ひがあぎういな
2024-11-18 00:40:00
3265文字
Public 文字化化小説
 

立っちできるかな

【文字化化】這いばい男さんに立って欲しかっただけのSS。
自翻訳基準になってるので違ったらごめんなさい。
…強い女好きなのであだみちゃんちょっと男前にしすぎちゃったかもしれない。

【立っちできるかな】


ツギハギ男に攫われた私を助ける為に、苦手だと言っていた『歩く』をしてくれた這いばい男さん。ツギハギ男は怒らせたらああなると知っていたようだけど退屈してるからってわざと怒らせて殺されて。たぶんしばらくしたら治るんだろうけど、ひょっとして彼はドМというやつなんだろうか。


(それにしても這いばい男さん、背すごい高かったなぁ)


思い出してみれば通路の天井すれすれに頭があったよね。あれ、もう一回見たいなぁでもちょっかい出してくれそうなちょうどいいオバケさんなんて居ないよね………居た。

居ないものと思いながらめくった布団の隙間に、海藻みたいなモシャモシャの黒髪があった。突然見つかって相手も驚いているのか、決まり文句みたいにパーツを欲しがる言葉も言ってこなかったから、自分から言う事にする。


『してほしい 私 助ける。渡す 髪』
髪?俺 ほしい 腕』
『腕 ダメ、指 渡す 可能』
………指 ほしい、助ける 何?』


よっしゃ、値切り交渉成功。
隙間男さんは事あるごとに私の体の一部を欲しがるけど、そこさえどうにかすれば話の通じるオバケさんだ。

寝ている這いばい男さんを起こさないように、そっと部屋から出て近くの隙間に話し掛ける。たぶん着いてきてるはず。


『私 行く したい 上。私 1 ではない 可能理解?』


「高い場所に行きたいけど私1人では出来ない」と、知ってる言葉をつなぎ合わせて何とか伝えようとしてみた言葉だけでは厳しい物があるので、具体的に行きたいところを指差しながら。


分かった。俺 連れて行く お前』
『ありがとう!』


隙間男さんの腕が伸ばされたと思ったら、次の瞬間には先ほど指差していた場所に来ていた。いたた指もしっかり持って行かれてるわ。


『またね』
『さようなら』


すでに治り始めている手を振って、隙間男さんと別れた。
あとは這いばい男さんが探しに来るのを待つだけ!

眠っている隙にコッソリ抜けて来たから、私がいない事に気付いたら大慌てで捜し回るはず飼い主を見失ってウロウロする犬を想像して自然と笑みが浮かぶ。
愛が重くて面倒に思う時もあるけど、こうも一途に求められると可愛いと思っちゃうな。しょうがないしょうがない。


〜!〜〜?』


おっと、噂をすれば女の声には聞こえない程度の男にしては高い声、足を引き摺る音と手の平で歩くペタペタという音。間違いようもない、彼だ。


『どこ あなた私 つらい』
『私 いる 上!』
『あなた 見つける!私 起きる、あなた いない!驚く!』
『ごめんなさい、すべき ではない 静かに 行く


思った通り私を捜し回ってたみたい。叱るような口調だけど心配の方が勝ってるのは声で分かる。少しでもこっちに近付こうと、膝立ちで手を伸ばしてくれてるけどそんなんじゃ届かない。

届きそうで届かない距離だ。やっと会えたのにハグもなでなでも出来ないのがよほど焦れるのか、無い目を悲しみに歪めて立ちはだかる壁を登ろうと爪でカリカリしている。


『あなた どうして 上 行く?私 可能 ではない 行く』
『他者 連れて行く 私下 可能 ではない 行く
『困る?私 助ける あなた!あなた するべき 落ちる』


むむ、受け止めるから飛び降りろって言ってる
それじゃダメだ立って欲しい。こっちは指まで支払ったんだから!えーっとツギハギ男が言うには彼は怒ったら立つらしいけど私に怒る彼は想像出来ないし。

そうだ、助けたいってもっと思わせよう!


『私 怖い可能 ではない 落ちる……
『!!』


必殺☆美少女の潤んだ瞳!どうだ!?


