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ortensia
2024-07-10 10:29:59
3757文字
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傭リ
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傭がリをはらむよーり(?????)とても注意。なんでもゆるしてください…。
男性妊娠ってこういうことですか?(聞くな)※あくまでもおそらくよーり
Scornって凄いゲームがあってぇ…。レナラさまの「きっと良い子に産んであげるわ」どころじゃない…。そして父性も母性も無い()Lの楽園ってこと…?(?)。庭(怪鳥)が出る。
卵を割るのが下手だ。
だからこそ、どろりとしたあいつをいつも卵の黄身みたいだと言っても同意を返されていた。おまえが綺麗に割れないだけでしょうって、間違えて食べないでくださいねって。笑っていた。
自分の腹を撫でる。
それが今ではおれの腹にあるから。
先日火事に巻き込まれた。大きな爆発を伴う事故だ。
本当に事件性が無いかは重要ではない。それに己が探究心を抱いたことを偽るつもりは無いが、腹の男が関心を寄せない以上、その現場に留まる理由すらなかった。
「ジャック!」
「
……
おや。煤だらけですね、おまえ。」
「なんでおれを庇った!?」
「ふふ
……
。だっておまえが焼けちゃったら、剥がれ落ちた肌を探すのが面倒でしょう?」
周りの他の熱や喧騒なんか振り切って拾った笑う黄金の声から、香ばしい匂いがした気配を振り払って、煉瓦に打ちひしがれた体に駆け寄る。
「蕩けちゃいました
……
。わたし、美味しそう
……
?」
息に煙を混ぜながら、溶けた体が笑うのを抱き起こそうとしてそれすらも当人に止められる。
「いいから早く立てよ!」
「あは。嫌ですよ、体が保てなくて
……
今起きたら服が脱げちゃう。」
「そんな場合かよ
……
!」
立って走れるやつらの汚れた足跡から守ることくらい、せめてさせてほしかった。
「おれはなにが出来る!?」
ごろりと視線を向けてじっと見詰められる間も、火の粉がそこに反射して煌めいている。永遠の時間かと思った。
「血が出てる
……
」
お腹。と呼ばれたが、自分のことに構っている余裕がないせいで、わけも分からず何度も頷いた。
「そこにわたしが居ても良い
……
?」
やはり何度も首肯した。
熱に煽られた黄金がにやりと歪んだ。それはそれは美しい光だった。
それからは、開いた腹がより深く裂かれた衝撃で、さも火事で重症を負ったかのように気を失う寸前だった。己の腹部から男の笑い声が聞こえる意識を朦朧とさせながら街を出た。
焼けた街から出る頃には、朝日の白光が世界を焼いていた。
素性の露呈を嫌って隣街の更に隣まで歩いた。
抑えていた傷口に濡れた感触は既になく、とっくに塞がっていた気配があったが、尚熱を持っていた。おれはそれを抑える自分の素振りが、腹を抱いているものだとまだ気付けていなかった。てっきり腹の外側で、ジャックを抱えているものだと思っていたからだ。
そして入った街の廃材を漁り、新しい古着を手に入れた。
そこで漸く気が付いたのだ。腕にあの琥珀のような男はなく、ただ膨れた自分の腹がどくどくと脈打っていることに。
「おい
……
ジャック?そこにちゃんといるのか。」
いらえを返すように腹はどくりと言った。
己の身体なのにまるでそんなこと感じさせない。
奇妙だ。
その奇妙な自身を見下ろしてふと思い出す。そうだ、奴はなんと言っていたか。おれの腹を貸してほしい、というような意味合いのことを言っていなかったかだろうか。
「
……
それなら良い。」
選んだ古着はゆとりのある布であり、腹の男がせいぜい窮屈しないと良いと思った。
おまえのためなら有るとも知れないどんな臓器も貸し出してやろう、ホテル料金はツケといてやるさ。
誰もおれ達のことを知らない街で、どうやら腹の出たおれは「母親」だと思われているらしい。旦那はどうしたのかって?はは、これから産むんだよ。そんな冗談みたいな事実を告げる価値も感じずに過ごすおれは、訳ありで無口な未亡人として親切にされた。
元々己は残念ながら筋骨隆々を体格とした男ではなかったし、あいつより背も低かった。更に性的興奮も覚えない日々は、それだけで妊婦のようだと例える暴言こそ吐く気はないが、産んだおまえを抱けなくては惜しい。会えない毎日は寂しさをおれに孕ませるが、情交の近さを常に感じることが出来た。ただ、声を遠く懐かしく思うことは、否めない。
そうして熱を孕った己の腹が、順調に膨れて行っているように見えることに、焦れるような多幸感と満足感を覚える日々だった。声さえ聞こえれば本人に確認が出来るのだが、そうは行かないらしい。いいさ、ゆっくり休めているのなら。
