ちよど
2024-11-16 13:26:39
20798文字
Public わし様など
 

練習1P 2月分まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
わし様中心SS。節操なくCP混在。

■2024/02/29
ビマヨダ
「来るとは限らない」

「ビーマを呼んでもよいぞ」
 ドゥリーヨダナの言葉にマスターは目を輝かせた。
 いわゆるマハバ鯖がドゥリーヨダナしかいないカルデアでビーマの触媒になるのは彼しかいない。だというのに、宿敵に会いたくないとドゥリーヨダナに協力を拒否され続けていたのだ。
 溜め込んでいた聖晶石の数を頭の中で確認し始めたマスターにドゥリーヨダナは指を振った。
「確認だが、──どうしてビーマなのだ? B単体ランサーなら他にもおるだろう?」

「かっこいいから!!」

 マスターの即答にドゥリーヨダナは一瞬目を丸くして、ややあってにたりと笑う。
「ふむふむ。まあ、そうかもしれんな。ではマスター。わし様のことはどう思う?」
「最強のバーサーカー!」
「そうだとも!! 宝具5,レベル120,クラススコア全開放のわし様こそ最強にして最高のサーヴァントである。──ビーマの奴の絶望顔が楽しみでならん!!」
 わははは、と高笑いするドゥリーヨダナにマスターは言えなかった。星5サーヴァント1騎をレベル120にする程度の素材は貯めてあるのだと。


■2024/02/28
アシュヨダ、カルヨダ
「なんという悪辣な攻撃だ」

 ダンッ!!と両手でテーブルを叩いたアシュヴァッターマンに、向かいに座ったドゥリーヨダナはへらりと笑った。
「そう怒るな。この通り無事だったではないか?」
「無事だァ?? それのどこがだ!!!」
「その通りだ。今のおまえはネズミ以下だろう」
 ふたりに責められて、ドゥリーヨダナは行儀悪く椅子の上で細くなった手足を抱えた。
 その体は成長期前の少年のものだ。
「一晩もすれば解呪されるそうではないか。これを機にアポロン神あたりにおねだりを」
「「やめろ!!!」」
 声を揃えて制止されて、ドゥリーヨダナリリィは唇をかわいく尖らせた。
「このわし様の美を有効活用せずにどうする? 昔はわし様がじっと見つめて笑いかけるだけで老若男女が思いのままだったのだぞ」
 ろくでもない告白にアシュヴァッターマンは額に手をやった。カルナまでもが疲れたように首を振るのを見て、ドゥリーヨダナは柔らかい頬を膨らませた。
「信じておらぬな。──よぉし! ふたりともこっちに来い! テーブルなんぞどけてわし様の前に立つがいい!」
 ドゥリーヨダナはふたりの手を取った。上目遣いに見上げる。
お兄ちゃん♥」


■2024/02/28
カルジナ(+ヨダナ)
「いいスパイスになるぞ」

「カルナの抱き方を教えてやろう」
 突然の言葉にガネーシャ神はコントローラーを取り落とした。
 モニターでは彼女が操っていたキャラクターが崖から落ち、それをドゥリーヨダナのキャラクターが楽々と追い越していく。
「──あんまりじゃないッスか??」
 卑怯な手段をガネーシャ神が責めると、ドゥリーヨダナはにやにやと笑った。
「だが、カルナの鎧は痛いだろう?」
 ガネーシャ神は否定出来ない。恋人のカルナは彼女を抱きしめる時には3臨の姿になってくれるが、それでもその体には防具が残っている。正直、彼女の鍛えていないぷにぷにの肌には痛かった。
「コツがあるのだ。教えてやろう。──進化素材のアレでどうだ?」
「よっつ必要なんだよね。今送った」
「うむ。ではまず──」
 そして今、ガネーシャ神はその言葉を思い出しながら恋人の腕の中でもぞもぞと体勢を変えていた。アドバイスは言われてみれば当たり前の事だったが、驚くほど痛くない。
 そんな彼女をカルナはぎゅっと抱きしめた。
「──誰に教わった? 誰に、教わったんだ?」
 強く光る瞳にジナコの脳裏に悪属性の男の囁きが蘇る。


■2024/02/27
ビマヨダ
「今からここで暮らせ」

 初めて体を繋げた日の朝。ベッドから降りたドゥリーヨダナは俺に向かって両腕を広げた。
「ち、っがーう!!」
 誘われるままに抱きしめた俺を奴は引きはがす。そして真面目な顔で言い放った。
「服を着せろ」
「おまえに? ──まさか、ひとりで服も着れないのか?」
 冗談かとからかうと、生粋の宮廷育ちは誇らしげに顎を上げた。
「どうして貴人たるわし様が服を着るなどという雑務をせねばならんのだ?」
「──マスターの帯を着付けたと聞いたぞ」
「弟妹たちの服を直すぐらいは出来て当然だ。──自分で服を着るのとは勝手がちがう」
「違うわけあるか、このトンチキ」
 言いながら俺は昨夜脱ぎ散らかした服を拾う。
 どこに行くにも侍従を引き連れ、何もかも人にやらせていたこいつが自分の服を自分で身につける事が出来なくても不思議ではない。
 待てよ。
「──おまえ、今までどうやって着替えていたんだ?」
 俺の質問に、恋人になったばかりの男は当然のように答えた。
「カルナやアシュヴァッターマンがやっていたが?」


■2024/02/27
ビマヨダ(+マスター)
「ではおまえ、誰のものを使ったのだ?」
※ヨダナさんのバレンタインの内容が含まれます

「わし様も『ゲート・イン・クル国』が欲しい」
 カルデアの廊下を練り歩いている最中、突然そう言い出したドゥリーヨダナにマスターは問いかけた。
「その心は?」
「せっかく見せびらかすのだから、象とか楽団とか連れてきてパレードにしたぁい!!」
「却下です」
 一般市民出身のマスターは間髪入れずにドゥリーヨダナの願望を制止した。身につけた帯を自慢されながら練り歩くだけでもけっこう恥ずかしいのに。これ以上は無理。
 だというのに、ドゥリーヨダナはまだぶつぶつと言葉を続けている。
「クル国の財を持ってすれば、あーんなことも、はたまたこーんなことも出来
「出来ねぇよ、このトンチキ王子。──国庫を空にしたのはてめぇだろ」
 通りすがりの宿敵の声にドゥリーヨダナは楽しげに笑った。
「はぁ? ユディシュティラの奴。わし様の富を当てにしておったのか? ばーかばーか!」
 身内の見積もりの甘さを煽られてついビーマは叫んでしまった。
「誰のせいで、宮殿を建て替える金もなかったと思ってやがる!!」


