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早瀬はやお
2024-11-16 19:50:28
5589文字
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お題【チェリー】
ワンライのお題【チェリー】をお借りしました。まだ付き合っていない上中。🍆→🐬な感じです。
お題【この後どうする?】【おめでとう】の二人です。
【この後どうする】【おめでとう】【チェリー】の順に繋がっています。
怒涛の三連続任務を片付けて、はたけカカシが木ノ葉の里に帰還したのは、今日の昼過ぎの事だった。
明日からしばらくは里外任務も入らないだろうし、里内待機という名の実質休日が貰える筈。
そう思っていたカカシは、意気揚々と任務報告書を提出しに、本部棟にある任務受付所に向かっていた。
受付に行けば、イルカに会えるからだ。
部下の子供達経由で知り合ったイルカとは、現在友人のような関係だった。
(チューはしてるんだけど、そこまでなのよね
……
)
イルカは恋愛事にとても疎いようで、カカシとのキスも偶発的な事故位にしか、思っていないのかもしれない。
(好きじゃなきゃ、キスなんてしないって言うのっ)
カカシだって、はっきり好きという気持ちを伝えない自分が悪いと、分かってはいるのだ。
分かってはいるけれど
……
以心伝心とはいかないようで。
敵の動きを読むよりも、イルカの気持ちを読み取る方が難しい。
S級任務よりも、イルカを捕まえるのは、高難易度だった。
報告書を提出した帰り道、カカシはほんの少しだけ落胆していた。
なぜなら受付に、イルカがいなかったからだ。
午後のこの時間、大抵イルカは受付にいることが多い。
だが今日は、アカデミーの授業が入っているようで、受付にイルカの姿はなかった。
(わざわざイルカ先生がいる時間を狙って、受付に行ったのにぃぃ!)
「お疲れ様でした!」と満面の笑顔で労ってくれる、そんなイルカと会えることが、カカシにとって任務帰りのご褒美だったのに。
「はーっ」と大仰なため息をつきながら、カカシはトボトボと自宅へ向かって歩いていた。
その時だった。
ふと空気が揺れる気配がして空を見上げると、大きな鷲がはるか上空から滑空して来る姿が見えた。
急激に近付いて来た鷲は、大きな鋭い足を開いて、まるで獲物を狙うようにカカシに向かって来る。
敵襲のような勢いで迫って来た鷲だったが、カカシは避けることはしなかった。
鷲は狙っていたように、ガシッと大きな足でカカシの頭に止まった。
普通の鷲だったら、鋭い爪で頭皮を抉られて、流血沙汰になる所だが、この鷲はカカシの頭に触れた瞬間、煙を上げて消え失せてしまった。
鷲の代わりに現れた紙切れが、ヒラヒラとカカシの目の前に落ちてくる。
それは三代目火影からの呼び出しだった。
呼び出しに応じて、カカシは再び本部棟に戻ると、火影執務室に向かった。
執務室のドアの前まで来ると、カカシの来訪を待ちかねていたのか、執務室の中から「入れ」と声が掛かる。
「失礼します」
カカシがドアを開けると、執務机に鎮座し、どんよりと重たい空気を背負った三代目がいた。
目の前で両手を組み、酷く憔悴しきった顔をしている。
いつも煙管を燻らせ、どんな時も飄々としている三代目火影がだ。
(一体何があったんだ?)
カカシをわざわざ呼び出す位だ。何か火急の重大案件が入ったのだろう。
そうでなければ、プロフェッサーとまで呼ばれる三代目が、ここまで深刻な顔をする筈がなかった。
「カカシ。早速だが、お主に頼みたい事がある」
三代目の頼み事が何なのか?
カカシの背筋にも緊張が走る。
これだけ三代目が厳しい顔をしているのだ。余程の事があるのだろう。
だが任務ではなく、頼み事という言い方が、少し引っ掛かった。
(任務なら任務という筈。頼み事というのは、個人的な要件という意味なのか?)
カカシの怪訝な顔から、疑問に思っている事が伝わったのか、三代目はフッと表情を和らげた。
「お主。最近イルカと懇意にしてるらしいな?」
「はい? まぁ、仲良くさせて貰ってますよ」
(何でいきなりイルカ先生の名前が出てくるのよ!)
