ortensia
2024-07-03 04:29:51
501文字
Public 傭リ
 

傭の髪を切って遣るリ

ついったとおなじ。

 ほら、終わりましたよ。
 言って最後の切り落としを軽く払って遣る。
 目の前の鏡台に映る自分をためつすがめつしているミストグリーンとやがて目が合う。
「これがおまえの好みか?」
 はあ?
「別に。暑苦しいからですよ!」
 髪を切って遣った理由なんて。
 そう言えば確かにこの椅子に座らせる前は、そんな巫山戯たことをぬかしていたな、この男は、すっかりこちらの頭からは彼方上空に打ち上げられていた。
 そんな、頭の中迄は涼しくならなかったらしい男は放って、道具の片付けに移る。
 それに倣って椅子から立ち上がったお客は、自身から逸れた髪を払い落としながら箒を取り出した。
 各々後片付けをすませ、風で髪が散らないように閉めていた窓を開けて、空気を取り入れる。
 初夏の空気だ。
 風が入って来た。
 短くして遣った髪が、昨日とは違ったそよぎ方をする。
 風を見て光を反射するミストグリーンに近寄り、切る前から晒されていた額に、音を立てて口付ける。
「サービス過多。」
 まんまると驚いた瞳が言う。
「ああ、すみません。わたしの好みだったもので。」
 白々しいと、赤い頬に睨まれる。大人しく享受しろ。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。