■2024/02/26
カルヨダ、アシュヨダ
「罪の味は美味しい」

 子ども達の遊びに流行り廃りがあるように、カルデアで再会したカウラヴァの3人にも流行りがあるようだった。
 マスターが観察するに、今の流行りは
「あーん」
 自分で言いながら口をあけるヒゲの成人男性の口に隣に座ったカルナがサンドイッチを運んでいる。
 はむはむと食べるドゥリーヨダナの向かいに座ったアシュヴァッターマンはせっせとカルナの手元にサンドイッチを補給している。
 このふたりがドゥリーヨダナを甘やかすのはいつもの事なので、食堂を行き交うサーヴァント達は今更気にしない。──はずだった。
 何故かその光景を見て足を止めたアルジュナ以外は。
 いつもカルナと言い合いをしているアルジュナが明らかに気にしながらも3人から離れていく。
 その光景にマスターは手元のタブレットを引き寄せた。マスターが失敗しないようにと古今東西の慣習の有名なタブーが集められたファイルを検索する。
(古代インドでは身分が下の者は上の者に食事を提供してはならない)
 確かカルナはドゥリーヨダナより身分が下だったはすだ。
 ただ食べさせていると思っていたマスターの見つめる先で、今度はドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンにサンドイッチを差し出した。


■2024/02/25
カルヨダ(+モブ)
「もう還った」 

廃れた団地の屋上には夜空が広がっていた。
「私達って、きっと同じね」
 歪んだフェンスの外側。少しの足場に腰掛けたドゥリーヨダナに、長い髪の女が笑いかける。
「まあ、似たようなものだな」
 ドゥリーヨダナが揺らいでいる女の髪に手を伸ばすと、それは映像のようにすり抜けた。出来の悪い合成のように宙に浮く女はふわふわとドゥリーヨダナの周りを漂う。
「私はもう諦めたけれど、あなたは早くお友達が迎えにくるといいわね」
「──今、来たぞ」
 ドゥリーヨダナの言葉に応じるかのように夜空に光が広がる。太陽が闇を打ち払う。
 光を浴びて女が震えた。
「はやく行け。──あらぬ誤解をされたらたまらん」
 促されて女は微笑んだ。
「お邪魔すると悪いから行くね。──さよなら。ちょっとの間だけど話してくれてありがとう」
 女の姿が光に溶けると入れ替わりに、日輪の中から人影が飛んでくる。
 それはドゥリーヨダナの目の前で止まった。
「遅いぞ、カルナ!」
 文句を言われてカルナは首を傾げた。
「誰かいたのか?」


■2024/02/25
カルヨダ(+ビマさん)
「惚れた欲目というやつだな」
※美の基準については捏造です

「カルナが美しい?」
 マスターの言葉にビーマは片眉を上げた。厨房の仕込みの役得はつまみ食い味見に来るマスターとの語らいだ。
「カルナってイケメンだよね? この前、そうドゥリーヨダナに言ったら。すごく喜んで
『ふふふふ、そうだ。カルナは美しい! わし様は生前から常々そう主張してきた! マスターがわし様のカルナの魅力に気づくとは! これは時代がカウラヴァに追いついたということだな!』
 って、両儀さんが作ったお菓子をくれたよ」
 滅多に厨房に立たない両儀式のお菓子はプレミア品だ。ドゥリーヨダナの喜びようが分かる。
「でも、カルナさんって誰が見ても美しいよね?」
 その疑問にビーマは焼いていた肉の欠片をマスターの口に放り込んだ。
「俺達から見るとカルナはそんなに美しくはねぇ。──あくまで、あくまで俺達の時代の一般的な見方だが。美しい男としての美ならドゥリーヨダナの方が近い」
「へ?」
 目を丸くしたマスターにビーマは苦い顔で続けた。
「ああいう体格で、ヒゲがあって、髪が長いのが流行りだった」
「じゃあ、ドゥリーヨダナがカルナさんを美しいって言うのは」


■2024/02/24
アシュヨダ
「王子の仕事って大変なんだな」

「アシュヴァッターマンとデートしてやらんのか? だとぅ??」
 ふたりの清すぎるお付き合いにじれったくなったマスターの質問にドゥリーヨダナは片眉を上げた。
「デートならしたことがあるぞ」
「え゛??」
 声を上げたのはドゥリーヨダナの隣にいたアシュヴァッターマンだ。その顔にはしっかりと『覚えがありません』と書いてある。
 恋人のその様子にドゥリーヨダナはため息をついた。
「マスター。こいつがいかにアレか教えてやろう。──ヒントだ。おまえとわし様の初デートは生前だ」
 後半部分はアシュヴァッターマンに言ってドゥリーヨダナは指をひとつ伸ばした。
 明らかなカウントダウンにアシュヴァッターマンが眉根を寄せる。
 必死に思い出している彼にドゥリーヨダナはもうひとつ指を伸ばした。
「おまえが18の時の秋」
……だが、あれは旦那の」
 やっと心当たりを見つけたアシュヴァッターマンの言葉にドゥリーヨダナはマスターを振り返った。
「わし様が! このわし様が旅行に連れ出してやったというのに! こやつは何と言ったと思う?」


■2024/02/22
生前カルヨダ
「そうか。おまえと同じ名で呼ばれるなら悪くない」

 頭を射抜かれたカルナが落馬していったが、ドゥリーヨダナはそれどころではなかった。
 奇襲だ。
 大した内容でもない視察の帰り、通い慣れた道だった。油断していたわけではなかったが、それ程多くない随行の家臣達が次々と斃れていく。馬を狙われ、やむなく地面に降り立ったドゥリーヨダナを刺客が取り囲んだ。
「誰に頼まれたか知らんが。わし様の方が金払いはいいぞ」
 答えは無い。棍棒を構え直したドゥリーヨダナにじりじりと刺客達が距離を詰めていく。突然、その一角が崩れた。
「化け物!!」
 寡黙だった刺客が叫ぶ。それは当然だ。頭部に矢を突き立てたままの死体が槍を振るい、刺客達をあっという間に薙ぎ倒していく。
 ドゥリーヨダナは棍棒を握りしめた。死体が振り向く。
「無事のようだな」
……か、かぁるなぁ!!! 不死の鎧なぞ普通はハッタリだと思うではないか!!」
 友に駆け寄りドゥリーヨダナはその頭から致命傷でしかありえない矢を引っこ抜いた。その傷が見る間に塞がっていく。
「おまえはオレを化け物だと呼ばないのか?」
「ああいう連中は、わし様達のことも化け物だと言うぞ」


