フレーメンちう
2023-12-16 23:58:32
2008文字
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クリスマス『ドゥリビマ版ワンドロワンライ企画』

ドゥリビマ版ワンドロワンライ企画の「クリスマス」のお題に参加させて頂いた時の話です。
必死にジンジャークッキーを作るビーマとそれを目にしたドゥリーヨダナの話。ジャンヌオルタさん、探究心がありそうなのと、原稿のお供でコーヒーも飲んでいそうなイメージだったので……!

 こんな時間に居るわけがないだろう。その考えは甘かった。

 昼食の時間を大幅に過ぎた午後二時、ドゥリーヨダナは最近のめり込み始めたコーヒーを淹れようと食堂へと足を運んでいた。
 今日は砂糖をたっぷりと入れようか、それともブラックで飲もうか。ブラックで飲むなら菓子も必要か。そう考えながら食堂へと近づくと、甘い香りが鼻を撫でる。
「菓子を作っているのなら、ブラックにするか」
 作りたての菓子がある事を前提に予定を立てるドゥリーヨダナは、上機嫌で食堂へと向かう。
 だが、厨房の中で作業をしているのは見慣れた奴の姿只一人。
「げ、お前しかおらんのか」
 白い服に身を包み、アメジスト色の髪をひとつに結ったビーマに、ドゥリーヨダナは眉間に皺を寄せる。
「俺しかいねぇよ。それに昼飯ならもう無いぞ」
 ビーマが向かう調理台には淡い黄土色の生地が薄く延ばされていた。手にした麺棒を止める事無くドゥリーヨダナに声を返すビーマは不満気な表情を浮かべる。
 ここ最近、ドゥリーヨダナは滅多に食事を取ろうとしないのだった。ビーマが居るから来ないのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。他のサーヴァントと酒を酌み交わす為に夜の食堂には来るらしいが、まともな食事は取っていない。
 たまに試作の食事をドゥリーヨダナの部屋へ運ぶ事はある。もしかすると、きちんと食べているのはそれ位かもしれない。
……ドゥリーヨダナ。お前、飯を食ってるのか?」
「この体に食事は不要だろう。今や食事は嗜好品だ、食わんでも死なぬわ」
 ドゥリーヨダナの言葉にビーマは目をぱちくりとさせる。幾ら食事を取らなくても死なないとはいえ、ビーマにとっては食事は重要な事だ。
 だが、食事をしないのならば、どうしてドゥリーヨダナはここにきたのだろうか。ビーマの中に疑問が浮かぶ。
「食わないなら、何しに来たんだ」
「コーヒーを淹れにきたのだ。ジャンヌに進められて、最近クセになってな」
 嬉しそうにコーヒーカップを取り出すドゥリーヨダナを横目に、ビーマは首を傾げる。このカルデアにいるジャンヌと言えば、水着の霊衣を纏ったオルタしかいない。何の接点があるのか判らないが、随分と広い交友関係を築いたものだ。と、関心してしまう。
「そういうお前はこんな時間に何を作っているのだ?」
 コンロで湯を沸かし始めたドゥリーヨダナは、ビーマの手元を覗き込んだ。
「クリスマス用のジンジャークッキーを焼いてんだ。今から作り始めなきゃ間に合わねぇんだ」
「クリスマス……?」
 ドゥリーヨダナは食堂の壁に掛けられていたカレンダーに視線を向ける。今日は十二月十六日。クリスマスは一週間以上も先。
「そんな先のものを今作っても、悪くなるんじゃないか?」
「それなら大丈夫らしい。魔術で何とかするんだとよ。俺は詳しく無いから判らんが」
 ビーマはナイフを手にすると、伸ばし終えた生地を一口大の正方形に切り揃えていく。だが、その作業にドゥリーヨダナは疑問を抱く。クッキーの形とはこんなものだったろうか。
「おい、クッキーとはそういう形だったか? ココアとプレーンで二種類の味がするクッキーは四角だったが……
「結構な人数分を作らなきゃならねぇのに型抜いてる暇がねぇんだよ。それに綺麗なデザートはキャットやエミヤが作るからな」
 ビーマ自身も華やかなクッキーを作る時間が無い事が心苦しく思う。だが、カルデアにいる全職員と全サーヴァントに配れない方が心苦しい。苦渋に満ちた表情を浮かべるビーマは、厨房の隅に置いていた紙袋を手にするとドゥリーヨダナへと差し出した。
「お前の分だ」
「わし様の?」
 随分と複雑な表情をするビーマを訝しげに見ながら、渡された紙袋を開く。
 ふわりと香る甘さとスパイスがドゥリーヨダナの鼻をくすぐる。中を覗けば丸い形や星形のクッキーが何枚も入っていた。
 ビーマが今作っているクッキーと同じだろうが、型抜きはしないと言っていたのに。不思議に思うドゥリーヨダナはビーマへ顔を向けた。
「お前のだけだ。きちんと形にしたのは、な」
 ほんの少しぎこちないビーマに、ドゥリーヨダナの頬が緩んでしまう。
「まぁ……コーヒーと一緒に食ってやらんでもない」
「早めに食えよ。日持ちする魔術はかかってねぇから」
「わし様からもお前にとっておきのコーヒーをやるとしよう。気分が良いからな」
 ドゥリーヨダナは冷蔵庫の奥に仕舞って置いた缶を取り出す。数回分を挽いていたのだろう。深い茶色の粉がはいっていた。
 カップを取り出したドゥリーヨダナは慣れた手つきでカップを温め、コーヒードリッパー等を用意すると、ゆっくりと淹れ始めた。ふわりとほろ苦さの中に甘さが香る。
――これがドゥリーヨダナの好きな香りか――
 ドゥリーヨダナの一面を知る事が出来、ビーマは無意識に頬を緩ませた。