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ortensia
2024-05-31 21:51:11
2088文字
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傭リ
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👒🤕✂️ 和風奇譚。
✂️←老獪にみえるが、仮面で老いはよくみえない。
🤕←二十代前後にみえる。
👒←六つにみえるが、遊びは人形や球技だけで無く麻雀も好き。
ツイXターにて表示エラーのご報告を受け。m(_ _)m
コツが要る。押し込みながら回した錠を開け、押し上げながら引き戸を滑らす。
靴の踵をつまんで端に寄せ、くぬぎいしを上がる。
座敷から駆ける音が聞こえるのに背を向け、玄関を振り返る。
「お
……
」
そこから声が上がる。
「お邪魔すんななの!」
それを、奥から滑るように駆け込んで来た声が遮った。仕方無く奥を振り返ること無く告げる。
「いらっしゃい。」
「あーっ!?」
いらっしゃいしちゃダメなの!と横に並んだ抗議の声が下から上がるが、ダメかどうかは目にみえてる。お邪魔します、と静かに言い直した男が、庇に頭部を引っ掛け無いようにくぐるのをみやる。
「コツが要るんでしたね。」
大きな右手がぐっと戸を閉めるのを感心してみていると、足がげしげしと蹴られる。それも放っていると、今度は何処かしらかから取り出された鞠をぼかすか投げ当てられる。こっちのが痛い。なのでそこで下をみて相手をしてやる。
「あんたの家に入ることが出来た時点でダメじゃ無えだろうが。」
それでも。
「呑気!」
怒られた。
「ねえさん。」
嗜めるためにそう声掛けると、相手の少女よりも、客の男から声が返る。
「確かにおまえは小男ですが、それより小さいように見えますが?」
「
……
おれがねえさんより小さかった頃から居たからな。」
へえ!男が少女に関心を向けた。少女は露骨に嫌そうな顔をした。しかも男はそれを見て余計に愉快そうだ。
……
相性がダメだと言うのには頷こう。
「昨今にしては長く住まわれていらっしゃるようで?」
「昔っからいつの間にかひとの家に勝手に上がり込むその日暮らしの素寒貧とは育ちが違うの!」
アハハ、育ち!?一方だけがやけに楽しそうな会話だ。暫くして笑いが漸く落ち着いた男がやっと言葉を返す。
「しかし、ハハ、ざんねーん!今日はちゃんとお呼ばれしてまーす!」
まだ玄関だけどな?こいつら玄関でいつ迄も何やってんだ。ぐぬぬ、と少女が唸る。よせば良いのに。男をまた愉快にさせるだけだ、おれでも分かる。早く上がってくんねえかな。
「おい。菓子。」
「今日はからいのが良いの!すっごーくからいヤツ!」
「そんなの有ったか?」
仕方無いので探しに行く。まあ、おやつの話となれば、客を座敷に案内せざるを得無いだろう。万が一客を置いて一人で座敷に戻ったとしても、それを追えば良いだけだの話だ。
供物のストックで一番からいであろうスナックミニサモサのパッケージを取り上げ中身を皿に開ける。三口分のコップと林檎ジュースのボトルを一緒に盆に乗せ襖を開けると、ちゃぶ台を挟んで高低二つの顔がこちらを振り向いた。
「リンゴジュース
……
久しぶりです
……
」
肩を震わせて男が言う。こっちはジュースでそこ迄笑うヤツなんか久しぶりどころか初めてだよ。
硝子についで遣ってる間に、少女が何やらはっとして呟く。
「和服なの
……
えまだけ
……
」
「?今更だろ。」
深刻そうに言う様子が大袈裟としか思えない。
「生まれた時からそうなのは別に良いの!けどこのひとも昔からいるのに、なういかっこしてる!」
「
……
それ古語じゃなくて死語だぞ?」
着物少女の言葉に、目からも耳からも時代錯誤を覚える。兎に角多数決で負けた気持ちを感じているらしい。
「久しぶりに良いかも知れません。」
男の方は乗り気だった。
ぱんぱんと手早く手拍子が叩かれる。
すると男の外套は着物に変わり、シャツは詰襟のデザインに成った。トップハットだけはその儘だった。
しかしまたも抗議の声。
「ちょっと!裏拍手!」
確かに少女の在り方からすれば御法度だろうが、この男には気にならないものらしい。在り方が有るから気にするものが有るのか、気にするもので在り方が変わるのか、それが分からないのは此岸も同じだろう。きっとこの男は合わせ箸も気にし無い。
少女の過剰な反応にくすくす笑った男はしかしそれに一頻り満足したのか、今度は正しく拍手を数度起こした。その意味がなんなのか、或いは人が見出せる意味が在るのか、それでも少女は大人しく成ったようだった。
「その格好も似合うな。」
林檎の芳香を一口煽って、空気を変えるように一言告げた。
「どうも。」
正確には少女の服装より何世代も後のものだろうに、くすりと笑う男はそう言った、たぶん気付いている。
「そちらも着替えてみては如何ですか?」
思い出したようにジュースをこくりと飲み込んだ少女がうっそりと告げる。
「アイデンティティなくなっちゃうもん。」
だからせめて麦藁帽子を被ってるんですか、肩を竦めてみせる男が気軽に言う。
「たまには人格を変えて仕舞えば?」
「在り方の喪失は死活問題なの!」
特徴が多いとルールに縛られて大変ですねえ、なんて簡単に笑う。
「でもこの鞠がバランスボールにならないかなとは思うの。」
絶対楽しいと思うのアレ、そわそわと体を揺らす少女に合わせて、男も飲んだカップをゆらゆらと揺らす。手鞠とは比べられない程大きさが異なるが、今度供物に遣るか、と思った。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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