まきわ
2024-11-15 23:51:19
938文字
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冬夜

年明けを一緒に迎えるクロリンの話
年明けとか全然関係ないタイミングで手習い的に書いた話なので短いです

「へくしゅっ」
「ぶぇくしょいっ」
ほとんど同時にくしゃみをする。
リィンはポケットからティッシュを取り出して、一枚を鼻をすすっているクロウに手渡した。
「品がないぞ」
「人生の半分放浪とテロリストで費やした男に品を求めんなよ」
「そういう問題じゃないだろ、志の問題だ」
軽口を交わしながらお互い鼻を押さえて、しばし夜空を見上げる。
「いやあれだな」
「んー?」
鼻の頭が寒さでつんとするのを煩わしく思っていると、唐突にぐ、と腰を引き寄せられた。
「さみーのが悪い」
「ちょ
抱き寄せられてそのままコートの中に抱き込まれる。
睨んでやろうとしたが暖かさともう鼻に馴染んだ匂いに力が抜けてそのまま体を預けた。
……あと3分か」
クロウは空いている手で取り出したARCUSを開いて呟く。
ARCUS規格はそもそも戦術オーブメントであり、本来は軍用品だ。
作戦行動時には全員が正確に時間を合わせておくことが必須であるため、ARCUSも秒数までが正確に表示されるようになっている。
リィンはクロウの暖かさに浸りながら秒数が刻まれていくのを見つめていたが、徐々に眉根が寄せられていく。
「なんか秒数のリズムとクロウの脈拍のリズムが合わなくて変な気分になる」
「しょうがねぇだろ!なら目閉じとけ」
そっと腰に回されていた手がリィンのまぶたに移動して、撫でるようにそっと触れた。
されるがままに目を閉じて、クロウの鼓動だけを聴く。
日が変わる前に教えてくれるか?」
「もちろん」
安心したように体を預けて首元に鼻先を擦り寄せる。
そのまま、風の音だけがひうぅと響く。
………あと30秒、リィン」
優しく、甘く、低い声音に呼ばれてぼんやりと目を開くと自然に向いた視線の先に30から数をふやしていく数字が「59:」の隣に見える。
5、4、3、2
ふ、と画面に0が並んだのを確認して二人は顔を見合わせた。
「明けましておめでとう」
「おう、おめでとさん。今年もよろしくな」
三年前の同じ頃、彼を永遠に失ったと思った。
一昨年は不甲斐なさに打ち沈んだまま年を越した。
去年はまだこんな関係性になれていなかった。
今がある幸せに眼尻を震わせて、リィンは再び目を閉じた。