ortensia
2024-01-20 20:48:00
1166文字
Public 傭リ
 

りょうけんとてんたくる。とえみりー。傭はぶっ倒れてるので喋りません(りゅーけつひょうげん)。

患部や施術はすごくてきとーです、なんも考えてません。

 あいつが撃たれた。
 稼業が裏社会の世界に座するものだから銃槍なんてしょっちゅうだったが、左目を抜かれた。
 小癪なくらいすばしっこいのが取り柄でしょうに。
 朦朧とした意識で重たくなった体を引き摺って、抱え上げて、運び込んだ裏社会に一枚噛んだ医師の元に運び込めば、黙って直ぐに診てくれた。あゝ、本当はお嬢さんにこんなに慌ただしくしかも薄汚れた男をその儘預けるなんて無茶、したくてするわけじゃないのに。ぐちゃぐちゃになった、この男の見慣れない左目に、自分で思ったより動揺していたらしい。医師の方が、職業柄か、ずっと冷静だった。
「銃弾がまだ入った儘だわ。でも今ここでは器材が何もかも足りない……!」
 彼女に倣ってよく見れば、病室は何かの襲撃を受けたようで部屋の半分は木っ端微塵だった。今の今迄気付かなかったなんて、本当に気が動転していたらしい。彼女自身、頭や至る所に自分で包帯を巻いているようなのに。
……弾を、取り出せばいいんですね?」
「先ずはね!でも……
 左手を、しゅるりと先を細くさせる。
 それを見た医師は目を見張り、直ぐに消毒液と麻酔を持って来た。
 男に麻酔を打た後、乱雑に、しかししっかりと消毒された左手の先を、男の左目の中に潜り込ませる。
 ひしゃげた眼球の手触りを抜け、ぬるりとした血液と肉の感触の合間につるりと骨を触る。これじゃない。身長に、筆を細く使うように、金属を探す。探す。一つだけ違う感触が、男のものではない、有った、それを潰れた目玉の横から引き抜く。
 からん。
 煤けた病室の床に彼女が置いた皿の上に取り出したそれを落として、二人で思わず息を吐く。
 しかしまだ終わりじゃない。
「この……目は……
……もう、そっくり取り出して仕舞うより他無いわ。」
 これが失明、か。
 彼女は残ったまだ使える器具を駆使して目玉の奥を、表面の肌を縫合した。
 それをぼんやりと眺めていた。
「あの……
「なに?」
 ころん。
 取り出した厄介者の隣に、自分の左手からそれと同じ雫を一つ落とす。
「貴方これ……
 医師はまた目を見張っておまけに瞬いた。
「義眼というものが必要になるのでしょう?」
「ええ、まあ……
「わたしじゃだめですか?」
 彼女は最初驚いたように瞬きだけ繰り返していたが、やがてくすりと笑って「わたし」を掬い上げて、男の左目に嵌めた。
「ぴったりね。」
 彼女の感心したようなその言葉には、疲れたふりをしてそっぽを向いた。
「大きさが合っても、白い眼球の色も、瞳の色も変わることになります。」
「良いんじゃない。」
 医師とは思えない感想を口にした。
「お似合いよ。」
 にこりと笑った彼女と、麻酔が切れるのを待った。
 そもそも、おまえがこんな傷作るのが悪いのだ。


—————————————————————
いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。