萩月
2024-11-16 16:45:29
2561文字
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袋の中の猫

ハロウィン3パターン目。導入部分少し変わってます。


【導入】
キン肉スグルからハロウィンのお楽しみ(他意はない)にと、猫耳付き帽子をもらったブロッケンJr.。
恋人のアタルによって被せられただけでは飽き足らず、今夜はにゃんにゃんと鳴いて欲しいと言われる。それは流石に無理──!


グム厶、とブロッケンが唇を噛んでいると、アタルはふと、もらったお菓子を探る。
そして、ひとつ手に取ると、ブロッケンに向き直り、突き出しながら笑みを浮かべた。

「では勝負をしようか」
「勝負?」

それは棒状のチョコレートのお菓子だった。

「これを咥えて、そうだな、30分離さずにいられたら、さっきのは諦めるし、お前の言うことを何か聞くとしようか」
「えっ……!なんでも!」
「なんでもとは……まぁいいか。その代わり、お前が途中で離したら……わかるな?」
「うぐぐ、」



そんなやり取りを経ながら、あれよあれよとベットの上である。
アタルははい、とお菓子を渡しながら、いまいち踏ん切れていないブロッケンに挑発的に笑いかける。

「あぁ、30分は長すぎるか?お前はいつも素直だからな。もう少し……
「は……?」

そもそも、その勝負を受ける義務などない筈だった。
しかしちょっぴり短気で憐れな黒猫はすっかり正常な判断が抜け落ち、生来の負けず嫌いだけが機能する。
ブロッケンは乱暴に菓子を手に取った。

「これ咥えて、30分離さない、つまり声を上げたりしなきゃいいんだろ?全っ然余裕だぜ」
「ふーん?」
「なんだよその目……別に、我慢しようと思えばできるって!隊長こそ、俺が勝ったらちゃんと言うこと聞いてもらうからな!」
「よし、その意気だ」

二人の脳内にカーンと金属音が鳴り響いた(気がした)。






「ふぁ……ずるぃきゃぷてんッ」

アタルが口元に手を添えると、口の枷をしてた筈の菓子は簡単に外れた。
ブロッケンは濡れた瞳でアタルを睨みつけたつもりだったが、それは子猫の訴え、甘やかしたくなるような、そう映るだけであった。



試合開始のゴングから、最初は優しく焦らすような、擽ったい愛撫に始まり。
その手が徐々に際どい場所へ向かってきても、それでもなんとかブロッケンは咥えた菓子を離さないよう耐えていた。

しかし、首筋に布越しではない、しっとりと体温を持った感触を与えられた時、ブロッケンを支えていた何かが揺らいだ。

その隙をアタルが見逃す筈もなく。
ブロッケンがそれに弱いのを知ってか知らずか、覆面を少し上げた、半端な素顔を見せつける。

頬にちゅっ、とわざとらしく音を立てて、

「次は直接口にさせてくれないか?」

と低く、そして疑問形を体してはいたが、そうするのが当然という音で囁かれては。




「ずるぃ……

負け惜しんでも、自由になった口こそが勝敗を証明する。
更にここから先は罰ゲームへと続く。目の前の勝者は、何とも優しく傲慢に微笑みかける。

「私の可愛い…… カッツェ、鳴いてみせてくれるか?」

ブロッケンの頭の隅には、悔しいやら恥ずかしいやらの感情もあるのだが。
それよりも、露わにされたアタルの唇に、従ってしまいたい欲が全身を駆け巡って抗えなかった。

………………みあぉ」

小さく喉を鳴らすと、褒美と言わんばかりの、深い口付けを与えられた。





肌と肌が触れ合い、弾けるような音がする。
その中に紛れる、意識外の息を吐く声、そして徐々にはっきりと上げられる嬌声。

いつもはそれすらも楽しみのひとつとするアタルだが、今日は違った。
時折動きを止めてしまう。その度にブロッケンは、更なる羞恥と、それ故の背徳的な、甘美で背筋が冷えるような快感に蝕まれる。

主人の青い目に見つめられ、その命に従わなければならない。
そんな力関係すら、彼にとっては心地よい拘束だと、気付いてない──ことにして。

シーツの波間から、溺れる声がする。

「にゃあ」
「にゃん……

──その態とらしい猫撫で “られ”声がする度に、アタルは満足そうに目を細めた。






「う〜〜〜」
「そういう妖怪?」

アタルがシャワーから戻ると、ベッドの上で白い塊が唸っている。
先程までそこには、最低限の後処理はしたものの、身体を流してやろうか、と誘ったら断固として拒否した猫がいた筈だった。

ブロッケンは頭からシーツを被り、顔すらも出さずに込み上げる羞恥心や後悔と戦っていた。

「可愛い顔を見せてくれないか、俺の カッツェ
「もう終わり!ばかばかばか!」

ぼすぼす
アタルが目敏く布越しに頭を撫でても、返事は掠れた声と力のない拳の連打だった。

「さいあくだ。あんな変なとこ見られて……恥ずかしくて死んじまいそう……

涙混じりの声がする。
ブロッケンは時たま、行為の後に変じゃなかった?アンタはよかった?と聞いてくることがある。
いつも途中から我を落とし、夢中になってしまうので、ちゃんとコミュニケーションを交わせているのか心配になるらしい。

今回は初の試みもあったしな、とアタルはブロッケンの不安を払拭してやろうとかける言葉を模索する。
丁寧に所感を述べてもよいが、ここは普段の信条に則り、あまりべらべらと語らずいこう。
恥ずかしがっていたのもわかる、ブロッケンを立てる言い方で……

「お前いつもより強く絞り取ってきたぞ。凄い凄「うるせー!!」

うって変わって大きな声が出た。勢いの侭に、ぱしっとアタルを軽く突き飛ばして、白い塊はベッドから飛び出していく。
アタルが褒めてるんだぞ、と言い終わる前にばたん!と扉が乱暴に閉められた。
ばたばたと足音が浴室の方に向かっていく。

……元気そう、か?」

アタルはそう独り言ちながら、ふと部屋に残された、今夜の立役者……猫耳付きキャスケット帽子が目に付いた。
あぁ、そうだ、これをくれた弟へ礼をしなくてはな。
ブロッケンが戻ったら相談しよう、最高に楽しめたぞと伝えて、菓子でも送っておいてくれと。



「俺は知らない、やるなら自分でやれ!!」を最後に、暫く口をきいてもらえなくなることを、アタルは予想だにしていなかった。


Happy Halloween!