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残りの夜が来た
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ファ。
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キリエ
若い狂児と聡実くんのパラレル モグリの仲介と神の国お兄さん 狂児20代くらい
2024/11/19
クリスマス前の新宿駅は、「神の国は近い」とかいうよくわからない内容の看板を持った青年をはじめ、仕事帰りのくたびれぎみのスーツをきたサラリーマン、バスターミナルに向かい大きなスーツケースをひきずる旅行者、今夜の寝床を探す労働者、今から飲み会に向かう若者たち、それを引っ掛けようとするキャッチなどなど、雑多なひとびとでごった返している。新宿は年がら年中こんな感じだからクリスマスは関係ないのだろうが、とにかくごった返している。
高校を出てからすぐに上京し、それから数年、さまざまな人間の部屋を転々としている狂児は、特定の土地に対してなにか特別な感情を抱くことがない。それは新宿というもの対しても同様で、狂児は新宿がとくに嫌いというわけではなく、とくに好きというわけでもない。よってここに通っている理由も
――
おそらく他の大多数と同じく
――
好きだからというわけではないのだが、巨大な駅から吐き出されては消えていくひとびとを見ているのは、愉快だったし、どこか安心した。多分、わかりやすいからだと思う。新宿に降り立つ人間の目的はさまざまだが、それらはどれも覆い隠さず露呈されていて、ぼんやりしている狂児でも、ここならそれを取り違えてしまうことはなさそうだ。
そのなかに異分子がいるとすれば、やはり、
いえすー、きりす はー、すべてのー、つみびとのー、
神の国は近い。謎の看板にくくりつけられたスピーカーからは、かすれた声が漏れている。それをほぼ抱きかかえるようにして支えた青年が、毛玉のついたネックウォーマーに顎を埋め、口を結んで立っている。時折手に息を吹きかけて手先を温めると、同時に眼鏡のレンズが曇る。分けられた前髪からのぞく色素の薄い目は、道行く人々の顔形をひとつひとつスキャンしながら、誰かを探しているようで、しかし同時に、はじめから彼の尋ね人はどこにもいないということをわかっているようでもある。ちょっと胸にくるような必死さと、慰めることのできないような絶望が同居していて、気づいてしまうと目が離せない。
おそらく、新宿でそんな難しい顔をしているのは彼くらいだった。そして、新宿中の全ての人間が彼を見ないようにしているから、それに気づいているのも狂児くらいだった。
つみ ー、せおいー、じゅ じかにー、
さらさらの髪が風にふかれて乱れ、冷えて真っ赤になった耳たぶが覗いた。長いベンチコートもネックウォーマーも、こんなところに立ちっぱなしではそれほど役に立たなそうだった。たしかに今日は寒い。俺もめっちゃ寒いわ。
しんど。
「きょーじ」
名前を呼ばれて振り返る。待ち合わせていた女性が、人混みの隙間をぬって近づいてくるのが見えた。やっとだ。
女性は狂児の知り合いではない。この女性のことは何一つ知らない。しかし狂児は他の誰でもない、この女性を待っていた。どんなに楽しくても、人間観察をするために出てきたわけではない。
「待ったわ〜」
笑いを浮かべながら、一応は抗議しておく。しかし彼女は特に悪びれもせず「ごめんね」と首をかしげた。「新宿ひとやばい」
「いつもやん」
「ね。みんなどこからわいてくるんだろ」
面白いこと言うな、と狂児は思った。自分たちもそのうちのひとりに違いないのに。
ふふと笑うと、こちらが喜んだと思ったのか、彼女も嬉しそうにふふと笑った。
「でもよかったー!ふつうは紹介所? とか通すでしょ。ちゅーかいりょー、給料からひかれて」
「せやねん」
間髪いれずに返事をする。
「わたしのともだち、すごい引かれてて」
