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ちよど
2024-11-19 00:00:00
1685文字
Public
アシュヨダ
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付き合っていないアシュヨダとビマさん
アシュヨダを見ているビマさんの独白。pixivからの再掲です。
ストームボーダーのサーヴァントが居住する区画。そこのとある一室の前で俺はためらっていた。
先程マスターからこの部屋にいるサーヴァントを呼んできて欲しいと頼まれたが、なぜ因縁のある自分なのか。そしてその場には他のサーヴァントもいたというのに、なぜ俺はそれを了承してしまったのか。
だが、呼んでこないという選択肢はない。
どんなに性格が悪くて悪辣な手段ばかりとる男でも、マスターの周回の要だ。
あの馬鹿に山のような強化素材を食わせていたマスターと、飽きただのなんだのと子供のように駄々をこねていた馬鹿を思い出して俺は顔をしかめた。
その勢いのまま手をふりあげる、ノックをしようとした手は自動的に開いたドアに空振りした。
「おい、鍵すら掛けてねぇのか」
無用心だな。とずかずかと中に入り込む。間取りはどこも同じだ。短い廊下の奥の寝室のドアを開けると、俺が真横に寝れそうなサイズのベッドに男ふたりが体を横たえていた。
俺が来たというのにシーツを被り安心しきってすやすやと眠っている馬鹿の隣で、赤毛の男が額の宝珠と同じ金色の瞳で俺を見ていた。
やつは何も言わないが、その体に力が弛められているのが分かる。
これ以上踏み込むなという分かりやすい警告に俺は声をあげた。
「ドゥリーヨダナ、周回の時間だ」
「
…
わし様は有能なサーヴァントだからな。マスターがわし様なしでは周回にいけないのも当然のこと、ふふん」
「ぬかせ。宝具を撃つだけだろうが」
「森育ちの野生児に繊細なわし様の苦労は分かるまい」
やっぱり起きていた馬鹿は馬鹿な事を言いながらベッドから降りる。覆うものがない上半身にぎくりとしたが、下着は履いていて安堵した。
そんな俺の視線に一瞥をくれて馬鹿は鼻で笑う。
「わし様が友に手を出したと思ったのか?」
「寝台に引っ張り込んでおいてよく言う」
「高貴なるわし様が独り寝などするはずもないだろうが」
「一人では寂しくて眠れねぇって素直に言ったらどうだ」
とからかっていた俺は、アシュヴァッターマンが慣れた様子でドゥリーヨダナの服を差し出し、着替えを手伝い、髪を梳いているのを見て絶句した。
「おまえ、アシュヴァッターマンに何をさせているんだ? とうとう気でも狂ったか?」
「わし様は至って正気ですー!」
「俺がさせてくれって言ったんだ」
どこか甘さがにじむ声に、俺はアシュヴァッターマンの手元を見る。そこだけ見れば女のようなつややかな髪を戦士の指がくしけずっていた。
その指先が髪の一本一本を確かめるように滑っている様に、心臓が冷たい手で撫で上げられるような気がした。
生前、俺がドゥリーヨダナを倒した後。アシュヴァッターマンは発狂した。
分かっている。気が狂ったわけではなくヤツは正気だった。正気のまま夜襲で女子供を皆殺しにし、俺たちパーンダヴァの系譜を絶とうとした。
和平を願い、生命をことのほか愛しむと言われた男は、ドゥリーヨダナと共に死んだのだ。
『ドゥリーヨダナを殺さなかった方がよかったのでは?』
誰かの呟きを覚えている。
ドゥリーヨダナが生きていれば、ヤツさえ降伏させれば、戦はだいぶ収まっただろう。だが、そんな事をドゥリーヨダナが了承するはずもない。だから俺がドゥリーヨダナを殺したことは正しい。
その正しさに怒り狂った者がいたとしても。
「わし様のアシュヴァッターマンは何をさせても素晴らしいな」
馬鹿の身支度を整え自分は霊基を編み直すだけで済ませた男の頭を、馬鹿はぐりぐりとかき回している。
くしゃくしゃになった赤毛の隙間から宝珠の輝きが見えて、目の奥が痛んだ。
嬉しそうに顔を綻ばせている男の額にある宝珠は兄の宝冠を飾ったのだ。
このカルデアでは宝珠もドゥリーヨダナもアシュヴァッターマンの元に戻っている。
「さて、行くぞ。アシュヴァッターマン」
「ああ、旦那」
昔と同じやりとりをして、歩き出したふたりに俺は声をかけた。
「アシュヴァッターマンは待機だ」
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