ortensia
2024-09-09 00:18:16
4812文字
Public その他
 

オビカカオビ。上忍if。かかしせんせーが重い、おびとやっかいおたく。(支部上げ済)

リンちゃいるけどオビトを振ってる、仲良し友情を継続中。アスマせんせーがいる(出て来る)。サクモさんは原作と同じ件で死んでる。カカシせんせーがせんせーになる前くらい。火影はたぶんミナトせんせー。平和。

 任務の報告は必須だ。忍だから、という以前に、働き手であるならば。
「オビト!」
「よっ。お帰りカカシ。」
 うん。と頷く、任務帰りの儘の格好のカカシが火影塔から真っ直ぐ向かったのは、馴染みの相手の元だ。
 帰還の挨拶は必須だ、自分が戻って、またバカオビトにとやかく口煩くしなければ。しかしそれは必須でもなんでもない。
 カカシを振り向いたオビトは右眼を赤く変えた。
「おつかれさん。怪我は無えみてえだな。」
「無いよ。そんなことで写輪眼使わないで。」
「オレの写輪眼の使い方はオレが決める。お前もそうだろうが。」
……勝手にすれば。」
 オビトの写輪眼を譲り受けた形のカカシに、オビトの言葉に反論することは出来なかった。そうは言ってもカカシは写輪眼に応じられる程のチャクラ量はないから、不公平さを感じた。しかし受け取った写輪眼を「好きに使って良い」という言質を与えられたも同然の言葉のせいで、釣り合いどころかお釣りが来る程だった。
 カカシの優秀な頭脳は今日もオビトのせいでぐちゃぐちゃだ。けれどそこには、かけがえのない価値観が確かにある。
「相変わらずカカシはオビトにべったりだな。報告はもう済んだのか?」
「やあアスマ。当たり前でしょ。」
 オビトに真っ直ぐ向かって行ったカカシに、オビトと一緒にいたにもかかわらず今初めてカカシと目が合ったアスマは呆れた溜め息を出した。
「やあじゃ無えよ、ったく。ま、おつかれ。」
「どーもねー。で、二人は何してたの?」
「ほんとにお前は……オビトのこととなると……。」
 さっさとアスマとの話を切り上げてそう言うカカシに、アスマは嫌な顔をした。
「オビトはカカシにストーカーされてどうなんだよ?」
「忍がストーカーを気にするのか?」
 アスマの気の毒な目の問い掛けに、肩を竦めるだけのオビトは質問に質問を返す形で応えるだけで、何も言わない。アスマもそんなオビトに、自分の頭を掻いて閉口した。
 オビトは何も言わないが、それだけだ。カカシはオビトが嫌がらない限り、オビトに関して知ることをやめるつもりはなかった。
「ちょっくら飯に行くだけだよ。こいつまたどこぞのお手伝いを買って出たらしくてな、丁度アカデミーの門前通り掛かったところで、会ったんだよ。」
「オレは担当上忍の資格とかは、なんにも持ってないんだがな。」
「お前はなんでも手出すからなあ!」
「人聞き悪いな!自分に出来ることがあるなら、やりたいことがいっぱいあんだよ。」
 試験受けるかあ、と呟くオビト。手伝いになるなら良い。オビトはいつもそうだった。色んなとこで色んなひとから色んなものを引き受けて、あっちへふらふらこっちへふらふら、いつも落ち着かない。
 カカシは暗部や危険な任務の際に、いつもオビトに気を付けて行ってこいよ、と釘を刺されるが、オビトのことのほうがよっぽど心配だった。
 ひとの怪我に自分のことのように泣き出してしまうオビトのせいで、碌に無茶も出来ない。オビトは無茶ばかりなのに。
「オビトちゃんとご飯食べてる?それか断れなくて無理矢理連れ込まれたりしてない?」
「カカシお前それ今オビトを誘ったオレの前で言うか?」
 アスマが怒るより呆れているが、カカシは構ってられない。オビトの性格は美徳だ。だからこそそれが悪い方向に進むことが心配でならない。
 なのにオビトはからからと子供みたいに笑うばかりだ。
「だいじょーぶだよカカシ!でもまたお前の作った飯食いてーな。」
