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杏夏
2018-01-28 13:31:04
827文字
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my dear
友人がカラオケで歌ってくれた歌からイメージした鶴清です。短いです。
天野月子「カメリア」より
腕は折れて、脚はもがれてどこかへ行ってしまった。
「大丈夫だ、加州」
わたしの欠片を拾い集めるあなたは笑う。
いつも通りのその顔の、細い眉が張り詰めそうになる。それがへにゃりと緩められる。そこに多大な努力が払われていることが、不思議とわかった。
わたしを不安にさせないために、あなたは懸命に笑っている。不安にさせないよう、恐れに呑まれないよう、哀しみに沈まないで済むように。
死に行くわたしへ、最後の手向けだ。
「大丈夫だ。すぐに手入れで綺麗になる。大丈夫、一緒に帰ろう」
「うん」
わたしは笑う。心遣いが嬉しかった。愛されてた。愛されている。
だから、伝えようと思った。
「俺、お前のこと好きよ。だから、俺が好きな鶴丸国永を消さないで」
酷い話だった。これは呪いだった。
でも、わたしが渡せる最後のものだった。
生きる理由をあなたにあげる。
「は、はは」
あなたが笑う。
くしゃりと顔を歪めて、手向けではなく慟哭の、心底悲しい顔で笑う。ぼたぼたと涙が溢れる。
「なあ、きみ、見えるかい? 俺はきみが好きだったんだ」
「うん」
「好きなんだ」
「うん」
まだ繋がっている左手でその涙を拭う。溢れる感情を掻き集めて受け取りたかった。
その手を掴まれる。骨が軋むほど握られて、脚はもう自分のものでないように痛くないのに、何故かそれはとても痛くて笑った。
「わかった。うんと長生きさせてやろうじゃないか。千年も次の千年も、きみの好きな鶴丸国永はここにいる。だから、きみは哀しまなくていい」
「ありがと」
わたしの帰る場所はどこにもない。この心も魂も、歴史の闇へ、人々の認識の海へ消えてしまう。
だから、わたしのすべてはここにある。
生きた証しだけがわたしのすべて。
あなたが生きている限り、わたしのすべてはそこにある。
「好きだよ鶴丸。ずっとずっと」
あなたが動かなくなるそのときでも、きっとわたしはそこにいる。
終
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