『泣く ない あなた!私 助ける!』


やった!でもまだ気を抜けない自分じゃ届かないからって銀髪男さんとか助けを呼びに行くかもしれない。心細そうな表情でじっと見つめるこれで私が心配だから一旦この場を離れる事も出来なくなったはずさぁ頑張って、這いばい男さん!


『わ、私持つ、あなた!私 運ぶ 下!』
『あなた 助ける 可能 私?私 嬉しい』
『少し 待つ


壁の配管を杖のように掴んで懸命に立とうとしている姿は、掴まり立ちを覚えたての赤ちゃんさながら。かわいい
がんばれ、がんばれ、あんよが上手!


『私 持つ!腕 来る あなた、心配 ない』
「うわわ、フラフラだけど大丈夫かな落とさないでね」


立ち上がった這いばい男さんは色々いっぱいいっぱいなのか、泣きそうに見えた。
けど、フラつきながら手を伸ばすひょろ長い見た目を裏切るように、彼の腕は力強く私を抱え上げた。

そのまま降ろしてくれるものと思っていたら、ぎゅうっと抱き締められ。


『よかった私 助ける あなた!よかった!』
ありがとう』


助ける事が出来て嬉しいらしいけどその喜びの表現というよりは、触れ合いをオアズケされた分を取り返そうとしてるようなハグとなでなでが止まらない。
立つの苦手なのに、こんなにのんびりイチャイチャしてても良いんでしょうか……
やっぱダメっぽいですね。

ぐらりと傾いた這いばい男さんは、どこかに掴まれば良かったのに私を庇うように抱え込んだまま盛大に背中からぶっ倒れた。


「びっくりしたぁすごい音したけど大丈夫?」
あなた 驚く ごめんなさい、私 問題 ない』
「でもゴンって頭ぶつけてなかった?」


たんこぶでも作ってるんじゃないかと思って、彼の後頭部に手を伸ばして探ってみた。何ともなさそう


『あなた 撫でる 私?嬉しい!私 好き あなた』
「えっあ、ちがう……ちがくないか。撫でたんじゃないけど」
『???』
『助ける ありがとう、私 好き あなた』


黒髪に指を通し、肩の後ろへさらりと流す。そして拓けた彼の青白い頬に唇を寄せてみる。彼がどんな反応をするのか、興味があったから。


『あなた 空腹?食べる 私?困る』
「そう来たかえっと『私 ではない 食べる』」
『よかった』


愛情表現とかってどう伝えるんだろう。


「『人間 好き 口』あ~触るって何?『撫でる 他者』」
『人間 口 撫でる?面白い!』
「なんかちがう気もするってか私ばっかり覚えるの不公平じゃない?そろそろソッチも私の言葉覚えてよ」
『???』
『私 教える あなた!人間 言葉!』


這いばい男さんは首を傾げたまま自分を指差した。
たぶん私の拙い異界語では、自分が教えるのか教わるのか分かりにくかったんだ。『私?』って呟いてるし。


『あなた 覚える 人間 言葉「キス」理解?』


手を掬い取り、手の甲に唇を押し付けた。


『好き 多い 他者「キス」人間 嬉しい理解?』
『あなた 嬉しい「き、す」?』
「そう!『正解!』」
『人間 言葉あなた 同じ 言葉 嬉しい!』


誰にも伝わらない日本語で独り言のように喋っているときも、私がお喋りが好きなんだろうと楽しそうに聴いていた彼。
言葉や想いが分かるって、伝わるって嬉しいよね。ここに来てからというもの、しみじみそう思う。


『あなた 嬉しい?「キス」』
『私 嬉しい「きす」あなた 好き 私、嬉しい』


手の甲から頬に戻り、額に鼻先にとあちこちにキスを降らせた。
どれもキスだよって教えながら。

それじゃあお利口な生徒にご褒美もかねて、一番大事な事を教えてあげましょう。
意味が通じるかは、分からないけど。


これ 1 好き 多い 他者 すべき「キス」』


唇の重なりを解いて囁く。


『あなた どこ すべき「キス」私?』
私 したい「キス」口 あなた』
『正解』


このあと這いばい男さんがとんでもないキス魔になってしまったのは、言うまでもない。



終わる