ちよど
2024-11-16 13:28:27
24582文字
Public わし様など
 

練習1P 3月分まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
わし様中心SS。節操なくCP混在。

■2024/03/31
生前カルヨダ
「馬鹿者っ!!!」

「オレが飲もう」
 王子の持つ杯を奪い取ったスータに当の本人はおかしそうに眉を上げただけだった。しかし、そのあまりの無礼に彼らが招かれていた宴が静まり返る。
 スータから王へとなったばかりの男が言葉を続けた。
「オレならばこの不死の鎧がある」
「我が友カルナよ。わし様は友に毒見をさせるような酷い男ではないぞ」
 毒という言葉に人々の視線が宴の主催者に集まる。青ざめた壮年の男を見ることもなくドゥリーヨダナは空になった手を軽く振った。
「毒見は奴隷の仕事だ。王が奪うものではない。──そこの。頬に黒子がある、そうおまえだ。おまえこそが毒見にふさわしい」
 呼びつけられた奴隷がカルナから杯を受け取る。その震える手にドゥリーヨダナは微笑んだ。
「友は選ぶべきだぞ。わし様のようにな。──飲め」
 命じられて杯を煽った奴隷が血を吐いて痙攣する姿に、つまらなさそうに鼻を鳴らしてドゥリーヨダナはカルナに向き直った。
「その鎧。毒にも効くのか。無敵ではないか!」
「────」
 カルナの無言の返答に彼を試していたドゥリーヨダナは叫んだ。


■2024/03/30
アシュヨダ、カルヨダ
「ウェディングフォト」

「普通に結婚式をあげればいいのでは?」
 ゲオルギウスの言葉に深い紫色のタキシードに身を包んだドゥリーヨダナは大袈裟に肩を竦めた。
「わし様はマスターを八つ裂きにはしたくないのだ」
「マスターの周りにいる女達を刺激したくねぇんだよ」
 ドゥリーヨダナと同じ意匠の白いタキシードのアシュヴァッターマンが補足する。その隣で揃いの意匠の黒いタキシードのカルナが口を開いた。
「式などあげればマスターの取り合いが起こることは必至」
「つまりは。わし様達はちょーっとおしゃれをして記念に写真を撮ってもらうだけだ。同じ陣営に3人が揃うなどおそらく最後だからな」
「なるほど。ちょっとした記念の特別な写真ですね。分かりました。腕がなります。早速始めましょうか」
 そうしてストームボーダー内での撮影会が始まった。
 揃いの指輪のみっつの左手。聖杯にキスをする3人。甲板で手を繋いでジャンプ。触れ合う距離の笑顔。そんなよくある構図が何枚もカメラに収められていく。
「ああ、ちくしょう!なんで座に写真を持っていけねぇんだよ!この1枚なんて最高にかっこいいじゃねぇか!」
 アシュヴァッターマンの嘆きにカルナが頷く。そんなふたりにこれを提案したドゥリーヨダナが笑った。
「わし様達だけの記録だ。座にいる本体達になど分けてやらーん!!」


■2024/03/30
アシュヨダ(エイプリルフール)
「あんたの仕草じゃねぇだろ」

「我が名はよだにゃん!この至高のふわふわボディにひれ伏すがいい!!」
 そう言う紫色の猫をアシュヴァッターマンはじっと見つめた。
旦那?」
 問いかけにいつの間にか部屋に入り込んでいた猫はつん、と顔をあげた。
「よく分ったな。我が戦士よ。──褒美にちゅーるを与えることを許す」
 猫の声帯付近から発せられる聞き慣れた成人男性の声に、アシュヴァッターマンはしゃがみ込んだ。
「そんなもん持ってねぇよ」
 差し出されたアシュヴァッターマンの指に猫は顔を寄せ、硬い皮膚をざらざらした舌で舐めた。
「うまいか?」
「ちゅーる程ではない」
「食べた事あんのかよっ!!」
 驚いたのかアシュヴァッターマンが顔を上げる。何もない空間を見上げたアシュヴァッターマンに猫がにゃーんと甲高い声で鳴いた。
「なぜ分かった?」
 霊体化を解除して現れたドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは猫の首あたりから小さなスピーカを取り出した。
「なんで分からねぇと思った?」


■2024/03/30
カルヨダ(エイプリルフール)
「それではウルトラナイトメアではないか!」

「我が名はよだにゃん!この至高のふわふわボディにひれ伏すがいい!!」
 そう言う紫色の猫をカルナはじっと見つめた。
 長い毛をふわふわに膨らませた猫はそんなカルナを見つめ返す。良く見知った紫と同じ色の目がきらきらと輝いた。
「よもやわし様が誰か分からないとは言わんだろうな」
 聞き慣れた成人男性の声が猫の声帯付近から発せられている。
「ドゥリーヨダナか」
「そうだ。かわいいだろう?愛でることを許そう」
 しゃがみ込んだカルナが手を差し出すと猫はその掌に頭をこすりつけた。
「にゃーん」
 甲高い猫の鳴き声にカルナはわずかに表情をほころばせる。猫のふかふかとした首筋にカルナの指が埋まり、そしてその指が出てきた時には小さなスピーカーを摘んでいた。
なんだ、もうバレたのか」
 霊体化していたのだろう。突然現れたドゥリーヨダナにカルナは顔を向けた。
「何の真似だ、と聞くまでもないな」
「エイプリルフールとやらは嘘をつく日と聞いた。──だが、おまえには嘘は通用せんだろう?」
「確かに嘘は言っていなかったが。──オレはおまえがどんな姿になっても違えることはない」


■2024/03/29
カルヨダ
「これは正義の行いだとも!」

 このカルデアではサーヴァントそれぞれに端末が支給されている。
 ある日ドゥリーヨダナは珍しくカルナに頭を下げられた。
「QPを貸して欲しい」
詳しく聞こうか」
 古参でマスターに重宝されているカルナがその性格でQPを使い切る事などありえない。明らかに事件である。
 ちなみにカルナには寄付、募金、振込系の詐欺メッセージには関わらないように強く言い聞かせてあった。
 そんなカルナが画面が真っ赤に染まった端末を差し出す。
「不注意で壊してしまったが、直してもらうのにQPがかかるそうだ」
「ダウトー!!! 嘘ではないが、本当でもないヤツぅ!! ──ん? まあ待てカルナ。その端末を少し貸せ。わし様が直してやろう」
 カルナから端末を受け取ってドゥリーヨダナはにやりと笑う。
「うふふふ、ドゥリーヨダナ式錬金術をみせてやるぞ!」
「好きにすればいい」
 数時間後。戻ってきたドゥリーヨダナはほくほく顔で元に戻った端末をカルナに返した。そしてQPを渡す。
「捜査協力費と慰謝料。おまえの取り分だ。受け取っておけ」
悪辣な男だ」


■2024/03/29
アシュヨダ
「ふたりきりでいて欲しい」

「なんか物足りんな。カルナを呼ぶか」
 その言葉にアシュヴァッターマンは動きを止めた。
 ドゥリーヨダナのわがままは今に始まったことではないし可能ならば出来るだけ叶えてあげたい。そう思う事に偽りはないが、ここはベッドの上で今は体を重ねている最中だった。
「足りねぇ事があるなら改める。……俺は、旦那を共有なんてしたくねぇ」
 その主張に今度はドゥリーヨダナが瞬きした。
「共有?? ──違うわ!馬鹿者!!わし様を淫乱みたいに言うな! 生前、閨にも侍従が警護しておったから、ふたりきりは落ち着かんのだ!!!」
 怒られて猫の仔のように小さくなったアシュヴァッターマンは考えを巡らせた。
 このままだとカルナを巻き込んだ公開プレイになってしまう。アシュヴァッターマンは恋人の痴態を他の誰かに見せるつもりは全くない。それがカルナであっても。
「旦那はカルデアに来て、王子だった生前には出来なかった事が出来るって喜んでいただろ?『コレ』もそのうちのひとつじゃねぇか?」
「うーん」
「ここでは旦那を見ているのは俺しかいねぇ。好きに出来るって事だろ?」
「はっきり言え」


