ちよど
2024-11-18 20:00:27
23656文字
Public わし様など
 

練習1P 10月分まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
わし様中心SS。節操なくCP混在。

■2024/10/31 No.432
アシュヨダ
「俺は旦那のためならなんだって出来る」

 敵が同士討ちを始めた時、マスターもビーマもドゥリーヨダナの仕業だと思った。
「結界のせいで詳しく分からないけど、先に潜入していたアシュヴァッターマンの霊基が徐々に損傷してて、一緒にいるドゥリーヨダナも無事じゃないみたい」
「あいつなら口だけ動けばこの程度朝飯前だろ」
 ふたりが言葉を交わしている間に敵陣は静まり返った。
 踏み込めば案の定、屍が山のように転がっている。その奥でアシュヴァッターマンが血まみれのドゥリーヨダナを抱きかかえていた。
「マスター!旦那を助けてくれ!!」
 悲痛な声によく見ると昏倒しているドゥリーヨダナの血のほとんどはアシュヴァッターマンの物だ。霊基を損傷したドゥリーヨダナをアシュヴァッターマンは己の血で繋いでいたのだろう。
 慌てて駆け寄ろうとしたマスターをビーマの腕が止める。
「その前におまえがやった事をマスターに報告してみろ」
 らしくない冷ややかな声にマスターは気づく。
 ──ドゥリーヨダナが昏倒していたなら、誰が敵を同士討ちさせたのか?
 そうだ、ドゥリーヨダナの側にいた彼はそのやり口を誰よりもよく知っている。
 アシュヴァッターマンはマスターが見たことのない表情で美しく笑った。


■2024/10/31 No.431
カルさん+アシュくん
「俺達は好きに生きたいだけなのに」

「ビーマが山を削った」
 カルナが言葉少なに話しかけてきたので俺は頷いて返した。本来スータとバラモンは直接言葉を交わすことはない。アンガ王とただの軍事指導員の息子もそうだ。
 だが、旦那の意向でカウラヴァではその辺りの事は『他の連中に見つからなければ気にするな』と言われている。
 ここに集まった連中はカルナほどではないがワケありばかりだからだ。その旦那に対する忠誠はピカイチの連中が動揺していた。──追放したビーマが山を削ったからだ。
 常人には到底なし得ない暴虐。
「同じ事が出来るのか?」
 俺の質問に同じ半神であるカルナは眉を寄せた。
「時間があれば」
 俺は鼻を鳴らした。好きなだけ時間をかけていいなら俺だって同じ事が出来る。しかしそれでは戦場で間に合わない。
「俺は旦那を死なせたくねぇ」
「ビーマとアルジュナを制止出来るのはユディシュティラだけだろう」
「ダルマ神の息子が俺達を認めるとは思えねぇな」
 旦那と違って『正しい』パーンダヴァがスータやバラモンがクシャトリヤをしている事を認めるはずがない。良くて俺達は元の立場に逆戻りだろう。
「なんでだろうな」


■2024/10/30 No.430
わし様+マスター
「へぇ、そんな話聞いた事ねぇなァ?」

 目の前に差し出されたキノコにマスターは考え込んだ。
 そんなマスターを期待に満ちて見つめているのはこのキノコを持って来たドゥリーヨダナ。
 場所はいつものふたりきりのマイルーム。日付はレイシフト先でマスターが邪馬台国の女王ふたりとデス鍋(斎藤一命名)を食べてしこたま怒られた翌日である。
「どうした?食べないのか?ん?」
 ドゥリーヨダナはこちらがやらかさない限り危害を加えてこないサーヴァントだ。少なくともマスターはそう認識している。
 そしてマスターにはここ最近やらかした記憶は無かった。
 数ある野草の中でもキノコは毒を持つものの見分けがしにくい。それが分かっていてマスターは口を開けた。
「ええい!!毒なら効かない!!」
 ぱくり、と生のままかじり取る。
「!!!!!」
 マスターの視界が輝いた。
……おいしい!!なにこれ、おいしい!!」
 あまりの美味さにじたばたするマスターを見下ろして、ドゥリーヨダナはうんうんと頷く。
「だろう?わし様も食べたことがあるのだが、毒があるこの美味を共有出来る者が今までいなかったのだ!」
 得意げなドゥリーヨダナの背後にすっとふたりのサーヴァントが実体化した。


■2024/10/29 No.429
わし様+ジュナさん
「あなた、それ私達にやりましたよね」

「それはひどい話だなぁ!!」
 ドゥリーヨダナの大げさな相打ちに大衆酒場の酔漢は声を張り上げた。
「やっぱり外から見てもこの国は腐ってんだよ!!なあ、あんたもそう思うだろう!?」
 男に話しかけられた店員は眉を上げた。
「本当に税は高いし、流通はよく止まるし、商売上がったりだよ!」
 その言葉にやんややんやと喝采が上がる。それにマスターの隣に座っていたアルジュナが顔をしかめた。
 特異点にある都市に潜入した3人だったが、ドゥリーヨダナが酒が飲みたいとわがままを言って彼らをここに連れてきたのだ。
 その当のドゥリーヨダナはいつの間にか勝手に会計を済ませてマスター達を立たせた。
「逃げるぞ、ここはもうすぐ戦場になる」
 囁かれた言葉にマスターが驚いてまばたきするが、アルジュナはそっとその手を取って酒場の外へと連れ出した。
「説明を」
 人気の無い場所でアルジュナに問い詰められてドゥリーヨダナは肩をすくめる。
「わし様が話していたヤツは上手く隠していたが素人には見えん、酒もそう飲んでおらんだろう。──そういう奴が扇動してまわっているとしたら?」


■2024/10/29 No.428
カルナさん+アシュくん
※ハロウィンネタ

「カルナ、そりゃ旦那の仮装か?似てねぇぞ」
 アシュヴァッターマンに笑顔で肩を叩かれて、カルナは安心したように息を吐いた。
 ハロウィンのカルデアは仮装したサーヴァント達で溢れかえっている。しかし、その中にドゥリーヨダナはいない。まだ召喚されていないからだ。
 自分とアシュヴァッターマン、そしてあの兄弟しか分からない仮装をしたカルナはおもちゃの棍棒をくるくるとまわした。
「似てないだろうか?」
「おまえの体格じゃ無理があるだろうが」
 ドゥリーヨダナは大柄だ。細身のカルナでは同じ服装をしていても印象が全く違う。それが分かっているはずなのにわざわざ衣装を作らせたカルナは言葉を紡いだ。
「類感呪術を知らないとは」
「あ゛?ああ、似た物は影響し合うってヤツか?」
 聖杯知識を引っ張り出したアシュヴァッターマンにカルナは頷く。ドゥリーヨダナの姿で。
「カルデアの中に旦那と似たものがいれば、旦那もカルデアに来るってことか!?」
 合点がいったアシュヴァッターマンは即座に霊衣縫製室に駆け込んだ。修羅場明けの連中を叩き起こす。
 同じ仮装がふたつに増えた。