「かわいそうに」
「でしょー。でもわたしはぜんぶもらえるんだよね」
狂児は彼女の耳に唇を寄せた。電子タバコの匂いがする。「あんまおっきい声で言わんといてな」
「んふ、はーい」
ふいに足元から寒さがよみがえってくる。立ち話をする必要など全くなかった。
み からー、 がわ となっ ー、
狂児は神の国の案内人に目をやった。次に来る時も彼がいたらいいなとちらりと思う。
「そんなら、こっち」
「はぁい」
狂児がやっているのは、風俗店と、そこで働きたい人間の仲介だ。ただしモグリの。狂児も他のものも皆、このあたりの"正規"の元締めの目を掻い潜ってやっている。
もちろん、その類の店で働く意思のない人間を無理やり引き摺り込むようなことはしない。そんなアグレッシブさは狂児にはない。なんならはじめは、ほんとうに1円のバックもなしに紹介をやっていたのだ。転がり込んでいた部屋の主その1と、転がり込んでいた部屋の主その2の需給がマッチしたのがきっかけだった。そんなことある?とどちらも爆笑しており、狂児もそれなりに愉快だった。自分の外側でパズルのピースがはまっていくみたいで。
ピースは別のピースを呼び、気づけば狂児は風俗店からキックバックを得られるようになっていた。狂児だけではない。正規の紹介所に高い仲介料を払わなくて済む分、就職希望者も店も取り分が増える。万々歳だ。
しかしこれは歩合制のため、狂児の待ち時間そのものには1円の価値もなかった。約束をしていても来ない人間はいるし、狂児と同じようなことをやっている人間に直前でお客を取られることも多々ある。だが狂児は待つことしかできない。寒空の駅前で、恋人でも何でもない人間をただ待つのは辛い。辛いから、特に使うあてもないキックバックの額を計算し、部屋の主に高いアイスでも買って帰ろうかなんて考えながら、寒さやその他もろもろのことをごまかすしかない。スマホを見ると、待ち合わせた時間からさらに1時間以上経過している。
「
……
」
どこもかしこもてんでバラバラにクリスマスの歌を流しているせいで、変なハーモニーが耳の中にこびりついて取れなくなりそうだった。しかし狂児はその音を讃美歌のように受け入れた。新宿では、音も光も何もかもが、狂児を通り抜け、それぞれの向かいたい方だけに向かう。それがいいなと思う。なんだか安心するから。待ち人が来なくてもそんなものかと思えるから
と考えた瞬間、
いえすー、きりす はー、すべてのー、
自分もコーラスに加わろうかとでもいうようにザラザラの声がしたので、狂児は吹き出してしまった。ちょっと鼻水が出た。
スピーカーをもっているのは例の青年だった。彼は毎日同じ長いベンチコートを羽織り、同じネックウォーマーに顎を埋めている。毎日毎日、皆が回遊魚のように泳ぎ回る夜の新宿駅前でじっと動かずにいるのは、この青年と、待ちぼうけを食らっている狂児くらいだ。
毎日毎日見ているから、狂児は、青年の顔に愛着以上のものを覚えつつあった。いかにも誠実そうな顔立ちと、持っている看板やスピーカーからの脅し文句が全く釣り合わない。彼自身も神様からの警告に興味があるようには見えず、今夜もやっぱり人混みに誰かを探しているその立ち姿は、周りの光からも影からも浮き彫りの宙ぶらりんで、それがかえって彼を本当に神様の使いのように見せていた。ただ、そのことに気づいているのはやっぱりこの地上で自分だけのような気がする。
優越感に浸っていると、すっかり薄くなったダウンのポケットでスマホが震えた。やっと来た、
と思ったのに、
「
……
」
通知枠の中にごめんなさい遅、という文字が見え、狂児はもうそれだけで画面を暗くした。
帰るか。
……
あかんか。
寒いな。めっちゃ寒い。
寒いが、狂児は屋内に避難せず、ガードレールに座りなおすにとどめた。同じように寒さに震え虚無とも思える行為に勤しむ人間がいると思えば、まあ、耐えられないこともなかった。狂児は神様の使いに話しかけた。寒ない?今日も見つからへんの?一緒に探そか?