■2024/03/28
ビマヨダ
あいつは人間だったんだ」

『人間を体験してみようクエスト〜!!』
 そうダ・ヴィンチちゃんに言われてシミュレーションに放り込まれた半神の英雄ビーマセーナはまわりを見回してため息をついた。
「ただの森じゃねぇか」
『ふふーん、そうだよ。だが今まで数多の新入り英雄を泣かせてきた森でもある。──今の君の能力は藤丸くんと同じだ。頑張って1日過ごしたまえ。幸運を祈る』
 ぷつりと切れた通信にビーマはまたため息をついた。守るべきマスターの身体能力を知るのにここまでしなくてはならないのだろうか。
「カルデアってのは馬鹿ばかりなのか。あのトンチキを俺より先に召喚しただけのことはある」
 呟いてビーマは森を探索し始めたが、余裕があったのはここまでだった。
 すぐ息切れする体。枝を折るのも一苦労する非力さでは小さな獣ひとつ捕まえられない。弱い肉食獣相手にすら隠れなければならない屈辱。挙げ句の果てに硬い木の実すら歯が立たない脆弱さに、ビーマはとうとう音を上げた。
「ダ・ヴィンチ!!これで夜を越すのは無理だ!!」
『藤丸くんはいつもやっているよ』
 その言葉に彼は悟る。これは人間に対する侮りを無くすクエストだったのだと。
 ──じゃあ、こんな非力さで俺と戦っていたあいつは。


■2024/03/27
次男+カルナさん
「太陽のような」

「私達のかわいいスヨーダナ。あまりドゥフシャーサナの言葉に耳を傾けてはいけませんよ」
 母が兄貴にそう囁いているのを、俺はいつものように少し離れた所から眺めていた。
 その隣に最近兄貴が見つけてきたスータの男が立つ。
「なんの用だ?」
「オレに、弟が生まれた」
 いきなり身内自慢を始めた男に俺は視線を向けなかった。
「兄貴の援助のおかげだろ。感謝しろよな」
「感謝している。──弟を父は膝に乗せていたが、オレはそんなことをしてもらった覚えがない」
 強引に話を続けた白髪の男を俺は横目で捉えた。
 養子だと聞く男がこのままムカつく事をぬかした場合に殴りつける目算を立て始める。
 それに気づいているのかいないのか、そいつは兄貴を真っ直ぐに見つめていた。
「だが母は変わらずオレの体を拭い、食事を勧めてくれた。──太陽のように変わらないものはある」
 そう告げる男の視線に兄貴が振り返った。笑う。
「ドゥフシャーサナ!カルナ!」
 いつも一番最初に呼ばれる名前。
 ああ、兄貴は。誰がなんと言おうとも俺を蔑ろにした事はないのだ。


■2024/03/27
ビマヨダ
「ヘマしてんじゃねぇ!このトンチキ!!」

「──、カルデアとやらにいるわし様ならこんな失態はしなかっただろうに」
「ドゥリーヨダナ!!」
 特異点で現地の人理側サーヴァントとして召喚されたドゥリーヨダナはマスターを抱え込んだまま血を吐いた。その霊核は損傷し、消滅しかかっている。
 不意をついて攻撃した敵サーヴァント達が嘲笑う。マスターにはもう身を守るサーヴァントが残っていない、と。
 光の粒子になりながらドゥリーヨダナは口元を歪めた。
「藤丸立香、令呪の用意を、しておけ」
 言い残された指示に立香は何も無い虚空に左手をかざした。無力なマスターに敵が迫りくる。その時。
 光の奔流が迸った。
 新たなサーヴァントが召喚される。
 立香の近くにいた敵が薙ぎ払われた。光の中から出てきた男が凶暴に笑う。
「名乗りは後だ!魔力をくれ!!」
「は、はい!!」
 令呪が輝き、契約が成される。伝わったサーヴァントの真名に立香は目を瞬かせた。アトランティスでアキレウスがヘクトールを召喚したように。このサーヴァントは。
 ランサーが吠える。
「ドゥリーヨダナを殺すのはこの俺ビーマセーナだ。おまえらじゃねぇ!!!」


■2024/03/26
カルヨダ
「自慢のスキルはどうした?ん?」

「抱かれてくれ」
 突然のカルナの言葉にドゥリーヨダナは飲んでいた酒を吹き出した。
「げ、げほっ!いきなりなんだ!!今のはさすがのわし様でも分からん。最初から説明しろ!!」
 ストームボーダーのカルナの部屋で差し向かいで酒を飲む。それをふたりは今まで数え切れない程してきたが、色めいた話になったことは一度もなかった。
 手にしていたグラスをテーブルに置いて、カルナは長い指を組んだ。
「この戦いももうじき終わる。次に会う時はおまえとオレは敵同士だろう」
「そんなものわし様達を召喚したマスター次第だろう?おまえと敵対するぐらいならこうやってすげ替えればいい」
 カルナと自分のグラスを入れ替えるドゥリーヨダナの手をカルナは掴んだ。
「心にも無いことを口にするのは愚か者の所業だ」
「思い出づくりとか乙女のような事を言い出すおまえよりはマシだ。──ま、あ。おまえとそういう事をして英霊の座にいる本体を驚かしてやるのも面白い」
「──面白い、のか」
 言葉を繰り返したカルナにドゥリーヨダナは笑いかけた。
「そんな顔をするな。皆まで言わせる気か、馬鹿者」


■2024/03/25
学パロアシュヨダ(+モブ)
「放課後の秘密」

 バスケ部エースのアシュヴァッターマンは真面目な奴だ。
「じゃあ、俺はボール磨いた後に帰るから。お前らは用事あるんだろ?」
「いつも悪いな、じゃあお先に」
 お言葉に甘えみんなで体育館から部室棟に向かう途中、顧問のドゥリーヨダナ先生とすれ違った。この何をするにもやる気がなさそうな歴史の先生は何故か畑違いのバスケ部顧問に立候補したのだと聞く。
「せんせー、もう練習終わったっすよー!」
「わし様がいなくてもなんとかなるだろう? んー? アシュヴァッターマンはどうした?」
 良く言えば生徒の自主性に任せているドゥリーヨダナ先生は、いつも練習が終わった頃にのんびりとやってくるので俺達はもう慣れっこだ。
「アシュヴァッターマンならひとりでボールを磨いてます」
「体育館の鍵はあいつが持ってますー」
 俺達の答えにドゥリーヨダナ先生は何故か満足げに目を細めた。
「うむうむ。──おまえ達は気をつけて帰れよ。忘れ物などしないようにな」
「はぁい」
 そうして俺達は部室棟に向かい、ドゥリーヨダナ先生はアシュヴァッターマンがひとり残る体育館へと去っていった。


■2024/03/25
アシュヨダ
「当たり前だ」

「なんであんな奴を味方にしたんだ!!いくら大臣のひとりだからって、あいつはっ!!」
 抗議した俺に旦那はゆったりと笑みを浮かべた。
「わし様が生まれた時に殺せと主張していたからか?」
 人払いした部屋には俺と旦那しかいない。豪奢な椅子に腰掛けた旦那は立ったままの俺に首を傾げて見せた。
「だから何だ? ──今、使える駒なのだから問題など無かろう?金のためだろうが何だろうが別に構うまい?」
「だけど、
 言い淀む俺に旦那はいたずらっぽく笑う。
「そんな事を言い出したらわし様は大臣のほとんどを殺してまわらねばならないぞ。おまえはそうして欲しいのか?」
 黙って首を振る俺の頬を旦那は撫でた。
「今使えればいいのだ。そいつが何を考えているかはどうでもいい」
「──俺は、あんたの事が好きだから味方でいるんだぜ」
「嬉しい事を言ってくれるな、アシュヴァッターマン!」
 喜ぶ旦那は良くも悪くも今しか見ておらず、俺は言いたい言葉を飲み込んだ。
 ──そしてカルデアに召喚された旦那は叫ぶ。
「ビーマがおるではないか!この浮気者──!!」
 あいつにされた事を忘れたわけではないだろうに、今の状況だけに抗議する旦那について行きながら俺は言う。
「旦那にはずっと俺がいるじゃねぇか」


