氷月がゴミを見る目で私を見下ろしている。解せない。十分ちゃんとやってるのに。遅刻しないで仕事に行くし、ゴミの分別もするし、信号だって守る。なんなら今日はおばあちゃんに道を聞かれて案内もした。怯んだら負けだ。ふんと胸を張ったら、あからさまに大きなため息。
「君が社会的にちゃんとしてるのはわかっています。それなのにどうして私生活はだらしないんですか?」
床に脱ぎ捨てられた仕事着、テーブルに置いた飲みかけのペットボトル三本、ベランダから取り込んだままベッドに山にしてある洗濯物、層になった一ヶ月分の郵便物、とか、まあ、そういういろいろのことを言ってるんだろう。今は読み始めたら止まらなくなった漫画の十八巻を読んでいる。もちろん手の届く距離に全巻キープ。
「いいでしょ、私の家なんだし。氷月に不都合ある?」
「ありますね。私もここで過ごす以上、双方が快適であるべきでしょう」
「急に来るのが悪い」
「君は何月何日に会いたくなるか前もってわかるんですか?」
素でそういうこと言っちゃうのズルくない?反撃OK?
「私はいつも会いたいもん」
どうよ、身長差が生み出すナチュラル上目遣い。
「そうですか、それなら話が早いですね」
「わ、」
目の前に突きつけられたマンションのチラシは新築駅近ペット可の2LDK、あら思ったよりお手頃な家賃。
「共用部分だけちゃんとしてくれたら、一部屋は好きに散らかしていいですよ」
「えっ、……」
それって、一緒に暮らそうってこと?突然すぎる同棲の申し出、びっくりしたけど正直嬉しい。いつも会いたいって言ったのは本心だから。でもまんまと誘導されたのが悔しくて。
「か。家事は分担だからね!」
素直にうんと言えないないなんて我ながらかわいくない。
「勿論です。いいですね、ちゃんとしてる」
女心の機微が伝わってるか微妙だけど、私たちがうまくやってこれてるのは氷月がこういう人だからなんだろう。張り合うのがばからしくなって笑いだした私を不思議そうに見て、氷月は少し首を傾げたのだった。
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