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ortensia
2024-07-20 11:15:23
4155文字
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傭リ
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現パロで一緒に住んでるよーり。としゃぶつのひょうげんがある。なんでもゆるしてください…。
いつもより傭がしれっと普通に吐いてるのでべったにしときます。
ここは水道水の飲めるにほん…。自己管理が困難な傭。潔癖に言及する話題があります。ひとが吐いてても全然気にしないリ(笑)だけど健康を打ち捨てるようなマネを容認しているわけではない。嘔吐欲の話が何故性欲の話になっているのか…。
はっとして目を覚ます。
べたついた体が夏特有のものだとすれば、まるでごく普通に入眠して、ごく普通に覚醒したかのようだ。
だがどうしても違和感が拭えない。確かに暑さを感じるのに、体自体は冷たく震えるような。
「起きました?なら水飲んで。」
上からの声に安堵を覚える。耳に心地良い。飲料水の入ったボトルも降って来た。危なげなく確実に体かと離れたところに着地して布団に振動を与える。
「口濯ぐのは飲んだ後にしなさいね。」
その言葉の指す意味は分からなかったが、前述の言葉は理解出来たので、キャップを開けて水を飲む。
「
……
おまえ起きた時仰向けでしたけど、大丈夫ですか?」
「ん。」
ひょこりと顔を覗かせた相手が問うた。その続いた言葉の意味も分からなかったが、水を飲みながら返事した。質問者は肩を竦めて呆れたようにまた引っ込んだ。言葉の意味の不理解を悟ったらしい、それでも最初の指示には従っているので引っ込んだと言うことは、問題ないのだろう。
「
……
ん?」
水をしひとしきり飲み終えると、なんだか確かに体だけでなく口の中もべたつく気がする。布団から抜け出して洗面所に向かう。
「ち。もう立てるのか。」
すれ違った男に微妙な顔をされる。立ち歩けるが、視界が暗い。相手の表情は、声色からだいたい察したものだ。そもそもの話が、表情の存在する顔を持つ男ではないので。
口をすっきりさせようとすると、体もすっきりさせたくなる。シャワーでも浴びようか、と思ったところでまた違和感を覚える。目醒める前に風呂に入らなかっただろうか、その時も、体の汗に耐えかねて。
そこではっと振り返る。
「さっきもですけど、おまえさあ。」
口を濯ぐのを終えて浴室を見たこちらの視線を遮るように、呆れた様子の長身の男が洗濯籠を持って立つ。
「汗をすっきりさせたいのは分かりますけど、入る前に水飲みなさいね。」
「
……
おれ、どうなったんだっけ?」
未だべたついたような感覚を拭い切れなかった口を開き、恐る恐ると問う。
「
……
かろうじて風呂上がりにパジャマ着て、その儘布団の上で気絶したってところじゃありませんかねえ?」
肩を大きく竦める男。呆れは侮蔑と良く似ている。
「おまえに罵声を浴びせるのは後です。まだシャワーは我慢なさい。それと、頭が醒めて来たなら、呆れと安堵が似ていることも、理解なさい。」
男はこちらが浴室に入ることに、今はまだ不安があるようだ。
「バスタオルで体を拭いたかは知りません。寝転がってたおまえ、どうせ汗で全身びしょぬれだったので。でも濡れたタオルは見付かってません。」
知ってんじゃねえか。
「
……
シャワー浴びるなら水飲んでね。と言うか、浴室なんだから水も出る蛇口が直ぐそこにあるでしょうに。」
とにかく何故水を飲まないとぶつくさと文句の正論を垂れながら、男は洗濯機に洗濯物を投げ入れた。その儘洗濯洗剤もセットする。
「あと言っときますけど。濡れたタオルは見ませんでしたが、おまえが布団との間にバスタオルを挟んでいたのは見ました。」
やっぱり知ってんじゃねえか。
「おかげでバスタオルが吐瀉物の水分を良く吸ってくれていました。」
「
……
は!?」
「良かったですね?」
ばたん、ぴ、ごうんごうん。男が洗濯機を作動させて、こちらを見た。向かい合うのがなんだか暫く振りに感じる。
「水を飲まないから吐瀉物の水分が胃液ばっかになるんですよ。さっきの水音から察しますが、おまえ、口を濯いだんだろうけれど、うがいはした?それですっきりすると思いますけど。」
吐いたんだからね。
だから起きた時仰向けだったのを気にしていたのか。仰向けに寝ていて、吐瀉物が気道を塞いだら窒息することになる。なので通常嘔吐感を覚えた場合、休息のために体を寝かせた方が良いのは確かだが、寝かせ方は顔が横を向くようにしなければならない。
現状自分の嗅覚が麻痺していることを知らされる。
洗濯機は回り続けている、たぶん。さっきから温度感覚、視覚もおかしいが、そこに嗅覚も加わる。理解力はだいぶ回復したと思われる。聴覚だけはずっとクリアだ、寧ろ敏感に冴えているくらいに感じる。
ひとは死ぬ時最期に失うのは聴覚だと訊く。でも死んだひとを最初に忘れるのは声だと言うから、そちらは信じていない。この声はこちらがどんな状態であろうときっとクリアだ、たぶん。
うがいをして会話を続ける。視界もだいぶクリアだ。
「おまえ、ひとが口を濯いだ音とかうがいの音がどうとか言ってるけど、そう言う音不快じゃないのか?吐瀉物だって、そんなにまじまじ見てるわけじゃないだろ?」
「見てますよ?まじまじ。」