■2024/02/22
カルヨダ
「マスター、ちょっと話をしねぇか?」

「わし様はネコになどならんぞ!」
 ドゥリーヨダナの珍しく正しい主張にアシュヴァッターマンとカルナは顔を見合わせた。
 彼らのマスターの趣味はちょっとよろしくない。
 召喚された当初は騙さ説得されてメイド服やミニスカポリスやらを着せられていたドゥリーヨダナだが、さすがに最近は自分が何をされているか理解していた。
「どーせ、猫耳尻尾でにゃんにゃん言わされるのだろう! 最高の王子であるわし様は畜生の真似事などせん!!」
「だが、おまえはもうネコ
 言いかけたカルナの口をアシュヴァッターマンが光速で塞ぐ。
 途中まで聞こえたドゥリーヨダナは慌てて頭に手をやった。──ない。おしり。──ない。
「ネコになっておらんではないか?」
 俗語を知らなかったドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは胸を撫で下ろす。
「誰からそんな単語聞いたんだよ!!」
 小声で叫ぶアシュヴァッターマンにカルナは答えた。
「マスターだが?」
 その瞬間、突然魔力が降り注いだ。ドゥリーヨダナの頭にぴょこんと猫耳が生える。
 令呪には抗えず、ドゥリーヨダナは名実共にネコになった。


■2024/02/22
アシュヨダ
「お返しなんていらねぇ」

「アシュヴァッターマン。おぬし、まだマスターにお返しを渡しておらんのか!?」
 ドスドスとマスターの部屋からアシュヴァッターマンの部屋にドゥリーヨダナが帰ってきた。
 勢いよく問い詰められてアシュヴァッターマンは目を瞬かせる。
渡したぜ。とっくに」
「マスターの棚にはおまえ縁の品がなかったぞ!!」
「あー」
 ドゥリーヨダナの勘違いの理由が分かってアシュヴァッターマンは思わず額に手をやろうとして、両手にマグカップを持っていたために出来なかった。
 ドゥリーヨダナをテーブルに促すと、その前にマグカップを置く。自分はその前に座った。
なんだこれは? コーヒーとは違うのか?」
「甘いぜ」
 目の前で飲んでみせると、差し出された飲み物にドゥリーヨダナが口をつける。
「あまーい!!」
 顔を綻ばせてホットチョコレートを飲み始めたドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは答える。
「マスターには食いもんをやったんだよ」
 同じものを渡されたドゥリーヨダナは気づかずにそれを飲み干した。


■2024/02/20
カルヨダ
「わし様のものは全てわし様に返すべきではないか?」

※ミドキャスの幕間の内容があります
※匂わす程度の帝都騎殺

「カルナよ、また無節操に施したのか」
 友人の借金を返しに来たという白い軍服の男が帰っていくのを見送って、ドゥリーヨダナはため息をついた。
 食堂のテーブルの上に置かれた封筒を逆さに振るとじゃらじゃらとQPが零れる。少なくはない額だ。
 彼の向かいに座るカルナは封筒に添えられていた菓子を口に運んだ。ふたつの色鮮やかな柔らかい菓子は蓮華の形をしている。
「困窮しているのだと言っていた」
「言い訳に決まっておろう。あの男は賭場の常連だぞ」
「おまえも常連だ。ドゥリーヨダナ」
 カルナがもうひとつを摘む。ドゥリーヨダナが口を開けた。はむはむ。
「ほどよく甘いな。趣味がいい」
「──こうして返ってくる時もある」
「この程度では割に合わん。おまえが損をするのがわし様には耐えられんのだ。友よ」
 ドゥリーヨダナの嘆きにカルナは微笑んだ。
「オレが損をすることなどありえない」
 不思議そうに首を傾ける友を彼は見つめた。
「オレはすでに溢れんばかりに貰っている。それが尽きることはない」
 その言葉に、卑しい身分だと蔑まれていたカルナを救い取った男は不満そうに唇を尖らせた。


■2024/02/19
アシュヨダ
「欲しいものは与えられるものではなく」

「わし様とアシュヴァッターマンは共に食事をするような間柄ではなかろう?」
 不義理だと私室に怒鳴り込んできたマスターにドゥリーヨダナは心底不思議そうに問いかけた。
 言葉を無くすマスターを追って、アシュヴァッターマンが慌てて駆込んで来た。
「誤解だ! 俺と旦那はそんなんじゃねぇ!」
「友達、なんだよね?」
 マスターの確認に、ドゥリーヨダナが答えた。
「我が友はカルナだが? ──アシュヴァッターマン。おまえはどう思う?」
「俺は、俺は旦那の、ドゥリーヨダナの戦士だ」
 全てを捧げるような言葉にマスターは思い出した。
 ドゥリーヨダナは再会したアシュヴァッターマンに戦士としてしか言葉をかけていない。まるで、それしか望んでいないように。
「マスターはわし様がアシュヴァッターマンと食事を共にすれば満足なのか?」
 問われたマスターが答えるより早く、アシュヴァッターマンが首を振った。
「俺はそんな恩賞なんか望んでねぇよ」
「では、どんなものが望みだ?」
 ドゥリーヨダナの促しに彼のために三千年の呪いを受けたアシュヴァッターマンは何も答えなかった。


■2024/02/19
カルヨダ
「それ、外ではやらねぇほうがいいぜ」

「これより、秘密の特訓を行う」
 カルナの宣言に丸いテーブルを囲んだ他のふたりはそれぞれの前に置かれたトレーを見た。
 巨大なハンバーガーである。
 ドゥリーヨダナはカルナの部屋を見渡した。カトラリーは用意されていない。
「カルナよ。もしかしてこれは素手でかぶりつくのか?」
「そうだ」
 ドゥリーヨダナの隣でカルナはハンバーガーを持ち上げた。かぶりつく。
 口の周りをソースで汚したカルナにドゥリーヨダナは口を引きつらせた。
旦那、カルデアでは無理に食べなくてもいいぜ」
「そんなわけがあるかぁ! 饗応に応じぬなどクル族の恥! バーガーだがバーカーだが知らぬがじゃんじゃん持ってこーい!!」
 叫んでハンバーガーを掴んだドゥリーヨダナは勢いよくかぶりつく。
 具材がぽろぽろとこぼれた。
 動揺するドゥリーヨダナにカルナが顔を寄せる。
「服まで汚れそうだ。幼子でもここまではすまい」
 言いながら、ドゥリーヨダナの顎に伝うソースを舐め上げたカルナに、ドゥリーヨダナは大人しく顔を向けた。
「ふむ、わし様もお返しをせねばな」