一瞬動揺しそうになったのは、仕方がないだろう。
イルカに会えなくて、カカシは落胆していたのだから。
「イルカと共に、儂の信書を届けて欲しい店があってな。以前お主はイルカの付き合いで、繁華街にある店に行ったことがあるじゃろう? 胸の大きなおなごが、接客してくれる店じゃ」
「あ
……
もしかして、おっぱい饅頭の店ですか?」
「そう、おっぱい饅頭の店じゃ」
フーと大仰なため息をついて、三代目は気持ちを落ち着かせる為か、煙管に火をつけた。
「その店の店主に、言伝を頼みたいのだが。店主はイルカをとても気に入っていてな、信書の運搬には毎回イルカを指名しておるのじゃ」
おっぱい饅頭の店に信書を届ける度に、従業員の胸の大きなお姉様方に迫られて、イルカが困り果てている事は、当然カカシは知っている。
「その店主がな、先日の騒ぎに懲りて、信書の受け取り場所の変更を申し出てきたのじゃが
……
」
「おっぱい饅頭の店じゃないなら、良いじゃないですか」
「良くないのじゃ」
三代目は、再びどんよりとした空気を纏う。
「指定してきたのは、店主の経営するもう一つの店でな。女人禁制の飲食店じゃ」
「女人禁制? 女は入れないって事ですか?」
今時そんな場所があるのかと、カカシは首を傾げた。
「その店は男しか入れん。それも出会いを求める者だけじゃ
……
」
「出会いを求める?」
出会いを求める男だけが入れる店。
「あっもしかして! 男同士の、ワンナイトラブを楽しむ店ですか?」
「そうじゃ」
即答した三代目の、ズーンと重い空気が火影執務室を包み込んだ。
「よりによってあの店とは
……
場所が場所だけにな
……
イルカを一人で行かせるわけにはいかん」
「分かりました。俺が同行します!!」
「そうか! 行ってくれるか!」
ぱあっと、三代目の顔が明るくなる。
(イルカ先生をそんな店に行かせるなんて
……
カモがネギ背負って食べられに行くようなもんでしょ!!)
「もちろんです。イルカ先生の身の安全は、俺が保証しますよ」
数日後カカシの姿は、イルカと共に木ノ葉の繁華街にあった。
「せっかくのお休みに、また付き合って頂いてすみません」
イルカは火影からの私用に、カカシを巻き込んでしまって申し訳ないと言いたそうな顔をしていた。
「いえいえ、構いませんよ」
「カカシ先生は、それでなくても忙しいのに。あんまりカカシ先生をこき使うなと、三代目に言っておきますね」
イルカとそんな会話をしているうちに、気が付けば目的の店の前に着いていた。
「あ、ここですね」
イルカはしげしげと、店の中を覗き込んでいる。
「喫茶店?」
カカシは思わず首を傾げてしまった。
(男同士のワンナイトラブの店じゃなかったの?)
三代目から聞いていた話とは違う店の様子に、カカシは怪訝な顔を浮かべた。
店の窓際には、楽しそうに談笑する女性の姿もある。
(女人禁制って言ってたよね?)
思わず眉をひそめてしまったカカシの隣では、ほっと安堵の表情をしたイルカがいた。
「普通のお店で良かったです」
「イルカ先生はどんな店って聞いてたの?」
カカシは思わず疑問に思った事を、イルカに尋ねる。
「詳しくは聞いていないんですが
……
あの店長さんの店ですから。きっと夜のお店だろうな~と思ってました」
「まぁ、そうよね」
玄人のお姉様方を束ねていた女店長の顔を思い出し、カカシも頷く。
「とりあえず入りますか」
イルカを促しカカシが店に入ると、対応しに出てきた店員が、愛想よく「いらっしゃいませ」と声を掛けてきた。
だがカカシとイルカの顔を見ると、スーッと目を細める。
まるで値踏みされているような視線を感じて、居心地の悪さを感じたのか、イルカが身動いだ。
(感知系の忍びか?)
やはり三代目の繋ぎをしている店長の店だけあって、従業員も一般人ではないらしい。
「こちらへどうぞ」
店員はカカシとイルカを、店の奥へと案内して行く。
女性客が飲食しているホールの奥まで店員が歩いて行くと、さらに奥へと続く扉があった。
店員が扉を開くと、その奥にも同じようなテーブル席が並んでいる。
だが明らかに異なる雰囲気に、さすがのカカシも一瞬足を止めた。
「まるで隠し部屋みたいですね」
イルカは気付いていないようだが、どう見てもこの奥の飲食スペースは、ただの喫茶店ではない。
「こちらでお待ち下さい」
店員に座るよう促されて、カカシはイルカと共に近くのカウンター席に腰を下ろしたが、周囲を取り巻く気配に軽く殺気を放っておいた。
「どうしました?」
「ん? 何でもないですよ」
カカシはそう誤魔化したが、イルカも違和感の正体を薄々感じてはいるようだ。
(やっぱりただの喫茶店じゃないじゃない! ここ!)