■2024/10/27 No.427
アシュヨダ
「彼にとっては台座の方が」

 特異点の聖杯はここにあった。
 静かな洞窟の奥。大きな長方形の台座は繊細な彫刻が施され、聖杯の煌びやかさを彩っている。
 それを見たドゥリーヨダナが顔をしかめた。
 外にいた魔術師を倒したアルジュナがマスターを制して、警戒しながら聖杯に近づく。
 もうひとりの同行サーヴァントのアシュヴァッターマンは洞窟の入り口で警戒していた。
 何の罠もなくアルジュナは聖杯を取りマスターへと渡す。
「任務は完了しました。帰りましょう」
 その言葉にドゥリーヨダナが大きなため息をついた。
「だからお前達パーンダヴァは愚かだというのだ。──台座の方が価値があるというのに」
 ちらりと一度アシュヴァッターマンがいる洞窟の入り口を見てから、ドゥリーヨダナはずかずかと何も載せられていない台座に近づき、その表面をずらした。
 重い音がして長方形の箱の蓋が落ちる。覗き込んだマスターは息を呑んだ。
 何かしらの魔術が掛けられているのだろう。腐敗することなく、おそらく当時の姿のままの少女が花に埋もれて死の眠りについていた。
 ──それを聖杯より価値があると断じたのは、ドゥリーヨダナの負け惜しみかもしれない。だけど。
 マスターは洞窟の入り口を振り返った。


■2024/10/26 No.426
現パロアシュヨダ
「意味はあるとも!」

 カウラヴァグループの跡継ぎである旦那の部屋は広い。
 ベッドルームにリビングは分かるが、広いキッチンとバスルームにバルコニーなどなど、そしてジムまでついている。
「いくら緊急時にシェルターになると言ってもジムはいらねぇだろ?」
 庶民との違いに呆れている俺に旦那は備え付けのバーから持ってきたカクテルを渡した。口が堅い壮年のバーテンダーは俺の好みを知っていて状況に合った味を提供してくれる。
 口をつけるととろりと甘い味が舌を滑っていく。
 下心を見透かされた気がして目をそらせると旦那に肩を抱かれた。頬が擦り寄せられる。
「ジムは飾りだ、飾り。わし様ほどになると何をしなくてもこの完璧なボディを維持出来るとも!」
 嘘つき。見栄っ張りの旦那は努力している所を見せたがらないが、少しでも格闘技をかじった人間なら旦那がどれほどの鍛錬をしているかなんてすぐに分かる。ここにある器具も実践的でよく見れば使い込んだ跡に気づく。
 俺は首をまわして旦那の耳に囁いた。
「だったら俺と汗を流す意味はねぇのか?」
 旦那がくすくす笑って顔をあげる。スマートホームデバイス越しにバーテンダーに帰るように伝えて、俺達はベッドルームになだれ込んだ。


■2024/10/25 No.425
ヨダナさん+オルジュナ
「先輩はいいぞぅ!」

 先輩として見ればドゥリーヨダナはそう悪い男ではなかった。
 もちろんその低俗さや悪辣さは変わらないが。まあ面倒見は良く、周回編成されたばかりの私をなにくれとなく世話してくれた。それは。
「私を身代わりにするためだったんですね」
 アルジュナオルタの恨み言にドゥリーヨダナは曇りなき笑顔で答えた。
「マスターの考えなど、いちサーヴァントであるわし様が分かるはずなかろう」
 ドゥリーヨダナはこのカルデアの必須周回要員だった。なにもかもを薙ぎ払う全体宝具バーサーカー、驚異のNP回収率、アペンドも全て解放されている。
 そして新しくカルデアに召喚されたアルジュナオルタはNP獲得スキルを持つ全体宝具バーサーカーだ。
 過去の確執を捨ててドゥリーヨダナがマスターに、手取り足取りアルジュナオルタの運用法をレクチャーしていたのは何のためか。
 アルジュナオルタはやっと気付いたのだ。
 一方、カウラヴァのメンバーとバカンスの約束をしたらしいドゥリーヨダナは青空のように晴れ晴れと笑う。
「なに、おまえも早く後輩を育てればいいのだ」


■2024/10/24 No.424
カルヨダ+メイヴちゃん
当たり前だ。ばか」

「マスター!!カルナを生贄にするとは何事かっ!!」
「陳宮さんは今日はお休みですけど!!」
 謂れのない非難にマスターはドゥリーヨダナを見上げた。マイルームの天井を背景に愛敬のある顔が分かりやすく不満を訴えている。
「新入りの、あのライダーの女にカルナをあてがっただろう!」
「人聞きの悪いことを言わないで!!気前よく、嫉妬せず、恐れを知らない勇士を連れてきてと言われただけだよ!!」
「わし様の事ではないか!」
「嫉妬!!」
 条件を指摘してマスターはふと気付いた。ドゥリーヨダナとカルナは恋人同士だ。
「嫉妬?」
 ドゥリーヨダナは嫉妬深い。それはもう戦争の引き金となるくらいに。
 改めて指摘されて分かりやすく紫の視線が泳いだ。
 新しく召喚されたライダー。女王メイヴは恋多き女として名を馳せている。
「その、何もなかったよ」
 呼ばれたカルナは何事かをメイヴと話して、そして帰って行っただけだ。
 マスターの説明にドゥリーヨダナは子供のように唇を尖らせた。


■2024/10/23 No.423
カルヨダ
「意味がちがーう!!」

 はぁはぁと熱い息が零れる。熱せられた肌に幾筋も汗が滴り落ちる。限界が近いドゥリーヨダナにカルナは告げた。
「まだ、いけるだろう」
「よ、よせ、やめろー!!」
 ドゥリーヨダナの悲鳴を打ち消すように水音が響いた。

 ──事の始まりはカルナの一言だった。
「アシュヴァッターマンと汗を流したと聞いた」
 責めるようなカルナにドゥリーヨダナは首を傾げた。心当たりが無かったのだ。
「おまえが勘違いするなど珍しい。ああ、ガネーシャ神が言っていた『混線』というやつか」
 半神故に並行世界の情報を中途半端に拾ってしまうため、カルナは時々ガネーシャ神の事を違う名前で呼ぶ。
 そのことを指摘するとカルナは何か言いたげに口を閉ざした。それにドゥリーヨダナは笑いかける。
「だが、まあ。おまえと汗を流すのも悪くない」

 そう答えたドゥリーヨダナがカルナに連れて来られたのがこの場所だ。狭い部屋、ほぼ裸でふたりきり。
 もうもうと立ち上る水蒸気。
 木造の椅子に座ったドゥリーヨダナと、水が入っていた器を持つカルナ。
 カルナのせいで一際汗を流したドゥリーヨダナが叫ぶ。


■2024/10/23 No.422
カルヨダ
「どこにでも行けるだろう」

「良い子は天国に行く〜♪悪い子はどこへでも行ける〜♪」
「私はぐっさまのところへ行く〜♪」
 適当なリズムで歌う少女たちにカルナは目を細めた。
 ドバイの日差しは眩しく街中を歩くマスターと徐福を照らしている。くるりと髪を揺らしてマスターが振り返った。
「カルナさんは良い子っぽいよね?」
「あいにくオレは天の国とは縁が無い」
 大きな目がまばたきした。カルナはそこに疑問の色を読み取ったが適切な返しを思いつかない。
 バーソロミューたちは別行動をしている。
 もし、ここに口から生まれたようなあの友がいたのなら、上手く話してくれただろう。
 カルナは考えながら口を開いた。
「オレがもしダルマに従いスータとしての生涯を終えたとしても。スータは天の国に行く資格はない」
「生まれはクシャトリヤなのに?」
「スータは穢れだ。オレは彼らと共に育った」
 黙りこくった彼女たちにカルナは微笑んだ。
「悪い子はどこにでも行けるのだろう?」
 少女の瞳がカルナを見上げる。
「オレはスータのままであれば決して叶わなかった願いを叶えた」
 カルナをスータの身分から引き上げた友。
「あれがいればオレは、」