■2024/02/18
カルヨダ
「この後ぺろぺろされた」

「アーチャーが飛び道具とは卑怯だぞ!!」
「珍しい。普通のアーチャーだね」
「暢気な事を言っている場合か! 頭を出すな!」
 マスターを抱えて走るドゥリーヨダナの横をアーチャーの弓矢が貫く。間一髪で避けたそれは唸りをあげてドゥリーヨダナの頭部を掠めた。血しぶきが飛ぶ。
「騒ぐな! こういう時はダメージなど受けとらんという顔をするのだ! 追撃されるぞ!」
 口を抑えたマスターを抱え直してドゥリーヨダナは走る。
「そうだ。縮こまっておれ。わし様の傷は魔力を補充すればなんとかなるが、おまえはそうではないからな」
ごめん。もうすぐ応援と合流、え!?」
 彼らの横を赤い光がすり抜けて駆けて行った。ドゥリーヨダナが足を止める。
「勝ったな。──わし様の大活躍に恩賞は思いのまま。カルデアに帰ればわし様を褒め称える歌が作られておろう」
 その言葉に重なるように爆音が響く。ドゥリーヨダナの肩越しに背後を確認したマスターは、容赦なく火柱が上がるそこに立つ人影を見つけた。
 白い髪に大きな槍。淡い赤色の魔力炎。
「カルナさん? 無茶苦茶怒ってない?」
「そりゃ怒るだろう。カルナはわし様を慰めるためだけに国を平らげた男だぞ」
 顔を血で赤く染めてドゥリーヨダナが誇らしげに笑った。


■2024/02/17
アシュヨダ
「馬鹿ーっ!!!!」
※ペーパームーンの内容が含まれます

 また逃げ帰って来た(戦略的撤退と本人は言い張る)ドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンはため息を着いた。
「そんなに愛の矢が欲しいのかよ」
「欲しいなァ。──ちょっとくらい貸してくれてもいいと思わないか?」
 恥をこの上もなく嫌うくせに、何度追い払われてもカーマ神のところに通い詰めているドゥリーヨダナはテーブルに頬杖をついた。
 アシュヴァッターマンはそんな彼にチャイを渡す。そろそろ戻って来る頃だと思って用意しておいたのだ。
「自分の宝具を人に貸すやつはいねぇだろ?」
「おまえはわし様がスダルシャンチャクラが欲しいと言ったらどうする?」
「旦那が本当に欲しいなら渡すぜ」
「そういうところだぞ!アシュヴァッターマン!!」
 唐突に叫んで、チャイを一息で飲み干したドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは金色の目を少し丸めた。
 そんなアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは語りかける。
「わし様は愛の矢が欲しいのだ。わし様のことが好きで好きで仕方がないのに、勇気を出せない奴のために欲しいのだ。──分かるか?」
旦那がそんなに欲しいなら、俺からもカーマ神に頼んでみるが」


■2024/02/16
アシュヨダ
「それはまるで信仰のように」

「わし様、ほとんど一色なのだが??」
 ドゥリーヨダナが持つ試験紙を横からビーマが覗き込んだ。その眉が寄る。
俺にもその色があるぜ。少しだけだが」
「私にもあります」
 兄弟の申告にドゥリーヨダナはカルナを見た。
「オレにもある。──アシュヴァッターマンは?」
「俺にはねぇ」
 英霊の信仰密度。信仰度とその人数を示す試験紙を前に彼らは首を傾げた。
 かのアーサー王は色が溢れたというのに、ドゥリーヨダナはほぼ一色。それは限られた人数が強く信仰していた事を示していた。
 そんな彼らを見るダ・ヴィンチちゃんが呟く。
「そもそも不思議だったんだよね。あれほど古くバリエーションのある逸話を持つ関係者が生前と同じ性格で現界しているのがさ」
 無辜だけでなく捏造された逸話からでもサーヴァントは影響を受けてしまう。それを思えば紀元前の英霊達が生前と齟齬なく在るのは奇跡だろう。
「きっと、ずっと想っていたんだろうね。──永く永く生前の彼らを覚えていた人物がさ」
 ダ・ヴィンチちゃんの視線の先。そこにはひとりのサーヴァントがいた。


■2024/02/16
ビマヨダ
「まあ、来ないだろうが」
※私のうっかりによりチョコの融点を間違えています。すみません

 このチョコレートの川の果てでは会いたい者に会えるという。
 周回に連れて来られたドゥリーヨダナは川の縁に座り込んで、チョコの川面に手を伸ばした。
宝具でかき回せばその者の属性になる、だったか。わし様の宝具ではチョコまみれの弟達が出来上がるだけだな」
 その手が川面に触れた。
「あっ、ちぃ!!!! 熱いではないかぁああ!!!」
 思わず勢いよく立ち上がったドゥリーヨダナを誰かが背後から支えた。
「当たり前だろ。チョコの融点が何度だと思ってるんだ。このトンチキ王子」
ビーマか、」
 心底嫌そうに振り返ったドゥリーヨダナの手をビーマは引き寄せた。チョコに濡れた指を厚い舌が舐め取る。
「ぎぃやああああああ!!! カルナぁ!!」
「いねぇ者の名前を呼んでんじゃねぇぞ。カルナもアシュヴァッターマンもうちには召喚されてねぇだろ」
「セイバーのカルナは巡礼の葉でもうすぐ来る!! カルナならランサーのおまえなどすぐぎったんぎったんにしてくれるわ! ふははははは!!」
そうかもしれないな。とりあえず戻るぞ」
 強引にマスターの下に引っ張られていくドゥリーヨダナには、ビーマの顔は見えなかった。


■2024/02/15
わし様+マスター
「なにしてんだ!マスターっ!!!」

「ぬぁんで!わし様だけチョコがないのだ!!」
 ドゥリーヨダナの当然の訴えにマスターはクエストに同行しているサーヴァント達に視線を巡らせた。確かにドゥリーヨダナ以外の全員がチョコ礼装を持っている。
「わし様も高みの見物をしながらチョコを食べたーい!!もうこの礼装見飽きたぁ!!!」
「アーツアップなら他にあるよ」
 マスターが取り出した礼装にドゥリーヨダナは大袈裟に首を振った。
「嫌だ。わし様もチョコがいい!!そして休む!! ──伊織の奴も居眠りばかりしておったではないか!」
「伊織さんのは永久睡眠だよ」
 諭すようなマスターにドゥリーヨダナは棍棒を地面に突き立てた。
「ともかく、だ!わし様は休む!最高の王族たるわし様には優雅な休暇が必要だ!!これは当然の権利である!!」
 その叫びにマスターは思案した。
 このままドゥリーヨダナを放置してはいけない。そうすれば彼の主張は他のサーヴァント達にも伝播するだろう。
「そうだね。いきなり休暇は難しいけど、前衛から下げることなら出来るよ。──この人にお願いするね」
 紹介されて中華系サーヴァントが歩み出る。かの軍師は穏やかに微笑んだ。
「陳宮と申します。以後お見知りおきを」