■2024/03/24
アシュヨダ
「よくかえった」

 時間がズレている、と気づいたのはレイシフトの際にマスターや旦那とはぐれてすぐだった。
 ミーティングで聞かされた年代より百年の過去。今、ここで退去してもカルデアに戻れるとは限らない。
 ──消滅するわけにはいかなかった。
 次の召喚で旦那と出会える確証がいや、旦那と過ごせる時間が秒でもあるのなら俺は何を置いても帰るだろう。──あの夜襲の時のように。
 復讐の血は甘かった。シヴァ神の力を得た俺はパーンダヴァの連中を鏖殺するのにすぐ夢中になった。五王子の不在に気づいてもすぐに見つけ出せると思っていた。
 雲が紫色に染まるまでは。
 朝日を受けた薄い雲が髪のようにたなびいて、俺は帰らなくてはと思ったのだ。五王子の首などどうでもいい、森に残してきた大切な人の元に帰らなくては。
 ──帰らなくては。
 どれほど血を浴びても、獣のように魔力を啜っても、悪鬼と成れ果てても、帰らなくては。
 百年の間に魔力は尽き。幽鬼と化した俺をやっと旦那達が見つける。
 面影など残っていない俺を旦那はためらいもなく引き寄せた。顎を掴まれる。
 熱い魔力が注がれ、自分の形を思い出した俺に旦那は破顔した。


■2024/03/23
カルヨダ+サンタカルナ
「特別扱いは当然だろう?」

「何をしている?」
 カルナの言葉にベッドに横たわり細身の男を抱きしめているドゥリーヨダナは当然のように答えた。
「友吸いだ」
 自身を抱きしめているドゥリーヨダナに顔を埋められ、助けを乞うようにカルナを見上げるのはサンタカルナだ。
「ロードワークに誘われている」
「わし様の方が優先だろう?」
 そう言われドゥリーヨダナにあれこれと構われているサンタカルナに答えず、カルナはベッドを回り込む。ドゥリーヨダナの背後に空いたスペースにあがると、カルナは腕をまわした。
「何をしている?」
 ドゥリーヨダナの問いにカルナは答えた。
「おまえを吸っている」
 花の匂いに顔を埋めたカルナにドゥリーヨダナは楽しそうに笑った。
「わし様の匂いは癒やされるであろう?存分に嗅ぐがよい!おまえだけに許そう」
 最後に囁かれた言葉にサンタカルナが振り返った。
「──オレはおまえの『カルナ』ではないのか?」
 珍しい嫉妬にドゥリーヨダナは大きく笑った。
「もちろんおまえも『我が友カルナ』だとも!!だが、こちらは『我が恋人カルナ』なのでな」


■2024/03/22
生前ビマヨダ
「せめて復讐ならば」

「何故、こんな事を」
 胸を割かれた弟の骸を前に呆然と呟いたわし様にカルナは言った。
「ドラウパディーへの侮辱に対する報復だそうだ」
「はぁ!?」
 確かにわし様達はビーマの妻ドラウパディーを揶揄したり服を剥いだりしたが、たったそれだけだ。
「あいつは自分が河に沈められても怒らなかった男だぞ!!」
 ビーマは毒を盛られ河から帰って来た後も、家を燃やされた後もわし様達と距離を取るようになっただけで、あの怪力で襲ってくるような事はなかった。
 今までは。
「は、ははは。従兄弟殿は自分のためでは動かず、妻のためにはこれほどの報復をするというのか」
 なんて正しく格好いい男!
 愛する妻のためにと報復した奴の目には、わし様達はただの悪役としか映っていないのだろう。
「ドゥフシャーサナ」
 赤黒く染まった弟の胸に手を置く。ばっくりと開いた肉は冷たく俺の心臓のようだった。
 弟を惨たらしく殺されたというのに復讐する気にもならない。奴はただ報復の義務としてこれを行っただけなのだ。
 塵芥に過ぎない悪役は涙すら出なかった。


■2024/03/21
ヨダナ先生+モブ
「ドゥリーヨダナ先生は恐ろしい」

 歴史のドゥリーヨダナ。この学校のやる気のない先生の筆頭だ。
「歴史なぞ教科書を覚えていれば馬鹿でも点が取れる。つまらん仕事だ」
 と言い放ち、授業は生徒に音読させるだけ、最低限のテストの他は簡単なレポートのみ。
 舐められてもおかしくない勤務態度だというのに、ドゥリーヨダナが上級生達に妙に恐れられていたワケを俺は今体感していた。
 補習である。教室には簡単なレポートすら提出しなかった連中が集められていた。
 そういう奴らはだいたい顔見知りだ。どうせたいした事もせず解放されるだろうとにやにやしている俺達にドゥリーヨダナは支配者のように笑う。
「教科書を開け。1814年のウィーン会議だ。おまえ達にそれぞれ割り振った国として交渉せよ。一番成果をあげた者に優。それ以外は落第とする」
 落第!の単語に皆の目の色が変わる。
 勝利者はひとりだけだ。教科書片手の壮絶な足の引っ張り合いが始まり。かすかにあった連帯感など木っ端微塵に吹っ飛んだ。
 最後には罵声が飛び交う教室を満足そうに眺めていたドゥリーヨダナは笑って言った。
「これでは全員落第だな」


■2024/03/20
わし様+キャストリア
「詐欺師!守銭奴!!ドゥリーヨダナァ!!!」

「それとも。わし様が骰子を用意するか?んんん??」
 にまにまと笑うドゥリーヨダナにキャストリアは歯噛みした。すでに彼女は彼の手の内にある。
 思えば「この地獄の周回の息抜きにどうだ?」とドゥリーヨダナが骰子と茶碗を持ってきたところから罠だったのだ。
「私相手に賭け事ですか?」
「プラフ無しの完全運ゲーだ。これなら妖精眼とやらも関係なかろう。とりあえず掛け金はこれくらいでどうだ?QPは唸るほど持っておるであろう?」
「まあ、ちょっとくらいなら。ただし!サイコロはこちらで用意します!それが公平というものですよね」
 そうして、始めた賭け事にキャストリアはすぐに夢中になった。発狂しそうな周回に手軽な刺激。そしてそれはすぐにドゥリーヨダナ以外とも賭け事をしてみたいという欲に変わったのだ。
 ドゥリーヨダナが用意した茶碗を貸してくれと言ったキャストリアに彼は告げた。
「もちろんいいとも。だが、レンタル料として掛け金の1割は払ってもらおう。わし様の他に周回に茶碗を持ってくるような奇特なサーヴァントがおるのか?わし様ならおまえの周回にほとんど同行しておるぞ」
 公平性をアピールするには選択の余地はなかった。