■2024/10/22 No.421
生前カルヨダ+母
「あれがオレを友としたからだ」

「あの男はおまえを舎弟と呼んだのですよ!」
 母の叫びにカルナは沈黙で答えた。知っていたからだ。
 『舎弟』『めったにない掘り出し物』ドゥリーヨダナがカルナを称した言葉の数々は彼の耳にも届いている。
 カルナはうずくまる母を見た。カウラヴァの天幕に、クリシュナひとりを連れ訪れた母の嘆きに偽りはない。
 この人はずっとカルナに向けられたその言葉に憤っていたのだろう。
 息子だと明らかに出来ない男に向けられた侮辱に対して。
「クンティーよ」
 母と呼ばず、しかし敬称もつけないカルナの言葉にクンティーは顔を上げた。
「オレを侮辱したのはパーンダヴァの方が多いだろう」
 その時おまえは彼らをたしなめたのか、と問われて母親は目を逸らせた。
 カルナは彼女の横で成り行きを眺めていたクリシュナに視線を当てた。
「スータを友と扱うクシャトリヤを他に見たことは?」
 神の化身は首を横に振った。
 ドゥリーヨダナは愚かで強欲で小心者だ。この戦も正しいのはパーンダヴァでカウラヴァは負ける。
 それが分かっていてカルナは口を開いた。
「オレはパーンダヴァには与しない。例えドゥリーヨダナがそれを望んだとしても」


■2024/10/21 No.420
ビマヨダ
「パパ」

 ベッドで出た使用済みのゴミはいつもドゥリーヨダナが捨てている。
 蓋付きの小さな壺にまとめて入れて、多分俺が帰った後に片付けているのだろう。その壺が空のベッドの横に置いてあった。
 周回が長引いている奴が帰ってくるまではまだ時間がある。準備万端な様子に俺は苦笑してなんの気無しにその壺を手に取った。
 重みがある。
「捨て忘れてんのか、しょうがねぇな」
 元々部屋の掃除など使用人にやらせていた男だ。こまめなゴミ捨てなど性に合わないだろう。
 そう思ってゴミ箱へと歩き出した俺は動きを止めた。
 重みがある。
 ベッドで出るゴミの重さなどたかが知れている。壺自体の重さを最大限に考慮しても、こんな子犬のような重さにはならないはずだ。
 壺を持ったまま、片手でその蓋をずらす。
 暗い中身。
 白い目玉。
 小さな手が伸ばされる。
「■■」
 破片が散らばった。
 取り落とした壺は砕けて、空の中身を曝け出している。


■2024/10/20 No.419
生前カルヨダ
「まるで愛の告白のようではないか」

「カルナ。おまえの武勇は疑う余地もない。だが、それ以外は王族として見るに堪えん」
 教育係からの報告を受けたドゥリーヨダナの評価にカルナは無言で応じた。
「アルジュナと戦うにはクシャトリヤとしての身分が必要だと分かっておろう?戦うだけが王の責務ではない」
「バラモンを守り民を守る。分かっている、が」
 言い淀むカルナにドゥリーヨダナは深いため息をつく。ただでさえスータの生まれだと侮られているのに、作法すらまともに出来なかったらどれほど苦労するか。王族になりたての友は分かっていないのだ。
「はあ。愛想笑いや外交はおまえには向かんのは分かった。──では型を学べ」
「型?」
 聞き慣れた単語にカルナの瞳に光が灯る。
「王族としての仕草。歩き方や食事の作法そのあたりの振る舞いだけをなんとかすれば、他は優秀な補佐にやらせよう」
「型を学ぶには師が必要だ」
 やる気になったカルナにドゥリーヨダナは胸を張った。
「それはもちろんわし様だ!最高にして最も典雅なわし様の作法を学べば、どこに行っても通用するとも!」
 断言にカルナはうっすらと微笑んだ。
「では今よりもっとおまえを見つめていればいいのだな」


■2024/10/19 No.418
生前カルヨダ+モブ
「このふたりは無二の友だと」

 街道で座り込んでいた男を拾ったのはクル国での商いが上手くいったからだ。要するに儲けたのでお裾分けだ。
「それはよい心がけだ。おかわり!」
「あんたよく食うね」
 ヴァイシャの食堂で人の奢りで食べまくっている男は汚れているがかなりよい身なりをしている。くるくるとよく動く表情が特徴的な男は粗末な器を抱えて目を細めた。
「あの道からこの街に来たということは行き先はアンガ辺りか?アンガ王なら知り合いだ。食事の礼に渡りをつけてやろう」
 アンガ王はスータの生まれと聞く。その頃の知り合いだろうか。助かると言うと男は笑って、服に付いていた汚れた葉っぱを差し出した。
「アンガ王にこれをドゥリーヨダナからもらったと言うがいい」
「この国の王子の名前じゃねぇか」
 あの時冗談だと笑い飛ばした汚れた葉を俺は必死で掴みだした。冤罪を被せられ絶体絶命の危機に他に縋るものが無かったのだ。小さな葉に命を掛けて捧げ持つ。
「ドゥリーヨダナにこれを貰いました」
 雲より頼りない命綱に震える俺をアンガの異形の王はしばし見つめた。
「報いは受けるべきだろう。──この者に自由と黄金を」
 助かったのだとへたり込んだ俺は思い出した。


■2024/10/19 No.417
カルヨダ
「ふたりきりだな」

「ふたりきりだな」
「ふたりきりなのか?」
 ドゥリーヨダナの言葉にカルナはまわりを見回した。王族になりたてのカルナには分からないが、養父の家が丸ごと入るような大きな部屋には楽団が滑らかな曲を流し、召使いたちが静かに行き来している。
「ふたりきりなのか?」
「ふたりきりだ。──これ以上減らすとおまえとわし様の仲が疑われるぞ」
 おかしそうにドゥリーヨダナはくすくすと笑うが、その向かいに座るカルナは首を傾げる。
「オレはおまえの友だ。それ以外の何物でもない」
「もちろんだが。外野はそうは思わん。──愛人だと言われたくはなかろう?」
「ならばオレの武勇を知らしめよう」
 真顔のカルナにドゥリーヨダナは少し考え込んだ。
「粛清も示威もまだいらん。──まあ、おまえの武勇を誰もが認めるようになれば真にふたりきりになれるとも」
 そう笑ったドゥリーヨダナの言葉をカルナは覚えていた。
 今では知っている、王族が誰かとふたりきりになるなどそれこそ閨でしかないのだと。
 だからカルデアで再会したドゥリーヨダナが無防備にひとりでカルナの部屋に訪れた時、彼は言ったのだ。


■2024/10/19 No.416
ビマヨダ
「おまえがすきだ」

 ビーマの唇の動きを読んでホームズは痛ましそうに眉を寄せた。
 ここはホームズの私室だ。依頼主であるビーマとふたりきりだがゴルドルフ新所長を呼ぶべきだったかもしれない。
「呪文を解読して欲しい、との事だったが。それは君と同じ言語圏の人間が発したもので間違いがないね?」
「ああ。俺には聞き取れなかったが。これは呪いの言葉だ」
 断言にホームズは目を伏せる。彼は呼吸するよりも容易くその呪文を読み取ったが、真実は伝えるべき時とそうではない時がある。
「君はその呪文を発した人間を嫌悪しているのかな?」
「あいつが俺達家族にしたことは許すつもりはねぇよ」
 ホームズは指を組む。成層圏の色の瞳がビーマを映した。
「その呪文は君にどんな影響をいや、失言だった。答えなくていい。情報はすでに揃っている」
 マハーバーラタにおいてビーマの家族を害した人間はひとりだけだ。──クル国の王子ドゥリーヨダナ。
 その男が彼に呪いを掛けたと思われる場面はひとつしかない。卑怯な一騎打ちの後、彼は宿敵の顔を踏んで踊り狂ったという。
「確かに。君があの時狂乱したのはその呪文のせいでもある」
 聞き取れなかったとビーマは言い、その内容を知りたいとホームズを訪ねてきたが。彼はすでに知っているのだ。