■2024/02/15
アシュヨダ
「例えマスターを裏切る事になろうとも」

「さて。おまえはわし様に何を望む?」
 ふたりきりの寝室でベッドに腰掛けたドゥリーヨダナは、足元に膝をついているアシュヴァッターマンに問いかけた。
 アシュヴァッターマンの琥珀色の目を向けられて、ドゥリーヨダナは唇の端を吊り上げる。
「わし様は狭量ではない。なぁんでも、思うがままに言ってみろ。ん?」
 寝室にふたりきりである事で示されている可能性にアシュヴァッターマンは首を振った。
「俺が望むのはそんなことじゃねぇ」
「ほう? しかし、おまえは昔から褒美にわし様を望んでいたではないか?」
「ああ゙!!???」
 アシュヴァッターマンの動揺にドゥリーヨダナは肩を揺らして笑う。
「花の代わりに手を握って欲しいだの。高い枝の果実を取って欲しいだの。遠乗りに付いてきて欲しいだの。そんなものばかりだっただろう?」
「覚えていたのかよ」
「覚えているとも。──わし様達はもう幼子ではない。望みを言え。アシュヴァッターマン」
 紫水晶の瞳に見据えられて、アシュヴァッターマンはその目を見返したまま、ドゥリーヨダナの足に触れた。
「俺の望みはひとつだ。──俺より先に消えないでくれ」


■2024/02/14
アシュヨダ
「おまえにしてもらう事こそがなによりもプレゼントなのだ」

「アシュヴァッターマン。わし様を最も美しく飾り立てよ」
 バレンタインの当日の朝。我が王からの命令にアシュヴァッターマンは慌てて走り回った。
 今日はサーヴァントが各々マスターにプレゼントを贈る日である。数年前に召喚されたアシュヴァッターマンには慣れたものだが、ドゥリーヨダナにとっては初めてのバレンタインだ。
 見栄っ張りのドゥリーヨダナは少しでも他のサーヴァントに差をつけたいのだろう。臣下としても主に恥をかかせるわけには行かない。
 ミドラーシュのキャスターからふっかけられつつも香油を購入し、コノートの女王にからかわれながら乳液を分けてもらい、鶴の縫製室では色鮮やかな紐を選んで貰った。
 ところでアシュヴァッターマンは戦士である。着飾るよりも鍛錬に費やしてきた時間の方が圧倒的に多い。そんな男が突然美容に手を出した結果。
 ドゥリーヨダナの髪は香油でベタベタになり、顔に塗り込んだ乳液の匂いと混じり合って心地良いとは言えない香りを生成してしまっていた。鮮やかな紐は色どりこそ彼に似合っていたものの上手く結ぶ事が出来ず、みっともなく形を崩している。
 自分が行ったあまりの惨状に何も言えなくなったアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは楽しそうに笑った。


■2024/02/13
カルヨダ
「そういうことは早く言わんか!」

 ドアが開く音がしてドゥリーヨダナは意識を覚醒させた。
 生前、凶兆の子として忌み嫌われたドゥリーヨダナは寝所にいたとしても油断することはない。だが、すぐに彼はゆるゆると眠りの淵へと戻っていく。
 何故なら侵入者の気配は彼が最も信頼する男のものだったからだ。
 比類なき友カルナは迷わずドゥリーヨダナが横になっているベッドに近づくと、ためらいなくその掛布をまくり、シーツの間へと滑り込んだ。
 当然のようにドゥリーヨダナの隣に潜り込んだカルナの行動に彼は思い至った。
(カルナめ、寝ぼけておるな)
 サーヴァントに支給される部屋の間取りはどれも同じだ。しかもカルナとドゥリーヨダナの部屋はすぐ近く。何かの理由があって夜に出かけたカルナは部屋を間違えたのだろう。
 そうと分かれば、体に巻き付いてくる腕にも納得出来る。
 ドゥリーヨダナは体の力を抜いて、この世で最も価値のある湯たんぽに徹してやった。
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられたり、さわさわと体をまさぐられたりしたが。寝ぼけた友の意外な一面が愉快でドゥリーヨダナは寝た振りをし続けた。
 それがしばらく続き。カルナは急に彼を抱き寄せた。
「困難極まるな。──夜這いというものは」


■2024/02/13
生前アシュヨダ
「俺は地獄に落ちるだろう」

「あんたは俺にバラモンの格好をしろって言わなかったな」
 アシュヴァッターマンの言葉にわし様は首を傾げた。
「戦場でする質問か?──おまえは好きな服を着て好きなように振る舞えばいいのだ」
 アシュヴァッターマンが戦士の姿で笑う。弓を構え放った矢は雨のように敵陣に降り注いだ。だが、それに比べて自陣に降る矢の雨は薄い。
 アシュヴァッターマンの額の宝珠が星のように輝いている。
 その加護が我らを守っている。──のではなく、バラモン殺しは大罪なのだ。
 どのような格好をしようと、どのように振る舞おうとその額の宝珠はアシュヴァッターマンの本来の身分を高らかに宣言している。
「わし様の側にいろ、アシュヴァッターマン」
「ああ! 最後まであんたを守ってやる!」
 誇り高く叫ぶアシュヴァッターマンにわし様は頷いた。
 自分の姿は自分では見えない。
 鷹の雛を鶏に育てさせると飛べない鷹が出来上がると聞いた事がある。
 ドローナ師よ、息子を愛していると言うならばクシャトリヤと共に育てるべきではなかったのだ。
 バラモンとして育てられれば聖仙にもなれただろう男を盾にして、わし様はまた同じ事を思った。


■2024/02/12
アシュヨダ
「このアシュヴァッターマンは配布産である」

「お届け物だ」
 サンタカルナが持ってきた腰までの高さがあるプレゼントボックスにアシュヴァッターマンは眉を寄せた。
 そんな彼に構わずにカルナはアシュヴァッターマンの真新しさの目立つ部屋に箱を運び込む。
「受け取りは不要だ」
 言い置いて去っていったカルナを見送って、アシュヴァッターマンはプレゼントボックスに視線を戻した。
 華やかなラッピングをじっと見つめる。
 不意に箱がガタガタと揺れた。
 その何かを訴えるような動きにアシュヴァッターマンはため息をつく。
「わかったよ。開ければいいんだろ」
 丁寧に巻かれていたリボンを解き、蓋を開ける。
 予想通り、そこにはドゥリーヨダナが入っていた。
「プレゼント、ふぉーゆー!!」
 満麺の笑みで箱から飛び出したドゥリーヨダナがアシュヴァッターマンに抱きついた。
「レベル100おめでとう、だ。早かったな」
「──ありがとな。こんな真似しなくても、俺はあんたに祝われるだけで嬉しいぜ」
 その言葉にドゥリーヨダナは顔を綻ばせた。
「なに、わし様が今まで1番嬉しかったプレゼントをおまえにも与えてやろうと思ったのだ」


