揺した。少年の痕跡は、へし切長谷部の腕の隙間から火に晒されていた箇所だった。
炎を上げる本丸から転送門を使って避難した後、その子供を新たな審神者に据えることで、新たな本丸に居を移すことになった。
へし切長谷部を喚んだ審神者は、既に一児の母であった、アカウントだかデータだかで本丸が炎上する、その時迄は。
「主、早くここから出なければ!」
「今から倅が君の主だよ。」
「は!?」
主を逃すために手を引いたへし切長谷部のそれにその荷物を代わりに押し付けて、自分は燃やされることを選んだのだ、あのクソアマ、否、先代は。勝手な人だ。勝手にこんな荷物をへし切長谷部押し付けて、挙げ句の果てこれが新しい主だと、本当、勝手なことだ。
無論、道具である以上主が変わることもある。その時の主が自分の主人に違いない。それならそれで、その主に仕え、忠誠を誓い、一番の従者であることを望むだけだ。
されど、一番の従者とは、いったいなんだろうか。主が変わる度に忠誠を誓うことは、一番の従者のすることだろうか。
主になにものよりも忠実であること、主の望むものを全て斬ることを誉として来たへし切長谷部の道に、そんな疑念の傷痕を遺して逝った先代など、これだからクソアマなのだ。
だってもう、主ではないのだから。
少年は今日は、道具の整理がしたいと言っている。へし切長谷部はそのあとを付いて歩く。物置の部屋の外では、内番の足音が行き来に過ぎる。特にこれと言ってこちらに干渉して来るわけではない、ただ割り振られた仕事をこなしている。かく言うへし切長谷部も、別に少年に手を貸しているわけではない。
「遠征にはそれ程反感が出ないだろうとは思っていたけれど、内番もそうだとは思わなかった。」
静かな声で少年が言った。
「本丸を守るためです。主のためでなくてもね。」
へし切長谷部は事実を述べる。おべっかを使ったほうが従者として正しいのかも知れない、しかしそんな気が起きなかった。
「そうか。また燃えたら嫌だもんね。」
少年もその儘素直に受け入れている。逆にへし切長谷部のほうがその態度に不満を抱いた。そうしたのはへし切長谷部であるのに。
へし切長谷部が近侍を勤めるのは、当審神者と当刀剣男士が望んでそうなったわけではない。他の刀剣男士だと、円滑に回らないからだ。それは審神者が少年であるせいもあるかも知れないし、先代の審神者が勝手だったからかも知れないし、それこそ引き継ぎが上手く行かなかったのかも知れない。兎に角、へし切長谷部が近侍を勤めることが、最も全ての効率が良いのだ、色々な事情のせいで、色々な意味において。だからこれは決してへし切長谷部が少年の一番従者だからと言うわけではない。
「私のことを主と読んでくれるのは、へし切長谷部だけだね。」
つまりはそう言うことである。
「
……
ただの呼び名でしょう。」
そう言うこと、である。
へし切長谷部は先代の近侍を勤めたこともある。その当時は、へし切長谷部が近侍専属というわけでは勿論なかったが、無論へし切長谷部は、先代のことも主と呼んでいた。
そして、乳飲み子の少年の、正しく授乳しているところに立ち会ったこともある。故意ではない、断じて。
「別に見ていても構わないよ。」
「そう言うわけに行きますか!?」
へし切長谷部は審神者に背を向けて会話をしていた。
「見ていたほうが参考になるかもしれないのに。」
「なんのですか!?付喪神は万能ではありません、刀剣男士は母乳を出せません!」
「そういうことではないんだけどねえ。」
もう良いよ、と言う審神者の声へ振り向いたへし切長谷部が見たのは、服を整えた審神者が抱いた赤子の背を軽く叩いているところだった。
「粉ミルクの作りかたは覚えて貰うからね。」
審神者はへし切長谷部に育児を教え込んだ、授乳以外の。
「俺は刀です。生き物を殺すものなんですよ?」
「生かす命のために殺す命を斬っているんだろう?」
それはそうとも言えることである。哺乳瓶の温かさを覚えさせられながら、へし切長谷部は黙るしかなかった。
「あんた達のほうが、逆に器用なもんだよ。」
審神者は言った。へし切長谷部は、酔狂な審神者だと思った。だから燃える本丸に残ったのかも知れない。
少年は、へし切長谷部も育ての一役を買ったようなものだ。しかしへし切長谷部は審神者を己の息子のようだなどと感じなかったし、そんな感覚は良く分からない。少年もへし切長谷部にそう接したことなどない。
少年とへし切長谷部は、審神者と刀剣男士であり、主と近侍であり、それらも不本意のようなものだ。