■2024/03/19
わし様とジャルタ(水着)
「このうちわは没収だろうか?」

「推し活警察よ! ドゥリーヨダナ!! 大人しくお縄につきなさい!!」
 突如部屋に押し入ってきた3人の女性。ジャンヌ・ダルク・オルタ(水着)、刑部姫、ガネーシャ神にカウラヴァ三人組の動きが止まった。そのカルナとアシュヴァッターマンが持っていたモノにジャルタは指を突きつける。
「推し活の強制はカルデア条例違反!! 現行犯逮捕よ」
 二人が持つデコられたうちわにドゥリーヨダナは片眉をあげた。
「わし様強制などしておらんが? たまたまあったうちわと、たまたまあったシールなどを身内に譲っただけだなァ。それをふたりがどう使おうとわし様の関与するところではなぁい!」
 主張にカウラヴァの二人がうんうんと頷くが、ジャルタは目を険しくした。
「密売人みたいな言い訳をするんじゃないわよ!! いいわ、力尽くで連行してあげるわ。後輩!」
「聖杯も入っておらぬ若造がいい気になりおって!! カルナ!! アシュヴァッターマン!!」
「あら? 必中すら持ってないのにこのメンバーに勝てると思ってるの?」
 回避持ちジャルタ、サポートの刑部姫、無敵付与のガネーシャ神である。ドゥリーヨダナ達に勝ち目はなかった。
 睨み合う二人を横目にカルナが問いかける。


■2024/03/19
アシュヨダ
「マハバ聖杯戦争ED」

「あんたはすぐに、こんなクソみてぇな儀式に頼らなくてもなんでも自分で出来るようになるさ」
 そう言い残して暁に溶けた『あーちゃー』を見送って私は──俺は腕で目元を拭った。朝日が眩しかった。それだけだ。
 踵を返して王宮に戻る。ひとりで歩いている俺に門番は驚いたようだったが、騒ぎにはならなかった。思っていたよりも俺は『あーちゃー』が来てから『ひとりで』行動していたようだ。
 これからは『あーちゃー』はいない。刺客も毒殺も自分で身を守らなくてはならない。──顔も見せなかった奴だけど、最後まで『あーちゃー』は俺の味方だった。
 戻った俺に侍従が駆け寄ってくる。来客らしい。
 そういえばこの前、井戸に落ちた妹を助けてくれた男を父王に紹介すると言ったのだった。
 来客用の部屋に案内されてきた男は赤毛の子供を連れていた。
「改めまして。ドローナと申します。こちらは私の息子」
「アシュヴァッターマンと申します。ドゥリーヨダナ様」
 きらきらとした額の宝珠と、それに負けない程の輝きを宿した瞳が俺を見た。
 それに何故か俺は『あーちゃー』を思い出す。──こいつが『あーちゃー』のように俺の味方になってくれたら。
 微笑みかけると子供は顔を赤らめた。


■2024/03/18
アシュヨダ
「マハバ聖杯戦争OP」

 召喚したマスターを見た瞬間、俺は即座に全身を鎧で覆った。跪く。
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上しました」
「私はクル国の王子ドゥリーヨダナ。神の眷属を喚べるとは本当だったんだな」
 俺の腰ほどの背丈にまだ高い声。俺と出会う前の旦那は、明らかに聖杯戦争を理解していなかった。
「あーちゃーとは何だ?おまえはどの神の眷属なのだ?」
「アーチャーとは弓兵。強いていうなら俺はシヴァの眷属だ。──左手を見せてくれ」
 俺の言葉に素直に差し出された左手の甲には三画の令呪。その無防備さにくらくらする俺を幼い旦那は見上げる。
「おまえはなんでも願いを叶えてくれるのだろう? ──パーンダヴァの奴らを追い払ってくれ!!」
 予想通りの願いに俺は旦那の顔を見た。
……悪いがそれは出来ねぇ。今、あいつらに何かあったら一番に疑われるのはあんただろ?」
 それに思い至っていなかったのか旦那の顔が歪んだ。
「でも、あいつらが来てから何もかもがめちゃくちゃだ」
 そう呻いた小さな体を俺は突き飛ばした。
 交差した腕に衝撃が掛かる。実体化した槍の向こうには。
「そいつは今死んだ方が世界のためだ」
「いると思ったぜ。ビィーマァアア!」
 背後で旦那が小さく声を上げたのが聞こえた。


■2024/03/17
カウラヴァ
「戦車で廊下を走ってはいけません」

「すまねぇ!! 先に謝っておく!!」
 マイルームに入ってきた途端土下座しそうな勢いで頭を下げたアシュヴァッターマンに、マスターは事情を訪ねようとし。突如廊下に響いた轟音に飛び上がった。
 話は1時間程前に遡る。ドゥリーヨダナ、カルナ、アシュヴァッターマンはカルナの炬燵で寛いでいた。
「ズルいよなぁ」
「今度は何がズルいんだ? 旦那」
 皮と筋を剥いたみかんをドゥリーヨダナの口に放り込みながらアシュヴァッターマンが尋ねると、彼の主はもきゅもきゅと咀嚼してから口を開いた。
「カルナだ。──宝具で戦車に乗っているわし様には騎乗スキルがないのに、なぁんで槍しか使わないおまえにスキルが生えておるんだ!?」
 理不尽な難癖に、カルナは目を伏せた。
「それは多分。オレが父スーリヤと一体化していた頃」
「パワーワードきたな」
「サーヴァントの身となっては遠い記憶だが、オレスーリヤは日輪の馬車を駆って天空を行き来していた」
「それで?」
「スーリヤが騎乗スキルを持つのは万人が知っているということだ。つまり」
「わし様が戦車の名手だと知れ渡ればいいことだな!!」
 ドゥリーヨダナは勢いよく立ち上がった。


■2024/03/16
ビマヨダ
「俺が悪いみたいだろう」

「ドゥリーヨダナとふたりっきりの時の呼び名? あるよ」
 マスターのあっけらかんとした回答に俺は眉間にしわを寄せた。
 昨夜の睦言が蘇る。
「──わし様の恋人に成ったからには、今まで通りというわけにもいくまい。今度からおまえの事はこう呼ぼう──、ナイショだぞ」
 とドゥリーヨダナに口止めされていたが、どうせろくでもないだろうとマスターに確認したところ案の定だ。
「敵が擬態してきた時のお守りだって。──ねぇ、ビーマ。私の話を聞いてる?」
「聞いてる」
 正直聞いてなかったが返事だけして、俺はカルナの元へと向かった。
「おまえに話す必要があるのか」
 アシュヴァッターマン。
「だとしても、てめぇに言うわけがねぇだろ」
 ふたりとも「有る」と俺の直感が告げていた。
 あのろくでなしの言葉を真に受けて一瞬でも浮かれた自分が馬鹿みてぇだ。
 そんな俺に恋人になったばかりの男は薄く笑う。
「そのような顔をするなら、確認しなければよかったのになぁ」
 なんでおまえが泣きそうなんだよ。


■2024/03/16
わし様+マスター
「やらんが」

「おぬしが落としたのは、この星5ランサーカルナかな?それともこの星4アーチャーアシュヴァッターマンかな?」
 ドゥリーヨダナの声にマスターは顔を上げた。小さな湖の中央にはドゥリーヨダナがカルナとアシュヴァッターマンを従えて立っている。それに、カルナもアシュヴァッターマンもいないマスターは問いかけた。
「どちらも落としていないと言えば貰えるの?」
「もちろんだとも。──さあ、」
 魔性の笑みにマスターは左手をかざした。
「令呪をもって命ずる!ドゥリーヨダナ!敵を殲滅せよ!」
 召喚されたドゥリーヨダナが渦のように舞った。そして。
 ──ボチャン。
 自身に化けていたエネミーを殲滅したはいいが足場などない湖に落ちたドゥリーヨダナにマスターは手を合わせる。
「ごめん」
「ばっかもーん!!ごめんですむか!! 他に誰もおらんだろうな?」
 霊体化して姿をリセットしたドゥリーヨダナがマスターの隣に顕現する。
「迷子だったので」
「ならばよし!それにしてもよくわし様ではないと見破ったな」
「わし様。カルナとアシュヴァッターマンを欲しいと言ったらくれる?」