つ びとのー、 みをー、せおいー、じゅう かにー、 りつけ なりー、
狂児の表向きの職業はフリーターだ。しかしこのところ毎日新宿での用事が発生しているので、毎日新宿に訪れざるを得なくなっている。毎日新宿で人を待つから、毎日夕方からのシフトに入れない。狂児はそのうちバイト先をクビになるだろう。そうなれば、怠惰を嫌う今の家主からは追い出されてしまうだろう。困るなあと思いながらも、狂児は新宿行きの電車から降りられない。
寝るのはどこでもよかったが、できればあたたかいところがいい。動物として当たり前の欲求だが、狂児はどうしてかそれを死守することができなかった。あたたかい寝床と引き換えに相手から求められるものを、狂児は相手に与え続けることができないのだ。
そんなに大層なことではなく、買って帰るアイスを間違えたり、なんのきっかけもなくバイトを辞めてしまったりするだけなのだが、それら綻びをひとつひとつ説明し、修復し、関係を維持する能力が絶望的に欠けていた。欲求を取り違えたり、欲求が変容したりするのは、きっとごく当たり前のことなのに、狂児はそれに対応できない。
きっと一生このままなのだと、狂児は二十歳そこそこにして気づいてしまっていた。それならばもう、全部の欲望が自分の空洞を通り過ぎて、その先でみんなそれぞれが幸せになればいいのではないかとすら思っていた。ただ、やっぱりあたたかい寝床はほしい。そのためにこうして待っている。待ってるだけで手に入る、そんな上手い話はないとわかりながら。
それから何時間か経ったが、待ち人は結局「明日でもいい?」と汗の絵文字つきのメッセージを寄越してきただけだった。
猛烈な虚無感に襲われたが、そういうこともあるだろうと思いなおす。寒さで麻痺した頭に強い感情は一切浮かび上がってこず、何かを返信しようとしても冷え切った指は全く動かなかった。今からどっち方面の何線に乗ればいいのか、それすら思い出せない。
ぼんやりと神様の使いを見る。彼はまだ帰らずに働くようだ。
「
……
」
待ち続けるあいだに、狂児はスピーカーが唱える文句を全て聞き取れるようになってしまっていた。いえすきりすとはすべてのつみびとのつみをせおいじゅうじかにはりつけになり、みずからみがわりとなってしんだのです。
そんな。ひどない。
ひどいけど、ちょっとわかる気するわ、そうしたなる気持ち。
自分はどう思う?
明日すっぽかされたら彼に聞いてみようと狂児はぼんやり思った。
翌日はなんと夕方から雪だった。
たくさんの靴に踏み荒らされながらもなおうっすら白くなり始めたアスファルトを眺めながら、すっぽかされた場合の予定を立てておいてよかったと思っていたのだが、彼女は無事現れた。1時間半遅れだったが。
「昨日はごめんなさーい」
凍えてもはや感覚のない頬にぽつぽつと、おそらく雪だろうというものが当たって溶ける。こわばった皮膚をなんとか笑顔の形にして歌舞伎町のほうへ歩きだしたが、彼女は立ち止まったまま、ちょっと笑って首をかしげた。フード代わりのマフラーに、雪の結晶がきらりと光る。
「わたしが今からすっぽかしたらきょうじくんどうなるの?」
「
……
ん?」
急に立ち止まった狂児を中心に、一瞬だけ人の流れが乱れた。後ろを歩く男の傘がボヨンとぶつかる。
「お金もらってるんでしょ」
「どういうこと?」
「来たけどやっぱやめよ~とかアリなの?」
「好きにしてええよ」
彼女を振り返ったのはちょうど、神様の使いのすぐ近くだった。スピーカーの音がうるさいせいで狂児は声を張り上げなければならなかったが、どうせこの回遊魚のうち誰ひとり自分たちのことを見てないし、話も聞いてない。「他の子紹介するから」
「そっか~」
「どうする?」
