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ちよど
2024-11-18 20:32:47
1931文字
Public
アシュヨダ
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ひかり
初めて書いたアシュヨダ
この作品はTwitterで追放アシュくんとわし様が出会う素晴らしい漫画を拝見して頭ばーんして書いたものです。ていうか夢に見たので飛び起きて書き起こしてすぐ投稿したもの(笑)
pixivからの再掲です
どこまでも続く緑の中を永遠に彷徨っていた。
朽木や石を踏み足は固くなり、武器を握ることがなくなった手はこわばり、忘れないように大切な人の名前を呼び続けていた喉は枯れ、生まれつき額に埋まっていた魔除けの宝玉を抉られた痕は痛みを無くし、涙を流すことのなかった目はとうに乾いている。
いつの間にか伸びた髪は視界を覆っていたが、あの人のいない世界を見たくはなかったのでちょうどよかった。
ふらふらと当てもなく森をさまよう。たまに足を止めた時はどこかで嗅いだ香りの花が咲いていた。
今も。足を止めてしまったのはその香りがしたからだ。
だというのに、あたりを見回しても花はない。ゆったりと流れる風がふわりと香りを運んでいる。風上を見た。
見た。
ひとりの男がぶつぶつ言いながら森を歩いていた。
肩から掛けた布にはこんな森にはふさわしくない金の装飾。だと言うのに長い棍棒を持ち。腰には華やかな花。そしてどんなアメジストよりも美しい髪。
枯れたはずの喉が震えた。
ふてくされたような表情をしていた男は足を止める。
「まったく、わし様が有能なのは当たり前だとして。特異点にまで駆り出すのはやりすぎではないか。カルナともはぐれてしまったし。いや、ここでわし様がひとりで聖杯とやらを見つけてくれば」
くるりと魔性の瞳がこちらを向いた。
木々の影に隠れていたはずの俺を見て、その瞳が見開かれる。
「アシュヴァッターマンではないか!」
一瞬で破顔すると遠慮のない歩調でこちらに向かってくる。
不意に、自分が襤褸を身に着けている事に気がついて足が竦む。伸び放題の髪と額の醜い傷跡が気になって思わず額を覆った。
そんな自分に構わず、嬉しそうな彼は俺の顔を覗き込んで笑う。
「この特異点にいるとは奇遇だな。わし様のカルデアにはお前がおらんのだ。友よ、よく顔を見せてくれ」
旦那に望まれて俺が叶えなかった事などない。
手を下ろした俺に、旦那の手が触れた。俺の色のくすんだ髪をかき上げ、汚れた頬を包むてのひら。
あたたかい。
その機能を忘れていた涙腺が熱くなる。
どうして旦那がここにいるのか。死んだはずではなかったのか。生きていたとしてもとっくに寿命が尽きるほどの年月は経っている。
でもそんなことはどうでもよかった。
紛れもなく旦那がここにいる。
羅刹が見せる夢でも構わない。
忘れないように何度も何度も思い返して擦り切れていた記憶が生き生きと息を吹き返す。
旦那の香りが肺を満たす。旦那の手のぬくもりが皮膚に焼き付く。旦那の姿だけが世界になる。
その旦那は俺の顔をまじまじと眺め、口を開いた。
「お前、こんな顔をしていたのだな」
は?
生まれた時からとまではいかないが乳飲み子の頃からの付き合いだ。今更なにを。
その疑問が伝わったのか、旦那は少しきまり悪そうに視線を泳がせた。
「いやなに。その額の魔除けの宝石。いつもぴかーっ!と光っておってお前の顔がよく見えなかったのだ」
そういう事ははやく言え。
旦那が俺の頭を撫でることはよくあったが、額に触ることは一度もなかったので。何らかの効力を及ぼしているのだろうとは思っていたが。
それを知っていたらもっと早くに自分の手であの宝玉をえぐり取っていた。
だからこそ、旦那は言わなかったのだろう。
ろくでなしだけど、俺には優しい、人だから。
目を伏せると旦那の指が瞼をなぞる。
「アシュヴァッターマン、わし様のアシュヴァッターマン」
昔と同じなだめるような口調に石のようになっていた口元が綻ぶ。
「わし様の役に立ちたいか?」
当然の事に頷く。
「ならば英霊になれ。サーヴァントとしてカルデアと契約するのだ」
知らない単語に具体的な指示もない。だけど、旦那のわがままを叶えるのは自分の役目なので頷いた。
「わし様はカルデアで待っている」
「待っていてくれるのか」
「当然だろう。友よ」
「分かった」
こんな姿の俺を厭わず変わらずに友と呼んでくれる旦那のためなら、大地をひっくり返す事だって出来る。
そう、自分がそんな男だということを思い出した。
潤む事すら許さない視界で旦那の姿が光の粒子に変わっていく。
この夢のような時間が終わる明確な合図に旦那は慌てたように俺の頭を引き寄せた。額に柔らかい感触が触れる。
「前払いだ。続きは、」
言い終わる前に旦那の姿がかき消えた。
後に残された俺は真っ赤になってうろたえるしかなかった。
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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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