■2024/02/11
わし様とモブ
「語られる事は戦士の誉れ」

 ドゥリーヨダナには定番の武勇伝がある。と、いってもそれは彼自身のものではない。
「その時、わし様の一番新しい臣下は迫りくるオプリチニキに勇敢に立ち向かい。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの大活躍を!」
「あの人は戦闘要員じゃなかったんだけどなぁ」
 呆れたように呟くマスターはそれでもドゥリーヨダナの大言壮語を止めようとしない。
 まだ彼らが南極にいた頃、スタッフのひとりがドゥリーヨダナに告白したのだ。
「好きです」と。
 それにドゥリーヨダナは笑って答えた。
「うむ。わし様もわし様の事が好きだ。──おまえは見る目がある! わし様の臣下に加えてやろう!」
 もとよりサーヴァント相手に恋愛が成就するとは思って無かったのだろう。そのスタッフは喜々としてドゥリーヨダナの臣下を名乗るようになった。
 そして、彼らは南極を追われ。ノウム・カルデアで再現界したドゥリーヨダナは残されたメンバーを見て、──何も言わなかった。
 彼が彼の臣下の武勇伝を語るようになったのはそれからだ。勇ましく戦って死んだ彼の一番新しい臣下。
 本当はそんなことはなかっただろうに、その武勇伝はずっと語られている。


■2024/02/11
生前アシュヨダ
「ただの石ころでいたかった」

 まだドゥリーヨダナ達が生きていた頃、俺は王宮で出入り商人に声を掛けられた。
「聖なるお方、どうか息子をお助けください」
 男の腕にはぐったりとした赤子。額に宝珠はあるが俺に病を癒やす力はない。それでも慰めになるのなら、と手を伸ばした瞬間、旦那が飛び込んで来た。
「待て待て待てぇ!その赤子はうちの薬師が面倒をみよう!あるかどうか分からん霊験より確実だぞ。その代わり」
 旦那に耳打ちされた商人の顔が晴れる。
「それなら、なんとか出来ます。ありがとうございます!」
 平伏して薬師の元へと去っていった商人を見送って、旦那は俺を小突く。
「馬鹿者。下手な慈悲を与えるな。治っても治らなくても大騒ぎになるだろうが。──あやつらはおまえの額の石しか見えとらんのだ」
「あんたは?」
「わし様の手に入らんものはただの石ころだ」
 ドゥリーヨダナは顔をしかめた。
「──例えば、わし様がなんとかしておまえから宝珠を引っ剥がしたとする。すると次の瞬間にはドローナ師にぶち殺されておるわ」
 その言葉を思い出してアシュヴァッターマンは額から血を流しながら笑い声をあげた。
 彼を守ってくれていた者はもう誰もいない。


■2024/02/10
カルヨダ
「カルナはわし様が育てた」

「カルデアで1番食べ方がきれいなのはカルナさんかな?」
 マスターがそう言うと召喚されたばかりのドゥリーヨダナは面白そうに眉を上げた。
「例えばどのあたりだ?」
「たくさん食べるけど慌てて詰め込んだりしないとか。所作も丁寧できれいだし。食事への感謝も忘れないよね」
 数え上げられる美点にドゥリーヨダナは満足げに何度も頷いた。
ドゥリーヨダナ?」
「我が友カ〜ルナ!!」
 そこに当のカルナがやって来たので、ドゥリーヨダナは両手を広げた。
 カルナも手を広げる。抱擁を交わした親友にドゥリーヨダナは笑いかけた。
「わし様が口を酸っぱくして言ったことをちゃんと守っておるな。よしよし。──この調子なら猫背も治せておるだろう?」
 その言葉にカルナは珍しく視線を彷徨わせた。
 マスターは知っている。召喚されたばかりのカルナは猫背だったことを。
「今は無用な心配だ」
相変わらず嘘がつけない男だ」
 ドゥリーヨダナはくすくすと笑い、ふたりの関係性が分からず首を傾げるマスターに口を開いた。


■2024/02/09
生前アシュヨダ
「許さねぇ許さねぇぞ!!」

「アシュヴァッターマンには内緒にしておけ」
 何度目かのそれに弟達は心得て頷いた。
「じゃあ、俺。足止めしとくわ」
「口裏合わせておかねーと」
 打ち合わせを始める弟達は慣れきっている。
 パーンダヴァの家を燃やした時も、骰子賭博の時も、悪巧みする時は必ずわし様はこうやってアシュヴァッターマンを遠ざけていた。
 それに末弟だけが眉をしかめる。
「兄上、こういうのはアシュヴァッターマン本人のためにもよくないよ」
「だが、あやつは悪事には向いておらんだろう?」
 優しく真っ直ぐな気性の男だ。人を陥れる策に加担出来るとは思えん。そう言うと賢い末弟はため息をついた。
「兄上は意外ときれいでかっこいいものが好きだよね。
 ──でも、アシュヴァッターマンはそれだけの男じゃないよ」
「知っておるが?」
 アシュヴァッターマンとは長い付き合いだ。わし様はその気性など知り尽くしている。

 ──そう、知っていると思っていた。
 死にゆく俺を抱き起こしたおまえの顔を見るまでは。


■2024/02/08
カルヨダ
「ドゥリーヨダナぁ!!」

 突然だが霊基異常が発生した。
「サーヴァントの人格が入れ替わっているよ。念の為、聖杯を保管庫に片付けておいてね」
 と、ダ・ヴィンチちゃんに言われ、マスターは腕いっぱいに聖杯を抱えて騒がしいカルデアの廊下を歩いていた。
 サーヴァントの中には魔力の塊である聖杯をろくな事にしか使わない者もいる。そのうち1人の──
「カルナ!」
「マスターか。度し難い徒労だ」
 そのうち1人の友であるカルナは相変わらず乏しい表情でマスターを労ってくれた。
「良かった! カルナはカルナのままなんだ」
「ドゥリーヨダナは入れ替わっている」
「アシュヴァッターマンとかな? 大変だよね」
 この霊基異常でどこもかしこも大騒ぎだ。そんなマスターにカルナは両手を差し出した。
「おまえはおまえの成すべきことをするべきだろう」
「ありがとう!!」
 カルナなら信頼できる。マスターは聖杯を預けてカルナと別れた。
 そして数分後、マスターはドゥリーヨダナを見かけた。
「アシュヴァッターマン!!」
 呼びかけにドゥリーヨダナは僅かに首を傾げる。その少ししか動かない表情でマスターは全てを察した。