■2024/10/19 No.415
アシュヨダ
「贅沢だなぁ」

「ドゥリーヨダナって富豪王族だから贅沢三昧してそうだよね?」
 マスターの言葉にドゥリーヨダナ強火担のアシュヴァッターマンは重々しく首を振った。
「旦那は無駄な贅沢は好きじゃねぇよ。──そうだな、昔、王妃様に水晶のバスタブを献上されて怒ってたくらいだ」
「ソレハニンゲンガハイレルサイズデスカ?」
 震える声のマスターに清貧を旨とするバラモンはため息をついた。
「そうじゃねぇと献上する意味ねぇだろ?俺も初めて見たんだけどよー。水晶って鉱床から何本もにょきにょき生えてんだよなぁ。それがくり抜いてあった。でもなぁ危ねぇだろ。王妃様やドゥフシャラーに使わせられねぇってんで」
「ドゥリーヨダナが使ってた、と?あれ?でもどうしてドゥリーヨダナのバスタブを見たことがあるの?」
 普通浴室はプライベートな空間だ。あ、でも
「自慢されたんだね。目に浮かぶー」
 マスターは思わず微笑んだが、アシュヴァッターマンは褐色の肌を赤らめて目をそらす。
「あ、ああ、そうだ。自慢、された
 それが嘘ではないが全てでもないと歴戦のマスターは悟ってしまった。
 富豪王族ともなればお誘いに水晶のバスタブを使うらしい。


■2024/10/18 No.414
生前アシュヨダ
「贈り物を用意しておくと言っただろう?」

「部屋を用意させた。今夜は泊まっていくといい。──安心しろ、ドローナ師には連絡してある」
 豪華な宮殿の主にそう言われて幼いアシュヴァッターマンは目を輝かせた。泊まるということは朝から大好きなドゥリーヨダナと一緒にいられるということだからだ。
「寝所に贈り物も用意しておくぞ」
 ドゥリーヨダナの企み顔もアシュヴァッターマンは気にならない。挨拶をし、案内する侍女の後を弾む足取りでついて行く。
 出来るだけドゥリーヨダナの寝室の近くがいいな、と思いながら歩いて、歩いて、歩いていつまでも用意された部屋につかない様子にアシュヴァッターマンは侍女の背中を見上げた。
 まだ若い彼女は迷う事なく一定の速度で歩いている。大国クルの世継ぎの王子の宮殿は広大だ。端まで行くならこのくらいの時間を歩くのもおかしくない。
 だけど、アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナが自分に用意した部屋が離れた場所だと思いたくなかった。
「こちらです」
 ようやく案内された部屋はきらびやかでアシュヴァッターマンの目を潤ませた。うなだれながら奥の寝台に向かう。
 突然、天井から寝台を覆っていた布が内側から翻った。引きずり込まれる。
 紫の瞳が笑った。


■2024/10/17 No.413
アシュヨダ
「この後いっぱい甘やかされた」

「みんな!全体攻撃が来るよ!!」
 マスターの言葉と同時に中央のエネミーが炎を吹く。
「これもまた因果か、」
「後は、まかせたぞ」
 カルナとドゥリーヨダナが消滅し、ひとり無敵を持っていたアシュヴァッターマンが残る。それだけならばまだ良かった。
 が、消滅した2騎の代わりに後衛から出てきたサーヴァントにアシュヴァッターマンの顔色が変わる。
ビーマ、アルジュナ」
 カルナの死後ドゥリーヨダナを看取ったアシュヴァッターマンはこの二人と戦ったのだ。嫌な伝承との一致にマスターは叫んだ。
「ち、ちがうよ!ただマハバ系サーヴァントをまとめて絆上げしたかっただけで!!」
「ああ、分かってる」
 答えたのはアシュヴァッターマンだ。
「今はカルデアに戻れば旦那もカルナもいる」
 気まずそうな兄弟に金色の視線が奔った。
「俺は旦那の仇を取る。あんた達は両脇をやってくれ」
 強張った表情ではあるがそう言い切ったアシュヴァッターマンに促されビーマが槍を、アルジュナが弓を構える。
「いくぜっ!」
 勝利するのは当然だった。


■2024/10/17 No.412
わし様
「だから言ったであろう?」
※エミヤの強化クエストのネタバレを含みます

 動物は優しい人に懐くらしい。
「ならばおまえたちは見る目がある。最高にして慈愛に満ちた王子であるわし様に従うとは」
 ドゥリーヨダナははべらせたカリの頭を撫でた。なんかぬちょぬちょしていた。
 こっそり裾で手を拭うとドゥリーヨダナは辺りを見回す。近代都市のようだが人気はない。英霊であるドゥリーヨダナがマスターも無しに召喚されているからには何らかの意味があるはずだった。
 不意に現れた人の気配にドゥリーヨダナは身構える。唸りをあげるカリと共に迎えたのは4人の人影だった。
 明らかにただの人間と、白い髪に羽が生えた妖精?と、頭に尖った耳?を持つ褐色の宙に浮いた男と、そして。
「わし様ではないかーっ!?」
 ドゥリーヨダナの口から漏れた驚愕に向うのドゥリーヨダナが気の毒そうに額を抑える。
 その唇が無言で動いた。
 に・げ・ろ
「なぜわし様がそのようなことをせねばならん!!いっけー!!カリども!喰い殺してしまえ!!」
 カリが咆哮をあげる。それに褐色の男が頷いた。
「これは悪。──『創世滅亡輪廻。善性なるものには生を、悪性たるものには裁きを。廻剣駆動、滅べ!マハー・プララヤ!』」


■2024/10/16 No.411
祠ネタ わし様+モブ
「何も無かったではないかっ!?」

 祠を壊した俺に声を掛けてきた紫髪の男に俺は言い放った。
「あんた詐欺だろ、」
「なにおぅ!わし様の活躍を知らんのか!!連日テレビに動画に引っ張りだこだというのに!!」
 子供みたいに地団駄を踏む男の背後で赤い髪と白い髪の青年が仕方なさそうにため息をつく。
「動画見たから言ってんだよ。エセ霊能力者」
 この自称霊能力者はキャラクターこそ面白いが肝心の霊感はさっぱりだ。温泉旅館の跡地で戦国武将の霊が見えると騒ぐレベルで。──だが。
「これ次第で助けてやろうと言っておるのだぞ」
 男のジェスチャーに俺は笑った。金で身代わりが買えるなら安いものだ。
 まあまあ妥当な支払いをし、男が祠へ向かう。残ったふたりは何故か俺へと近づいてきた。
「なんだよ?」
「いや。あんたは旦那が霊感ねぇから好きに出来ると思ったみてぇだが。──俺達は『本物』だ」
 ぴたり、と目の前に紙。札を貼られたと気づいた時には獲物を見つけた冷たい息遣いが俺を包む。
「因果は応報するものだ」
「違いねぇ」
 暗くなる意識の向こう、ふたりが遠ざかって行った。