■2024/03/16
ビマヨダ
「王としての職務だろう?」

「ドゥリーヨダナ、明日の周回の、!!!!」
 深夜にはまだ早い時間帯、ドゥリーヨダナの部屋に足を踏み入れたマスターは悲鳴をあげそうになった。
 各サーヴァントに割り当てられた居室はドアを開ければベッドの上が見えるのだ。
マスター、明日の周回がどうした?」
 ビーマの下にいるドゥリーヨダナが問いかける。ドゥリーヨダナの上のビーマは固まっていた。マスターもだ。
「マスター。見ての通りわし様は忙しい。手短に頼む」
「聞くつもりなのかよ! てめぇは恥じらいってものを知らねぇのか、このトンチキ王子!!」
 ビーマの叫びにうるさそうにドゥリーヨダナは汗で貼り付いた髪をかきあげた。
「明日の話ならば、今聞かねばならんだろう? 危急の報告なら特にな」
 ドゥリーヨダナがビーマを押しのけると見えてはいけないものが見えてマスターの体温が乱高下する。ビーマの視線を感じてマスターは慌てて背を向けた。
「そ、そんなに急ぎじゃないよ!」
「マスター。おまえは急ぎでもないのに王子の寝所を侵す程愚かではあるまい。──気にせずとも生前よくあった事だ。どこぞの馬鹿兄弟が大暴れする度にな」
 ドゥリーヨダナの説明にビーマが頷く気配がした。
「──なるほど。少しは嫌がらせになっていたんだな」


■2024/03/15
アシュヨダ
「いつもあなたが満ちるように」

「珍しい光景だな」
 テーブルに食事を積んでがっついていると、向かいの席に旦那が座った。
「おまえ、腹を空かせたことなどなかっただろう?」
 宝珠の効果で旦那が生きていた頃の俺は飢えを感じることがなかった。
 ごくん、と俺は口の中のパンを飲み込む。
「サーヴァントにとって食事は魔力補給だろ。旦那は腹減ってねぇのか?」
「ちっとも。わし様みたいな最高の王子が空腹になるなどありえないだろう?」
 得意げな旦那に俺は言い募る。
「カルデアではそうだろうが。野良サーヴァントとして召喚されたらそうもいかねぇ」
 旦那は大袈裟に笑って手を左右に振った。
「わし様が野良!?ないない。わし様はわし様に相応しいプレシャスでゴージャスなマスターの召喚にしか応じぬよ」
「──だったらいいんだ」
 野良サーヴァントは自分を維持する魔力の確保にすら苦労する。それこそ、三千年俺が死にもしないのに飢えに苦しんだように。
 俺は旦那を見つめた。無言のおねだりに旦那はくすくすと笑って唇を寄せてくれる。
 いつものように俺はそこに魔力を吹き込んだ。


■2024/03/14
ビマヨダ
「わし様は確実に敵を倒しただけだが?」

「well well well」
 わざとらしい感嘆詞と共に影が差して、ビーマはなんとか仰向けに転がった。案の定、その様子を立ったまま見下ろしていたドゥリーヨダナは笑みを深める。
「大英雄ビィーマともあろう者が土を舐めるとは。新たなメニューでも考案しておられるのかな?」
「だとしても、てめぇには出さねぇよ」
 ビーマが先程まで戦っていたシャドウサーヴァントの集団はセイバーの神性特攻持ちだったが、この男の前でそれを言い訳にするつもりは無かった。
「わし様、周回に大活躍のつよつよサーヴァントゆえ。残念ながら、そのようなキワモノを食べる機会がなくてなァ」
 ドゥリーヨダナは棍棒で軽く地面を叩いた。
「まあ、厨房係はそこでわし様の活躍を聞いておれ」
「おまえの火力じゃ足りねぇだろうが」
 その言葉にビーマの視界から去っていくドゥリーヨダナは声を上げて笑った。
「火力などOCであげればよい」
 しばらくして動けないビーマに風が戦場の音を届けてくる。聞き慣れたドゥリーヨダナの宝具開帳スペルに重なるように知らない男の声が響いた。
「奇策、冷血を持って終わらせましょう。炸裂するは掎角一陣!!」
 勝利したのだろう。マスターの歓声が聞こえた。


■2024/03/13
カルヨダ
「こいつら類友だ」

「まるで雛鳥と親鳥みたい」
 マスターの言葉に大きく口を開けていたドゥリーヨダナと、そこにせっせと色とりどりのマカロンを運んでいたカルナの手が止まった。
「マスターの目にはわし様が雛鳥に見えると?」
「だって、カルナさん。ドゥリーヨダナが食事をしている時たいてい食べさせてあげているよね?」
 マスターの疑問にカルナはドゥリーヨダナを見た。
「餓死されては困る。──この男には前科があるからな」
「こらこら。わし様が罪人のようではないか。ちょっと世を儚んで断食しただけだろう?」
 カルナの長い指が柔らかいマカロンをふたつに割った。
「──おまえが食を断った時。オレはおまえの元へ食べ物を運ぶことさえ許されなかった。せめてもの贈り物もおまえの元へは届いていなかっただろう」
 ドゥリーヨダナの太い指がカルナの手からマカロンを取り上げ押し潰す。
「おまえを通さなかった者の名前を言え」
 強い眼差しにカルナはうっすらと微笑んだ。
「とうに死んでいる。それに──周辺国の国王の首をいくつか並べたら風よりも早く道を開けたぞ」
「さすがわし様のかぁるな!!」
 破顔したドゥリーヨダナと反対にマスターは口元を引きつらせた。


■2024/03/13
アシュヨダ
「結局は自分のため」

「そこまで主に従う理由はないだろう?」
 そう言われた時、俺は笑って首を振った。
「俺がやりたくてやっているんだ」と。
 今も。ソファに寝転がって端末を触っている旦那を横目に俺はシーシャのボトルに水を入れた。器具をセットして振り返ると、小さなコンロでは炭が赤く熱を抱いていた。
 その炭を摘んでシーシャの一番上に置く。ホースの先端に口をつけると、口腔内にほんのりと甘みを帯びた爽やかな味が広がる。
 カルデアには器用なサーヴァント達が作った嗜好品が溢れている。しかし、それも無限ではなく。シーシャのフレーバーという需要が少ない物は数が限られていた。
 そしてドゥリーヨダナの旦那は飽きっぽい。
 だから俺は旦那の気分に合わせて毎回フレーバーをミックスしていた。
 2、3回吸って煙の通りを確かめると、俺は旦那に吸口を差し出す。
「ん? もう出来たのか?」
 もそもそと体を起こした旦那は引き寄せた。シーシャではなく俺を。
 唇が重なる。
 息を吸われ、口の中を舐め取られる。
「うむ。わし様好みの味だな。さすがわし様のアシュヴァッターマン。分かっておるではないか」


■2024/03/12
ビマヨダ
「厄介な男だな」

 籠城戦である。
 正確にはシミュレーターでの仮想戦闘だ。攻め手はレア度の高い大英雄ばかり。防御するのはマスターが率いるそこそこの英霊たちだ。
 ドゥリーヨダナが棍棒を振り回した。
「なぁんで! わし様がこっちなのだ!!」
「わし様、ビーマさんと同じ陣営になりたかったの?」
「嫌だが? ──だがマスターこれでは勝てるものも勝てんぞ」
 周りを見ればやる気を無くした者が大半だった。
「よぉし! マスター歌え。故郷の歌のひとつやふたつあるだろう!」
 背中を叩かれて、マスターはとりあえず声を出す。
「えっと、……あのやまを〜いつか〜こえーて」
「さあ、弟達よ! お前達も歌うがいい!」
「僕達はお前の弟じゃない。──けど、マスターが歌うなら」
 聖杯知識を頼りにマスターと唱和し始めたサーヴァントはひとり、またひとりと増えていき。いつしか大合唱になった。
 その歌声は攻め手の陣にまで届き、ビーマの眉をしかめさせる。
「あのトンチキ。また同じ手を使いやがって」
「完全に流れを持っていかれたな。なるほどこいつは」


