珍しいな、和人の子供がこんな山の中に一人で。はぐれたのか?(捨てられたのか?)ホラ泣くな泣くな、腹が減るだけだ。──そうだ、いいものがあるぞ。窓…はないからな、木の陰でいいか。ふふ、楽しみだな?何だろうなぁ?…おほん。
(アシリパ)
気が向いたら、暇だったら、寂しくなったら。気がついた時には、そんな枕詞をつけずにあの子を誘えなくなっていた。俺に興味を持って、俺のために時間を作って、俺が寂しいんだよ。言ってしまえば、きっと答えが出てしまうから。ああ、逃げるのばっかり上手くなっちまったな。
(白石由竹)
あのころ。大切な人とお別れをしてきたところなんです、ってあんまり綺麗に笑ってみせるから、ひとりで生きることを厭わない女なのだとずっと思っていた。
私の知らない土地から差し出された一枚の絵葉書、これを記した無骨な文字のあなたへ。どうか友を、頼みます。
(インカラマッ)
「うぅ、助けてもらってごめんね…」彼女が仕留めたユクを目の前に、情けなさで胸がいっぱいになる。せめて私に捌かせて。
「気にするな、刺繍じゃ私は敵わない。守る者がいるから私は強くいられる」さしずめ私は母熊だな。スプーンを差し出しながら、彼女は得意げに笑った。
(アシリパ)
私がサクラで、あの子が「見る」。一度人だかりさえできてしまえばこっちのもの。私はお役御免、一稼ぎするまで町をぶらぶら。ヒモ?いやいや私だってたまには、たまーには、あの子の白い頬に似合う紅のひとつくらい買えるんだ。
(インカラマッ/束の間の二人旅)
いくら不死身でも食わなけりゃ死ぬ。ここ数日の不猟は神の怒りでも買ったのか?
「腹の足しになるまじないでもあればいいのにね」努めて明るく言ってみれば、彼女は「胸がいっぱいになれば、あるいは」鼻先一寸の距離で目を閉じた。
(杉元佐一/お題「空腹に効くクスリってありますか」)
ーずっと一緒に旅をしたいと思う?
ー占ってあげましょうか。
ーどうして?聞きたいのはあなたの気持ち。
ーいいえ、私が視るのは“あなた”。あなたが一緒にと望むのならば、良い結果が出るでしょうね。
ーねえそれ、繋いだ手じゃ答えにならない?
(インカラマッ/お題「交換条件」)
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