■2024/02/07
ユディシャク
「母上に兄弟が何人いたか知っておるか?」

「私の勝ちだ」
 ドゥリーヨダナの叔父がにこりともせず告げる。
 ユディシュティラは目を見張った。細い手足に小柄な体躯。石像のような無表情の彼はとても王族の遊戯に長けているようには見えない。そもそも、ユディシュティラは彼をクル国の宮廷で見かけた事が無かった。
彼は本当にあなた方の叔父なのですか?」
 当然の疑問に『叔父』の背後に立つドゥリーヨダナは悪魔のように笑った。
「神に誓ってこいつはわし様の母の弟だとも」
 その彼はまるで操り人形のように勝負を決した骰子を回収する。
 そうしてユディシュティラを見た。
 ドゥリーヨダナの瞳が蓮の花ならば、彼の瞳は昏い沼の底のようだ。気がつけば腕輪を外していた。
「次はこれを賭けよう」
 そんなユディシュティラに彼は微笑んだ。
 少年が初めて見せた感情にユディシュティラは息を呑む。
 誰よりも年下の彼は無言で骰子を投げた。


■2024/02/06
カルヨダ
「この友にしてこの友あり」

 ゲーティアを倒し人理修復を成し遂げた彼らはカルデアの外へと飛び出そうとした、が。
……無理」
 南極に積もった雪はマスターの背丈よりも高く、彼らの脱出を壁のように阻んでいる。
「ふふふ、困っているようだな」
「ドゥリーヨダナ!」
 カルナを連れて現れたドゥリーヨダナは得意そうに片眉を上げた。
「この前わし様から取り上げた伝承結晶を返してくれるなら、その程度の問題は解決してやるぞ。──カルナが」
「もうスキルマなんだからいらないでしょ?」
 マスターの疑問にカルナが口を開いた。
「アシュヴァッターマンが来たときに……
「わー!わー!わー! カルナ! お口に閂!」
 その様子にマスターは苦笑して、カルナに場所を空けた。
「じゃあ、お願いするけど。どうするの?」
 カルナが雪の壁の前に立つ。その白い手が顔を覆った。
「『真の英雄は目で殺す』!」
 ビームが迸る。サーヴァントすら貫くその熱線は雪の壁を真っ直ぐに溶かし抜いた。
「カールナー! おまえは最高だな!! 後はお前の魔力炎で細かい道を作れば完璧というものだ」
「太陽神の息子にラッセルさせるなー!!」


■2024/02/06
わし様+ぐだ
「似た者同士というやつだ」

「どうしてもっと早くに来てくれなかったの!」
 ドゥリーヨダナの周回性能を知ったマスターが嘆くと、彼はいつものように隣にいたアシュヴァッターマンの肩を抱いた。
「その理由はな。友がわし様を呼んでくれたからこそ召喚に応じたわけだ。うむ、露払いというやつだな」
 マスターの視線にアシュヴァッターマンは高速で首を振った。任意のサーヴァントが呼べると思われたら召喚の度にマイルームに監禁されるのは目に見えている。
 そんなふたりにドゥリーヨダナはからからと笑った。
「冗談に決まっているだろう。──正直に言えばわし様はおまえの采配に感服したのだ。ORT戦のな」
 表情が凍りついたマスターに構わずドゥリーヨダナは言葉を続ける。
「わし様も生前同じ事をした。勝てるはずがないと分かっていて愛する弟達に死ねと命じたのだ」
「旦那」
 顔を曇らせたアシュヴァッターマンの制止にドゥリーヨダナはからからと笑った。
「結果はおまえとは異なったが、同じ戦法を経験した者同士! 仲良くやろうではないか!」
 乱暴に肩を叩かれたマスターはいつの間にか止まっていた息を吐く。
 同じ痛みを知る男は揺るがずそこに立っていた。


■2024/02/05
カルヨダ
「わし様の友を船乗りにするわけがなかろう!」

「マスター。夜間移動があるならカルナを連れていけ」
 と、ドゥリーヨダナに言われてカルナと共にレイシフトしたマスターは途方に暮れていた。
 お決まりの通信障害。真夜中の森。たくさんの魔獣の気配。移動すべきなのに雲が多く星も見えない。
 やみくもに動けば迷い、体力だけを消耗することになる。
「カルナさん、もしかして太陽みたいに光るとか?」
「愚問だな」
 マスターの質問を切り捨てて、カルナはとある方向を指差した。
「東はこちらだ」
「? あ、ああ!! 太陽が昇る方向!!」
 生きた羅針盤にマスターの表情が輝く。たとえ時間がかかってもこれなら森を抜けられる。
 ちゃんと安全な場所にたどり着き、通信も回復したマスターがドゥリーヨダナにお礼を言うと彼は笑った。
「そうだろう、そうだろう。カルナが来てから我がカウラヴァは夜間行軍で迷ったことがないのだ!」
「おい、トンチキ。夜間の戦闘は禁止されていたはずだよなぁ?」
 ビーマの声にドゥリーヨダナは舌を出した。
「行軍は戦闘と違うんですぅー!」
 賑やかな様子にふとマスターが横を見ると、カルナが眩しそうに目を細めていた。太陽を見るかのように。


■2024/02/04
わし様+叔父上
「本当に、愚かだ」

「スヨーダナ、鳥の羽ばたきが聞きたいかい?」
 パーンダヴァとの戦いの勝敗がほとんど決した最後の夜。伴も連れずにひとりで訪ねてきた叔父はそう囁いた。
 わし様はため息をつく。
「母上の差し金ですか?」
「姉上はとっくに忘れているさ。──おまえが生まれたばかりの頃、父上達が生きていた頃の他愛もない口約束だ」
 鳥の名前を持つ叔父は昏く笑う。人の弱みを巧みに掴む叔父ならば、それこそ羽ばたきひとつでわし様をこの死地から逃がす事が出来るだろう。
 だが、
「わし様が頷いたとしても、鳥が素直に飛んでくれるとは限らないが?」
 指摘に性悪な叔父は声を上げて笑った。
「かわいい、かわいいスヨーダナ。おまえはいつからそんなに疑い深くなったんだい?」
「叔父上の薫陶の賜物ですよ」
 笑いすぎたのか叔父は目元を拭う。その指先がわずかに濡れていた。
 叔父上の親族に何が起きたのか、今ではわし様も知っている。クル族の代表として謝罪など許されないことも分かっている。
 仇の親族に叔父は嘆くように笑った。
「愚かなスヨーダナ。──せめて一緒に死んでやろう」