■2024/03/12
アシュヨダ
「おまえの話をしていたからだ」

 熱い息を零してベッドに背中を預けたドゥリーヨダナは、彼の身体から顔を上げたアシュヴァッターマンの濡れた前髪を指先で弾いた。
どこでこんな事を覚えてきたんだ? わし様は教えた覚えがないぞ」
 拗ねたような恋人の口調に、アシュヴァッターマンも彼以外に見せない不貞腐れた子供のような顔で口を尖らせる。
「俺はあんたより早くカルデアに来ただろ。ここはバラモンだとか宝珠だとか関係ねぇ」
「つまり?」
「生前しょっちゅうあんた達が集まってごそごそやってたやつに俺も混ぜて貰えたってわけだ」
 ──いわゆる猥談である。
「わし様達はおまえをのけものにしていたわけではないぞー」
「知らねぇ」
 ご機嫌を取るような恋人の言葉にアシュヴァッターマンはそっぽを向いた。
「どーせ、親父がこぇえとかそんな理由だろ」
「ちがうが」
「じゃあ、なんでだよ!」
 アシュヴァッターマンの言葉にドゥリーヨダナは目を逸らした。


■2024/03/11
生前アシュヨダ←弟
「この後ふたりにめちゃくちゃ怒られた」

「旦那はどうしたんだ?」
 アシュヴァッターマンの問いかけに『ドゥリーヨダナ』は肩をすくめた。
「どうして分かるんだよ? 俺が一番兄貴の真似が上手いのに」
 長兄の衣装を着た俺にアシュヴァッターマンは呆れたように笑う。
「全然違うだろ?」
 ──その言葉を思い出して俺は笑う。
 その頬を殴り飛ばされた。縛られているせいで受け身を取れず俺は不様に地面に転がる。豪奢な兄貴の服が汚れ、俺を囲む男達がどっと笑った。
 暗い天幕の奥に立つ男が問う。
「ドゥリーヨダナはどこだ?」
「俺たちの見分けがつかねぇ奴に言ってもなー」
 せせら笑うと喉元に剣が突きつけられる。
「肉塊に戻りたいのか?」
「それはおまえの事か?」
 兄貴の声と同時に飛び込んできた赤い髪が辺りを薙ぎ払う。あっという間に立っている者がひとりしかいなくなった空間に、兄貴は足を踏み入れた。
 俺は揃いのようなふたりに笑いかける。
「俺ってお姫様みたいじゃねぇ?」
「馬鹿者」


■2024/03/11
アシュヨダ
「今度は置いていかないで」

 最初に去ったのはドローナ師だった。続いてカルナ。そうして弟達が零れるようにいなくなり。シャクニ叔父ですら姿を消した。
 最後にパーンダヴァの連中にまで置いていかれた俺は森の中でひとり自分の死を待っていた。そこに、
「旦那。そんなもの読んでいたら悪酔いするぜ」
 わし様が読んでいたマハーバーラタを取り上げて、傍らに立つアシュヴァッターマンは眉をしかめる。
「よりによって、この巻かよ」
 ドゥリーヨダナが死に、アシュヴァッターマンが呪いを受ける様が綴られていた書物を見上げ、わし様は持っていたグラスを口に運んだ。
「──わし様は、おまえの献身になにで報いればよい?」
 あえてゆったりとした笑みを浮かべて聞くと、忠義の戦士は首を振る。
「なにも。──何かが欲しくてやった事じゃねぇよ」
「それではわし様が困る! 狭量な主だと後ろ指指されるのはごめんだ」
 大袈裟に嘆いて手招きすればアシュヴァッターマンは疑いもせず体を寄せる。その心臓の上に手を置いた。
「褒美をやる。──わし様のこの霊基が消滅する時は必ずおまえを殺してやろう」
 金色の瞳が見開かれ、潤み、赤い睫に散った。その唇が動く。


■2024/03/11
わし様(CBCコミケ背景)
「数分後泣かされて帰ってきた」

「ここがわし様を称える書物を売っておる会場か。なかなか賑わっておるではないか!」
 上機嫌に顔を綻ばしているドゥリーヨダナに、アシュヴァッターマンは目をそらし。その拍子にアーチャーの視力が捉えたあられもないポスターに天井を仰いだ。
 一方、何もかもあるがままに受け入れ過ぎるカルナは、カルデアに召喚された時期も長いため些事に拘らず会場の地図を開く。
「赤いマーカーのところは男子禁制らしい。おすすめはこの緑のマーカーのところだそうだ」
「どうおすすめなのだ?」
 ドゥリーヨダナの質問にカルナは顔を上げた。
「オレにおまえの好みがわかるはずも無いが。ガネーシャ神が言うには、最終再臨まではこのあたり。スキルマならこのオレンジのマーカー。Lv120でここ。アペンドスキルマで赤に来るかどうか判断しろと」
 カルナの言葉にドゥリーヨダナは腕を組んだ。
「今のわし様は?」
……種火も貰ってねぇ、召喚したてだな」
 まだドゥリーヨダナより『理解る』アシュヴァッターマンの評価に彼らの主はくるりと向きを変え駆け出した。
「なら、わし様は常に最大の結果を求めよう! 行くぞ! 我が戦士たちよ!!」
「旦那! そっちは赤だー!!」


■2024/03/10
アシュヨダ←奥さん
「だから、嫌いなのよ」

 ──外に出たかった。
 あのバラモンのようにあなたと野を駈けたかった。
 森の中をあなたの遺体を探して歩く。服は乱れ、薄いサンダルは石を踏んで、藪をかき分ける手は血だらけだ。
 こんな私を見たらあなたはどう思っただろう。外に連れて行ってと願った時のように困った顔で私を見ただろうか。
 分かっていた。敵の多いあなたが私を後宮から出さない理由も。信頼できる部下だけを私に会わせていた理由も。
「どこにいるの? 私のドゥリーヨダナ」
 もうあなたに届かない呼びかけ。いつもあなたと一緒にいたあの赤い髪のバラモンなら決して言わないだろう言葉。
 あなたがどこにいてもあなたが呼べば必ず現れたあの男。
 宮殿の中でも外でも当然のようにあなたの側にいた男。
 ──あの男が嫌いだった。誰にでも好かれる清廉な性格だろうが関係なかった。
 外に出たいと願ってから、あの人が持ち帰って来るようになった野の花も。あの男の口添えだと知ってから大嫌いだった。
 ふと。見た岩の上にその花が置かれていた。その先の枝の上にその花が石で押さえてあった。その先には土の上に巻かれた花々。明らかな意図を辿っていくとそこには。
「ああ、あなた。ここにいたのね」
 コインで飾られた美しいままのあなたが隠されていた。


■2024/03/10
生前カルヨダ
「時すでに遅し」

「この寒いのに沐浴とは。ここではバラモンの修行に付き合わなくてもいいのだぞ」
 ドゥリーヨダナの声に、薄氷が流れる川で体を洗っていたカルナは顔を上げた。
「寒さは苦ではない」
「見ているこっちが寒いわ」
 よく手入れをされた毛皮を羽織った友が大げさに震えてみせるのに、カルナは親しいものにしか分からない僅かな笑みを浮かべた。
「──オレが流されていたのはこんな冬の日だったらしい。だから、オレは沐浴を行うのだ」
「その不死の鎧を授けたスーリヤに感謝して、か」
 言葉足らずのカルナを補足してドゥリーヨダナは不快そうに片眉を上げた。
「その鎧が無ければおまえはこの寒さで確実に死んでおっただろう!」
「オレはこの通り生きている。恩寵だ。──だからオレは沐浴の時に乞われた物は全て渡すと誓った」
 カルナの言葉にドゥリーヨダナは額に手を当てた。
「強者が誓いなど容易く立てるな。そんな縛りは敵から見れば格好の餌だ。どこで足元を掬われるか分からんぞ」
 忠告にカルナは微動だにしない。それにドゥリーヨダナは深くため息をついた。
「せめて誰にも言うな。──ハァ? もう渡しただぁ!?」


