フレーメンちう
2023-12-30 23:59:07
1807文字
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カウントダウン『ドゥリビマ版ワンドロワンライ企画』

ドゥリビマ版ワンドロワンライ企画「カウントダウン」のお題で書き上げた話です。
食堂で年明けを迎える二人の話。

 今日は12月31日。あと少しで新たな歳が始まる。

 食堂では新年を迎えようとサーヴァント達が集まり、酒を飲み交わし軽食を取ったり、楽しそうに会話を交わしたりと、ちょっとしたパーティーになっていた。殆どのサーヴァントは壁に掲げられた時計に視線を時折向け、いつ新たな歳が始まるのかとソワソワしている。
 厨房内にはいつものキッチン組は居らず、いるのは趣味で試作の料理をつまみとして振る舞っているビーマ位だった。
 殆どのサーヴァントが食堂に来ている中、ビーマが探しているのは只一人。壁際のテーブルに視線を向ければ、見慣れた姿があった。
――ドゥリーヨダナ――
 アメジストの様な髪を揺らしながら、楽しそうに話を食い入る様に聞いている。相手は坂本龍馬だ。少し真面目な表情をしながらも、柔らかな表情を見せていた。
 ドゥリーヨダナの事だ。ビーマ達が居なかった近代の事象を聞いているのだろう。聖杯の知識では無い、その時の時代を通ってきた者の生の声。
 普通に考えれば、只の勉強熱心な様にしか受け取られないだろうが、ドゥリーヨダナの事だ。その知識を座持ち帰り、碌でもない事に生かすのだろう。
 ビーマは小さな溜息を吐くと、話が一段落ついたような2人に向かって手を振った。それに気付いた龍馬はドゥリーヨダナに手を振るビーマを指差す。
 ドゥリーヨダナに対して「来い」と視線を送れば、ドゥリーヨダナは渋々と空になったグラスを片手にビーマのいるカウンターへと足を勧めた。
「何だ、龍馬と話をしておったというのに」
「もう少しで歳が開けるぞ」
 時計に視線を向ければ、あと5分まで迫っていた。
「そんな事、子供でも判っておるわ。さては龍馬に嫉妬したか?」
 からかいを混じらせ、ほんの少し強く言うと、ビーマは目をぱちくりとさせた後、落ち込んだ犬のような顔をする。
 珍しい表情をするものだ。ドゥリーヨダナはそう思いつつも、寂しかったのだろうかと気付く。がらんとした厨房に一人のビーマと、カウンターを隔てた食堂は賑やかさで溢れている。料理などさっさと止めてこちらへ来いと思うが、ビーマにも思う事があったのだろう。
……年が明けるまでここにいてやる」
 その言葉にビーマの表情はパッと明るくなる。だが、それを悟られぬ様に、ビーマは空になったドゥリーヨダナのグラスを手にした。
「酒とつまみを足してくるから待っていろ」
 背を向け厨房内の冷蔵庫に手をかけるビーマの姿に、ドゥリーヨダナは小さな笑みを零す。彼奴が犬であったら、大きな尻尾をちぎれんばかりに振っていただろう。ヴリコーダラの名を持つが故に、狼の姿が混じった状態で召喚されなくて良かったな。と、他人事ながら考えてしまう。
「何笑ってんだ。ほら、麦酒とつまみだ」
 ドゥリーヨダナの表情に怪訝な顔をするビーマは、ドゥリーヨダナの前にグラスにたっぷりと注いだビールと、クラッカーよりも大きな半月状の焼菓子の様なものを差し出した。半月状の焼菓子にはガーリックアンチョビが塗られているもの、サーモンとチーズを乗せたもの、ラム挽肉で作ったケバブが乗せられたもの。確かにどれも美味そうだが、つまみにしてはボリュームがある。
「つまみにしては、この焼き菓子は大きすぎないか?」
「大きい方が腹に溜まって良いだろう? 米で作った物らしい。マスターに食わせたら「甘くないタイプのポン菓子を固めたようなものだ」って言われたが、甘くも無いし少し歯ごたえあるからつまみに合うだろ」
 満面の笑みを向けてくるビーマだが、ビーマ基準の大きさで出されるつまみは、最早軽食だ。少し呆れるドゥリーヨダナは、ガーリックアンチョビが塗られたつまみを一口囓る。
 マヨネーズのまろやかさがガーリックの辛みを抑えながらも、アンチョビの風味とガーリックの香りが口に広がる。ほんの少しだけ効いた胡椒の辛さが味を引き立て、ビールによく合う。
 ドゥリーヨダナはビールを一口飲むと、満足げな息を吐いた。
「美味いか?」
「まぁ、ビーマにしては麦酒に合うつまみをよく作ったな」
 ドゥリーヨダナの答えにビーマは視線を和らげ、ほんの少し頬を緩ませる。

 新年までもう少し。ここを退去するまでお互いに側に居られればそれでいい。
 今か今かと待ちわびている雰囲気の中、ドゥリーヨダナとビーマも頂点へと向かう秒針を見つめていた。