■2024/10/16 No.410
ビマヨダ
「するかっ!!ばーかっ!!!」

「いい女もそうだが、いい男もひとつお相手してもらうものだろう?」
 昼の食堂で相席になったフェルグスにドゥリーヨダナは食事の手を止めた。
「そのお相手というのは?」
「もちろん、せ
 火花が散った。もちろん比喩である。
「マスターがいるのになんて話をしてやがる」
 クー・フーリンオルタが無表情にフェルグスの脳天に拳をめり込ませていた。このカルデアのマスターはまだ乙女である。少し離れた席で顔を赤らめている彼女は今の会話が聞こえてしまったのだろう。
「邪魔したな」
 ずるずるとフェルグスを引きずって行ったクー・フーリンオルタを見送っていたドゥリーヨダナは顔をしかめる。
「げぇ、ビーマ!」
「うるせぇ、トンチキ。皿を下げに来ただけだ」
 フェルグスの食事を片付けるビーマを唇を尖らせて眺めていたドゥリーヨダナは、先ほどの言葉を思い返す。
 目の前の男はいろいろといろいろと思うことはあるがいい男には違いない。
 その視線に気づいて、色の薄い瞳がドゥリーヨダナを見返す。
「ああ、俺と『お相手』してもらいたいのか?」


■2024/10/15 No.409
アシュヨダ+叔父さん
「可愛かった、からだろう」

「どうしてあの人は笑っていられたんだろう」
 膝に頭を預けたアシュヴァッターマンの呟きに床に座り込んでシーシャを吸っていたドゥリーヨダナは煙を吐いた。
「わし様達がこの上もなく可愛かったからだ」
旦那だって、英霊になってからあの人の家族の事を知ったんだよな?」
 ちらりとドゥリーヨダナは周りを見る。カルデアの喫煙室には今は彼らふたりきりだ。だからこそアシュヴァッターマンはこんな事を言いだしたのだろう。
「ガンダーラの王族が不幸に襲われたことは知っていたぞ。何しろ叔父上より年上の者がひとりもいなかったからな」
「復讐のためにクル国に居たのなら、あんた達をあんなに可愛がる必要なんてなかった」
 アシュヴァッターマンが覚えているシャクニは何のかんの言いつつもドゥリーヨダナ達百王子の面倒を見ていた。他国の王族でありながら目を塞いだ姉の側に控え、時には代理として振る舞いながら彼は姉と子供たちを守っていた。──クル族に家族を、大切な人を殺されたというのに。
 アシュヴァッターマンがそれを思い出したのはドゥリーヨダナが吸っているシーシャの香りがシャクニが好んだ香によく似ていたからだ。
 自分と比較しているだろうアシュヴァッターマンを見下ろして、ドゥリーヨダナは手の中でシャクニから借りた骨のサイコロを転がす。


■2024/10/14 No.408
生前ビマヨダ
「またお前かっ!」

「私のかわいい息子たち」
 懐かしい声が聞こえて幼いビーマは振り返った。
「父上〜!!」
 広げられた腕に飛び込んだのはアルジュナではなく従兄弟たち。声の主は父の弟の盲目の王だ。
 ──私のかわいい息子たち。
 ビーマの父もそう兄弟たちを呼んで抱きしめてくれた。
 ──私のビーマセーナ。
 そう抱き上げてくれた腕はもう無い。
 ビーマの父神をヴァーユにすると父が望んだらしい。そのせいか父は正しい兄ではなく優れた弟ではなく力まかせのビーマを一番可愛がってくれた。
 ──私のビーマセーナ。
 もう聞けない声を思い出してビーマは拳を握り込む。
 視線の先では父と子供たちがきゃらきゃらと戯れていた。でも叔父である彼は王だ。すぐに側近に呼ばれて執務に戻って行ってしまう。
 つまらなさそうに散ろうとした王子たちにビーマは声をかけた。
「──遊ぼうよ!」
「やだよ。おまえ乱暴するじゃないか」
 伸ばした手を払い落とされて、ビーマの手が勝手に動く。突き飛ばされた従兄弟が悲鳴を上げた。彼らの長兄が血相を変えて駆け込んでくる。紫の瞳がビーマを見据えた。


■2024/10/13 No.407
カルヨダ+キアラさん
「本当に良い教育をされてますこと」
※奏章Ⅲのネタバレを含みます

「これは良い教育をされてますこと」
 殺生院キアラが頬に手を当てて微笑むと、夏コーデのカルナは薄いサングラスの向こうで目を険しくした。
「確かにあれはオレの父でもあるが、」
「ああ、馬鹿にしたわけではありませんわ。多くの英雄がこれを必要な犠牲だと認めない中、貴方はこれがわたくしにとって必要な事だと分かってくださいました。それが嬉しいのです」
 黒い宇宙のようにとろりと溶けたキアラの眼差しが魂を抜かれたように座り込む人々を映し出した。
「わたくしには皆様のような武力はこざいません。生き残る力を得るためには人々の協力が必要なのです。その対価として多少の快楽を与えることの何が悪いでしょう?」
「民衆の力を得ることは大切な事だ」
「ええ、ええ。さすが大国の王子であられる方は分かっておられますね」
 明らかにカルナからではない意見に上機嫌に頷いてキアラはカルナの腕に細い指を絡めた。
 そんなキアラをドゥリーヨダナの前では外したサングラスをつけたままカルナは見据える。
「確かにあれならばおまえの考えに同意出来るだろう。だがあれは使い物にならなくなるまで搾取しようとはしなかった。オレに対しても、だ」
 釘を差されてキアラは微笑んだまま手を離した。


■2024/10/12 No.406
わし様+ジュナオ
「悪を裁かなければならない」

「これは悪」
 アルジュナオルタの断定に静希草十郎が下手人を見上げた。
「そう、彼が原因なのは明らかだ。残念な事に」
「相違無い。我らバーサーカー全員が被害者である」
 ウラド三世が槍を床に打ち鳴らすと集まったサーヴァント達は皆頷き、文字通り天井から吊り下げられたドゥリーヨダナが悲鳴を上げた。
「わし様が何をしたと言うのだ!!」
 じたばたと暴れる彼はいつもの地獄周回帰り。もうすぐ貰えるという休暇を楽しみにカルデアを歩いていたところをクー・フーリンオルタに拉致されたのだ。
 そんな彼にバーサーカー達は口々に罪を暴く。
「マスターにバーサーカーでも周回が出来ると教えたのは?」「……わし様です」
「マスターにバーサーカーのクラススコア全開放をさせた原因は?」「わし様です」
「もうすぐ絆レベル上限だから他のバーサーカーを使おうと、」「わし様はわるくないっ!!」
 叫ぶドゥリーヨダナだが、彼の代わりに地獄周回に駆り出されそうになっている他のバーサーカー達にとって諸悪の根源は明らかだ。
 NP獲得スキルを持つアルジュナオルタは宙に浮き、ドゥリーヨダナを見下ろした。


