Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ちよど
2024-11-23 00:00:00
4013文字
Public
アシュヨダ
Clear cache
わし様が宝珠にちゅっちゅっするだけの話
アシュヨダ。何事も起きない。いちゃついているだけ。 pixivより再掲。
アシュヴァッターマンがドゥリーヨダナの部屋に入ると、部屋の主は豪華な3人掛けのソファーに仰向けで転がっていた。
細やかな刺繍が施された肘掛けに頭を預けると、長身のドゥリーヨダナの足はソファーからぐったりとはみ出てしまう。
よほど疲れているのか常ならば長髪で落ち着いた色の礼服を纏っているドゥリーヨダナが、今は短髪でラフな格好で行儀悪く溶けていた。
膝までめくれた薄紅色のドウティにアシュヴァッターマンは思わず目をそらす。
「また周回か?」
「今日は夕方からなので今のうちに休んでくれ、だそうだ」
マスターからの伝言にドゥリーヨダナは顔を覆った。
「もうヤダ! サーヴァント労働基準監督署に訴えてやるー!!」
「そんな部署ねぇだろうが」
呆れながらもアシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの頭部の側で膝をついた。
「何か食堂でうまい物でももらってくるか?」
「ふむ。それもいいが、今は癒やしが欲しい」
「癒やし?」
ドゥリーヨダナの両手がアシュヴァッターマンの頬を包む。
そのまま引き寄せられるかと身構えたアシュヴァッターマンの顔を、硬い戦士の指が伝った。
輪郭をなぞり、膨らみを確かめ、くぼみを撫でる。それはまるで目の見えない者が相手の顔を知ろうとしているようで。
しかしドゥリーヨダナの目にはちゃんとアシュヴァッターマンが映っている。
だからこれは誰かの真似なのだ。
おそらくはドゥリーヨダナの両親が彼にした仕草を、彼はアシュヴァッターマンに再現している。
凶兆の子と呼ばれた彼を愛し守り抜いた彼らが、ドゥリーヨダナに接したのと同じものを。
それはきっとアシュヴァッターマンが受け取るには大きすぎるモノ。
だから、アシュヴァッターマンは鏡合わせのように手を伸ばした。
そっと触れたドゥリーヨダナの顔は見た目よりは柔らかく滑らかだ。
特に頬は男の精悍さを持つというのに、アシュヴァッターマンの指を柔らかく受け止めた。
よく笑う者は頬の筋肉が柔らかいのだと聞く。
なるほど。くるくると表情を変えるドゥリーヨダナの表情筋は固まる暇もないのだろう。
確かめるようにアシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの顔に指を滑らせる。
それがゆっくりと動いた。
アシュヴァッターマンのすぐ前で蕩けるような笑みが浮かぶ。
「わし様のアシュヴァッターマンは男前だな」
「あんた程じゃねぇよ」
「わし様がかっこよくて最高なのは言うまでもないだろう?」
するするとドゥリーヨダナの指がアシュヴァッターマンの前髪を潜る。
「あっ!」
アシュヴァッターマンが声をあげた時には、その指は彼の額の魔除けの宝珠に触れていた。
宝珠が熱を発する。
魔性属性を持つドゥリーヨダナを焼いて。
「旦那! 大丈夫か!?」
慌てて離れようとしたアシュヴァッターマンをドゥリーヨダナは引き寄せた。
「これくらい大したことではない」
懲りずに宝珠を突付いて遊ぶドゥリーヨダナに、アシュヴァッターマンは首を振って逃れようとする。
「火傷するだろうが!」
「なに、最悪魔力を補給すれば治るだろう?」
「
………
どこからその魔力を調達するんだよ」
「言われば分からぬか?」
にやにやと笑うドゥリーヨダナを振り切って、アシュヴァッターマンは顔を隠した。
正確には仰向けに寝たままだったドゥリーヨダナの腹部に顔を埋めたのだ。
そこより他に顔を隠せる所が無かった。
自分の両手で顔を覆ってもドゥリーヨダナはあれこれとちょっかいをかけて手を退かさせることが明らかだったので。
布越しなら魔除けの宝珠は効力を発揮しない。ドゥリーヨダナの黒い上着をしっかり掴んで全力で顔を守っているアシュヴァッターマンに彼は笑った。
「ふははは、これは、あれだ。猫吸いというヤツだな」
「吸ってねぇ!!」
アシュヴァッターマンの体勢を笑う硬い腹筋の振動と共に、ドゥリーヨダナの花のような体臭がアシュヴァッターマンに伝わる。
ますます顔を上げられなくなったアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナはにたりと笑った。
彼が手をちょっと伸ばせば、その赤い髪に届く。
さらさらとした髪を梳き、こめかみを撫で、真っ赤になった耳朶を摘む。くすぐるように指を動かせば、アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの腹部にぎゅうぎゅうと頭を擦りつけた。
顔を上げろ、とドゥリーヨダナが言えばアシュヴァッターマンはそうするだろう。だけど、それは面白くないとドゥリーヨダナは思う。
代わりにドゥリーヨダナは、アシュヴァッターマンの項を撫で下ろし、首の防具を越え、無防備な背中へと指先を到達させた。
かがんでいるため浮き出た背骨を数えるかのように指を遊ばせると、アシュヴァッターマンがくぐもった呻きをもらした。
次の瞬間。
