nina_40enaga
2024-11-20 19:42:01
1345文字
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ハイパーふかふか欠勤生活



 「今夜ってほんとに楽しいね! 歌い出したい気分だ」
 お酒を飲みながら笑顔でそう言っていたスコーピウスが本当に歌い出したのか、ぷつりと記憶が途切れてしまってわからない。気づいたら僕はあまり見覚えのない天井を見つめていた。信じられないくらいふかふかの毛布をかぶっていて、ベッドは僕が五人くらいは横たわれそうなほど広かった。頭がいたずらにふわふわとしてしまって、いろいろなことが曖昧だった。暖かい布団から身を起こすのは困難で、だからと言っていつまでも先延ばしにしている場合でもなかった。
 身体を起こして辺りを見渡す。見覚えがあるのかないのか曖昧だった。部屋にはベッドがあるだけで特徴がなかった。窓にかかったカーテンを開けてみるのが先か、ドアを開けてみるのが先か少しだけ考えて、ドアに近づく。扉を開けると見知った金髪が視界に飛び込んできた。
「アルバス! 目が覚めたんだね」
 僕のたった一人の親友はそう言って僕に飛びついてきた。後ろに倒れそうになる僕を、飛びついてきたのと同じだけの力強さで引っ張って支えてくれる彼は、僕の顔をうっとりと見つめていた。
「良かった。君、三日も寝てたんだ。僕調合を間違えちゃったのかと思った。でもきっと疲れてるだけだと思う」
 スコーピウスの言葉は相変わらず難解で、どの部分から尋ねればいいのかすぐにはわからなかった。
「調合って何?」
「アスフォデルの球根の粉末、煎じたニガヨモギ、カノコソウの根、催眠豆の汁」
 彼の頭の中にはいまだに『薬草ときのこ千種』が存在しているらしい。ホグワーツを卒業して一年も経ったのに。
……生ける屍の水薬か」
「その通り! スリザリンに十点だ」
 記憶が途切れる前の夜、僕は彼が作ってくれたギムレットを三杯飲んだ。三杯目を一口飲んだ直後から急激な眠気に襲われたことを思い出す。まさか一服盛られていたなんて思いもしなかった。
 スコーピウスは恐ろしく機嫌が良く、ふんふんと鼻歌を歌い出しそうな口ぶりの彼に、まだ疑問符がつきない僕は首を傾げる。
「スコーピウス、さっき三日って言った? 今日って何曜日だ?」
「水曜日」
 スコーピウスの言葉にさーっと背筋が寒くなる。無断欠勤という四文字が浮かんで、僕は意味もなく両手を上げ、ゆっくりと下ろした。
「なあ、無断欠勤したあとって、どうしたらいいんだっけ?」
「どうもしなくていいんだよ」
 スコーピウスはそう言って、僕の身体を抱き寄せて、優しくぽんぽんと背を撫でた。
「君がそんなに自己管理が下手だったなんて、僕は気づかなかった。でも大丈夫。今日から僕が全部やってあげる」
「全部ってなに?」
「僕は君を失うわけにはいかない。だから僕が全部やってあげる。大丈夫。きっとうまくいくよ。だって世界で一番君のことを知ってるのは誰だと思う?」
 スコーピウスはふわふわと微笑んで、僕の聞きたいことには全然答えてくれなかった。僕は諦めて、スコーピウスの質問の答えを考える。答えは考えるまでもなく明白で、目の前にあった。
「君だ」
 僕の答えにスコーピウスは声をあげて笑うと、みたび僕の身体を抱きしめた。彼の腕の中はぽかぽかと温かくて、あらゆることがどうでもいいような気分になった。