「え、いく(笑)」
「
……
」
「いくけど、いくら貰ってんのか教えてほしい(笑)店より楽ならこっちやる(笑)」
カッコ笑い、に、狂児は珍しくすこし苛立っており、それ以上にそういう自分に驚いていた。それでも少しは思いを馳せた。彼女を紹介する店で働くのとこの仕事とでは、どちらが楽なのだろうか。狂児の貰える額は慎ましやかなものだけれど。だけど。
……
いえすきりすとは、すべてのつみびとのつみをせおい、じゅうじかにはりつけになり、
青年と視線がかちあった。
微かに見開かれる目。
「あー言えない感じ?」
「うん、ナイショ」
「(笑)」
彼女とはそれきり口をきかなかった。無言で店の裏口に連れて行き、店員に預ける。彼女がこの店で働くならこちらにキックバックがあるし、働かないならない。もはやどちらでもよかった。ただ早くここから立ち去りたい一心だったが、
「そうだわすれてた」
彼女は最後に振り返り、手を振った。「メリークリスマス(笑)」
雪は徐々に強くなってきていた。踵を返して駅に向かおうとしたが、西武?都営?メトロ?山手?新宿からはどこでも行けるから、どこに行くかわからんようになってしまう。どの線に乗るにしてもその前に頭を冷やさなければならないと思いながら、なんの考えもなしに裏道に入った。
彼女との会話を思い出すと、ちょっとその辺のものを蹴り飛ばしてみたいような衝動に駆られるが、同時に恐ろしい速度でばかばかしさに胸の奥が冷えた。考えるのをやめれば良いのに、狂児の脳は温度差でガタガタだった。
さむ~。あかんわ。なんかもう、寝たい。どこでもでええから。
いつものことやろ。
いつものことやんなあ。
ポケットの中で携帯がやたらと震えていたが、今は触る気になれなかった。でたらめに暗い方へ暗い方へと歩いて、雪なのに夜なのに裏道なのに、それでもまだ明るい新宿に初めて明確な嫌悪を抱き、遠くのネオンや呼び込みの声、虫みたいにちらつく雪で、ぼおっとなった頭の中で、そんなにあかんかなと考える。
あかんかな。あかんよな。わかってるよ。でも俺はただ
「
……
」
考えるのは苦手だった。
考えを捨てたくて、頭のなかにこびりついているあの間延びした妙なリズムに合わせ、狂児は呪文のように文句をとなえた。
……
えすー、 すとはー、す てのー、 びとのー、 みを、
「せおいー、じゅうじかにー、はりつけにー、なりー、みずからー、みがわりとなってー、
……
」
しんだのです。
「
……
死んどるやん」
思わずつぶやいた瞬間、目の前に星が散った。あごが、痛、
うしろから殴られて倒れたのだと思い当たったのは、腹を蹴り上げられてからだった。
怒号もなにもなく、狂児はひたすら無言で蹴られ殴られた。腹や背中、命に関わりそうなところが猛烈に痛い、痛いを通り過ぎてただの衝撃になっているというのに、掴まれた頭ごと突っ込まれたゴミ袋の中から飛び出てくる得体の知れない何かが口の中に入ったり出たりしているとか、いずれかの家主からもらった薄いダウンががボロボロになっていくとか、そういうどうでもいいことに憤りを覚えた。覚えたけれど、半分は、まあ、そううまくはいかへんよなと、頭のどこかでぼんやり考えていた。
……
そううまくいくはずがない。こっちが素人だからといってヤクザがいつまでも黙認するわけがない。あちらは本気の商売だ。
……
だからなんやねん。知るか。いえすー、きりすとはー、じゅうじかにー、俺はただ、笑って欲しくて、はりつけにー、なりー、
……
いや、うそ。ただ、あったかいとこで寝たくて。
でももしかして、こうしてどこでも寝られるような人間は、それ以上を望んではならないのかもしれない。
みずからー、みがわりとなってー!!