■2024/10/12 No.405
生前カルヨダ
「我が友よ」

「アルジュナと戦わせてくれるのではなかったのか」
 カルナの詰問にドゥリーヨダナは鷹揚に微笑んだ。
 窓からは人々が嘆く声が届いてくる。人望厚いパーンダヴァ五兄弟が国を奪われ森へ追放されるからだ。
「確かにわし様はユディシュティラに賭博を持ちかけた。だが、賭けるものを選んだのは奴自身だ」
「パーンダヴァが追放されたのはおまえの望んだ結果ではないと?」
 嘘を見抜くカルナの瞳をドゥリーヨダナは見つめ返す。嘘さえ語らなければその瞳は脅威ではない。
「わし様から奴らに国をくれと言った事はないぞ」
 ドゥリーヨダナにとってパーンダヴァは自らが持っていた国や地位を奪いに来た簒奪者だ。乞う事などありえない。
 ややあってカルナは口を開いた。
「だが、アルジュナとの戦いがオレとの約束だ」
「もちろん忘れておらんとも!」
 硬い表情のカルナの肩を抱いてドゥリーヨダナは太陽神の飾りが輝くその耳に囁いた。
「ビーマは、パーンダヴァはしぶとい。何年経とうと必ずわし様に歯向かってくる。その時におまえは存分にアルジュナと戦えばよい」
「──おまえの言葉でさえ無ければオレは全てを捨ててアルジュナを追っただろう」
 カルナの言葉にドゥリーヨダナは満足げに笑った。


■2024/10/11 No.404
アシュヨダ
「祠ネタ」

「おまえ、あの祠を壊したのか?」
「壊すつもりはなかったんだ!」
 ボロアパートに突然現れた胡散臭い紫髪の男に詰め寄られて俺は叫んだ。
 数日前に森の奥にあったいわくがありそうな祠を壊してしまったのは事故だったのだ。
 誰にも見られず逃げ帰ってきたはずなのに男はどこからそれを聞きつけてきたのだろうか。
 カタギではなさそうな男が子供のように笑った。
「よぉくやった!!わし様にはアレは手が出せんかったのだ!!欲しいモノは何だ?金か?権力か?」
 ばしばしと背中を叩かれて俺は目を白黒させる。責められるどころか褒められて、──かえって嫌な予感が込み上げてきた。
 祠は古びていたとはいえ簡単に壊れた。眼の前の金がありそうな男が手が出せなかったのは何故だ。
 ぐるぐると考え込む俺から体を離して、上機嫌な男はスマホでどこかに連絡し始める。
「カルナか?ああ例の祠が壊れた。迎えに行くぞ。まったく、ちょっと暴れたぐらいで封印するとはクリシュナの奴も心が狭い」
 ワケのわからない会話を終えて男が振り返る。
「報酬は早めに言え。おまえはすぐに死ぬだろうからな」


■2024/10/11 No.403
アシュヨダ
「我が名はドゥリーヨダナ」

 サーヴァントが見る夢は生前の焼き直しだ。
 だから、これは夢でしかない。
 東屋に掛けられた布が風に揺れている。旦那の宮殿の中庭で特にこの東屋は街に沈む夕暮れがよく見えていた。
 夕日を背に跪いた給仕が捧げる繊細な装飾がされた皿。そこに乗せられているのは種を丁寧に取り除いたバンレイシだ。その白く甘い果実は旦那のお気に入りだった。
「食べんのか?」
 隣に座る旦那が俺の顔を覗き込む。何度も思い出して擦り切れてしまったその顔がくっきりと見えて俺は唇を噛んだ。風がさらさらと旦那の髪を揺らす。ふんわりと忘れてしまった甘い匂いが漂って視界が熱くなった。
 これは夢だ。
「いらんのならわし様が手を付けるが」
 クシャトリヤが触れてしまえばバラモンはそれを食べることが出来ない。そうだこの人はろくでなしだがルールを守らない人ではなかった。
「うんまぁい」
 目まぐるしく変わる表情に視界が熱く滲む。そんな俺に旦那は笑いかけた。
「カルデアではもっと美味いものを用意しておけよ」
 瞬間目が覚める。カルデアのベッドで起き上がった俺にマスターが駆け込んできた。


■2024/10/11 No.402
現パロ わし様+モブ
「最近話題のアレ」

「あー、おまえがあの祠を壊したのか。死んだぞ」
 そうなんでもない事のように言って紫の髪の男が煙草を口に咥える。隣に立っていた赤い髪の青年が慣れた仕草で火を付けた。高そうな匂いが漂う。
 コンビニの前。喫煙コーナーにはそぐわない香りとふたりの雰囲気に俺は安いタバコを灰皿に押し込んだ。
あんなボロっちい祠。壊したところでなにもねぇだろ」
 実際、見つかったらヤバいゴミを捨てるような山の中にあった小さな祠だ。妙に小綺麗ではあったが何かの役に立つわけじゃない。
 男は憐れむように俺を見た。
「無知とは恐ろしいものだ。わし様ならずぇったいあの祠だけは手を出さん。我が身がかわいいからな」
 よく見ると男の体格はがっしりしていて隣の青年もなにか武術をやってそうだ。服も高そうで金を持っていそうに見える。そんな男が恐ろしい?
 男が煙を吐いた。
「あの祠にはいわくなどない。ただ、息子が健やかなる事を祈った貧しい父親が自費で立てただけの祠だ」
 説明に拍子抜けして俺が気の抜けた笑顔を浮かべると男は憐れむように笑った。
「その父親の名前はドローナ。知っておるだろう?世界最強と言われた男だ」
 息子を溺愛している事で有名な名前に俺は震え上がった。


■2024/10/10 No.401
カルナさん+ビマさん
「俺達も一緒に行く」

「おまえに料理を依頼したい」
 食堂に訪れたカルナの言葉にビーマは皿を取り落としそうになった。何故ならカルナの後ろには仏頂面のドゥリーヨダナが控えていたからだ。
「相手を間違えてねぇか?」
「おまえだ。ビーマセーナ。おまえだけに料理を作って欲しい」
「紙皿でいい。運びやすいもので頼む」
 ドゥリーヨダナの補足にビーマは眉を寄せた。
「ピクニックなら俺だけが作らなくてもいいだろ?」
アルジュナならば手伝ってもいい」
 条件を緩和したカルナにビーマはこの奇妙な依頼の目的を探る。
「料理は何人分だ?どこに持っていく?」
「持てるだけだ。森に運ぶ」
 カルナの返答にビーマは今日の日付を確認した。
「ピトリ・パクシャか。祖霊の供養に森に食事を持っていくんだな?」
 その言葉にパーンダヴァの本当の長兄は頷き、従兄弟は嫌そうに顔をしかめた。
「お前達の祖霊の半分はわし様の祖霊でもあるからな。運ぶ程度は協力してやろう」
 ビーマは皿を置いた。
「分かった。アルジュナを呼んでこよう」


■2024/10/09 No.400
現パロ カルヨダ
「わし様に毎日花を送ること、だ」

「おまえにも出来ないことはある」
「努力すればいい」
 カルナの返答にドゥリーヨダナは沈痛な面持ちで首を振った。
「花屋は接客業だ。おまえもサポートのカリギリも客とコミュニケーションを取るのは無理だろう。かといっておまえと話が合うバーソロミューは本業が忙しい」
 小さな花屋を開業するにあたっての相談を頭ごなしに否定されてカルナはさすがに眉を寄せた。
 そんなカルナにドゥリーヨダナは手を差し出す。
「今まで装花を作ったことはあるか?見せてみろ」
 カルナがスマホを渡すと、ドゥリーヨダナは真面目な顔で何度かスクロールした。
「カリギリは情報収集が得意だったな?」
「そうかも知れない」
「こういう時は自信満々に頷いておけ」
 カルナにスマホを返して、ドゥリーヨダナは今度は自分のスマホの画面を見せる。
「出来たばかりのうちの旅館だ。ヴィラはタイプ違いで4棟。客のデータは送る。ここの専属契約を結ぶぞ」
「オレにとって都合が良すぎる」
 駆け出しの花屋に提案する契約ではないと指摘するカルナにドゥリーヨダナはいたずらっぽく笑った。
「無論、条件はある。それは──」


