誰が提案したかは分からないが、映像資料室という名の映画館が図書館に備わっている。映画を観たいと言うドゥリーヨダナに押し切られたビーマは、映画鑑賞に付き合っていた。
「つまらん。期待外れだったな」
「途中で寝てた癖に話の流れが解ってないだろ」
エンドロールになった直後にドゥリーヨダナは映画を止め、紙コップの残っていたコーヒーを飲み干した。おおきなポップコーンバスケットの底から残ったポップコーンを摘まむビーマは、大げさな溜息を吐くドゥリーヨダナを気にも留めない。
「わし様は気が晴れるような激しいアクション映画を見たかったのだ!」
「激しかったろ。柳生が持ってるような刀で敵を斬ったり、銃で頭や胸に風穴を開けまくってたじゃねぇか」
スプラッター一歩手前な戦闘シーンを思い出す。気が晴れるかは知らないが、今まで見た映画の中では断トツに激しかった。
「まぁ、あの描写は中々好かったが、途中で恋愛描写を挟んだろう? 話に緩急が必要なのは解るが少々しつこくて萎えたわ」
口を尖らせるドゥリーヨダナは、不満げにビーマのポップコーンバスケットを漁ろうと手を伸ばす。
「あのシーンはそこまで気になんねぇだろ」
「ビーマもいろんな娯楽を堪能すれば、わし様が言わんとしている事が解るだろうよ……そう言えば、キスシーンだけは動揺してたな?」
ドゥリーヨダナのその言葉に、ビーマは肩を震わせる。
図星だ。突然挟み込まれた、飽きるほど長いキスシーンのちぐはぐさに驚いたビーマかと思っていたが、濃厚な描写に心を乱していたようだ。
「……可愛い奴め」
手が出るとはこの事なのだろう。戸惑うビーマの後頭部に手を回し、自身へ引き寄せると唇を重ねた。
「んむ?!」
突然の口付けに慌てるビーマを余所に、ドゥリーヨダナは薄く開いたビーマの口に自身の舌を滑り込ませるとビーマの舌へと触れる。一層高い体温が舌先に伝わるが、その体温を奪うかのように舌を絡ませた。
ビーマの体が震え、拒否するかの様にドゥリーヨダナの腕を叩く。だが、ビーマが本気を出したのならこの程度では済むはずが無い。形だけの拒否を捨て置くドゥリーヨダナは、ビーマへと身を乗り出して一層深く舌を絡めた。
「ん、ふ……」
お互いの口の端から唾液が零れそうになるが構う事無くビーマの口内を弄っていたが、一旦口を離す。引き際を見極めないと、ビーマから鉄槌を下されてしまう。ビーマの口元を拭い表情を窺えば、頬を火照らせ目元を潤ませていた。この状態のビーマを他の者に晒したく無い。
「お前とのキスがポップコーン味とはな」
雰囲気を壊す様に軽口を叩けば、ビーマは鋭い視線を向ける。
「そう言うお前はコーヒー味だろ」
不満しか無い溜息を吐くビーマにドゥリーヨダナは小さく笑い、いつもの様子へと戻った事に胸を撫で下ろす。
また映画を見るときは、本格的に寝落ちしても良い様に自室で観ようか。それに寝落ちをしなくともビーマを暴くのにも都合が良い。
満足げな笑みを浮かべるドゥリーヨダナに、ビーマは怪訝な視線を向けていた。
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