ortensia
2024-07-04 11:35:45
378文字
Public 傭リ
 

歌う自分のことを楽器に例えるリと笛吹きの傭

ついったとおなじ。

 なぜこの男はこうも熱心にこの体に触れるのだろう。
 そういえばこの男は笛吹きだった。それを奏でる手付きに似ているかもしれない。繊細に触れ、しかし力強く支える。だからこそ、あゝ、少々情熱的に息を吹き掛けられても、それを抵抗なく取り込むしか道がない。
 しかし塞がれた軌道が鳴くこともなく、そんなにまさぐられてもAの音一つ震えるばかりだ。
 だから。
「わたし……美しくない……
 すると男は驚いたようにこちらを見遣る。不思議そうにその手を止めない。
「おまえは綺麗だよ。」
 そうしてまたこの体に夢中になった様子になる。
「なにがそこまで……
 呆れた声が出たかもしれない。ほら、わたしはおまえにとって決して扱い易い勝手の良いものではない。
「仕方ないだろう、好きなんだから。」
 男自身でも呆れたふうにそう言うものだから、可笑しくて少し鳴いた。


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