だからたまにはそばにいない時もあるし、それはへし切長谷部が現状に疑念を思い立って発作的にそうしたくなるからとも言えた。
それでもへし切長谷部は近侍なので、主の一番の従者を志すものであるので、縁側を五、六周したところで、審神者がきちんとその勤めを果たしているか様子見に足を向ける。
「ここ糸で縫ってある。」
「これは君の御母堂がしてくれた刺繍だ。」
「ダメージジーンズは縫い付けてしまうと持ち主が悲しむと聞いたことがあるよ。」
「これはダメージジーンズじゃないから俺は悲しくはない大丈夫だ。」
へし切長谷部が少年の元へ向かった先の部屋からは、少年の声ともう一つ刀剣男士の声がした。
「それなら良かった。刺繍のこれはなんの形かな、金平糖?」
「御母堂は狐だと言っていた。」
「え?」
山姥切国広、先代の初期刀だ。
へし切長谷部が部屋の扉を開けると二人が顔を向けた。山姥切国広は気付いていたようだが、少年は仕事かと問うて来たので、へし切長谷部は自分でもよく分からない躊躇いを覚えた後、首を横に振った。
「そこで立っていないでこちらに座ったらどうだ。」
山姥切国広にそう言われて、へし切長谷部はなんだか癪に触りながらも、座布団も敷かず畳で駄弁る二人のそばに倣う。
「珍しいな。」
自分以外の刀剣男士が審神者のそばにいるのは、へし切長谷部は言外にそう言ったが、そうだろうか、山姥切国広はこれと言って戸惑いも何も感じられない静かな声でそう返した。はぐらかすつもりなのかどうかそれすらもへし切長谷部には分からなかった。
「まあ、この子の御母堂、先代に関することならば、俺のほうが多少は付き合いが長い、というのはある。」
それは違いないだろうが、へし切長谷部の山姥切国広の印象は、初期刀にしては薄かった。最古参の割に貫禄を覚えないと思った。へし切長谷部は先代は顕現させた刀剣男士の内では新しいほうだったが、山姥切国広に対する印象は、へし切長谷部が他の刀剣男士に抱く印象と大差なかった。初期刀のくせに、審神者にそのことを忘れられているのではないかと思ったくらいだ。
「この子に関してならば、へし切長谷部程知る刀剣男士はいないだろうが。」
山姥切国広はこうも軽口を叩くものだっただろうか。へし切長谷部はその言葉に己がどう反応して良いかさっぱり分からなかった。軽く混乱した心持ちで当の審神者を見るが、少年はなんの動揺もしていない平素の横顔だった。自分だけが何か良からぬ焦りを覚えている、へし切長谷部は益々落ち着かない気持ちになった。
「なんで俺なんだ。」
へし切長谷部は、ついそう零した。
「この子がへし切長谷部を好いたからだろう。」
なんでもないことかのように、寧ろ不思議そうに山姥切国広はそう言った。へし切長谷部はもう何も取り繕う暇もなく、当の審神者を見た。審神者は驚いた顔をして山姥切国広を見ていた。なんだその顔は、しかも向いているのはそちらのほうなのか。いや別にこちらを見ずとも良い。しかし否定も肯定もしないとは当人として如何なものか。いや肯定されることなどはあり得ないのだが。
「主!職務のお時間です!」
「え?」
へし切長谷部はもうどうしようもなくなって、審神者を部屋から追い立てた。
「お前が思う主と言うものの像から遠いからと言って、そう意地にならなくても良いだろう、求められているのだから、素直に喜んだらどうだ?」
「意地になどなっていないが!?」
審神者の背を見送った山姥切国広が聞き捨てならぬことを言ったので、へし切長谷部は言い咎めた。山姥切国広はへし切長谷部の頑なに見える態度に軽い溜め息をついた。
「山姥に比べれば、その子供を可愛いと呼ぶなど、容易いことだろうに。」
「
……
お前、先代のこと山姥だと思っていたのか?」
今度はへし切長谷部が部屋から追いやられる番だった。
審神者の乳飲み子の父親を見たことがなかった。審神者からも、そのような存在の話を聞いたことがなかった。
「あんた、ウチの倅の父親になる?」
「ご冗談を。」
審神者にそう言われたへし切長谷部は、ぞっとしなかった。戦慄きのあまり、殺意すら覚えるかと思った。
「なら、刀のお兄ちゃん、ってところかな。」
「
……
どうかご勘弁を。」
へし切長谷部の本心は、その言葉の通りだった。
温めた哺乳瓶を審神者に渡す。器用だね、とお墨付きを貰い、乳飲み子の口に当てられる。
