緩やかに波打つ栗毛が視界を掠め、うつらうつらの
舫い船から静かに
陸へと引き戻される。縁側に腰掛けこちらに背を向ける男の、光の加減で黒にも見える髪は低い位置で無造作に束ねられ、僅かに覗く
白皙のうなじを益々引き立てている。
揺れる毛束ですら
愛しいなどと。
己がとことんこの男にやられきっているのがなんとも悔しいような、それでいて煮詰めた砂糖の甘ったるさが鼻に抜けるような、どうにも不思議な感覚が悩ましくも心地良い。
まるでうら若き乙女のような青くて赤くてじりじり焦げ付く感傷はこの際置いて、背を向けたままの男の気を引くための適当な言葉を考えるとしようか。故郷の海を宿したようなあの碧色が見たいものだと、胸中の
乞い心を悟らせないように。
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