■2024/03/09
生前カルヨダ
「そうして最初の音が奏でられた」

「スータは楽器も弾けんのか?」
 蔑みではなく純粋な疑問として発せられた言葉に、カルナは渡されたシタールを見下ろした。
 隣に座るドゥリーヨダナより当然のように持たされた楽器は思ったより軽い。
 彼らが友となって初めての宴である。
「たまにある祭りで楽士崩れが拙い披露をしているのは見かけた」
「と、いうことは触ったこともないと? ふむ。しかし王たる者が宴席で楽のひとつも披露出来ぬのはマズい」
 ドゥリーヨダナは顎に手をやった。少し考え込んだかと思うと目を輝かせる。
「わし様が教えてやろう。なに、武器を持てるなら楽器も弾ける。クシャトリヤとはそういうものだ」
 そうカルナに笑いかけ、ドゥリーヨダナは宴に集まった人を見渡した。
「聞け、皆のもの! 未来の名奏者の最初の音を聞く名誉をおまえ達に授けよう。皆でこのカルナをどこに出しても恥ずかしくない奏者に育てるのだ! このような機会はそうそうないぞ!! ──わし様のシタールを持って来い」
 命じられた侍従が差し出したシタールはカルナのものに比べてきらびやかな装飾が施されていたが、細やかな手入れをされていても分かるほど使い込まれていた。
「なに簡単だ。わし様を見てその通りにすればいい」


■2024/03/07
生前ビマヨダ(誕生日)
悪気はなかったんだ」

「僕は父上の継嗣です!!」
 スヨーダナの悲痛な訴えに父王は首を振った。
「わきまえておくれ、スヨーダナ。あの子の誕生日を祝わないというわけにはいかないのだ」
「あの日は僕の誕生祭だ!! どうして長子の僕が次男坊と一緒に祝われなくてはならないのですか!!」
 パーンダヴァの息子たちを引き取ってから初めての誕生祭。今まで祝いの全てを享受してきた長男の主張に父親は子供の柔らかい唇を指で押さえた。
「スヨーダナ。最初に祝われるのは早くに生まれたおまえだ。踊りも演劇もお前が見た後にあの子に披露される。──それで充分だと思いなさい」
 柔らかい断言にスヨーダナは父の部屋から飛び出した。王宮を駆け抜ける。自分の部屋に飛び込もうとして。──そこに今一番会いたくない者が待ち構えているのに気がついた。
「スヨーダナ!!」
「ビーマセーナ」
 屈託なく笑う従兄弟は腕いっぱいに布だか紙だか分からないものを抱えている。
「俺の誕生日を祝ってくれるんだってな。──だから、俺もおまえにお祝いしようと思って」
……ふん、貢物か。これは何だ?」
「ナーガの抜け殻!!!」


■2024/03/07
アシュヨダ(CBC)
かわいそうに」

 オレンジジュースを片手に持つカルナに誘われて出たバルコニーからは、賭博に興じる旦那達がよく見えた。
 カルナがそれを眺めながらジュースを嚥下する。
「美味いか?」
「愚問だ」
 その視線は旦那から動かない。カルナが王子たるドゥリーヨダナを上から眺めるなど生前無かっただろう。
 そして、旦那もああまで馬鹿勝ちすることも。
 このカルデアで賭博をするなら、当然使う骰子ぐらいは確認するだろうし。どんな逸話をもつかどうか分かったもんじゃねぇ骰子なんか使わせない。
 旦那の持つ白色の骰子ではなく、赤と青の骰子を使っているのがその証拠だ。
 だが。どれだけ警戒しても無駄だ。

 ──ドゥリーヨダナが骰子を持つとしたら、それはシャクニのイカサマ骰子である。

 賭博の逸話を持つ旦那の霊基特性に気づいたのは、手慰みに3人でゲームをしていた時だった。
かわいそうに。旦那に身ぐるみ剥がされるな」
「哀れなことだ」
 憐れむ言葉が出るが、俺もカルナも助けに入らないのが分かりきっていた。


■2024/03/06
ヨダナさん(+奥さん)
「意外といないのよ、こういう男」

「最近、女達にわし様の魅力が伝わったようだな」
 満足げなドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは何も答えられなかった。
 話は数日前に遡る。潰れるまで飲まされたドゥリーヨダナに、ひとりの女性サーヴァントが手を貸そうとした。
 その手をドゥリーヨダナが掴んで引き寄せる。
「旦那っ!」
 慌ててアシュヴァッターマンが飛んでくる前に、酔ったドゥリーヨダナはその女性の長い髪を撫でて言った。
「ふふふ、わし様は魅力に溢れておるからなー。妻となりたいと願うのも仕方がないというものだ」
 明らかなセクハラ発言に周りの女性達が手を止める。アシュヴァッターマンが口を塞ごうとする前にドゥリーヨダナは言葉を続けた。
「わし様の妻になりたければ、まずはバヌマティに会うがよい」
「あら? バヌマティってどなたかしら?」
 腕の中の女性に問われて、ドゥリーヨダナは眉を上げた。
「知らんのか? わし様の正妃だ。──わし様の妻はあやつの妻。気に入られれば悪いようにはならんぞ」
 女性達がアシュヴァッターマンを振り返った。
「いつもこうなの?」
「何か、おかしいのか?」
「これだから独身男は!! ──ほらわし様、お水飲む?」


■2024/03/06
ビマヨダ
「満足したか?」

「満足したか?」
 召喚されたばかりのビーマが初めて作ってくれた料理である。
 これが噂のビーマさんの料理! と喜んでカトラリーを手にしたマスターの手が止まった。
 囁いたビーマは何事もなさそうに厨房に戻って行き、
「ビーマを呼びよって!! マスターの浮気者ー!!」
 入れ替わりに食堂に現れたドゥリーヨダナに、マスターはぎくしゃくと顔を上げた。
「ドゥリーヨダナさん、召喚された時の事を覚えている?」
「よりにもよってビーマと抱き合わせで喚ばれた時の事か?」
「あの時、ドゥリーヨダナさんは宝具5になったよね?」
 マスターの言葉にドゥリーヨダナは腕を組んで頷いた。
「ビーマの奴は宝具1だな。くくく」
「あの時。ビーマさんはすぐに来たんだけど、その後まわしてもまわしても金鯖がドゥリーヨダナさんしか来なくて」
「よいことではないか?」
「あれだけまわして、すり抜けも宝具重ねも一体も来ないなんてありえないはずなのに」
……、わし様は何もしとらんぞ」
 ドゥリーヨダナの言葉にマスターはテーブルの上の料理に視線を落とした。
「──満足したか、ってどういう意味だと思う?」


■2024/03/04
生前ビマヨダ
「これがお前の世界なのか」

 ビーマセーナ様、半神ともあろう方が穢らわしい凶兆の子に構うのはおやめください。
 そう進言する侍従を振り切って、百王子達の所へ遊びに行くのがあの頃の俺の日常だった。
 大抵奴らは獣の群れのように集まって飲み食いしたり遊んでいたりしている。その中心にいるスヨーダナにいつものように声を掛けたが紫色は振り向かない。近づくと奴は見慣れない男から貢ぎ物を差し出されている最中だった。
 薄く微笑むスヨーダナといくつか言葉を交わして男が去っていく。残されたのは美しい布と料理が山と盛られた皿だった。
 突然、スヨーダナの白い手が滑るように皿をひっくり返した。地面に転がった料理を弟達が笑いながら踏み潰していく。
「なんてことをするんだよ!!」
 俺が叫ぶとスヨーダナは不思議そうに俺を見た。
「そうか、お前は分からないのか。ビーマセーナ。ふふふ」
 心底楽しそうに含み笑うスヨーダナは俺を手招きする。
「珍しい菓子が手に入ったんだ。食べるだろう?」
 手づから差し出された菓子を俺は迷うことなく口に含み。──そして、目が覚めた時は冷たい水の中だった。
 そうか。あの料理と俺が食べさせられた菓子は同じだったのか。
 溺れ行く意識の中で俺は従兄弟の名を呼んだ。


