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2024-11-19 00:38:54
530文字
Public 💰短い金カ夢
 

お題「襟巻き」

nkid
(金カ夢文字書き24時間一本勝負様参加作)

兵舎に置き残した行李のことを考える。
洋平と一緒に田舎から出てきた時から増えもせず減りもしない、ひとつで二人分の荷物。一着ずつの着替え、風呂敷、両親からの手紙と、ほんの少しの小遣い。それから、二本の襟巻き。
傷むのも失くすのも嫌だから、あの日のまま行李に入れ続けている。訓練の辛さに慣れるまでは、時折出して眺めることもあった。頑張れ負けるなと励まされるような気がして。でも多分、洋平はそうじゃなかった。
「どうしてるかなあ」帰りたい、会いたい、そういう言葉の代わりに洋平はそう言っていた。

いつか杉元を殺したら、もう俺はここに何の未練もない。除隊でもいい、脱走兵になってもいい、田舎へ帰ろう。
その時俺が巻くのは、黄色い襟巻きだ。
「おかえりなさい、洋平くん」
そして彼女は俺の不在を悲しむだろう。骨もない俺の墓に緑の襟巻きを巻くだろう。

────まただ。
靄もやがかかる。何かに支配される。俺でなくなる。意識が鮮明になる時に限って身体は少しだって言うことをきかない。
でも、一つだけ喜ばしいのは俺の中に洋平が帰ってくることだ。
おかえり、洋平。
ただいま、浩平。
足音は近付いて遠慮のかけらもなく扉を開ける。

「やあ、具合はどうだね二階堂一等卒」