■2024/02/03
アシュヨダ
「わし様は若返るし、最高だな!」

「じゅう、にじゅう、さんじゅう
「ちゃんと数えろよ。旦那。せっかくマスターが豆を分けてくれたんだからな」
 ドゥリーヨダナとアシュヴァッターマンの前には山盛りの豆が置かれていた。節分である。
 豆の山から手前に豆を数えていたドゥリーヨダナがため息をつく。
「サーヴァントに年の数と言われてもなぁ。霊基の年なのか? 享年なのか?」
「享年だろう。あっ! ────足りねぇ」
 豆を分けていたアシュヴァッターマンの手が止まった。視線を落とした彼にドゥリーヨダナはふむと考え込む。
 アシュヴァッターマンは呪いを受け三千年生きたまま彷徨っていた。その享年の数の豆を食べようとするならば、確かにここにある分では足りないだろう。
 ドゥリーヨダナは自分の手前の豆を数粒つまみ上げた。ぱらぱらとアシュヴァッターマンの前に落とす。数えかけのアシュヴァッターマンの年の豆とドゥリーヨダナの豆が混じり合う。
「旦那?」
 顔を上げたアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナはにやりと笑った。
「おまえ、わし様より年下な事を気にしておっただろう?これで同じ年だ」


■2024/02/03
生前IFカルヨダ
「おまえはすぐに去ってしまう」

 玉座の前に引きずり出された虜囚に、パーンダヴァの新たな長兄は立ち上がった。
 カウラヴァの総司令官であった彼が自分の出自を知り裏切ったために、泥沼の様相と化していたクルクシェートラの戦いはパーンダヴァの勝利に終わった。
 捕らえられた敵軍の将は薄汚れた衣装のまま膝をつかされている。
 そこにクル族の王となった青年が歩み寄った。
「我が友よ」
 カルナの呼びかけに応えはない。構わずカルナは戴いている王冠に自ら手をかけた。
 王冠が迷いなく移動する。カルナからドゥリーヨダナに。
「友よ。王位には王位で返そう。──おまえがクル族の王だ」
 思わず顔をあげたドゥリーヨダナを守るようにカルナは抗議の叫びを一蹴する。
「オレは確認したぞ。オレが王位についたら好きなようにしてもいいのか? と。神に誓ったはずだ」
 その場にいたはずのふたりに視線が集まる。否定が返らないのを確認してカルナはドゥリーヨダナを立ち上がらせた。
「カルナ。──わし様が喜ぶと思ったのか?」
「いいや。こんな形はおまえが望むモノではないだろう。──だが、おまえは人間なのだ」


■2024/02/02
生前カルヨダ
「雲に覆われて太陽が見えないのだ」

 空は荒れ、大風が離宮を揺らしていた。
「忌々しいインドラめ」
 天候も司る神に悪態をついて、ドゥリーヨダナは皮膚が剥がれた友の手を取った。とりあえず軟膏を塗り布で覆ったその体の至る所から血が滲んでいる。
 しなやかな肢体と一体化していた鎧を自ら剥ぎ取った高潔な友は、寝台に座ったままドゥリーヨダナに語りかける。
「これもオレの定めなのだろう」
「そんなことがあってたまるか!」
 奸計に納得したカルナと違いドゥリーヨダナは歯を噛みしめる。
 カルナはスーリヤの息子だという。
 この地において太陽は徐々に遠ざかっていた。年々寒さを増す気候に作物は枯れ人の数は減る一方。遠い山では雪に閉じ込められ大勢の餓死者が出たという。
 まるで大地の女神が神々と結託して人を間引こうとしているかのように。
 世界が大きな冬に向かっている今この時、スーリヤはインドラには敵わない。
 そして彼らの敵にはインドラの息子がいるのだ。
「友よ、」
「何も言うな。我が友にして父よ。例え何を失ってもオレはお前のために戦おう」
 カルナの言葉を消し去るように雷雨が降り出していた。


■2024/02/02
わし様と雷光と女神
「おのれ、ビーマ!!」

「牛ではないか!?」
 食堂で遭遇したアステリオスの角を見てのドゥリーヨダナの叫びに、ミノタウロスと呼ばれた子供は大きな体を縮こませた。
 その肩に腰かけていた女神が物騒な笑みを浮かべる。
「待て! 待て待て待て!! 牛なのはいいことだ!」
 両手を広げたドゥリーヨダナの弁明に、女神は片方の眉を美しく上げた。
 猶予を与えられたインドの英雄は軽く咳払いをする。
「あー。雄牛というのはわし様達の故郷では称賛の言葉だ。だから、わし様はお前を褒めただけであって、他に意図はない! まーったくない!!」
 力説に通りがかったビーマが表情を歪めた。
「その割にはお前の弟は俺を『牛』と罵っていたよなぁ」
「ばっ!!」
 飛び上がったドゥリーヨダナに、女神はこの上もなくたおやかに微笑んだ。

『アイ・オブ・ザ・エウリュアレ!』

 ドゥリーヨダナに魅了耐性はない。
 知らせを受けたカウラヴァのふたりが回収に来るまで、ドゥリーヨダナは人が行き交う食堂の真ん中に魅了状態のまま放置されていた。


■2024/02/01
ビマヨダ
「わし様はもう諦めたのだ」

「あの、すごく失礼なことを聞くけど。ドゥリーヨダナって、すごく頭が良かったとかの逸話があるの?」
 マスターの質問を横で聞いていたビーマは無言で首を傾けた。
 3waveめがアーチャー単体の周回はビーマ、そしてドゥリーヨダナがアタッカーだ。そのドゥリーヨダナが顎に手をやった。
「ほう? わし様はいつでも最優だが。なんでそう思うのだ?」
「だって、ドゥリーヨダナ。ダ・ヴィンチちゃんへの報告で全てのエネミーのHPとドロップ数を何も見ずに答えているよね? 記憶力良すぎるよ」
 確かにそれはビーマも疑問に思っていた。生前のドゥリーヨダナは突出したものなどなかったはずだというのに。
 疑問にドゥリーヨダナはからからと笑った。
「簡単な事だ。わし様の中には99人の弟達がおる。分担して覚えればあの程度楽勝だとも!」
「じゃあ100人で考えられるって事!? それって天才だよ!」
 称賛にドゥリーヨダナは顔をしかめ、何故か俺から目を背けた。
「マスター。天才とは、凡人のかき集めた努力を踏みにじるためには手段を選ばんものだ。ま、わし様は最優なので関係のない話ではあるがな」


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