乳飲み子の顔は、審神者が抱く関係でへし切長谷部のほうを向いていたが、目は開いているのかいないのか明瞭としないもので、意識も赤子相手ではどこに向いているか分からなかった。それでもへし切長谷部は、自分が用意した哺乳瓶を咥える乳飲み子を見ていた。別に目が合わずとも良かった、寧ろ見詰められたら、触れられたら、刀身からほろほろと崩れて行ってしまうのではないかとへし切長谷部は思っていた。
もう少し時が経てば、それどころかその身を腕に抱えて走ることになるなど思いもせずに。
またへし切長谷部が縁側を十五、六周している間に、少年の姿が普段執務室に使っている部屋から消えていた。
へし切長谷部が少年の姿を探して本丸内をうろうろしていると、廊下の曲がり角から話し声が聞こえて、へし切長谷部は意味もなく空き部屋に隠れた。
「紙で指を切るのも可愛くないけど、傷口をその儘にするのも全然可愛くないんだからね。」
乱藤四郎の声だ。声色の調子からして、相手は審神者であるとへし切長谷部は予想する。
「乱藤四郎は可愛いものがすきだったね。」
「そうだよ。」
「可愛くないものは嫌い?」
やはりへし切長谷部の思った通り、審神者と乱藤四郎が廊下で話しているようだった。どうやら審神者は指かどこかを怪我したらしかった。部屋を出ようかとへし切長谷部が迷う。
「僕は、可愛くない、って言うことが、可愛くないと思う。だから言わせないでほしいんだけど?」
不満げに告げる乱藤四郎に対し、審神者は感心したように声を上げた。
「なるほど。」
「なるほど、って、そうじゃないでしょ?もー、君ほんと可愛くない。」
主は可愛いだろう、とここで出て行くのもおかしいと思い、結局へし切長谷部はその場に留まった儘でいた。
ところがその部屋は開けられた。驚いた顔の二人と見合わせたへし切長谷部の顔も、おそらく同じものだろう。
しかしそこで乱藤四郎がにっと笑った。へし切長谷部は嫌な予感がした。
「良いーこと教えてあげる、知ってる?さっき手当てに行った時の話!」
確かに二人が来た方向には、医薬品を置いて薬研藤四郎が居着いている部屋がある。
「あの部屋にいる時、いつも眼鏡掛けてるでしょ?それが、この子の顔見た途端外すから、どーしたのー?って僕聞いたの。そしたら、赤ん坊は眼鏡取ろうとするだろう?って!この子ももう随分おっきくなったのに、そんな頃があったのは可愛いねー?」
ねー?とへし切長谷部に流し目を送る乱藤四郎に、否定も肯定も出来なかった。審神者も乱藤四郎の好きに話させている。しかし明らかに動揺して戸惑った様子を見せて狼狽えるへし切長谷部に流石に気を遣って。
「えっと。自分が間抜けでごめん。」
そうじゃない。
「
……
ほんと可愛くない。」
乱藤四郎は呆れたように容赦なく審神者にそう言い放った。
その時少年は先の当番と編成を組んでいた。
「君は、私のお母さんのこと好きだった?」
「は!?」
なんとなしに少年がへし切長谷部にそう言ったので、近侍は大声を返した。自分の声に自分で自分の喉を痛めて、何度か咳払いをする。審神者が心配そうにへし切長谷部を見詰めて来るが、この少年のせいである。
「
……
俺は言った筈です。先代は刀剣男士に慕われてはいなかった、と。」
これはへし切長谷部から見た印象だが、自分が先代に対して抱いていた感情に他ならない。へし切長谷部は以前審神者に母親の人物像に問われた際に返した答えと同じ返しを述べた。審神者は、勿論覚えている、と言った。
「それでも本丸を切り盛りしていたんだよな。」
燃えたけどな。
「私もそう在れるだろうか。」
へし切長谷部は言わなかった、次はそのようなことは起こさせない、例え燃えたとしても、必ず。
「例え君に嫌われても。」
「はあ?」
近侍は怪訝な声を返した。審神者は驚いた顔をした。今回はへし切長谷部のほうをはっきりと見ていた。その時のへし切長谷部は自分の刀身が鋭く研がれた感覚がして、本丸の棚どころか、この本丸ごと両断出来る気がしていた。しかしその気持ちの向き先を何処に向け、何を斬れば気が済むのかさっぱり分からなかった。ただ、まんまるとした審神者の目がぱちぱちと瞬くのを、鍔迫り合いで光る火の粉のようだと見ていた。
「へし切長谷部、俺のことがすきなのか?」
へし切長谷部は、今度はどんな声も返せなかった。ただ、審神者が幼いながらもその職務を全うするために、所作や言葉遣いを丁寧にしようと自分に課しているのを分かっていた。でなければ、へし切長谷部がこんなにもそばにいて彼がそれと同じ一人称で育たぬこともあるまい。へし切長谷部は先程迄の刀身の鋭い己が、打ち直されるより尚熱く融かされるかのように感じた。