「おいおい、それはさすがにズルだろう?」
霊衣を編み直し全身を甲冑に身を包んだアシュヴァッターマンに、ドゥリーヨダナは声をあげる。
返事の代わりにドゥリーヨダナの上着が更に握り込まれた。
防御を固めたアシュヴァッターマンに、ドゥリーヨダナは目を細める。
「ふむ」
思いついてアシュヴァッターマンをからかっていた手に霊力を込めれば、すぐにソレはドゥリーヨダナの掌に出現した。
ソレを握り込んだまま、ドゥリーヨダナは手をアシュヴァッターマンの背中から首筋へと移動させた。
手の甲を装甲に滑らせる。
甲冑というものは身につけて動く事を前提に作られている。そのため主要な可動域には遊びが作られており。
果たしてアシュヴァッターマンの項には、胴の装甲とヘルメットの動きを阻害しないための隙間があった。
そこにドゥリーヨダナは握り込んでいた物を落とし込む。
突然の違和感にアシュヴァッターマンが飛び上がった。
背中を滑り落ちる、冷たく、小さく、固く、角があるモノ。
ドゥリーヨダナの所持品の中から該当するモノに思い至った瞬間、アシュヴァッターマンは身にまとっていた甲冑を消した。
開放された背中からコロコロと硬い音が床に落ちる。
振り返ったアシュヴァッターマンは、想像通りの品物を見つけて顔を強張らせた。
それはドゥリーヨダナの叔父が愛用していた骰子。
生前はその正体を知らなかったが、サーヴァントとなったアシュヴァッターマンはその骰子の来歴を知っている。
「あーあ、シャクニ叔父におーこられるー」
抑揚をつけて囃し立てるドゥリーヨダナは、骰子を床に落としたアシュヴァッターマンが悪いのだと笑う。
もちろん諸悪の根源はドゥリーヨダナだ。
それはアシュヴァッターマンも分かっているが、これが子供が構って欲しさに相手の服を引っ張るのと同じだとも分かっていた。
要するに甘えている。
「旦那は、本当に仕方ねぇなァ」
アシュヴァッターマンが緩む表情をなんとか隠して呆れてみせると、ドゥリーヨダナは子供のように不貞腐れた。
「わし様悪くないしー」
「分かってる、分かってる。旦那はまあ、多分、悪くない」
言いながらアシュヴァッターマンは床に散らばった骰子を摘みあげる。
材料を知っていれば異様だと分かる滑らかな感触に、これを加工した者の執念が伝わってくる。
掌に全ての骰子を拾い集めて、アシュヴァッターマンはつい思考を揺らした。
「やめておけ」
ドゥリーヨダナの強い声がアシュヴァッターマンを掴む。
「そいつらは、そう有りたいと思ってそう成ったのだ。本懐を遂げた者に与えられるべきなのは称賛だけだ」
それは、ドゥリーヨダナの死の前後から変わり果てたアシュヴァッターマンにも向けられた言葉だった。
ドゥリーヨダナは夜襲の失敗も、その後の敗北も、アシュヴァッターマンが受けた呪いの事も、何も気にしていない。
今も呪わしい来歴の骰子をアシュヴァッターマンから受け取り、にやりと笑う。
「何はどうあれ、こんな便利なモノはわし様が使ってやるのが正しいというものだ」
ドゥリーヨダナが骰子を握りしめ、また開くと、その掌から骰子は消えていた。
三千年の不死の呪いを受けた青年は、その様子をどこか羨ましく眺めた。
「旦那は、俺も使ってくれる、よな?」
「わし様は友を大切にするぞ」
「知ってる」
使わない、とは言われなかった事に安堵して。アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナが手招きするままに顔を寄せる。
ドゥリーヨダナの手がアシュヴァッターマンの頭に絡みつく。
顔が、近づく。
額に熱が走った。
「旦那っ!」
ドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンの額の宝珠に口づけしたのは一瞬。
すぐに唇を離して、ドゥリーヨダナは勝ち誇ったようにふふんと笑う。
その唇に火傷は無かった。
再度、ドゥリーヨダナが宝珠に唇を落とす。そして宝珠が発熱した瞬間に唇を離す。
ちゅっちゅっと音を立ててそれを繰り返すドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは悟った。
さっきドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンの額の宝珠をしつこく突付いていたのは、宝珠に焼かれないタイミングを探っていたのだと。
「旦那、どうしてそこまで」
宝珠にこだわるんだ?
アシュヴァッターマンの疑問にドゥリーヨダナは当然のように答える。
「おまえの体にわし様が触れられない場所があってはならないだろう?」
そうだろう? わし様の、アシュヴァッターマン。
子供のように傲慢なその問いかけに、アシュヴァッターマンの体中を巡る血液の温度が上がる。
アシュヴァッターマンは肯定以外の返答を持たなかった。
なぜなら、アシュヴァッターマンの全てはドゥリーヨダナのものだから。
アシュヴァッターマンは微笑んでドゥリーヨダナの体に腕をまわした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
Wavebox
はこちら
Bluesky
SNSはこちら
無断転載、無断使用はしないでください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内