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ortensia
2024-07-05 04:08:41
2057文字
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傭リ
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さんほらのえりゅしおん的なよーり。いー→リ、えー→傭。
少年が見つけた肖像画、彼は病的に白いそれに恋をしてしまった…
誰かの呼ぶ声?否、それは気の所為だ。そこは、轟々と泣く吹雪の中だった。
それでも男は、這いずってでも塒に戻ろうとしていた。
古い、古い硬貨、エコーを握り締め。殺人、窃盗、誘拐、密売、彼は傭兵だった。金になることならなんでもやった。問うべきは手段ではない。なあ、ロマンティック、ドラマティック、そう思わないのか?おまえに唇を重ねたいだけなんだ。天秤の左皿を沈ませるわけには行かない、それを浮かせるための右皿に乗せる何かを。なんでも良かった。眠るように沈ませるわけには行かないのだ。悪魔に魂を売り渡してしまったのだと言われた、否、男こそが悪魔だと呼ばれた。
けれど彼は信じていた、それが白い男の糧になると、いっそ盲目的に。至尊への椅子のために。
視界をなぶる雪は彼を盲目にさせた。白い大地に刻まれ直ぐさままた白に掻き消されるそれは、それでも彼の罪の軌跡だった。
塒の東屋に、崩れそうな扉がある。にもかかわらず彼は厳重にその扉に鍵を掛けたし、今もかじかむ手で一つ一つ丁寧に錠を回している。その向こうには、愛しい笑顔が直ぐ其処にあるのだから。それは彼にとって、無限の果てなのだ。現実が朽ち果てても、構わなかった。
荒屋に座すのは咳き込む細い体だ。その痛む胸は吹雪から春を遠去けていた。男はまた厳重さで内鍵を掛け直すと、不規則に上下する薄い胸を労わるように撫でた。雪を被った頭巾を背に落とし、肉食の仮面も取っ払った。
男の手に晒された痩せこけた体は、確かにそこに温もりを覚えた。春は知らずとも、愛なら知っている。何故なら、例え襤褸い毛布でも、楽園の夢がみられるからだ。
嗚呼、愛しい白よ。男の手はその体をまさぐることを自らの意思ではもう止められない。二人で引っ被った薄布同然の毛布の中で、薄い壁の襤褸屋より、もっと更に、内なる秘密をいだこうと。
痩せた膝を割り開く。今日も冷えるから。白い体を温める男から、薄暗い部屋の中で同じくらい白い吐息が上がる。月明かりが虚ろでも、楽しそうな談笑と弾む吐息は、窓を叩く夜風をも追い返すようだった。けれどそれ以前に秘め事とは、それを行う者からすれば、その者達意外の周りのことなど、見えてはいないのだ。白の現実が砕け散っても、気づかぬ程に。
だから、楽園の、楽園の話だけをしていよう。
「ねぇ
……
傭兵、その楽園ではどんな花が咲くの?どんな鳥が歌うの?体はもう痛くないの?ずっと一緒にいられるの?ねぇ
……
傭兵
……
」
幾度となく繰り返される問い掛けは男に向けられたものだが、白の体が男に応えているわけではなかった。白い男は、楽園にこそ興味が尽きないが、楽園にしか興味がなかったからだ。
何も知らない方が幸福だとは思わないのだろうか。求める限り全てを知りたがっては、破滅へと歩み出すだけだというのに。さよなら
……
さよなら
……
。
だから見えてはいないのだ、傍らに横たわるその屍体が。
「ねえ、傭兵」
「何だ、リッパー?」
「明日はなんの日か知ってる?」
「世界で一番可愛い殺人鬼の記念日」
密やかな高い笑い声。
「わたし、記念日のプレゼントは釦がいいと思うんです
……
」
こうして、男の夢想は残酷な現実となってしまった。それすなわち、白い彼の現実が幽幻な夢想となることである。だから男の楽園は永遠の奈落となった。そして白い彼の奈落は束の間の永遠となるのだ。
「
……
傭兵、その楽園ではどんな恋が咲くの?どんな愛を歌うの?心はもう痛くないの?ずっと一緒にいられるの?ねぇ
……
傭兵
……
?」
だって男は願ってしまったから、その肖像を一目見てしまった時から。妄念を犯し、永遠を孕ませてでも、白を産み堕とすと。楽園が四つ、幾つあっても惑わされるな、垂直に堕ちておいで。安らぎに眠らせて遣る。
だって白の彼こそが、男の恋であり愛であったから。物語を望まずにはいられなかったのだ。
そのためならば、幾度でも繰り返そう。開く扉は四番目、第四の地平線だ。楽園の名がEでもAでも構いはしない。痛みを抱く為に生まれてくる哀しみなんて、あんまりじゃないか。
おれは、おれの白を間違えない。おまえが望むのならば、おまえの好みそうな、可哀想なお嬢さんをこのパレードに招こうか?箱舟を信じた少女、歪んだ真珠の乙女、収穫を誤った娘、妹を犠牲にされた姉、星屑に踊らされた女、どれが良い?何でも連れて来よう。
肉食の仮面を取り付け男が笛を吹く。世界の果てを目指しているのだ。
嗚呼、友よ。罪も無き囚人達、幸薄き隣人達よ。おれ達はこの世界という鎖から解き放たれた。そうだ。来る者は拒まないが去る者は決して赦さない。黄昏の葬列、仮初めの終焉。これが釦の語る絵本さ。
……
楽園パレードへようこそ!
「ただいま
……
リッパー
……
」
「お帰りなさい
……
傭兵
……
」
その痛みが生まれてくる度に、その痛みごと抱こう。
真実の名など、何処から来て何処へ逝き誰の幻想でも、しょせん誰かの幻想なのだから。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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