「そう言うのはいやです。」
やっとそれだけを言った。へし切長谷部自身にも、何がそう言うのなのか分からなかった。ただ審神者が小さく微笑んで引き下がりまた作業に戻ったので、へし切長谷部は生きた心地を取り戻した。生きてなどいないのに。審神者の笑顔は、謝罪の代わりだったのかも知れなかった。彼は何も悪くないのに。
その時のへし切長谷部は、縁側を何周もするなんて無駄なことはせず、ただゆっくりと歩いていた。長い脚を存分に無駄にしているため、へし切長谷部よりよっぽど背の低い短刀達が気味悪そうに何度も通り越して行ったが、何も気にならなかった。
すると縁側では審神者と膝丸が茶を飲んでいた。へし切長谷部は遠目に思わず立ち止まる。そもそもゆっくりとした足取りだったので、何も不自然ではなかった筈だ。
二人のそばには大入りの急須と、伏せられた湯呑みが余った盆が置いてある。会話が聞こえる。
「私では君の兄上の代わりには
……
ならないだろうな。」
「
……
継いだのは審神者だろう?俺の兄者になってどうする。」
「そうだけれど。審神者だからこそ、何か力になれやしないかと思って。すまない、出過ぎた真似を言った。」
「いや、
……
先代にも言われたことがあると思う出していた、やはり親子だな?」
「お母さん?」
「ああ。しかも、姉者ではなく兄者と呼べと。」
そう言い合って笑い合う二人に、へし切長谷部は足早に近付いた。明らさまに立った足音に、二人が顔を上げた。
気付けば山姥切国広も茶碗を抱えている。いつの間にいたんだ。庭のほうからやって来た薬研藤四郎と乱藤四郎のほうが早く縁側に着いた。
「俺っちにもおくれよ。」
薬研藤四郎が自分で茶を淹れる。
「
……
眼鏡を畳むのか。」
へし切長谷部が言う。薬研藤四郎は縁側に近付きながら眼鏡を外して懐中に入れていた。
「曇るだろ?」
薬研藤四郎はそう返しながら茶を啜った。
審神者が乱藤四郎にも飲むかと訊ねた。
「前だったらキャラメルマキアートチョコホイップソイラテ飲ませてくれたのに。」
「それ飲み物なの?」
「可愛く淹れてくれるならお茶飲みたいな。」
「が、頑張るね?」
へし切長谷部が歩調を早め、審神者が急須を手に取るより早く茶を淹れ、湯呑みを乱藤四郎に突き出した。
「味は変わらん。」
乱藤四郎は信じられないものを見るような顔でへし切長谷部を見たが、黙って湯呑みを受け取った。その飲みっぷりは大変に漢らしいものだった。薬研藤四郎は肩を竦めて見せた。
「飲むか?」
一連を見ていた膝丸が呆れた様子でへし切長谷部に自分の湯呑みを掲げて見せながら問う。一つ頷けば、審神者がお茶の用意を始めたので、へし切長谷部はなんだかそわそわとした心地になった。薬研藤四郎が溜め息をついた。多分茶が美味かったからだろう。
「どうぞ。」
「
……
ありがとうございます。」
へし切長谷部は審神者が淹れた茶を受け取った。審神者の手の温かさと湯呑みの温かさと、順に己の手に移って来た。緑の水面を少し見て、夕焼け空が映っている色を見た。もう日暮か。へし切長谷部はそれを口に運んだ。温かな味わいだった。
ふと、審神者がへし切長谷部に茶を渡して上げた顔の儘であることに気が付いた。
「
……
なんです?ちゃんと淹れられていますから。」
疑問と戸惑いでへし切長谷部が慌てて茶の出来をそう認めても、言い繕った先の審神者はまんまるな目で見詰めて首を横に振るだけだった。
「空が綺麗で、ここでお茶を飲んでいたのだけれど。空そのものよりも、それを移したへし切長谷部がとても綺麗。」
風光明媚、というのかな。にこにことそう言う審神者に、へし切長谷部は手の中の湯呑みがどんどん冷めて行っているかのように自身が熱く赤くなっているように感じた。夕焼け空に赤さで戦でも挑んでみようか、ああでも審神者がへし切長谷部の勝利を言い渡したばかりだった。なら良いか。ははは。
その場では審神者が和やかに笑っているだけだった。膝丸も薬研藤四郎も、乱藤四郎でさえ、げ、と言う顔をしていた。
「キャラメルマキアートチョコホイップソイラテより甘いんじゃない。」
山姥切国広だけが訳知り顔で、沈む夕陽を眺めながら変わらず茶を啜り続けていた。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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