だがそれはある日起こった。あの日の火事のようだ。違ったのは嵐と雷による火災で、人意をちっとも覚えないことだったが、そんなことはどうでも良かった。腹の男を守らなければ。それはあの日と変わらない。
しかし男ごと抱えた己の体で上手くバランスを取りながら逃げることは困難を要し、あの日倒れ臥す男を見た時とは別の理由でよろめいた。
それでも転んで腹を潰すわけには行かなかった。
しかしおれは、卵を割るのが下手だった。
己の足で転ぶどころか、突風で簡単に跳ね上げられた体は地面に放り出される。ぐちゃりとした腹の感触は、嵐の中降り頻る雨のものでないことがはっきりとわかった。どろりとして、熱を持っていたからだ。そんな。おれが腹に抱えた、男の、おれの。
慌てて腹を見るもそこは既に凹んでおり何もなかった。
代わりにひび割れた傷口が開き、とろりと赤黄色の線が地面を這うように伸びていた。縋るようにそれを視線で辿った先に、黄金の愛しい琥珀が転がっていた。まだ、まだだ。まだあいつとは繋がった儘だ。早く腹に戻さなければ。いつ迄も冷たい雨風に晒した儘では可哀想だから。
這いずって必死に手を伸ばす。その己より先に、何かの店から走り出て来た年若い娘の足が駆け寄って琥珀に跪いた。
「どうぞなの!」
爪先は愛を蹴飛ばすことなく危なげない足取りで迷わずこちら迄黄金を運んでくれた。
「嗚呼、ジャック!ありがとう、ありがとう
……
!」
おれは黄金に伸ばした自分の手ごと抱き寄せ、娘に出来得る限りの感謝を述べた。
腕の中の宝は変わらず熱を持ち脈打っていた。それがおれをこの荒れ狂う空のもとでも心底安心させた。
しかしその安心感のせいで逆に、娘に要らぬ弱音迄零してしまった。
「けど良かった。こいつがあんたを新しい腹に選んでしまわないで。」
おれの不甲斐ない言葉に娘は一瞬の間だけ停止したように見えたが、直ぐに完璧な笑みを浮かべた。
「人形だからそれは無いの。」
「そうなのか。」
確かに雨粒を弾く娘の肌は陶器のようであり、腹を膨らませられるようには思えなかった。
「それに、貴方のお腹の中は、彼への愛でいっぱいでしょう?」
それは彼にとってとても居心地の良いところだと思うの。続けられた彼女の言葉におれは満足と安心を覚え、腕の中の宝をぶよぶよと撫でた。
そして男は赤黄色の紐を辿って、なんの躊躇いもなく戻る場所にまたおれの腹を選んだ。
避けた腹は内側の熱で焼かれ閉じ、また大きめの服を着てやらねばと思った。
上がった雨と晴れた雲のようになんの疑問も抱かずにこりと笑っているだけの娘は、濡羽色の翼から雫を払い、店の外へと去って行った。彼女がこちらの事情を掻き回さないのと同じく、こちらも彼女に無用の探究心を抱かないのだ。
そうして天気のように崩れた街が、元々余所者のこちらに以前のように親切を与える余裕もないだろうと思い、おれ達は街を出た。今度は隣の隣、更に隣の街へ住み着いた。
そこでは人形の娘がいた程の親切は受けられなかったが。ぽつんと人気のない荒屋を安く借りた。
荒事を好むような暴漢が訪ねて来たところで、おれは実際には妊婦でも女でもないので、天災規模のものでなければどうということはない。
せっかく遊んでやってもひとの家でいつ迄も寝こけてるような奴らからせしめたがらくたも、小遣い程度にはなる。なんならこの役立たず共にお遣いを言い付けてやっても良い。腹の男がこんな連中の悲鳴で喜んでくれるなら、それにこしたことなどこの世にないのだから。
何より人気がないというのは、男と二人きりの時間を邪魔されなくて良い。
ある日遂に快調した男がいよいよ外に出て来るという時、喜びに叫ぶ程上げたおれの声を聞いたのは、この男ただ一人だった。
腹を観音開きにし、そこから立ち上がるものかと思えば何が不都合だったのか脇を裂いて背骨の隣から出て来たのだからたまらなかった。こちらの背側の骨に手を突いて背筋を伸ばした黄金の熱は、今思い出してもおれの全身を痺れさせるに充分だ。
長い脚をずるりと抜き去る瞬間に覚えた寂しさを、男も感じてくれたのかもしれない。最後に文字通りぼろぼろになったおれの体にその長い両手足と全身でしがみつかれた時は、駄目だと思いながらももう一度腹にいれ直してしまおうかと思った程だ。
けれどそれを耐え抜いたおれは、破れた体を外側から焼かれて塞がれて、嗚呼本当に腹からいなくなってしまったのだと思い、代わりに今は外にいるおまえをどろどろに抱いた。
そうして喚き散らした街を今度は二人分の足でしっかりと出て行き、結局元いた街に戻って来た。何かと物騒な街は、それはそれでおれ達には住み良い街なのだ。
「あーあ、また卵の黄身が潰れてます。」
「腹に入れちまえばおんなじだろ。」
だから相変わらずどろりとした男はとろりと笑うし、相変わらずおれは卵を割るのが下手だ。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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