マップ内でひっくり返っていた傭兵を拾ったことがある。その日は不調だったのかなんなのか知らないし興味もないが、暗号機の音に耐え切れなかったらしい。
腕を悪戯に持ち上げた時、死んではいない程度だが、あまりにも冷たかったので、なんとなく抱き締めた。自分にも体温があるわけではないので、本当になんとなくだ。しかし傭兵の体は体温を奪う地面から離れ、丸めた背が縮こまったことで自分の熱がきちんと自身に回ったのか、段々と温かさを取り戻した。その後椅子に括ったが、何か他サバイバーに連絡を入れたのか、救助は来ずに打ち上がった。まあ、その対戦結果自体は負けてしまったが、あまり気にならなかった。
それがいつのことだったか。覚えはないが、あれ以来傭兵と当たっていないことに、この対戦で思い当たった。
協力狩りだ。
相方のベインの罠は、掛かれば獲物を仕留めるのは、チェーンにしろ霧にしろ便利だ。互いに手の届かないところを埋める形でゲームを進めて行き、結果はドロー。
くだんの傭兵は元気そうで、飛ばすことが出来ずに逃げられた。あのひと幾つ肘当て買い足したんですか。
それも終わり、待機室からのんびり出て行こうとしたところ、その傭兵がそばにやって来た。
なんの用かと首を傾げ、ベインは警戒している。傭兵は紅葉肉には見向きもせず、真っ直ぐこちらを見た儘、やはり真っ直ぐこちらに歩み寄って来た。
ベインと違って、それに警戒心を抱けなかった。それが良くなかったのだろうか。
「……その、」
ベインが戸惑った声を上げる。それはそうだろう、自分とてもう少し驚きが小さなものであれば、そうしている。その原因の小さな男は、こっちに近寄って来たその儘に、こちらに抱き着いて来た。なぜ。
なんだこれ。
動揺を全く取り繕えず鹿のツノを揺らすベインに見詰められても、こちらも忙しなく首を横に振ることしか出来ない。知らない、なぜこんなことになっているのか、身に覚えがない。知れるならこっちが教えてほしい。
しかし腹に引っ付いた小さな体温を感じて見下ろす限り。
「……あったかいですね。」
胴に回る腕が強くなった。
鹿頭はふらふらとその場を出て行った。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.