リッパーは菓子作りが好きだ。だからバレンタインデーが好きだ。つまりリッパーはこの日を菓子を大量生産しても良い日だと思って居る。
「おまえはおれにバレンタインチョコをくれなくて良い。」
にもかかわらず、量産した菓子の処理先の一つから、こんな釘を刺された。この取引先は普段なら最大手とも呼べるのに。なぜどうしてを問う。
「おまえがくれるのは、他でも配ってる義理チョコの一つだろう?」
義理チョコ。まあ今のご時世にそぐわ無い呼び名だとしても、間違っては居無い。それどころか、作るのが目的であって渡すのはどうでも良い、なんて、それこそ義理立てたチョコである、何への義理って、チョコへの。
なのでリッパーは黙って頷いた。
得意先である筈の男は続ける。それは別に良いんだ、そこ迄は、と。
但し。
「ホワイトデーにお返しをする時に、義理チョコのお返しに成る、ってのが嫌なんだ。」
リッパーは男の言葉を聞いて考える。確かにそうかも知れ無い。義理のものに対して義理を返す、なんだか可笑しな話である。いや、義理が好きなサムライとかは、別に良いのかも知れ無い。
けれど男は、そうじゃ無い、と言った。
そう言えばこの男は、どちらかと言えばサムライなのだった。
「義理チョコのお返しってことは、義理のお返しってことだろう?」
おれのホワイトデーは義理のつもりは無い。
だって嫌じゃ無いか。
「例え返す元が義理チョコでも、おれの気持ちは義理じゃ無い。」
だって嫌じゃ無いか。本命のお返しなのに、貰ったチョコが義理だったからと言って義理のお返しだと思われるのは。
リッパーは男の言葉を聞いてまた考える。
なら問題無い、と。
「今年からはわたしもおまえ宛を特別仕様にします。」
これなら文句無いでしょう、と。
こうして、リッパーはチョコの送り先を失わずに済んだ。
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