 うん。とカカシはまた頷く。本当はもっとちゃんと根掘り葉掘り、毎日の食事や生活について聞き出したいのに、嬉しいことを言われて胸がいっぱいになってしまう。どうせ聞いても忘れたとか言われて終わるんだろうけれど。
「それよりお前、任務帰りで疲れてるんだから、しっかり休めよ?」
 確かに、いつ迄も埃っぽい格好の儘でいるものでもない。
 それに、オビトにはアスマがしっかり食わせてくれるだろう。逆に引き留めてはいけないと思ったカカシは、素直に引き下がることにした。のだが。
 遠くからオビトを呼ぶ声がする。幼い子供達の声だ。三人でそちらへ振り向く。見たところ、まだアカデミーにもなっていない。飛び級したカカシからはなんとも判断しづらい話だが。子供達はどうやら、オビトに修行を見て貰いたいようだった。
「おー!今行く!」
「えっ」
 オビトを見遣ったのはカカシだけではない、アスマもだ。当然だ、今から食事を共にしようという話だったのだから。
「ってことだから、アスマ!飯はまた今度奢ってくれ!」
「奢るなんて言ってねえぞオイ」
 いやそうではなくて。
「飯食ってからにしたらどうだ、子供達だって、それくらい話せば分かるだろう?」
 アスマが引き留めるが、オビトはあっけらかんとした顔で。
「なーに言ってんだ、子供の頃の時間は貴重なんだぞ!」
 そう言ってオビトは、アスマ同様心配の色でオビトに訴え掛けるように見ていたカカシの頭を撫でた。それだけでカカシは、動揺で言葉をかけられなかったそれを、完全に失った。
「おいカカシも何か……ッ行っちまった。」
 アスマもカカシも、子供達の元へ駆けて行くオビトを、見送ることになってしまった。
 顔を見合わせた二人は、黙って帰路に就くことにした。
 周りを人がいない道、暫く無言で歩いていた二人だが、アスマが切り出した。
「お前さ、なんでオビトの告白受けてやんねえの?」
 カカシは、機を見て自分を好きだと、何度も告げてくれるオビトを思い出した。
 カカシはそれを全て断っていた。
「ふうん。オビトを親切に食事に誘うと見せかけて、オレのいないところでオレの話をしようとしてたわけだ。」
「いやちゃんと飯には行くつもりだったって。」
 けどお前、とアスマはカカシを見遣る。
「さっきみたいにアイツの背中、追い縋るみたいに見てるくらいなんだから、付き合いたい、って思うんじゃねえの?」
 アスマの言うことも最もなのである。
 カカシは一つ呼吸をすると、アスマに話した。
「オビトはね、困ってるから助けてくれるの、優しいから優しいって思ってくれるの、手伝うことがあるから手伝ってくれるの、子供だから子供扱いしてくれるの。」
 カカシは訥々と話しながら、オビトが手を差し伸べるお年寄り、誰にでも優しいけれど自分達二人には殊更優しいたった一人の女の子、アカデミーの生徒や教師、さっきの子供達を順に思い出していた。
 だから。
「オビトを好きになったら、オビトは好きになってくれるよ。」
 アスマはぎょっとしたような顔でカカシを見ていたが、カカシはそれを構わなかったし、アスマも何も言わずにカカシの話を聞くことに徹していた。
「だからね、オレは、オビトにとって。ただのカカシ。でありたいの。」
 オビトがどんなに、オビトを好きなカカシに手を差し伸べようとしてくれても、カカシはそれを求めることは出来なかった。
 オビトがどんなに一人でせっせと寄り道しても、全ての人を救うなんて夢の話だ。人の望む儘に姿を変え続ける夢。
 誰にでも相手が求める形で応えようとしてしまうひと。ふらふらと直ぐ相手の望む形に姿を変えてしまうひと。カカシが英雄という形にしてしまったひと。だけどオビトは、ただ自分が人に望まれる存在になりたかっただけだ。だからカカシは、ただオビトが好きだった。出来るだけ、ただのオビトを好きでいるために。多くの人に優しいあの女の子のようには行かなくても、出来るだけ。
 アスマは正直、オビトをそんなに得体の知れない何かみたいな存在に見たことはなかった。アスマもオビトは魅力的な人物だと認めてはいる、明朗で快活でお人好し。それをカカシは、アスマがオビトにそう望んでいるからも同然だと言った。アスマはそれを考え過ぎだと言いたい気持ちでいっぱいだったが、アスマこそ、オビトに対してそこ迄思いを募らせたことなどない。