■2024/10/09 No.399
現パロ ビマヨダ
「ああ、最高のご馳走だな」

「確かに美味い。言うだけのことはあるな。ビーマ」
 コース料理を食べ終えて口元を拭ったドゥリーヨダナにオーナーシェフであるビーマは腕を組んだ。
「おまえが素直に俺を褒めるとはな。生まれ変わって丸くなったか?」
 彼らがビーマが経営するレストランで再会して数時間。遭遇した途端に言い合いになっていたふたりだが、ドゥリーヨダナがシェフを知らずに予約していた時間になったためとりあえず食事となったのだ。
 ビーマがテーブルの上に置かれたドゥリーヨダナのスマホを見る。ドゥリーヨダナは食事中何度かいじっていたが、カルナやアシュヴァッターマンなどの助っ人が来る様子はない。
 その視線に気付いたドゥリーヨダナが口の端を上げた。
「だからおまえはゴリラなのだ。──上場するなら株の半分は身内で固めておくものだぞ」
 ビーマのポケットでけたたましくスマホが鳴り響く。アルジュナからだ。ドゥリーヨダナが満足げに足を組んだ。
「どうせユディシュティラに株を持たせられなかったのだろう?変に遠慮するからこうなるのだ」
 スマホからも株の売買は出来る。最悪の予想にビーマの顔色が変わるのを見て、ドゥリーヨダナははしたなく舌なめずりをした。
「筆頭株主に何か言う事はあるか?オーナー?」


■2024/10/09 No.398
俳優パロ アシュヨダ
「なに、これも芸のこやしというものだろう?」

 俳優アシュヴァッターマンの欠点は『偉い人』を演じさせるとドゥリーヨダナになることだ。
 愛敬のある偉人も、冷酷な施政者も、悩めるCEOも、全て観る者にドゥリーヨダナの面影を思い起こさせてしまう。
「しょうがねぇだろ、俺にとってはあんたが『理想』なんだから」
 批判する記事を見せた恋人の反応にドゥリーヨダナは眉を寄せた。彼個人は有り余る資産運用のついでに俳優をしているが、アシュヴァッターマンはそうではない。
「確かにわし様は見る者全てを魅了するセレブだが、わし様が全てではないぞ。──そうだ。おまえ、わし様になれ」
「旦那なら完璧に『演れる』ぜ」
 自信に満ちた恋人にドゥリーヨダナは横に手を振った。
「わし様ではなく。わし様の立場になるといい。ちょうど安定している会社がある。秘書をつけてやるからちょっと社長をやってみろ」
「えっ?」
「明日実印を持ってこい。なに仕事の合間ちょっと決定するだけだ。何人か路頭に迷うかもしれんがそのあたりはフォローしてやろう」
 呆然とするアシュヴァッターマンを置いてドゥリーヨダナはスマホで連絡し始める。本気だった。
「恋人の仕事に協力してやるわし様。株価が上がるぞー!」


■2024/10/08 No.397
ヨダナさん+マスター
「助けて、ビーマさぁん!!」

 マスターは逃げていた。
 いつもは頼りになるサーヴァント達は今は敵も同然。星5サーヴァント配布が発表されたため、係累の実装や宝具上げを希望する彼らにマスターは追われているのである。
 こつそりと狭いダストを這い進んでいたマスターの下が突然ぱかりと開く。転げ落ちたマスターを迎えたのはカウラヴァの3人組だった。
「しーっ、騒ぐと外に聞こえるぞ」
 唇に指を当てるドゥリーヨダナはマスターに詰め寄る様子はない。見回したこの部屋は使われていない物置のようだ。何かあればドゥリーヨダナを止めるだろうカルナもアシュヴァッターマンも何を言うこともなくただ壁際に立っている。
 カウラヴァは全員揃っている。だから彼らはマスターに望むことはない。つまり。
「助けてくれたの?」
 マスターの言葉にドゥリーヨダナはにんまりと笑った。
「そうともいう。──つまり、ここは『カルナの宝具レベルを上げるまで出られない部屋』だ!」
 弾かれたように退路を確認するマスターにカルナとアシュヴァッターマンは出口の前から視線を返した。
 マスターは忘れていたのだ。一見良識のある彼らはドゥリーヨダナを止めることはないと。
 即座にマスターは令呪をかざす。


■2024/10/08 No.396
カルナさん+マスター
「私は私でありたい」

 異聞帯を滅ぼすのはいつになっても慣れる事はない。
 あとひとつ、あとひとつだと繰り返して暗い自室で座り込んでいたマスターの目に金の鎧に覆われた足が映った。
「カルナ」
 言葉足らずのランサーは冷酷な表情でマスターを見下ろして口を開く。
「おまえは地獄に落ちるだろう」
「──うん、そうだね」
 マスターが表情を歪ませて笑うとカルナは少し首を傾けた。やはり言葉の選択を間違えたようだ。
 言葉が少ないと自覚しているカルナは考え込みながらゆっくりと話を続けた。
「オレも地獄に落ちた。あの大戦に加担したのは悪だろう」
 あの異聞帯でアルジュナオルタが神になろうとしたのはその大戦で沢山の人が死んだからだった。
「オレが育ったカーストに従い武勇を望まず、友とも知り合わなければ。もしかしたらあれほどの戦にはならなかったかもしれない」
……それはもうカルナさんじゃないよ」
 マスターが言うとカルナはわずかに目を細めた。
「そうだ。オレがオレである限り。オレは悪だと言われるだろう。──おまえはどうしたい?」
 カルナの手にインドラの槍が出現する。マスターが望むならカルナはその切っ先でマスターを貫いてくれるだろう。


■2024/10/05 No.395
ヨダナさん+奥さん+カルナさん
「お前にわし様の一番の宝を託そう」

「バヌマティとカルナだけ残るがいい」
 ドゥリーヨダナの命令に侍従や召使い達は一瞬ためらったが静かに去っていった。
 ここはドゥリーヨダナの後宮の一角。先日カルナ相手にバヌマティがイカサマをした部屋からも彼女の私室からも近い場所だ。
「これから先は他言無用だ」
 顔を引き締めたドゥリーヨダナにカルナは疑問を投げる。
「オレがいてもいいのか?」
「おまえがいなくてはならん」
 ドゥリーヨダナはそう言うとふたりの前で飾り立てられた柱のレリーフを横にずらした。ことり、と音がする。次に近くの床を強く踏む。壁がスライドして小さな通路が広がった。驚くふたりをドゥリーヨダナは誘う。
「行くぞ」
 屈まないと進めない暗い通路を抜けると、そこは宮殿の外。古い馬小屋の近くだった。
「戦になればここは誰もおらんはずだ」
「──オレが知っていていいのか?」
 出られるという事は入れるという事だ。それに今まで黙りこくっていたバヌマティが答える。
「私はパーンダヴァの方々と親しくありません。もし何かあっても私だけでは馬も扱えず市井にも詳しくない」
「それでオレか」