男はしれっと言った。
「何か腹に入れたのはまあ英断ですかね?アイスですけど、ゼリーにすれば良かったのに、ミカンじゃなくてリンゴの方ね、有ったでしょう?」
柑橘系には嘔吐を促す作用があるらしい。
本当にまじまじ見てやがる。
「なんなら目の前で吐いてくださいよ。咀嚼音ならぬ吐瀉音、録音しますから。オートノマスセンサリーメリディアンレスポンス?」
以前流行りの話題を話した時に頭文字の羅列の意味を男に問われて自律感覚絶頂反応とごく正確に解答したところ、へえ絶頂なんだふうん、と言われたのでメリディアンの方だと補足すればなんだと笑われた、つまり結局にやにやされた。オーガズムではないと言っているのに。
それを思い出したから余計にASMRの名前を出すなんてとんでもないと思った。
「前にわたしとした話覚えてます?良く食べるおまえに、そのお腹を開いてみたいって言ったの。」
とんでもない男なのだ。言ってたなあ。食べてる最中に。つまり吐瀉する前の吐瀉物である。どっちでもとんでもないのでどっちでもいい。
「その
……
悪かった。本当に。」
「だから、別に良いって言ってるのに。」
男は洗濯機に軽く凭れ掛かった。やめてやれよそいつは今仕事中なんだぞ。
「でも反省してるって言うなら、せいぜい健康でいてくださいよ。」
空の洗濯籠を置いた男がこちらを指さす。
視線を追って視界に入れたTシャツの袖から出た肌には、大判の絆創膏が貼られていた。両腕だ。
原因はなんとなく覚えがある。嘔吐感とは関係のない時分でも発生させてしまう傷だ。この下にはおそらく、自分の爪がぴったり嵌まる肌の溝があるのだろう。
「
……
気付いてました?」
「
……
なんとなくは。何か痒みを感じるなと。」
このサイズの絆創膏を備蓄しているのは男の管理によるものだ。何度か貼られているが、何度世話になって、何枚残りになったら補充しているのか、こちらは知りもしない。
「へえー、ほんとーに。タオル、血もべたべたでしたよ?そうやって堪えた後に吐き出して、きもちよかったですか?まあすっきりするでしょうね。」
洗濯機の稼働音を間抜けに感じさせない冷たい視線がねめつけて来る。
「つらい思いをするくらいなら自慰行為をする方がそりゃ健康的ですよね。」
負った傷は自傷行為なのだが。
まずい。この男が変に品のない話題を無理矢理入れて来るのは、まずい兆候だ。怒鳴らない罵声、だいぶ機嫌を損ねさせた。
「おまえだけでオナニーするくらいならわたしとセックスしてよ。」
その視線に晒されながら、洗面所の捻った蛇口から水を出して、両手で掬ってごくごくと飲む。
男は黙って見ていた。
「悪かった。」
口を拭うこともせずぼたぼたと好きにさせながら伝える。
ここは涼しかった。濡れたことで揮発する水に肌が涼しさを覚えるのでそれに気付いた。いつの間にか換気扇が回っている。
男は眼窩を鋭くさせた、ように見えた。
「何を悪いと思ってるんです?不快な手間をわたしに掛けさせたと?おまえの頭はまだ寝てるんですか?」
「いや。そこはちゃんと分かって聞いてた。おまえが不快なのは心配を感じることだろ、そうだな?」
きちんと理解した旨の返答で言い当てれば、男はまた黙ってこちらを見た。
ゆっくりとこちらに首を伸ばし、濡れた口をその儘吸われた。
ちゅうと水っぽい音を残して離れた顔が上がると、水の音より静かな声で言った。
「不快なのではなく、これらの話題をわたしに話したのは全部おまえなのにご自身に適用される気配がないのが、不思議なんです。」
男は洗濯機が正常に作動していることを確認する素振りを見せたその儘浴室の前から体を引いた。
「
……
まだ匂いが酸っぱいな。ゼリー食べます?」
「
……
食べる。」
未だ嗅覚は正常に作動していないらしい。
前を行く長身痩躯に続くと、食卓の椅子を引かれる。こちらには座って待っていろとのご指示だ。
すとんと腰掛けると、自重を支えないことに安堵を感じる。真っ先に目の前に出されるソーダ水を有り難く享受する。苦笑一つ浮かべることも許されない。
ことりと出されたゼリーとスプーンは二つずつ。
「一緒に食べてくれるのか」
嬉しくなってそう伝えるも。
「まあわたしも草臥れましたので。」
こんな嫌味の罵倒なら、幾らだって享受するのに。それはそれで許されない。
「因みに今早朝三時なので。」
「えっ!?」
「ご近所に洗濯機の音でクレーム受けたら、おまえが謝ってくださいね。」
「勿論。」
時間感覚の麻痺、と言うより関心が向かなかった。
その後、ご近所から迷惑を訴えられることはなかったが、鳴ったインターホンに出ると、飲料水の箱買いが通販で届けられた。
自分に身に覚えがない以上、発注者は知れているので、今は出掛けている相手に連絡を取る。一先ず玄関に置いておけとの指示なので、出来るだけ隅に寄せておく。
今度はこちらが帰宅すると、箱は玄関先から消えており、手を洗いに行くとそこにダンボール箱はあった。
親切なことにダンボールの封は開けられていたが、男が自らの爪で開けたのか、開封手順とは関係ないところが開いている。けれど綺麗に開いてはいるので、飲料水が出しづらいということはない。寧ろ出し易い親切設計となっていた。
自分もこう開かれないよう気を付けよう。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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