ortensia
2024-08-11 01:03:25
1173文字
Public 傭リ
 

きせいかんせんはくしゃく。最初だけごすぷりもいる。会話多め(当社比)。

寄生のものは感染のもの、感染のものは寄生のもの。

 小さなお姫様。透明だけれど感覚はあるので、その頭を右手で撫でる。
「なに?なんなの?パパに作ってもらったティアラがずれちゃうんだけど?」
 普段飼い犬達に遣るよりもよっぽど、敢えて言うなれば飼い犬達にされるように、丁寧に撫でていたというのに、相手のお嬢さんは大層ご立腹である。
 極め付けには。
「おい何してる、よせよ。」
「そら、こんなもんか?」
「ありがとうなの!」
 自分の飼い犬達が、かたや手を噛みさえせずに素っ気無く払い除け、かたやプリンセスのティアラを直して遣っている。どうにも思ったようにならない。
「そこはおまえ達がわたしに撫でられる栄誉を互いに奪い合おうとするところでしょう!?」
「エマを咬ませ犬にするつもりだったの!?」
 流石に堪忍袋の緒が切れたお姫様が、もう帰る!と言ってふわふわ帰って行った。
 残るは呆れたように溜め息をつく二匹の犬。そしてその飼い主、の筈だ。
「どうして!?おまえ達二匹でわたしのこと取り合いなさい!」
「それこそなんでだよ。」
「せっかく遊びに来てくれた奴に、呆れて帰られても仕方無いぞ。」
 全く思ったようにならない。
「互いの噛み跡に嫉妬するとかしなさいよ!?」
「噛むのが好きなのはおまえだろ?」
「血液足りてないのか?」
「じゃあせめて噛まれたがって争え!」
 揃って溜め息をつかれる。
「しないよ。」
……乱暴にしてください」
「しないってば。」
 もっと血みどろになって求めてほしい。
「落ち着けって。」
「どうしておまえはそうなんだ。」
「血気盛ん。」
「流石血族。」
「なのにその血の気はおれ達に求めて来る。」
「おまえに遣るのは構わないから争わせようとするなよ。」
 お互いではなく、こちらに文句をぶつけて来る。
「おれ達の感情はおれ達にではなく、おまえに向いてるんだから。」
「おれ達はおまえを求めている。不満がるな。」
 そして宥めて来る。飼い犬のくせに、飼い主を。
「なんで。おまえ達、わたしを自分だけのものにしたいと思わないのですか?」
 これだけ宥めすかされても、往生際悪く、血雫ではなく不満を口から零す吸血鬼を、嫌な顔せず同じように微笑む青と赤。どちらもわたしのすきないろ。どちらもわたしのもののいろ。
「おまえはおれ達の飼い主ではあるけれど、」
「おまえがおれ達のものなんじゃない。」
「おれ達がおまえの飼い犬なのであって、」
「おれ達がおまえのものなんだよ。」
 そう言って左右を、あるいは前後を、そして入れ替わり立ち替わり、そのどちらもが、どちらもこの身のためだけに振る舞う。この身に注ぐためだけに血を流す。この身を余すことなく満たしてゆく。
 あーあ、一度は言ってみたいのに。「わたしのために争わないで!」だってわたしはロマンチックな吸血鬼なのだ。


—————————————————————
いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。