 オビトのことを誰よりも考えて考えて、それこそオビトよりもよっぽど迷子にでもなりそうなくらい考えてるのは、このカカシだ。だからアスマはカカシに掛ける言葉がなかった。
「相変わらず難しーこと考えてんのな。オビトがお前のことバカだって言うわけだ。」
 これくらいの憎まれ口しかアスマはカカシに言えることがない。しかもカカシはオビトにバカカシと構われることを良しとしている傾向がある。立つ瀬がなかった。
「つまり、お前はオビトに好きとは言わないが、お前が素直じゃないのは今に始まったことじゃなし。お前ららはお互いが好き。ってことで良いよな!」
 アスマは勝手に纏めると、カカシの背をばしと叩いた。道はいつの間にか賑やかしいところに出ていて、後ろ手を振ったアスマは、その儘飯屋に入って行った。その背を溜め息で見送ったカカシは、自分は再び一人帰路に就いた。オビトも早く飯にありつけたら良い。子供達の相手もきちんとするだろうが、その流れで親御さんに何かご馳走になったりしていないだろうか。オビトなら日常的に有り得る話なので、そうなっていたら良いとカカシは願う。
 いつだったか、貰ったが貰い過ぎたとオビトが食材を抱えてカカシを訪ねたことがある。あの時はオビトが農家の手伝いをしたんだと言っていただろうか。それを二人で調理して食べた。カカシはもっと人を呼ぼうかと、オビトが好きな女の子のことを暗に言ったが、今日は急だから良いだろうと、オビトは珍しいことを言った。彼が彼女に振られた後のことだった。
 オビトはカカシに話した。自分は人が好きだと、だから人から好かれたいと。たった一人大切な女の子のことが大好きだったけれど、もうその女の子に自分の全部の好きを向けることは出来ないから、たくさんの人に好きを向けたいと。
 オビトは諦めていた。
 オビトを振った女の子は、本当に優しいから、オビトの好きを受け取れないことでオビトが苦しむことを阻止したのだ。
 かと言ってカカシが、じゃあその全部の好きを自分にくれと言ったところで、とっくに諦めてしまった頑ななオビトは、本当に全部の好きをカカシに向けることを躊躇ってやらないだろう。
 だからカカシは、オビトが切り分けてしまって小出しにしている好きを、拒みはしないが応えもしない。そうすることで、これだけかと、もっとよこせとオビトに言っているのだ。カカシが、今のオビトの好きの与え方に応えなければ、満足しなければ、カカシはこれからももっとずっとオビトから好きを貰える。カカシは、オビトの好きは大きくて、魅力的で、絶え間なくて、永久機関のようだと思っている。正に英雄だ。そしてカカシは、それを全部欲しいと思っている。
 オビトは、カカシがオビトをそう思う程、自分のことを英雄視していない。自分が人を好きになるのは、人に好かれたいという下心があるからだと自覚しているし、落ちこぼれだと呼ばれる自分を、認めて努力していた。人助けてはオビトの自己肯定感の低さと言っても良い。
 だけどカカシにとってオビトは間違いなく英雄だ。それを本人さえもそう思わないのなら、いっそ、自分だけの英雄になってほしい。自分だけに好きを与えてほしい。
 だからオビトは、幾ら手を変え自分を変え、人助けに勤しもうと、カカシの前ではカカシの英雄に姿を収めるのだ。
 それをオビト本人も望んで初めて、カカシはオビトに好きと告げるだろう。オビトの願いも夢も好きも全部叶える、そういう夢を、カカシはいつもみている。
「オビト。ただいま。ありがとう。」
 オビト本人を目の前にすると、胸がいっぱいになってしまって言えない言葉を、カカシはそっと口にした。本当に夢であっても、きっと自分にはそう出来ない、と思いながら。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。