■2024/03/04
ビマヨダ
「素直に助けてやるって言えばいいのに」

「あ〜る晴れたひ〜るさがりー♬」
「人聞きの悪い歌をやめてくれないかなぁ」
 マスターの言葉に大声で歌っていたドゥリーヨダナは後ろのキャストリアを振り返った。
「この上もなくわし様達の現状を表した歌ではないか、なぁ?」
「売られる子牛の方がまだマシです」
 死んだ目のキャストリア、マスターに腕を掴まれているドゥリーヨダナは。
 ──地獄の周回へと連行されていた。
「それにしても意外と歌が上手いんだね」
「おいおい、わし様は王子だぞ。詩歌演劇は教養のひとつだ。──そこの森育ちとは違うぞ」
「森育ちで悪かったな」
 宿敵の歌声に様子を見に来たのだろうビーマは腕を組んだ。
「大人しく売られて来い」
「周回にサポートに大活躍のわし様は引く手あまただろう。だが! わし様は休みたい!!! なぁ?」
 同意を求められたキャストリアは何故かビーマを見た。つられてドゥリーヨダナも視線をビーマに戻す。
「──マスター。腹が減ってないか。腹が減ってはなんとやらって言うだろ。ちょっと寄っていかないか?」


■2024/03/04
ビマヨダ
「同じ条件なら俺の勝ちだ」

「「ビーマがおるではないかぁ!!!」」
 重なった声に霊基強化室から出てきたばかりの俺は視線を巡らせた。
 決して広くはないカルデアの廊下。そこには宿敵が立っていた。──5人も。
 カルデアの特性上、同一サーヴァントが複数喚ばれる事がある。そう知識では知っていたがあまりのトンチキさに頭が痛い。
 喚ばれたばかりだがこのカルデア大丈夫か?
「「ふははは、最強にして最高のわし様がたくさんおるのだ、ヒビって言葉もないようだな」」
「何が最強だ。おまえ、Lv1じゃねぇか。俺は弱い者いじめはしねぇよ」
「──ほう?」
 背後からの声に俺は振り返った。そこには、
「わし様も弱い者いじめなどしないとも!! Lv90の弱々サーヴァントなどLv120のつよつよわし様にとっては守るべき弱者だからなァ!!!」
 高笑いするドゥリーヨダナの頭上には燦然と聖杯が輝いている。
 だが俺は笑った。
 先程のマスターの言葉が蘇る。
『ビーマさんは宝具5だから、種火が溜まり次第Lv120になってもらうね』


■2024/03/03
カルヨダ(+ジナコ)
「オレは恵まれている」

「かぁるなぁ!! なんだその様は!!」
 ドゥリーヨダナの大声にカルナは僅かに表情を動かした。
「今しまったと思っただろう。クシャトリヤとあろうものがこぉんな小娘の使い走りなどするものではなぁい!!」
 カルナは部屋の主に頼まれたファーストフードのセットをそっとテーブルの上に置いた。男の大声に象の耳を押さえている少女が怯えた風ではないのを確認する。
「カルナ!! わし様は何度も言ったな。顔を上げろ、表情を緩めるな! クシャトリヤらしく尊大であれ!! ──というわけで、わし様もそれ食べたい」
「承知した」
 頷いてカルナが部屋を出ていくと、ガネーシャ神はドゥリーヨダナをじとっと見つめた。
「囲い込みはよくないっス。尊大な態度を取っていたらカルナさんが誤解されるよ」
「では聞くが、カルナがあの性格でにこにこしていたらどうなる? ──わし様は不逞の輩からカルナを守っておるのだ」
 ドゥリーヨダナが言う通り、カルナが人当たりのよい態度を取っていたらあの優しさにつけ込む人が出てくるだろう。
自己紹介乙。って、それボクの!!」
 付け合せのポテトを摘んだドゥリーヨダナにジナコは叫んだ。


■2024/03/02
アシュヨダ
「このくらいなら普通に食えたぜ」

「これが植物園というものか! 見たことのあるものがいくつかあるな」
 マスターのためにシミュレータに作られた植物園にカウラヴァ一行は訪れていた。
 ドゥリーヨダナの言葉にアシュヴァッターマンが答える。
「意外と美味いぜ、それ」
「オレも幼い頃に食べたことがある」
「ほう? 今度厨房に注文してみるか?」
「なら、こっちもどうだ? すり潰せば旦那が好きそうな味になる」
 アシュヴァッターマンが示した草にカルナは首を傾げた。
「それは食べたことがない。──誰に学んだ?」
「食って覚えた」
 その答えにふたりの眉間にぎゅっと皺が寄った。
 アシュヴァッターマンの本来の身分はバラモンである。クシャトリヤとして行動していた時も雑草を食べる必要は無かった。
 ──あの時を除いて。
「カルナ。あの礼装。フォンダンショコラとか言ったか? いつでもすぐ出せるようにマスターに言っておけ」
「承知した」
 アシュヴァッターマンは懐かしそうに雑草を眺めている。
「この前は人違いだったが。あやつが来たらお前の宝具をぶちかますぞ」


■2024/03/01
ヨダナさん+マスター
「暖かくて、優しい」

 ──ドスン!!
 何もかもが憂鬱で布団に潜り込んていたマスターは突然の衝撃に飛び上がった。
 重い腰をベッドに下ろしたのはドゥリーヨダナだ。彼は布団から顔を出したマスターに大袈裟に眉をしかめる。
「情けない顔をしとるなぁ!」
「──慰めて来いって言われたの?」
「言われたがわし様はそんな面倒な事はせん。が、それでは言われた事も出来ない無能だと思われてしまうな」
 筋力Aの腕がマスターを軽々とベッドから引っ張り出した。
「おまえもあやつらに心配かけるのは本意ではなかろう。立ち直った振りだけしてこい」
「振りって、どうすれば」
 いくつもの戦いを共に乗り切った人達がマスターの空元気を見破らないはずはない。
「おまえは、そうだな10人ぐらいでいいか。この部屋の外で出会った者10人と握手して来い! 何も余計な事は言わなくていい。握手だけだ」
「握手だけなら
 いつもの過剰なスキンシップに比べると握手ならなんとかなる。俯いたままのマスターは部屋を出て、通りすがりの人達に握手してもらった。
 そうして思い知る。


■2024/03/01
アシュヨダ
「カルナは知らねえ」
※捏造です

 またまた霊基異常である。
 子供に戻ったドゥリーヨダナが召喚室の盾の下から出てこない。と招集されたのは俺とアシュヴァッターマン。カウラヴァに途中参加のカルナは留守番だ。
「驚かさないように1人ずつ入って」
 と、マスターはまず従兄弟の俺から中に通す。
 正直、順番を間違えていると思うがマスターの指示だ。静かに召喚室に滑り込むと大きな紫水晶の瞳と目があった。
 こちらを爛々と睨みつけているその様子では、手を出したら暴れるどころでは済まないだろう。
 昔、教師に言われた事がある。王が敗れる事は国の敗北なのだと。
「ドゥ……、スヨーダナ」
 返事はないどころか、気配が険しくなる。
「──アシュヴァッターマンを呼んできてくれ」
「でも、ビーマが駄目なら
 不安そうに呟きながらもマスターがドアを開けると、待ちかねていたアシュヴァッターマンが飛び込んで来た。
「スヨーダナ様!!」
「アシュヴァッターマン!!」
 見知った者の姿にドゥリーヨダナが飛びだしてくる。それを抱きとめてアシュヴァッターマンは息を吐いた。
「なんでアシュヴァッターマンだって分かったの?」
「宝珠を持つあいつは昔からあの姿だ」


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