カカシとイルカの周囲に座る客は全て男性客で、どう見てもワンナイトラブの相手を探している者達ばかりだった。
中には見たことがあるような顔もあったが、目的が目的だけにこの場にいる事を知られたくないのだろう。
カカシと視線を合わせないように、ササッと顔を背ける者もいる。
忍服姿で堂々と入って来たカカシとイルカに、興味津々ではあるが、素性は知られたくないのでこっそりと様子を伺っている。
そんな男性客ばかりだった。
「三代目が心配するわけだわ
……
」
周囲の男性客からチラチラと向けられる視線には、明らかに性的なものもあって、それはカカシのみならずイルカにも注がれている。
(イルカ先生は平凡すぎてモテないって思ってるみたいだけど、純朴好青年って今時貴重なポテンシャルなのよ!)
カカシがギリッと周囲を一瞥すると、怖気付いたのか二人に向けられていた性的な視線は霧散した。
「お待たせして、すまなかったね」
その時、表のホールへと続く扉を開けて、あの店長が現れる。
「こちらをどうぞ」
イルカが三代目から預かってきた信書を手渡すと、店長は受け取った。
「それじゃ用事も済んだ事だし、俺達は帰りますか」
カカシがイルカに声をかけた時だった。
「ちょっと待っておくれ! せっかく来てくれたんだ。これ食べていきな」
店長はいつの間に用意したのか、イルカにチェリーの乗ったクリームソーダを手渡した。
「はたけ上忍にはコレだよ」
ズイっと差し出された見覚えのある饅頭に、思わず皿ごと受け取ってしまったカカシは吠える。
「何で俺には、おっぱい饅頭なのよ!」
「好きじゃないのかい? イルカ先生の分まで食べてたじゃないか」
確かにカカシは、イルカの分のおっぱい饅頭を食べた。
だがそれはイルカの身の安全を確保する為で、おっぱい饅頭が好きな訳では無い。
「このおっぱい饅頭は、男の雄っぱいだからね。あっちの店のおっぱい饅頭とは、コンセプトが違うんだよ」
店主は自慢げに胸を張る。
「確かに、こっちは色が違いますね」
フムフムとイルカが興味深そうに、カカシが手にしているおっぱい饅頭を覗き込む。
「イルカ先生も感心しないでよ!」
ギャーギャー騒ぐカカシを無視して、店主は颯爽と去って行った。
せっかく出して頂いたのだからと、結局カカシはイルカと共に、店主から貰ったおっぱい饅頭とクリームソーダを味わう事にした。
緑色のソーダ水の上に浮かぶ、白いバニラアイスを頬張るイルカの姿は微笑ましかった。
「なんかデートしてるみたいですね」
思わずこぼれ落ちた呟きは、イルカに聞こえただろうか?
一心不乱にクリームソーダを味わっているイルカには、カカシの呟きは聞こえなかったのかもしれない。
(まぁ、それでも良いか)
イルカと過ごせる時間は、カカシにとっては至福の時間なのだから。
「先生ってチェリー好きじゃないの?」
ふとイルカの手元を見ると、クリームソーダに乗せられていたチェリーが、受け皿の上に取り出されたまま残されていた。
「チェリーは好きですよ」
「え、でもこれ食べないじゃないですか?」
「それは甘くないからです。和の国の佐川錦とか、米の国のコメリカンチェリーとかだったらウェルカムです!」
「先生はブランド好きって事なんですね。なるほど」
チェリーのブランドに拘るなら、一定の評価、安牌が確定された、品質の良い物が好みなのだろう。
「ちなみに俺なんかどう?」
「は?」
「木ノ葉ブランドのチェリーよ?」
はたけカカシという名前だけで、すり寄ってくる者は多い。
イルカがそんな輩とは違うと、もちろん知っているけれど。
ちょっとした自虐ネタのつもりで言ってみたのだが。
「貴方はチェリーじゃないでしょ? 下ネタ言わんで下さい」
イルカはブハッと吹き出した。
「まぁまぁそんな事言わずに。先生の前では何時だって俺はチェリーですから」
「それ言ったら、俺だってチェリーですよ」
どこまでが本当なのか、それとも嘘なのか。
イルカもこの場のノリで言ってるのだろう。
冗談の応酬みたいな軽い会話を楽しみながら、カカシは思いついた。
今だったらほんの少しだけ、冗談の中に本音を混ぜ込んでみても良いのではないかと。
「俺がチェリーかどうか、試してみない? 先生が付き合ってくれれば、教えてあげますよ?」
イルカは驚いたのか、大きく目を見開くと固まってしまった。
だがすぐに破顔する。
「あ~しょうがねぇな! 付き合いますよ。どこにでも。それでこの後、どこに行きたいんですか?」
その途端、二人の会話に聞き耳を立てていた者達が、一斉にプッと吹き出す。
だがカカシがジロリと睨めつけると、周囲の男達は皆口をつぐんでしまった。
(やっぱりイルカ先生は、一筋縄じゃいかないねぇ
……
そんな所も好きなんだけど)
イルカに本音を伝えるには、直球勝負が必要なようだ。
【完】
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