なにしとんねん!!!!!!!!
「
……
」
薄目を開けると暴力は通り過ぎていて、何故か神様の使いが狂児を覗き込んでいた。あかん。死んだ。
「生きとった
……
」
生きているらしい。「平気か
……
?」
「
……
」
生きてはいたが平気ではない。起きあがろうとしたが、身体のどこにどう力を入れたものか、自分の身体にも関わらず正解が全くわからなかった。どこもかしこも痛むし、どこもかしこも自分の意思で動かすことができない。
目だけなんとかもう少し開けると、なぜか青年も頬を腫らしている。狂児は自分の痛みを忘れて唖然とした。
「なんで
……
?」
「僕まで殴られたわ」
「
……
だから、なんで」
「スピーカーの音で警察やおもったみたい。すぐバレてもうたけど
……
」
青年は切れた唇が気になるのか、しきりに舌で確かめては顔を顰めている。その赤を見た瞬間、狂児は、激しい自責と後悔、そして深い悲しみに襲われた。
なんで。
なんで、ここにおるん。
なんで、こんな、ゴミ溜めにおるん。
君天使ちゃうの。
「ちゃうわ。バイトや」
「
……
うそーん」
雪が強くなってきた。まぶたを開けているのが辛くて半目になる。その隙間に冷たい塊が挟まって溶ける。
「
……
お前は」
「
……
ん
……
」
「お前はなんで、こんなとこにおんねん」
「
……
生やと、めっちゃ綺麗な声やね」
「答えろや」
「
……
バイト
……
」
夜なのに明るい空からごみみたいな雪が落ちてくる。それを特等席から見上げる、その景色を焼き付けて、目を閉じた。いえすきりすとはすべてのつみびとのつみをせおいじゅうじかにはりつけになり、みずからみがわりとなってしんだのです。うーんひどいな。ほんまにひどいわ。ひどいしほんまにごめんやねんけど主よ。
主よ憐んでください。主よわたしたちの痛みを分かってください。主よ、私たちを憐れんでください。
狂児が青年と再会したのは春先で、青年はまだ新宿駅前で労働に勤しんでいた。人探しが終わらないのかもしれない。ひとあし先に新宿での労働から足を洗った狂児は、ガードレールにもたれてぼんやりと彼の姿を眺めている。青年の仕事が終わったら食事に誘うためだ。
いえす
……
りすとは、すべての
……
びとのつみをせおい
……
録音やなくて君が直に話したら、ここらにおるやつなんぼでも信者になるんちゃうのと思いながら、そんなことをされたら大変困るとも思う。いくらバイトとはいえ。
狂児はどうしても彼と会いたかった。彼が誰を探しているのか知らないし、相手が見つかるまでの暇つぶしでもいいから、どうしても彼と話したい、その一心で新宿に来ていた。初めての欲求に胸がザワザワしたが、そこにはなぜかしら懐かしさが混ざっていて、奇妙で心地よい。
生ぬるいビル風が吹き、埃でも飛んできたのか、青年がこちらの方向に首を捻る。狂児は手を挙げて、ひらひら振ってみせた。気づくかなー、どうかなー、
視線がかちあう。
見開かれる目。
あ、覚えてた、と思う間もなく、彼は大股でこちらに向かってきた。「
……
え」
なぜか怒ったような顔をしているのが可愛い、なんていうのはかりそめの余裕で、狂児の心臓は飛び上がって暴れていた。あれ、どないしたん。えー、ひさしぶり。あ、ひょっとして君、俺のこと探してた?なーんちゃって
――
(終わり)
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