■2024/10/04 No.394
現パロアシュヨダ+モブ
「大丈夫か?旦那」

 売り出し中の男性俳優をチェックするのは私の趣味。今日は友達から勧められた特撮俳優のアシュヴァッターマンくんのシチュエーション動画を観るのです。
 『彼との久しぶりのデート』
 そのタイトルからして期待してしまう!気分を盛り上げるためにサムネに合わせておしゃれして、さあ再生!!
 ──緑の木々の向こうにビルが並んでいる。おしゃれな都会の公園であたりを見回していると、完璧におしゃれを着こなしたイケメンが走ってきた。
 赤い髪、印象的な金色の瞳。アシュヴァッターマンくんだ!
 よっぽど急いできたのか息を切らせて(え?あのアクションをこなす彼が息を切らせるってどれだけ急いできたの??)頭を下げる。
「悪ぃ、ちょっと電車が遅れちまった。あんたより早く来るつもりだったのに」
 顔を上げた彼は少し悔しそうで、『私』が首を振ると安心したかのように顔を綻ばせた。
 公園内を散策すると『私』の視線は彼と同じくらいで、よく目が合う。その度に彼は嬉しそうに目元を緩ませるので私はどきどきしてしまった。
 突然、『私』の視界が揺れる。躓いたのだと分かった瞬間には彼が『私』を抱き抱えていた。
 至近距離で形の良い唇が動く。


■2024/10/04 No.393
カウラヴァ
「あん?おめーが俺のマスターか?」

 このカルデアのカルナは燃える三神の衣を纏っている。それはドゥリーヨダナが召喚された時からだ。
 カルデアでカルナと再会したドゥリーヨダナは生前とは違いすぎるその姿に驚き、経緯を聞き、カウラヴァふたりの活躍に大いに喜んだ。
「ここにアシュヴァッターマンがいれば褒めてやるものを!」
「オレを褒めるがいい」
 アシュヴァッターマンはこのカルデアにはまだ召喚されていない。いない彼の代わりとばかりにカルナが赤い髪になった頭を差し出すと、ドゥリーヨダナはその髪をくしゃくしゃとかきまわす。
「手触りはおまえのままだな」
 うむうむと頷いたドゥリーヨダナはその手でカルナのむき出しの肩を軽く叩いた。
「わし様は確かにアシュヴァッターマンも重用していたが、だからと言っておまえだけでは不足とは思っておらんぞ」
 カルナの三神の衣にはアシュヴァッターマンの持つシヴァの神性も含まれている。
 見抜かれて視線を下に落としたカルナにドゥリーヨダナは笑った。
「だが、召喚には触媒とやらが必要なのだろう。わし様とおまえ、そしてその霊衣があれば、」
 カルナは友を抱えて召喚室に走った。


■2024/10/02 No.392
スペースカウラヴァ
「直伝の交渉術を見せてあげるよ!」

「ここは、スペーススペシャルグレードプリンスであるわし様!ドゥリーヨダナが占拠しておる!カルデアだか何だか知らんが去れ!!」
 とある惑星に探索に降りたカルデア一行を迎えたのは見覚えのある三人組だった。マスターに同行していたスペース徐福が叫ぶ。
「自称プリンスだか何だか知らないけど!アルトリウム鉱山の私有はスペース法で禁止されてるはず!」
「ほれ」
……許可されてる。なんで?」
 渡された書類を手に呆然としている徐福にスペースに白髮の青年が彼らが降りてきた宇宙船を指す。
「無駄な探索だったな」
「こんなの不法です!名高いスペースバトラーである貴方が何故協力しているのですか!?」
「カルナがバトラーなのはなんとなく分かるけど、アシュヴァッターマンは?」
 呑気なマスターの言葉に徐福は赤髪の青年を見た。
「スペースシーカーです。以前ドゥリーヨダナがロストした際、宇宙の果てでリポップしたのを何の手がかりもなく見つけ出したのは知らぬ者のない伝説です」
「なるほど」
 とりあえず好奇心を満たしたマスターはドゥリーヨダナに向き直った。


■2024/10/02 No.391
カルヨダ
「おまえがかっこいいのが悪い」

「夏だと思って、ちょおっと浮かれすぎておらんか?」
 訪れた夏にサーヴァント達は浮かれていた。
 その中でドゥリーヨダナの部屋に呼びつけられたカルナは難癖にわずかに首を傾ける。
「オレはマスターの護衛だが?」
 マスターの休暇に合わせて夏コーデになったカルナをドゥリーヨダナは仏頂面で手招きした。逆らうことなく近づいて来たカルナに顔を寄せる。
「メガネを外せ」
「承知し、」
 唇を塞がれて、カルナの指先でメガネが揺れる。
 吐息が離れた。
……わし様も後から行く。浮気するなよ」
「愚考だ。理由はなんだ?」
 心当たりのないカルナの上から下まで眺めてドゥリーヨダナは顔をしかめた。
「分からんのか?おまえ、わし様がマスターのために着飾ったらどう思う?」
「誇らしいな」
「ばかばかばかばか、カルナのばかーっ!!」
 駄々っ子のように罵倒されて、カルナは目尻を下げた。
 甘えられていると分からないほどカルナは朴念仁ではない。
「オレが悪いのだな?」


■2024/10/02 No.390
生前カルヨダ
「ああ、確かに違う。おまえに見せたい」

「いいか、カルナ。お前は今からドゥリーヨダナだ」
 むふふ、と愉しげに笑いながら侍女に指示を出すドゥリーヨダナにカルナは首を傾げた。
「オレは王としての振る舞いを望んだだけだが」
「こういうものは実践あるのみだ」
 アンガ王となったがカルナは王としての振る舞い方が分からない。それをドゥリーヨダナは笑うことなく自分の衣装をカルナに着せて眉を寄せた。
色味が合わん。いつまでなら作れる?」
 衣装係が震え上がった。王子の衣装は糸から特別な物だ。ドゥリーヨダナ達と系統が違うカルナの衣装などすぐに作れるはずがなかった。
 それを見たカルナが首を振る。
「無駄だ。おまえの衣装の方が知らしめられるだろう」
「そうかぁ?アンガで作らせるより出来がいいぞ」
「虚飾など必要ない」
「いいや、必要だ。王は誰よりも豪華でなければならぬ。強くなければならないと同じくらいにな」
 そう諭すドゥリーヨダナにカルナは自身の首を撫でた。
「父より賜ったこの鎧より価値ある物などこの世にない」
 断言にドゥリーヨダナは重いため息をついた。
「服と鎧は違うのだ。衣装は多いほどいいのだぞ」
 ──その後、サーヴァントとなり数々の衣装を手に入れたカルナは自身の胸元を撫でた。


■2024/10/01 No.389
ユディシャク
「真実、私は愚かだった」

 地に足をつけるということはこんなにも不便なのか。
 戦場のぬかるみにがたがたと揺れる戦車から振り落とされないように足を踏ん張りながらユディシュティラは唇を噛み締めた。
 彼の戦車は偽りを口にしたため加護を失い地に墜ちた。
 それまで宙に浮いていたほんの少しの距離がこれほどの違いがあるのだと彼は思ってもみなかったのだ。
 足元に視線を落とす。弟達ほど鍛錬していないとはいえ健康な自分でも力を抜けば無様に戦車から転がり落ちるだろう。その振動に足が悪いあの人は何の痛みも見せずに耐えているのだ。
 ──痛くないのですか?
 ──愚かな事を聞くのですね
 閨で変形した足を撫でて問えば、あの人はいつものように薄く笑ってそれに答えた。それに自分はなんと返事をしただろうか?薬師でも紹介すると言ったのか。
 あの身内に甘いドゥリーヨダナが叔父の怪我を治すために手段を尽くしていないはずはないのに。
 大地を走る不都合を知り。ユディシュティラは初めて怪我をした足で歩く痛みを知る。
 振動に耐えながら閨で伸ばされた腕を思い出した。
 ──私は愚かなあなたが嫌いではないですよ
 それを自分は許しだと思ったのだ。他の誰もダルマ神の息子の間違いを認めないのだから。でもその言葉は。


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